リリカルD×D~狩り人の戦記~   作:シュトレンベルク

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来たれ、怒りの日〜諧謔〜

 

ラインハルトの持つレアスキル『軍勢変生』ーーーーそれはラインハルト自身の魂と融合している魂『ラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ』が従える爪牙、聖槍十三騎士団の団員の能力を用いる力。そしてこれから放たれるのはその力の一端。夜の世界こそを至上とした吸血鬼の世界。

 

「ああ 日の光は要らぬ ならば夜こそ我が世界

夜に無敵となる魔人になりたい この畜生に染まる血を絞り出し 我を新生させる枕美と暴虐と殺戮の化身―闇の不死鳥

 

 

枯れ落ちろ恋人―Der Rosenkavalier Schwarzwald(死森の薔薇騎士)

 

「ぐおっ!?」

 

夜の世界こそを至上とした吸血鬼が振るう力は今のラインハルトが振るう事で確かに効果を発揮していた。ーーーー数分と持たなかったが。

 

流出位階に至り、その上でも凄まじい領域にいる2人に高々創造程度では長時間縛り続ける事は出来ない。それが覇道型である以上、尚更だろう。

 

一誠は流出によって相手の本質を理解し、その創造に対応する事で対処した。ヴァーリはその覇道の影響力を凄まじい勢いで半減させる事で、自分に与えられる影響を格段に下げた。さらにこの城にいる者たちの影響によってその創造は砕け散った。

 

だがしかし、やはりと言うべきか数分の差は大きかった。元々均衡していた状態だった力が下げられた事で、保たれていたバランスが壊れたのだ。一誠とヴァーリはすぐさま力を上昇させるが、流れはラインハルトの方に流れ始めた。僅かな隙を狙ったラインハルトは聖槍を放ち、その攻撃を一誠とヴァーリは躱しきれず擦り傷程度とはいえ、ダメージを負った。

 

放たれた聖槍の一撃は2人に擦り傷とはいえ確かなダメージを与えていた。痛みが走ればそれだけ動きが鈍くなる。これがただの攻撃であれば回復させる事も出来ただろう。

 

しかし、2人が受けたのは聖槍の一撃だ。その力は相手の肉体の治癒を妨害する。その聖槍が魂を喰らう聖遺物である以上、夢幻で構成されている一誠にも確かに効果があるのだ。

 

「どうした?まさかこんなところでは終わるまい。卿らの力はその程度ではあるまい。あまり私を白けさせてくれるなよ?」

 

「「ほざけ!」」

 

いくらか負傷した。それは事実であり、深くないとはいえこのまま放置すればマズい事になるかもしれない。ーーーーだが、それがどうしたと言うのだ。この程度の傷を負ったぐらいで敗北を認めるなら此処にはいないのだ。今まで生きてきた中で、もっと辛く苦しい戦いは幾らでもあった。この程度では、諦めるには値しない。

 

そして何よりーーーーまだ力を出し切っていないのだ。全身全霊をもって力を出す事を、自分にとってかけがえのない者たちを守る事を、そして勝利する事を求めてここに立っているのだ。

 

まだ自分は戦える。ならば自分がすべき選択は拳を振るう事で相手を打倒する事だけなのだ。因縁に決着をつける為に、自分たちは今此処に集ったのだから。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

対する大隊長と赤龍帝眷属の戦いもヒートアップしていた。それぞれの目的があって集まった黒円卓の面子の中で、唯一ラインハルトに忠誠を誓った白騎士(アルベド)赤騎士(ルベド)黒騎士(ニグレド)の三人はラインハルトより与えられたとある人物の力ーーーー誰も追いつけない程に速くある事を望んだ凶獣。その黄金の輝きに焼かれ続ける事を望んだ狩人。ただ死を求めて戦場を駆け抜けた鋼の求道者。

 

そして今、目の前に立つ者たちに対して渇望(ちから)をぶつけたいと願った。目の前に立つ者たちは自分たちが今まで屠ってきたような獲物(ザコ)ではなく、己の全力をぶつけるべき強敵(あいて)だと認識したが故にその事に嫌はない。あるはずがないのだ。今の騎士(じぶん)たちは、主と同じように満たされているのだから。

 

「あぁ わたしは願う どうか遠くへ 死神よどうか遠くへ行ってほしい

Vorüber,ach,vorüber!geh,wilder knochenmann!

 

わたしはまだ老いていない 生に溢れているのだからどうかお願い 触らないで

Ich bin noch jung, geh, Lieber! Und rühre mich nicht an.

 

美しく繊細な者よ 恐れることはない 手を伸ばせ

Gib deine Hand, du schön und zart Gebild!

