戦局はおおよそ英雄派有利に進んでいた。とはいえ、まだまだ経験不足の一面も存在している。はぐれ悪魔なんかとは戦った事があっても人間、それも神器持ちなんかとは戦った事が全然ないからな、無理もないだろう。
木場くんとゼノヴィアは連携不足だから、思い通りの一撃を放てない。ジークフリートが
イリナの方は上手く対応している。素の状態では不利だと実感したのだろう。天使モードになって『光り輝く剣』を取り出した。イリナの守護天使である
それでもジャンヌの
「余所見してるなんて余裕だね。これで……どうだ!」
「シエナ。お前は俺から薫陶を受けてきた。それはつまりお前の使う術式の殆どは俺も知っているということだ。その程度じゃ……届かんよ」
魔法同士がぶつかり合い、昼間のような輝きが周りを照らしていく。先ほどからこれの繰り返しだから正直、飽きてきた。祐樹はこの雨あられのように降ってくる魔法に対処するのに集中していてあまり動いていない。籠手に魔力を集中させていると一気に距離を詰めてきた。手元のボロボロになった剣をこちらに投げ、手元にもう一本聖剣を創りだした。
「それがどうした?」
籠手を無造作に振るうと簡単に砕け散った。それに唖然としていた祐樹を蹴りで吹き飛ばした。受け身を取ったから幾らかはマシになっただろうが、それでも剣士としては致命的だろう。しかし、祐樹の瞳は一片たりとも絶望に満ちてはいなかった。
「どうしてそんな表情ができるんだ?不思議でならないよ」
「これくらいの実力差は折り込み済みですから。この程度じゃ諦めませんよ。……そろそろ私も自分の古い殻を拭い去る時だという事なんでしょうね。ーーーー
「ほぅ……」
「私の
その手には普段使っている聖剣なんかとは聖なる力が段違いの聖剣を創りだした。その聖剣から溢れでる力はデュランダルと同レベルだった。振るうだけで地面に亀裂が奔った。
「なるほど、あらゆる聖剣の創造を可能としたわけだ。お前の特性を十全に振るうための
まあ、至るにはまたとない条件が揃っているな。悪魔、英雄、九尾、異界の天使、赤龍帝、そしてこの裏京都のレプリカ。神器を刺激するにはちょうどいい場所だ。シエナの方に視線を向けてみると、莫大な量の魔力が収束されていた。空気中に残留している魔力と自分の魔力によって構成された砲撃魔法……ちょっと待て、これはまさか!
「お前はなんてもんを引っ張り出してきてんだ!そんな魔法、もとい魔砲をこんな場所で放つなんて正気か!?」
スターライト・ブレイカーだなんて冗談じゃない!最悪この結界ごと吹き飛ぶぞ!厄介な物を使おうとしてやがる。
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!』
「なのはちゃん直伝の……スターライト・ブレイカー!」
「ドラゴニック・ブラスター!」
衝突の余波だけで二条城が砕けていく。クソがっ!俺が今まで見てきた中でもあり得ないような攻撃しやがって!ふざけんなよ!さらに倍加の音が響き続け、砲撃の威力が段々上回ってくる。そして威力を封殺する形で砲撃を掻き消した。
あぶねぇ……後ちょっとで身体ごと消し飛ばされるところだった。祐樹は砲撃がぶつかり合う寸前でアーシアさんのところまで退避していた。曹操がうっすらと冷や汗を流しながら近づいてきた。
「……君の眷属はちょっと規格外すぎるんじゃないか?」
「普段はここまでじゃねえよ。鬱憤が溜まっていたってのもあるだろうし、ここが別に壊れても構わないとでも考えたんだろ。ああ〜マジだるい」
「よくあんな攻撃を相殺できたものだね。少なくとも俺だったら削り殺されてた可能性が高い……と言うより間違いなくそうなる」
「まあ、必殺技……いや、必滅技だからな。あんなもんをくらったらそれこそ一巻の終わりだしな。余裕で大規模殲滅魔法の部類に入るし、何より合わせ技すら可能なんだぜ?やってられないっての」
シエナは完全に魔力切れでへばっていた。いくら天使モードとはいえ、あそこまで膨大な魔力を使えば流石に持たないか。いや、この状態で継続されてもこっちが困るんだけど。他の連中も戦闘が終わっていた。現在、アーシアさんのところで治療中だった。実質的に戦えるのは祐樹と高神くんだけ。詰んだも同然だな。
兵藤一誠side out
高神創生side
勝てる、いや止められると思っていた。どうして兵藤さんが裏切ったのかは分からない。と言うよりも彼の視点からすれば裏切った事にはならないんだろう。傭兵とはそういう物だとティエトさんと木場さんに教えてもらった。いつ何処で誰と敵になるかは分からない物なのだと。
それでも、これまで必死になって修行してきた。少しは追いついたと思った。仲間を守れるようになれたのだと思っていた。でも、この体たらくだ。英雄の1人に挑みかかっても歯牙にもされない。それなのにこっちは殆どがやられてしまった。自分の不甲斐なさを恨みたくなってくる。なんで俺はこんなに弱いんだ?
「……高神くん、自分のことを不甲斐ないとか思ったりしてないよね?」
「実際、そうじゃねぇか!俺にもっと力があれば、皆を守れる!あんな敵に負けたりしないだろ!違うのかよ!?」
「その感情は危険だよ。あの人がかつて抱いた物と同じ。現実はいつも理不尽だ。だからこそ人は生きてるんだ!それに私たちは誰かに守ってほしくて戦っているわけじゃないんだ!馬鹿にするな!」
その言葉が、妙に心に響いた。自分の驕りと傲慢さを自覚させられた瞬間だった。そして自分の中を輝きが照らしていくかのように、力が溢れてきた。己の本質を理解し、渇望を肯定する。ああ、そうだ。俺は今!
「生きている!」
『Creation Dragon Limit Break Over Drive!!!!』
鎧から発せられる銀色の輝きがこの結界空間を包みこんでいく。始まりの黎明を、最初に人を照らした輝きをもってこの世界に自分の思いを知らしめる!
「俺はただ生きているって事を、実感したいだけだった。守ることで、戦うことで優越感に浸っていたんだ。でもそうじゃない。そうじゃないんだ!今を生き抜くために、この輝きを皆で見るために!俺は強くありたいんだ!」
高神創生side out
兵藤一誠side
『覇道』型の渇望かと思っていたんだが、『求道』型の渇望だったのか。鎧の形が変形し始め、
「チェンジ!
新たな
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!
超高速型の形態でこちらに突っ込んできた。目標はーーーー曹操。瞬く間に接近し、アッパーの要領で空中に浮かせた上に自分はさらに空中に飛び上がった。そしてさらに形態を変化させる。
「
鎧が重武装化し、特に籠手の部分が凄まじい事になっていた。そしてその激烈な拳を受けた曹操は思いっきり地面に叩き落とされたのだった。