閑話休題。俺たちが首都リリスに向かう途中で曹操の気配を感じたのでそちらに向かってみると、グレモリー眷属とシトリー眷属に英雄派の幹部が(既に何人か倒されているが)数人とヴァーリ、そして曹操がいた。
「やあ、兵藤一誠。一体あれはなんだ?アルビオン曰く『まるでドライグのようだった』らしいが」
「間違ってないから安心しな。あれは実際ドライグだったよ。
あの肉体を創るのもそうだが、あれの消費した魔力はすべて一誠から供給されているのだ。そんな無駄な事をする余裕があるなら自分で使うが、今回はあんな相手だったから使った。今後も同じような事があるとは到底思えないので二度とやる気はない、と言っている。
「さてと……それじゃあ始めようか。誰が相手をするんだい?ヴァーリか?獅子王か?創生龍か?それとも……赤龍帝か?」
「俺がやるさ。お前らが俺を目標にしていたと言うなら、俺がお前らに引導を渡すべきだろう?」
「
「ほう……それがこの聖槍とは違うロンギヌスか。面白い。君が相手なら俺も最初から全力で行かなくてはな……
俺が翼を広げ、曹操が周りにある七つの球体の内の一つに乗った。そして何方からともなく、槍をぶつけ合った。あちこちで火花が散り、激突する音が響いている。どうやら話に聞いた相手を移動させる能力で自分が動き回っているらしい。
「ハハッ!槍だけとはいえ、ここまでちゃんとした勝負になるのか。前にやった時は槍でさえまともな勝負にならなかったと言うのに!これは嬉しい成果だな!」
「まともに相対せるだけじゃ意味ないだろ。勝たなきゃ意味がないのが現実ってもんだ。それに……槍の技量が互角であっても、それはお前が俺に勝てる理由にはならないんだよ」
聖槍で吹き飛ばし、能力を使って体勢を整えている間に大火力の魔術を発動した。その炎を曹操はーーーー聖槍に光を収束させて斬り裂いた。その攻撃で建物が切断されてこちらに倒れてきたが、その側面を駆け抜けることで回避した。
そして一誠が翼を鞭のように振るい、それを
お返しとばかりに広範囲にばら撒かれた聖槍の攻撃を純粋なエネルギーの塊である翼を槍状にして射出させる事で破壊しつつ反撃する。同時に放たれているわけではないので、面攻撃とは言っても回避する隙間はある。とはいえ、長時間そんな場所にいれば穴だらけにされること間違いなしだが。
「
絨毯爆撃のように迫ってくる攻撃に対して、威力重視の球体で翼を破壊してそこに逃げ込むことでなんとか事なきを得ていた。思っていた以上にしぶといな……別に良いか。特に急いでるわけじゃないし。
「でも俺的にはそこまで長引かせるつもりはないんだよね……」
「ガッ!?」
もう何度目かも分からない鍔迫り合いの時に思いっきり力をこめた左手を肋骨目掛けて叩きつけた。感触的には折れたと思う。俺は曹操が突っ込んでいったビルの中に入っていった。案の定、血を吐いていた。
「ここまで、か……」
「せめて全部出し切ってからそういうセリフはほざけ。まだ見せてない物があるだろう?
「ふふっ……中々残酷な事を言うな。だが良いだろう。俺もすべて出しきってから斃れるとしよう」
「槍よッ!神を射抜く真なる聖槍よッ!我が内に潜む覇王の理想を吸い上げ、祝福と滅びの狭間を抉れーーーー!汝よ、意志を語りて、輝きと化せッ!!」
聖槍から光が溢れ……そして何も発動しなかった。曹操もこの結果はなんとなく予感していたのか、ショックは少なかった。
「思ってたより落ち着いてるんだな。もうちょっと愕然とした表情を浮かべるんじゃないかと思ってたんだがな」
「俺の中途半端さが招いた結果だからな。オーフィスから力を奪った後に気がついたんだよ。俺は本来の趣旨ーーーー『人間として何処までやれるか』ーーーーから外れてしまっている、とね。
「……ふむ、その論点は間違ってない。でも、もう一つというか根本的な理由がある。それはーーーー」
一誠の髪が黄金に染まり、圧倒的な力が放たれているのを曹操は感じた。同時に理解した。聖書の神の遺志が力を貸してくれない根本的な理由がなんなのかを。聖書の神の遺志はこの赤い龍帝に喰われてしまったのだと。
「ハ……ハハッ!ハハハハハハハハッ!なるほど、いない者が力を貸してくれる筈がない、か……。確かに根本的な理由だな!」
「ーーーー曹操」
「ゲオルグ、か……どうやら俺たちの挑戦はここで終わりらしい。彼の目的がそうなのだから。覇王は一代限り。俺は覇王となる事はできなかった、か……悔しいな」
「……善ではなく悪であったとしても、お前らはこの世界にその名を刻みこんだ。その行為は、決して無駄にはならない。お前らの挑戦は、決して無意味ではなかった。俺が保証してやる」
そう言いながら、曹操とゲオルグの神器をせめて安らかに逝かせる為に、出来うる限り痛みがないように抜き取った瞬間だった。何かが飛来し、曹操とゲオルグの身体を貫いた。曹操とゲオルグを貫いたそれはーーーー聖遺物
それを視認した瞬間に飛んできた方向目掛けて
「ラインハルトォォォォォォッ!てめえ、何してやがる!」
「有効活用だが?たとえ負けてしまったとしても、彼らの知識はまだまだ利用価値がある。それを活かさないという手は無いだろう?それに君は……
「修羅道・至高天……」
「そう。我が愛は破壊の慕情。愛でる為にまずは壊そう。労わりすぎて愛せぬなど無粋の極み。故にーーーー壊す。すべてを愛しているが故に、すべてを破壊する。私の魂も随分と融合してきた。そろそろ境界はなくなるだろうな」
「……それでお前は何をしに来た?何か用があったんだろう?それならさっさと言え!」
「そう怒らずとも良いだろうに……まあ、よい。赤龍帝、それに白龍皇!私は卿らに宣戦布告する!我々が雌雄を決する日時と場所をここに宣言しておこう。
時は二年後、第一管理世界ミッドチルダにて行われる。分からないのであれば、赤龍帝かアザゼル総督にでも聞けば良かろう。それでは
ラインハルトは高らかに笑い、側に控えていた団員が何かの術式ーーーーおそらく転移系ーーーーを展開させた。そしてラインハルトが消えて暫くしてもその笑い声は消える事はなかった。残ったのは後味の悪い感覚と聖槍に貫かれて魂を喰われた曹操とゲオルグの遺体、それに2人から抜き取った神器の感触だけだった……。