温泉の一件からさらに数日後、おそらく残りのジュエルシードは二個だろうと思いながら、魔法陣を作っていた。いわゆる五芒星やら六芒星の魔法陣じゃなくて、円形の陣にさまざまな紋様の術式を刻んでいる。
「それはどういう術式なんだ?」
「単純な魔力を増加、循環させて足りない分の魔力を補うだけの代物だ。それ以外に使い道が思いつかないんだ」
「……今更必要ないだろう。そもそも夢幻の肉体になった時から魔力の心配は無くなったのだろう?それなのに何故……?」
「俺がこの身体に変えたのは、単純に俺の持っていた力に身体が耐えきれなくなったからだ。あの時の俺の身体、覚えてるだろ?
……まあ、それでもエレンの言うとおり魔力に関しては確かに無用の長物だな。でもこれ以外、あんまり使い道が無いんだよな。願いを叶える機能を除いたら、ただの魔力貯蔵庫だし」
「それはそうかもしれないが……」
今言ったとおり、俺がグレートレッドの肉体から身体を作ったのは赤龍帝の力と天使の力を振るうには人間の肉体じゃあ、耐久力がないに等しかった。実際、グレートレッドと戦い終えた後の俺の身体はもう崩壊したって何らおかしく無い様な状況だった。
覇龍使用時はほぼ無尽蔵に溢れ出てくる天使の力を供給源に変えていた。そうしないと生命力がガリガリと削られて下手しなくても死ぬしな。魔力でも何とかなるんだが、そっちは天使の力以上に減り具合が半端じゃなかった。歴代の赤龍帝が短命な要因はこれの所為だろう。
覇龍を超えた覇龍……というのも研究している。未だ芳しい成果は出ていないが、研究は順調に進んでいる。赤龍帝の力は色んな方向性が有るからだ。王道、覇道、求道、神道、魔道、邪道、天道、その他etc……とにかく進化の方向性がさまざまというのは、割と面倒なんだ。でも今のままじゃあ危険性が大きすぎる。
しかもその為には歴代の赤龍帝の意思をどうにかしなくちゃいけない。全く面倒なことこの上ない。それにどいつもこいつもなんか暗くて憂鬱になりそうなくせに、覇龍発動時にはめちゃくちゃ元気になる。あれか?最高にハイッてやつだぜぇぇぇ!って奴か!?」
「そんなに怒られても、どうしようもないんだが……」
「ん?声出てた?」
「ああ。それはもう、ハッキリと」
「悪い悪い。ちょっとイライラしててな。あの先輩たちの中にも意識を保っている奴はいるらしいんだが、会ったこと無いんだよな」
「そうか……。まあ、協力出来る事があれば遠慮なく言ってくれ。出来る限り力になるから」
「ありがと。……これで一先ず術式は完成だな。使い時も殆ど無いし、お蔵入りしそうだけどな。……ちょっと走ってくる。戻らなかったら、先に食っててくれ」
「……分かった。だが出来る限り早く帰って来いよ?」
「分かってるさ。それじゃ」
この反応は……またジュエルシードか。ちゃんと結界も張っているし、問題はないと思うんだが……なんか不吉な予感がする。
ついてみると、封印もそっちのけで戦っていた。いや、一度封印はしたんだろうがそれで安心しきってやがる。封印しただけではかなりの危険性が有るというのに……!
「馬鹿どもが……!
『Welsh Dragon Balance Breaker!!』
そくざに
「「キャッ!?」」
「チィッ!クソが!」
二人のデバイスとやらがぶつかった瞬間、ジュエルシードが暴走して二人のデバイスに消して軽くは無いだろうダメージを与えた。
吹き飛ばされた二人を視線で確認しつつ、全速力でジュエルシードの所に向かい魔力を叩きつけて封印した。そして知らず知らずの内に怒鳴っていた。
「一体何をやっているんだ⁉戦うのは自由だ。好きにすればいい。だがな!やるなら安全な所でやれ!貴様らの行動が一歩間違えれば、この世界の消滅にも繋がり掛けたということを知れ!」
「私はただフェイトちゃんとお話を……!」
「それがどうした!?奪い合いをするのも、話し合うのも好きにすればいい。だけど、それは全部終わってからやるべき事だろう。違うか?」
「それは…そう…だけど……」
「そこのサポート組も何故止めなかった?こういう事態になりうる可能性が有った事だって、分かっていただろう」
「「…………」」
「……ごめんなさい。そこまで頭が回っていなかった」
「残りは一つ……。それだけで今回の一件は終結する。もうお前たちに任せる必要はないだろう。だから謝る必要はない。……きちんと反省することだな」
しくった。まさかあの二人があそこ迄愚かだとは思わなかった。危険物のすぐ近くで戦うなよ。爆発物の近くで火を付ける様な物だぞ……。
どちらにせよ、あと一個だ。次で事件を終結させないと……。手の中にあるジュエルシードを握りしめつつ、俺はそう思った。