ヴィヴィオが連れ去られたあの日から数日、俺は今にも爆発しそうな感情を抑えつつも身体の中に大量の純度の高い
あの日、ボロボロだったユーリちゃんとレヴィを治療した後にアキトから罵倒された。
『ヴィヴィの事を守ってくれるんじゃなかったのかよ!』
その言葉に俺は何も言えなかった。否、言う資格がなかった。俺は力を解放する事を惜しんだ。その所為でヴィヴィオは連れ去られてしまったのだから。
だから誹りなら幾らでも受けよう。殴りたければ殴れば良い。俺は今度こそ、ヴィヴィオを救いだしてみせると誓いを立てたのだから。
俺が準備を終えて居間に入ると、同じように準備を整えたのであろう眷属たちがいた。俺は胸に手を当てて、ぼそりと呟いた。
「ユニゾン・アウト」
「マスター……?」
「サクラ、お前はシュテルの力になれ。ここからの戦場で俺はお前の力を上手くは扱いきれない。お前はユニゾンデバイスだ。今は忠義よりも能力を開花させられる者と共にいろ」
「……分かったんだよ。だからマスター、負けないでね」
「当たり前だ。……アギト。サクラと共にシュテルを援護してくれ。烈火の剣精の底力をあのクソッタレ共に見せつけてやれ」
「おうよ!」
正真正銘、全力で障害を叩き潰し愛娘を助けに行く。そう決断したのだ。世界中の誰よりも圧倒的な力を有し、十年以上もの間世界最強と称された男が全力を出す。正真正銘の全力。
意識を戦闘に集中させる“真面目”ではなく、枷を嵌められた状態で全力を出す“本気”でもない。枷をすべて外し、戦闘に集中させる十年以上前にグレートレッドとの戦いの時以来出せていなかった“全力”を持って娘を取り返す。そう決めたのだ。故に求める物は勝利のみ。
一誠の背中から六対十二枚の黄金の翼が一つを残して眷属全員に突き刺さり、今まで精製し続けた極めて純度の高い
人間から世界を創生した者とされる聖書の神。その絶対的な力を、蓄え続けてきた神気とも呼べる物を解放したのだ。普通の人間なら神経が焼き切れてしまう程の格の違いを本能的に理解させる。今まで繋がってきたと言っても過言ではない眷属たちですら、立っていることができずに頭を垂れる程の力。
これが神。覇道を極めた先にある存在ーーーー覇道神を名乗ることができる唯一無二の存在。そして自己申告ではあるが、ヴァーリも最終段階の流出位階にまで至ったらしい。これで、この地に三体覇道神が揃った。着々と怒りの日の準備は整っている、と言えるだろう。
「行くぞ、お前ら。俺たちは必ずあの陽だまりに、愛しき日常に帰るんだ。その為に此処に誓おう。必ず勝って戻ってくることを。誰一人して欠ける事は許さない。必ず……生きて帰るんだ。分かったか?分かったなら行くぞ……
『
そして一行ははやてから連絡を受けた先に向かっていた。目的地は次元航空艦アースラ。一誠やシエナにとって因縁のある船だ。右眼を閉じたまま、船の中を進みはやて達がいる部屋に入った。
「あ……一誠くん。それに王様やシュテル、それにレヴィたちも一緒に来たんか。大丈夫なんか?」
「心配は要らねえよ。……俺たちがやる事は決まってるんだ。ヴィヴィオを取り戻し、そしてこのふざけた戦いを終わらせる。なあ、ヴァーリ。楽しみだろう?二天龍の長きに渡る決着がつくんだからな」
「……ああ、楽しみだよ。兵藤一誠。俺は君に勝ち、世界最強の座に至る。その時が待ち遠しい。だが、それ以上にあの娘を攫っていったあの男が憎い。だから決着はその後だ。君との最後の共同戦線と行こう」
空気が一誠とヴァーリが放つ闘気によってピリピリとしている中、一つのホロウインドウが展開された。そこに写っていた顔はーーーーラインハルト・アルゾフ・ハーデン。
『初めまして、機動六課の諸君。私は聖槍十三騎士団黒円卓第一位、ラインハルト・アルゾフ・ハーデン。以後お見知り置きを』
「あんたが、機動六課を……うちらの部隊をあそこまでむちゃくちゃにした張本人かい。それで一体うちらに何の用や?」
『いや、用があるのは卿らではない。……いるのだろう?赤龍帝に白龍皇よ。戦いの準備は整ったかな?怒りの日はもうすぐそこまで迫っているぞ』
「出来てるさ。そのムカつく顔面をぶっ飛ばしたいと思ってるよ。答えろ、ラインハルト。ヴィヴィオは何処だ!」
『ふふふ……そう焦らずともよかろう。彼女はゆりかごの中だ。明日、今送った指定の座標にゆりかごは現れる。落とすにしろ、回収するにしろ、好きにすればよかろう』
「随分と大盤振る舞いやないか。……一体如何いうつもりや?ヴィヴィオちゃんを攫ったかと思えば敵に情報を与える。一体何を考えとるんや?」
『簡単なことだ。私にとってゆりかごはそこまで価値のある代物ではない。あくまで私に協力していた者が欲していただけだ。まあ、その者もとうに闇の中だが』
「殺したのか?」
『私ではない。最高評議会の面子が放った刺客だろうな。まあ、そちらにとってはどちらでも構わんだろう?重要なのは私を殺せるか否かという話なのだからな。それでは言葉を贈らせてもらうとしよう』