リリカルD×D~狩り人の戦記~   作:シュトレンベルク

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知るべきではない真実

 

 

地上に降り立ち、覇龍(ジャガーノート・ドライブ)を解いた瞬間に一誠は体勢を崩した。絶対の力を与える代わりに、スタミナも魔力も使い尽くす。短時間とか長時間とか関係なく使えば戦闘続行は不可能。それ故に一誠はこの力を使おうとはしない。振るうに足る力を持った者が少ないというのも理由の一つだが、と言うよりそもそも覇龍を使うまでもなく倒せる相手ばかりなのだ。

 

「だぁ〜……疲れた。もう何もできねえ。悪いが復旧作業には付き合えないから、そこんとこよろしく」

 

「……まあ、あれだけの力を使えば当然か。分かった。お前はそこで休んでいろ!お前たち、この場を元に戻すぞ!休んでいる暇などないぞ!」

 

フェンリルに噛まれたバラキエルは出血が多すぎたので行動不能。俺は魔力、と言うより天使の力(テレズマ)を無理矢理動くことも出来なくはなかったが、やろうとした瞬間にシエナにバインドされて動きを封じられた。文句を言ったら「その程度の物も解けないなら邪魔にしかならないから動かないで」とまで言われた。

 

そして皆が息を切らしながら仕事をこなしていくのを見ている傍、俺は精神世界に入っていた。今回の覇龍(ジャガーノート・ドライブ)は一度、次元の狭間で試している。その時は周りに浮いていた残骸が木っ端微塵に吹き飛ばされ、さらに人間界、冥界に通じる穴を開けた程だった。それが今回のは影響力が(・・・・)小さすぎる(・・・・・)

 

サクラに聞いてみても、自分は何もしていないと言っていた。むしろ枷を外したぐらいだ、と。俺はまったく手加減していないし、それどころかむしろ全力だったのだ。本来ならこの周辺が消し飛んでいても別におかしくはないだろう。それならば何故?ドライグや歴代の先輩たちにも訊いてみようと思っている。

 

「……なんじゃこりゃ?」

 

普通なら先輩たちが座っている席にはーーーー誰もいなかった。これははっきり言って異常だ。1人や2人、いやたとえ過半数がいなくなっていても何も言わないだろう。だが、全員がいなかった事など一度もないのだ。気配を手繰ってみると、どうやら奥の方で何かをしているらしい。行ってみるとどうもお通夜みたいな雰囲気になっていた。

 

「あの〜……どうかしたの?」

 

『いや、何も!』

 

「そんな息ピッタリで言われてもこっちが不安になるだけなんだけど。……ドライグの次は先輩たちかよ。一体何だっていうんだよ」

 

俺が先輩たちを素通りして聖書の神がいるであろう扉に進もうとすると、割と背の高い寡黙な男ーーーーベルザードが立ち塞がってきた。疑問符を浮かべながらすり抜けようとすると、今度は腕を掴んできた。せめてなんか言えよ。何がしたいのかさっぱりだ。腕を振り切り、一度後ろに下がろうとすると今度は後方に金髪の女性ーーーーエルシャがいた。

 

前門に虎、後門に狼ならぬ前門に男性最強、後門に女性最強かよ。表情を伺ってみても、意図的に表情を消してやがる。一体どういう目的なのかさっぱり分からない。聖書の神がいるであろう扉に触れるのはここに来る度にやっていたことだ。何時もは何も言わなかったくせにどういう風の吹きまわしだ?

 

「退けよ、ベルザード。一体どういうつもりなのか知らないけど、俺は邪魔をされるのが嫌いなんだよ。知ってるだろう?」

 

「……ああ。無論、知っている」

 

「それなら俺の前に立つな。俺の進む道の邪魔になるな。阻む者は打倒する。たとえそれがお前らであってもだ。頼むから無意味な拳を振るわせてくれるな!」

 

「……それでも私たちはあなたに無意味な真実を見せるわけにはいかないのよ。そのためなら障害にもなるわ」

 

「無意味な真実なんて物はない!すべての事象には何らかの意味がある。たとえそれが気まぐれであっても、そこには必ず意味があるんだ」

 

俺たちが睨み合いを続ける中でドライグは黙したまま。歴代の先輩たちも介入しようとはせず、駆けつけたばかりの戦姫たちも何がどうなっているのか分からない。俺が拳を握りしめ、戦いの体勢に入ろうとした瞬間に聞くはずのない声を聞いた。

 

 

「あらあら、やはりと言いますかなんと言いますか……歴代の方々は止めに掛かりましたか。あまり余計なことをしてもらっては困るのですが……」

 

 

「何故……何故、貴女がここにいるの!創生龍!」

 

エルシャの叫び声と同時に背後を振り返ると、そこには前と同じ姿の創生龍ーーーーフィーエルガが立っていた。そしてベルザードとエルシャ、さらには先輩たちの敵意も彼女に集中していた。そんな先輩たちの敵意の視線もどこ吹く風と言わんばかりに無視して俺に近づいた。

 

「この方にはなっていただかなければならない。貴方たちの想いによって邪魔される訳にはまいりません。……さて、今代の赤龍帝兵藤一誠殿。貴方は知りたいのでしょう?貴方が使ったあの力がどうしてあの程度で済んだのかを」

 

「……君は知っていると言うのか?」

 

「いえ?私は知りません。いえ、この言い方は正確ではありませんね。正確に言うなら、方法は存じませんが理由なら存じておりますと言ったところでしょうか。……何も嫌がらせのつもりではないのですよ?」

 

「なら一体どういうつもりだ。答えの意味がまったく分からない。そして君は何故、俺の前にまた現れた?ドライグが最近悩んでいたのは君の所為なのか?」

 

「一気に問われても困るのですが……あえて言うなら、すべて貴方が関係しているのですよ。今さらの話ではございますが、貴方は自分が何者か分かっていますか?

