どうやら戦っている途中でヴァーリたちがやってきたらしい。どうやらこいつらの目的もオーフィスと同じらしい。所詮、旧魔王派の作戦などこいつらからすればついでに過ぎないんだろうな。そこで俺は創造を解いた。
「痛って……まったくもって負担がでかいな。まあ、まだあの頃に比べればマシか」
「兵藤一誠、今のは一体なんだ?赤龍帝としての力ではないようだが……」
「言っても分からんとは思うが……まあ、いいか。今のは己の渇望を具現化させてそれを自分なり他人なりに影響を及ぼす創造ーーーー分かりやすく言うと必殺技みたいなもんだ」
「本当に分かりやすいな。……それは誰でも使えるのか?
「試した事はないけど、お前にも使えるよ。これを使うにはまず己の渇望を識る必要があるがな。自らの渇望を知り、それを具現化させ昇華させる。それが創造だ。でもな、ヴァーリ。俺と本気でぶつかりたかったからお前はさらにそのもう一つが段階の上の位階ーーーー流出位階に辿り着く必要がある」
「キリストのカバラ思想か?」
「そう、
実際、俺があの時どんな流出を使ったのか俺は覚えていない。覚えてるのは真の強者と戦える歓喜と身体が崩れていく感触だけだ。ただ戦っている最中は全能感とでも言うべき物が身体を駆け巡っていた。俺の身体が耐えきれなかった理由は
そんな事を考えていると、背中から何かがよじよじと登ってきた。何かと思えば、オーフィスが俺に肩車して欲しかっただけらしい。昔やってやったら、何が面白いのか会う度に要求してくる。何度言っても聞かない時点で、もはや諦めた。そのまま放置していると、アザゼルとタンニーンたちもやってきた。
俺とオーフィスがふと視線を空中に向けると、結界が裂けてそこから『紅』が現れた。大きさで言えばそこそこ、と言った感じだろうか?タンニーンよりは少なくともでかい。
「グレートレッドか……」
「懐かしいな。久しぶりだぜ。俺がぶつかり合っても倒せなかった敵はグレートレッドだけだ。十年ぶりだな、あの姿を見たのは」
俺たちが視線を向けていると、グレートレッドもこちらに顔を向けた。するとめちゃくちゃ恐ろしい視線で俺たちーーーーもとい俺とオーフィスを睨んでいた。周りの連中が若干苦しそうな表情を浮かべていたが、俺とオーフィスは涼しげな顔をしていた。実際、この程度の敵意ならば恐れる必要がないからだ。俺からすれば挨拶がわりのような物だし、オーフィスはそもそもこの程度の事に動じない。
「俺、あんな態度を取られるような事したっけ?オーフィスに関しては今更だし……まさか十年前の事をまだ怒ってる訳じゃないだろうな?いやいや、そんなはずはない……はず」
そんな事を呟けるくらいには余裕だった。周りはそんな曖昧な事を呟く一誠に対して戦々恐々していた。そして顔に表情という物をそんなに出さないオーフィスの顔にまるで何かを自慢でもするかのような笑顔が浮かんでいた。それと同時に威圧感がさらに上がった。
グレートレッドが着地すると同時に、紅い光がフィールド全土を包みこんだ。そして光が消えると、そこには深紅の髪を棚引かせた女性が立っていた。オーフィスにだって出来るんだから、できても不思議じゃないが……正直驚いた。そんな事をわざわざする奴じゃないと思っていたからなおさらだ。
「……なんでそんなに怒ってんだよ。俺がなんかしたかよ?」
「ほぅ。それはわざとか。わざと言っているのか?……意味が分からないという顔だな。ならば教えてやろう。ーーーーお前は私とオーフィスの仲が悪いのを知っているだろう!?それを今やっている事はなんだ!できない私に対する当てつけか!?」
「そんなもん、知るか!何を怒ってるのかと思ったらそんな事かよっ!?」
「そんな事とはなんだ!大体貴様はあれ以来まったく私のところに来ないし……お前はそんなに私の事が嫌いなのか!?」
「あのな……特に用事もないのに次元の狭間になんて行くわけないだろ!大体行ったとしてもお前はいない事の方が多いじゃねえか!お前はさっきから言ってることが支離滅裂だ!」
先に言っておくがグレートレッドもオーフィスも雌雄同体、つまりは雄と雌という区分がない。しかしながら、グレートレッドは一誠の前では女性としての肉体になるのだ。その気持ちは知ってしかるべしなのだろうが、なまじ死闘を繰り広げてしまった所為でその認識を持てないでいるのだ。だが、一誠は別に鈍感ではないのだ。多少おかしいとも感じてはいる。しかし、長年染み付いた感覚という物はそこまで簡単に拭える物ではない。
「オーフィス!貴様も貴様だ!なんだお前は?次元の狭間にいられないからと私に対する嫌がらせなのか?お前がその気なら私は幾らでも買うぞ?たとえお前がどれだけ徒党を組もうとも、私に勝てる道理などない。私に勝てるのは兵藤だけだ」
「……そんな事ない。いずれ我はお前を殺す。そして静寂なる世界を手に入れる」
「この分からず屋め。……良いだろう。お前がその気なら私も全力で相手をしよう。だが、忘れるなよ。どんな理由があろうとも、私に立ちはだかる以上は敵だ。覚悟しておけ」
そう言い放った瞬間のグレートレッドの表情はとても哀しそうな物だった。それは当然の事とも言える。グレートレッドにとって共に長き時を生きてきたオーフィスはたとえ仲が悪くとも、家族のような存在なのだ。それでも引く気がないオーフィスに、そこまでの事態に至らせてしまった己が悲しいのだろう。
そのままドラゴンの姿に戻り、グレートレッドは去っていった。それと同時にオーフィスとヴァーリたちは去った。何処となく後味の悪さを感じつつも、一誠たちはそのフィールドから立ち去ったのだった。