 

我は汝の友であり 奪うために来たのではないのだから

Bin Freund und komme nicht zu strafen.

 

あぁ恐れるな怖がるな 誰も汝を傷つけない

Sei guten Muts! lch bin nicht wild,

 

我が腕の中で愛しい者よ 永劫安らかに眠るがいい

sollst sanft in meinen Armen schlafen!」

 

「彼ほど真実に誓いを守った者はなく

Echter als er schwür keiner Eide;

 

彼ほど誠実に契約を守った者もなく

treuer als er hielt keiner Verträge;

 

彼ほど純粋に人を愛した者はいない

lautrer als er liebte kein andrer:

 

だが彼ほど総ての誓いと全ての契約

und doch, alle Eide, alle Verträge,

 

総ての愛を裏切った者もまたいない

die treueste Liebe trog keiner wie er

 

我はこの荘厳なるヴァルハラを燃やし尽くす者となる

So-werf' ich den Brand in walhalls prangende Burg.」

 

「死よ 死の幕引きこそ唯一の救い

Tod! Sterden Einz' ge Gnade!

 

この毒に穢れ 蝕まれた心臓が動きを止め

Die schreckliche Wunde, das Gift, ersterde,

 

忌まわしき毒も傷も跡形もなく消え去るように

das es zernagt,erstarredas Herz!

 

この開いた傷口 癒えぬ病巣を見るがいい

Hier bin ich, die off'ne Wunde hier!

 

滴り落ちる血の雫を 全身に巡る呪詛の毒を

Das mich vergiftet, hier fliesst mein Blut:

 

武器を執れ 剣を突き刺せ

Heraus die Waffe! Taucht eure Schwerte.

 

深く 深く 柄まで通れと

tief,tief bis ans Heft!

 

さあ 騎士達よ

Auf! lhr Helden:

 

罪人にその苦悩もろとも止めを刺せば

Totet den Sunder mit seiner Qual,

 

至高の光はおのずから その上に照り輝いて降りるだろう

von selbst dann leuchtet euch wohl der Gral!」

 

Briah(創造)――』

 

Niflheimr Fenriswolf(死世界・凶獣変生)

 

Muspellzheimr Lævateinn(焦熱世界・激痛の剣)

 

Miðgarðr Völsunga Saga(人世界・終焉変生)

 

白騎士が願うは神速の獣。接触を嫌い、誰よりも速くある事を望んだ凶獣。たとえ相手よりも放つのが遅くとも必ず先にこちらの攻撃が当たる。絶対先制の理。

 

赤騎士が願うはすべてを焼き尽くす焔の世界。黄金に永遠に焼かれ続ける事を願った1人の女性が作り上げた、如何なる場所にあろうとも必ず当たる爆撃。絶対必中の理。

 

黒騎士が願った物は死という名の幕引き。ご都合主義(デウス・エクス・マキナ)の名を冠した絶対にして無慈悲なる終幕の鉄槌を振りかざす者。たとえ相手が如何なる防御をしようとも、一秒でも存在したのなら粉々に破壊し尽くす幕引きの鉄拳。絶対終焉の理。

 

対して赤龍帝眷属は先ほどラインハルトが発動させた創造によって疲労を強いられていた。幸い、一誠がすぐさま復調した事で吸収と供給がつり合いさらにラジェットが発動した覇道型の創造によってラインハルトの創造は阻まれた。

 

……まあ、より危険な状態に放り込まれただけなのだが。一誠から創造のレクチャーを受けていた3人は大袈裟に驚くようなことはなかったが、この空間と相手の変化の危険度がはるかに高いことを認識した。

 

構えた瞬間に白騎士が駆けだした。その速度は最速。彼に速度で勝る方法などそれこそ時間を停止させる以外にあるまい。誰も追いつけない神足の凶獣となる事が、彼の渇望であるが故に。

 

その速度に対応しきれなかったアイリスが吹き飛ばされ、そのサポートにまわろうとした瞬間に赤騎士はシエナの足元を爆発させた。なんとか防いだものの、救援は不可能になり黒騎士は八舞にその鉄拳を振るった。

 

風の魔術を放ってもその鉄拳に即座に掻き消されたのを見て、鉄拳に触れるのは危険だと認識した八舞は回避を選択した。

 

アイリスは白騎士の猛攻に苦戦していた。なんせ攻撃が速すぎるのだ。たまに反撃しても、その圧倒的な速度に回避される。しかも赤騎士の爆発が稀に襲いかかってくるので、それも気をつけなければならない。分かった事が一つだけあったーーーーこの者たちには仲間意識という物がない。