 

通常、貴方のような者はあり得ない。渇望は1人につき1つという原則があります。であるにも関わらず、貴方は聖書の神の形成を使うことができる。さらには創造すら使ってみせたとか。貴方の魂が完全に聖書の神に包まれていたのなら、私もこのような事は申しませんでした。

 

しかし、貴方は前回のレーディング・ゲームにおいて私の宿主が暴走した時、まったく違う創造を使ってみせました。これはあまりにも異常な事です。貴方はその辺りの事を理解していますか?」

 

「それは……」

 

正直に言えば、分かっていた。不思議には思っていたし、何故かとも考えた。しかしそれを証明する術を俺は持っていなかったのだ。元々聖遺物や位階の研究というのは詳しくはなされていないのだ。説明できぬ事もこの世にはあるのだと、そう納得する他なかったのだ。それこそ根源の話になってくるし、その方面の事に関しては詳しくはないのだ。

 

「それでは真実を見に行きましょう。貴方が今まで真実を知れなかった理由ーーーーそれはまだ目覚めていないからです。しかし兆候はあったのです。後は貴方が自らの本質を理解し、存在を理解したその時こそ、貴方は真に目覚めるのです。さあ、扉に触れてください。真実のすべてはそこにある」

 

「そんな事を……」

 

「させる訳がないでしょう!」

 

禁手(バランス・ブレイカー)になり一誠の目の前に立ち塞がる2人の存在を、フィーエルガは忌々しそうに見つめていた。そして俺の前に立ち、2人の相手をしようとした。一誠はその肩を掴んで後ろに下がらせ、一誠はそのまま進み始めた。構えて射程圏内に入った途端に拳を時間差で振るってきた。

 

ベルザード、エルシャ両名の拳が当たったーーーーそう思った瞬間に一誠の姿は霧のように消えた。そして次の瞬間にはベルザードとエルシャの後ろを歩いていた。その手の中に一本の鎌が握られていた。

 

「あれは……幻影神龍の鎌(メザンティス)!?」

 

「くっ!?」

 

即座に追撃して何とか止めようとするが、先ほどとは違い動きながらの行動だ。一誠は仙術で大まかな動きを理解し、大体の攻撃を躱していた。これが一誠が転生時に付けた成長限界突破の真価。戦闘中においてすら、常に成長し続けるその圧倒的なまでの戦闘センスが一誠を世界最強と呼ばせる要因の一つでもあったのだ。戦いながら戦闘の方法を修正し、尚且つさらに昇華させる。

 

それこそが、兵藤一誠の1番恐ろしいところだとエルシャもベルザードも理解しているのだ。だが、本気で対峙したのはこれが初めてであり敵にまわした際の恐ろしさを完全には理解できていなかったのだ。歴代最強の2人ですら一歩も止めることが出来ない。その事実は歴代の者たちを驚愕させ、ドライグと戦姫たちもその事実に畏敬の念を持ち、フィーエルガを恍惚とさせた。

 

そして一誠の手が完全に扉に触れかかった瞬間、エルシャとベルザードの手が一誠を捕まえた。既に一誠は幻影神龍の鎌(メザンティス)を手放していた。ため息を付きつつも、一誠は後ろを向いた。そこまでいくと安心したのか、エルシャもベルザードも禁手(バランス・ブレイカー)を解除したのだ。

 

「お願いだから止めなさい。これ以上、貴方が深みに嵌る必要はない。世の中には知らなくてもいい真実もあるのよ」

 

「これ以上進めばその先にあるのは地獄だ。俺もエルシャも歴代の者たちもお前をそんな所に行かせたいとは思っていない。今ならまだ、引き返すことができる」

 

「……ありがとう。俺のことを心配してくれること、それ自体はありがたいし嬉しいよ。でも俺は知りたい。たとえその果てが地獄であってもその果てを駆け抜け、俺は皆の下に帰るんだ。たとえ如何なる真実でも、俺は諦めない!悩む事もあるだろうし、悔やむ事もあるだろう。それでも絶望したりはしない。そう、決めたんだ」

 

そして一誠は再び門の方を向き、手を伸ばした。それをエルシャとベルザードは止めなかった。これ以上は無駄だと思ったからだ。どう言われようとも、一誠は知る事を止めない。それは希望かもしれない、絶望かもしれない。それでも知った事に価値は思っているからだ。故に止まらない。進み続ける事を選択するのだ。そして扉に触れ、開く事のなかった扉が開きーーーー歴代の者たちが、ドライグが知らせたくないと思った真実を、一誠は知った。

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