ドクターの処置が上手かったのか、ユニゾンデバイスの少女は一命を取り留めた。その日はドクターに任せて一度家に帰ったが、翌日に目を覚ましたという知らせが届いたので六課に向かった。
俺がたまたま近くにいたシュテルを連れてドクターの研究室に着くと所在なさげに周りを見ている少女がいた。別の人間が部屋に入ってきたからか、一瞬吃驚していたが俺の姿を見て安心したのかよって来た。サクラや夜天、後はツヴァイ以外にユニゾンデバイスを見るのは始めてだな。
「目を覚ましたって聞いたんで、来てみたが……本当に大丈夫か?」
「あ、ああ……って、それよりあんた怪我してないのか!?あたしを庇ったりなんかは……」
「してないよ。俺がやった事なんて部屋を凍らせて爆発を防いだだけだからな。心配しなくても大丈夫さ。……ドクター、もう連れていっても大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。調整も済んでいるし、後はその娘のロード探しぐらいじゃないかい?まあ、そこまでは僕の領分ではないから好きにしたまえ。……そういえばヴァーリ君から君に伝言を頼まれていたんだった。なんでも演習場で待っている、だそうだよ」
「……デートのお誘いみたいですね?」
「確かに
「あ、おう!」
「俺は赤龍帝、兵藤一誠。こっちが家族のシュテル・スタークス。お前さんの名前は?」
「ーーーーアギト。烈火の剣精、アギトだ。よろしく」
俺たちはアギトを連れてフォワード陣が訓練している所に向かった。炎という点で相性が良かったのか、アギトはシュテルのすぐ近くにいる。まあ、俺としてもアギトのロードに相応しいのは炎熱変換を持っているシュテルかシグナムぐらいだと思っている。
「よお、ヴァーリ。呼ばれたんで来てみたが……一体何のようなんだ?」
「いや、なに。なんでもここの隊長・副隊長はリミッターを付けているというじゃないか。それは全力の勝負を望む俺としては面白くない。だから兵藤一誠。ちょっと戦おうじゃないか。来るべき日に備えたウォーミングアップと思ってくれ」
「ウォーミングアップ、ね……。別に構わないけどさ。条件は能力の使用禁止。これ以外は何をしてもOK、で良いか?」
「
「それぐらいは構わないだろ。あくまでも禁止なのは互いの能力の使用だからな。……さて、それじゃあ始めようか」
新人たちがフィールドから退去したのを確認し、俺たちはフィールドに立った。遠方からフォワード陣営がこちらの様子をサーチャーで見ている。まあ、追いつければ良いんだけどな……。
「「
『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!』
『Vanishing Dragon Balance Breaker!!!!』
赤き龍帝と白き龍皇。互いがそれぞれ肉体に対して
新人のフォワードたちが急に鎧を纏うというその光景に驚いている一方、全力ではないとはいえ真面目に戦おうとしている2人は相手の実力がどれほどの物か確認しながら立ちすくんでいた。その状態を不思議に思った青髮の少女ーーーースバル・ナカジマは傍に立っていた憧れの教導官である高町なのはに訊いてみた。
「あの、なのはさん。あの2人は一体何をしてるんですか?まったく動かないんですけど……」
「あれはね「読み合いをしているのですよ」
「え?」
返答は検討違いの方向から帰ってきた。濃い茶髪に青い瞳のなのはそっくりの女性ことシュテル・スタークスによって。とはいえ、シュテルはスバルの質問に答えたのではなくアギトがまったく同じ質問をしてきたので答えただけだった。
「読み合いってなんなんだ?」
「相手が次にどう動くのか?こうすればどうする?ああ動けばどうなるのか?というのを互いに読み合っているのです。相対している状態で急に動くのは危険ですからね。ある程度、相手の実力を読めるようにならなければ熟練者とは言えません。……まあ、あの2人の読み合いは私たちの認識よりはるか上をいっているのでしょうけれど、ね」
開幕の一撃は互いに魔力弾をぶつけた際に起こった閃光だった。その光に躊躇いなく突っ込んで行くヴァーリと身体全体に
互いに拳をぶつけ合い、その衝撃で後ろに退避した2人は龍の翼を展開させて大空に羽ばたいた。さらに魔力弾を激突させて相殺させ続ける。だが、ヴァーリが使っているのはあくまでもただの魔力。それに対して一誠は魔力をいじるーーーー術式に転換させて利用する術を知っている。強さに対して貪欲なヴァーリは確かに北欧の術式を始めとした様々な魔法を知っている。しかし、それでも知識の面では一誠に圧倒的に劣るのだ。
魔力を激突させ続けても、不利になる一方だと判断したヴァーリは槍衾のように飛んでくる魔力弾を回避する方向に変更した。それを見た一誠は魔力を放たずにキープする手法を取る事で、ヴァーリの次の行動にすぐさま対応出来るようにした。
悪魔の膂力は人間のそれをはるかに凌駕している。その膂力に物を言わせる事を選択したヴァーリは高速で動きまわる事で相手の認識を誤魔化そうとしたが、一誠はそもそも高速戦闘型であるためその程度の速度に対応出来ない筈がなかった。
キープしている魔力弾を一箇所に集中させ、カウンターで叩きこもうとした一誠はすぐさま魔力を集めて圧縮させた。その魔力弾の危険度を即座に認識したヴァーリはすぐさま駆けだした。だが、一誠は『当たらなければどうという事はない』を体現出来るテクニックを持っている。顔面に飛んできた拳を紙一重で躱し(それでも余波で鎧の一部が弾け飛んだ)、腹に押しつけて炸裂させた。
『Divid!!』
その電子音と共に、炸裂させた魔力弾の威力が激減した。一誠とヴァーリは同時に地面に降りた。そして一誠がため息混じりに文句を言った。
「お前な……能力の使用は禁止って言っただろうが。俺もお前もあの程度の攻撃にやられる訳がないだろうが」
「いや、白龍皇としての能力を使った事は謝るがあの攻撃は俺も身の危険を感じる程だったぞ。と言うか、そもそも悪魔に光は猛毒だというのを忘れていないか?君のは天使や堕天使の槍よりも光の濃度が濃いんだ。君にとっては大丈夫でも俺にとっては危険すぎる代物なんだ」
ああ、そういえばあったな。そんな設定。とかぼやいていた一誠にヴァーリは苦笑していた。新人のフォワードたちがその圧倒的な力量に感動している中、オレンジ髮の少女ティアナ・ランスターは思いつめた表情を浮かべるのだった。