 

こちらを攻撃する時、仲間の事を欠片も気にしていないのだ。……まあ、気にする必要がないほどに個々の能力が高いのだと言われればそれまでなのだが。

 

だが、そもそも仲間意識などない(・・・・・・・・・・・・)と言うのなら話は別なのだ。放たれた攻撃は確かに相手にも当たっていたのだから。彼らにとって重要なのはラインハルト個人であって、彼ら自身はどうでもいいと考えているのだろう。

 

「戦闘中に考え事なんて、余裕だねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

「考えていないとままなりませんからね。私たちの意志を貫く為にはあなた方が至極邪魔なんです。……さっさと死んでくれた方が楽なので死んでくれませんか?」

 

「ははははははっ!はっきり言うね〜。……まあ、無理だけど。僕らは自分たちの魂すらハーデン卿に捧げた。これがどういう事か、分かるかい?僕らはこのグラズヘイムの一部って事さ!つまりいくら死んでも蘇る英雄(エインフェリア)になっているってことなんだよ!」

 

英雄(エインフェリア)、ね……死の戦奴の間違いでしょう。死者が往生悪くこの世界に縋っているだけ。死んだのなら今を生きる者の邪魔をするな!迷惑なんですよ!」

 

「そうは言ってもね……生きている者は死ななければならない。死んだ者は蘇らねばならないっていうのがハーデン卿の言だからさ。そしてそれこそが、怒りの日(ディエス・イレ)なんだから。死を思え(メメントモリ)というのはそういう物さ」

 

「……不快です。やはりあなた達とは思想が相入れないようです。ーーーーここでその幻想の終曲(フィナーレ)を奏でてあげましょう」

 

「まだまだ幕は開いたばかりなんだけどな……まあ、いいか。それじゃあ再開といこう!」

 

凶獣と最後の剣がぶつかり合う。アイリスの胸元で輝く指輪から光が薄っすらと放たれていた。そしてアイリスが拳を振るい、それがセフィアに直撃した。アイリス自身、牽制程度にしか考えていなかった一撃が当たったのだ。それは大層驚いていた。

 

だが、驚いていたのはむしろセフィアの方だった。接触を忌むが故に誰よりも速くなる事を望んだ獣を捉える事など、あり得る筈がない。三竦みの存在である大隊長の中で最も速度に重きを置いている白騎士(アルベド)を捉えられるのは赤騎士(ルベド)だけ。

 

他の者に捉えきれる筈がないし、そもそも捉えるなどという行為が出来るわけがない。ならこの身体に奔る痛みはなんだ?拳が自分に当たったからだ。では何故、速度においてすべてを凌駕している自分に当たった?

 

何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故だ!?

 

当たる筈のない拳が自分に当たった。だがそんな事はあり得ない。自分を傷つける事が出来るのは赤騎士(ルベド)と総軍を従えるハーデン卿のみ。これまでもそうだったし、これからもそうである筈だった。分からない。少しも理解できない。まったくこれっぽっちも理由が分からない。その思考は段々と獣じみた物に塗り潰され始めた。

 

分からない物を何時までも考えていても仕方がないのだと、思考する事を放棄した。渇望である獣性に段々と身体が支配されていく。分かりきった事ではあるが他人の渇望を御しきる事など出来る筈がないのだ。そもそも、この渇望を持っていた本人ーーーーヴォルフガング・シュライバーはこの創造を、その獣性を御してなどいなかったのだから。

 

理性を放棄したからこそ、この創造を自分の物とした。つまり逆に言えば、彼女は理性が残っていたからこそこの創造が完全に物にできていなかった。

 

ごちゃごちゃと何かを考えるのではなく、その獣性に本能に従い敵を貪れ。敵の喉笛を噛みちぎれ。我らは黄金の獣に勝利を捧げる爪牙ーーーー彼の鬣の一本にすぎない。幾ら傷つこうが関係ない。何度死のうが関係ない。我らは獣の爪牙。ラインハルトに勝利を捧げる爪牙。

 

壊した事のない物を見つけるまで戦い続ける主と共に戦い続ける者なれば、黄金の獣(ラインハルト)が生きている限り歩みを止めない。我が願いは自分の目の前に広がる者たちを殺し尽くす事。ならば、その殺意に身を沈めて敵を殺そうではないか。何故なら自分の魔名は悪名高き狼(フローズヴィトニル)。神々を殺す狼なのだから。

 

「■■、■■■■■■■■■■ーーーーッ!」

 

「完全に理性を捨てましたか……獣風情が人間に勝とうだなんて、おこがましいんですよ!」

 

勝つ以外に道はない。何時だって人はその技量を持って獣を狩ってきたのだ。どれだけ敵が強かろうがそれは決して自分が諦める理由にはならない。ようやく手に入れた温もりを失うなど自分には耐えられない。愛し愛される人にようやく出会えた。こんな自分に優しくしてくれる人がいて、私たちは家族であり仲間なのだと言ってくれる人がいる。これほど素晴らしい場所が他にあるだろうか?

 

いや、そんな物は何処にもない。ならばその場所を守る為に生命を賭すのだ。それ以外、取るべき選択肢など存在しない。この身は王冠(ケテル)を支える最後の剣であり、2体の守護天使を宿している。ここまで期待されて負ける筈がない。ならば勝つ。

 

「ーーーー王を守護せし最後の剣(サンダルフォン)ーーーー」

 

肉体の質が変化していく。守護天使の力を使う事で身体中に天使の力(テレズマ)が満ち、硬質な鎧に変わる。しかも今の状態は一誠が純度の高い天使の力(テレズマ)を供給した為、普段の何倍もの硬度を持っている。

 

セフィアは誰よりも速くあるために防御力を捨てた。堅牢な防御力はそのまま強大な攻撃力に転ずる。戦闘方法(バトルスタンス)が質よりも数を選択しているセフィアは不利になったーーーーかと思われた。

 

幾らラインハルトに魂を捧げているとはいえその魂の量は尋常ではない。魂を取りこんで肉体を強化する聖遺物で戦っている聖槍十三騎士団の構成員、その中でも大隊長と呼ばれるセフィアが完全に創造を物にした今となってはそんな物は足枷になどならない。そして再びーーーーしかし、アイリスにとって良い方向でーーーー膠着状態に陥った。

 

王国(マルクト)白騎士(アルベド)が互いに全力を発揮する中、シエナは魔術で感覚を広げる事でこの空間を解析すると同時に急に輝き始めた宝石の解析を進めていた。宝石から輝きが放たれた事で、何か特殊な力が発現し始めた。

 

そもそもあの一誠がお守りの意味もあると言ったほどのものだ。何もしていない方がおかしいだろう。本来であれば、戦闘中にこんな事をするのは半ば自殺行為のような物だ。しかし、発現した力のおかげか攻撃がまったく当たらない。

 

正確に言うと当たってはいるが(・・・・・・・・)ダメージがない(・・・・・・・)。何をしているのか分からない以上、下手に手を出す事の出来ない赤騎士(ルベド)は攻撃を繰り返すしかない。幸い当たっているので、ダメージで集中出来ないだろうと考えていた。そう、考えていた(・・・・・)。煙が消えて無傷の状態のシエナを見るまでは。

 

「……そっか。そういう事か。まったく師匠め。こういう大事な事は言っておいて欲しいもんだよ」

 

「何を……一体何を言っている。あなたは一体何をしたのだ!?私の必中の攻撃を躱したとでも言うつもりか!……いや、確かに攻撃は当たっていた。ならば何故あなたは無傷なのだ!?」

 

「さあね。答える義務なんてないし、推理小説の探偵じゃないんだから懇切丁寧に説明する義理もない。さあ、こっちもそろそろ終わりにしよう」

 

「……残念ながらそんなに早々と終わらせる気はない。ないとは思うが、あなたがあの方の邪魔をする可能性がある以上私にはそれを阻む義務がある。そして何よりーーーーそんな事はさせない」

 

「ーーーー座を守護する者(ザフキエル)ーーーー」

 

力を解放した事で宝石の輝きはさらに大きな物となり、爆撃の世界を照らしていく。光が弱くなるとシエナはとある理が身体の中に染み込んでいるのを感じた。眷属の中で最も天使の力(テレズマ)の扱いに長けているシエナはその力を十全に使う事が出来る。

 

一誠から与えられた純度の高い天使の力(テレズマ)を余すことなく使用できる。無駄を削ぎ落とし続ける事でその防御力は一線を介した物ーーーー例えるならグラムの一撃を受けても擦り傷一つ付かないレベルーーーーになる。

 

2人が守護天使の力を解放したのを視認した八舞はというとーーーー黒騎士(ニグレド)が放つ一撃必殺の拳こと幕引きの鉄拳を躱しながら霊装の槍を当てるヒットアンドアウェイ戦法を取りながら戦っていた。幸いと言うべきか相手の動きが他の二名よりも遅いのでまだ無事だったが、その鉄拳が振るわれる度に冷や汗を流していたのだった。

 

相手の防御力が高いのでこちらの攻撃がまったく通らないという点が、八舞を焦らせる要因の一つだった。神の火(ウリエル)の力を使えば傷を与えるのは容易いだろうが、その為には文言を唱える必要がある。その間にやられる可能性が高い以上、簡単に使う事は出来ない。戦闘が膠着している状態を打開するためにはーーーー

 

「……何を悩んでいる?俺は貴様の全力を望んでいる。まさか全力を出さずに勝てるとは思っているまい。ならば使え。熾天使(セラフ)と称される四大天使の一角ーーーーウリエルの力をな」

 

「……正気ですか?あの力を使えばあなたが負ける可能性は格段に上がるというのに」

 

「その程度で臆するならばこんな所にはいない。俺はただ、死という物がどんな物なのか知りたいだけだ。貴様を倒せばそれを知る事が出来る。どうせ斃すのなら全力の状態の貴様を倒したいと思うのは当然の事だ」

 

「……私を侮った事を後悔させてあげましょう。私はあの方に勝利を約束したのです。あなたのように断崖へと疾走する者に負ける道理などないという事を教えてあげましょう!」

 

八舞の背中から広げた翼の色が変化し始めた。そして莫大な業火を撒き散らしながら文言を唱え始めた。

 

「主より賜りし我が力の意は燃やし尽くす事。

 

我が敵を焼き尽くし、主に敵対する全ての者を焼き尽くす。

 

我は主の先兵となり、主の望みうる願いのためにこの命の全てをかけよう。

 

全てを焼き尽くし、破壊する。我が断罪の焔を受け、朽ち果てよ。灰すら残らぬ焔を受け、その生涯に後悔せよ。

 

貴様の命は主に敵対したその時から、我が眼前にたった瞬間に終焉を刻まれたのだから。

 

さぁ、主の敵を断罪するために我が劫火を振るおう!主の覇道の道を開こう!

 

目覚めなさいーーーー『神の火(ウリエル)』ーーーー」

 

八舞の用いる天使化とシエナを始めとした他の眷属達が用いる守護天使の力を解放する事はまったく違う。

 

守護天使の力を解放する事はあくまで人間としての防御力をはるかに上回る防御力を展開させる力である。

 

それに対して八舞が用いる天使化は敵を滅する事に主眼を置いた力。天使の中で最大級の火力を誇るウリエルはそれを最も体現した存在だと言えるだろう。

 

「ーーーー神を癒す者(ラファエル)ーーーー」

 

四大天使の中で最もサポート型として特化している存在こそがラファエル。神の如き者と称されるミカエル程ではないが、それでも回復能力でかの者を上回る事は厳しいと言わざるを得ないだろう。

 

水の属性の魔術は回復系の物も多く存在するが、それ以上にそれを司る天使神の力(ガブリエル)は破壊力が高い、否高すぎるのだ。

 

純粋な強さの序列で言うなら神の如き者(ミカエル)神の火(ウリエル)神の力(ガブリエル)神の薬(ラファエル)と言った順番になる。そして天使化によって神の火(ウリエル)を使う事は負担も大きい。そこで神の薬(ラファエル)の力を同時に併用する事で、回復能力を高めて運用を可能にしたのだ。

 

では何故、天使化という巨大にして強力な力を使えるのが八舞だけなのか?

 

それは八舞の存在が元々人間ではなく、精霊と呼ばれる存在だったからだ。人間ではたとえ守護天使の力を使っても肉体が崩壊してしまう。

 

他に眷属で辛うじて使えるとするなら神の如き者(ミカエル)を宿すイリナと神の力(ガブリエル)を宿す祐樹ぐらいだろう。この2人でも八舞ほど長持ちさせる事は出来ない。それだけ眷属の中で八舞が貴重な存在という事なのだ。

 

歌劇は序曲(オーベルテューレ)から諧謔(スケルツォ)に向かい、そして今ーーーー終曲(フィナーレ)に向けて走り始めたのだった。




やっと怒りの日シリーズを書き終えました。ちなみに二天龍の決着も怒りの日シリーズに組み込みました。いや〜長かった。今回もなんだかんだで8000文字オーバーですからね。

これをipodで書けたというのが凄いですよね。そしていろんな新ネタに悩まされる毎日です。カンピオーネとかISとか……他には劣等生とか。後は最近アニメ化したストライク・ザ・ブラッドとか?

どの話も神格化している一誠がいろんな名前で旅をしていく話なので、狩り人シリーズになります。まあ、もう主人公憑依じゃなくてオリキャラ扱いですが。もうラノベ関連でもありですね。ぼちぼちやっていきたいと思うのでよろしくお願いします。今度、活動報告でアンケートを取りたいので。それではまた次回!……明日は2話連続投稿します。
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