リリカルD×D~狩り人の戦記~   作:シュトレンベルク

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続きだよ〜。


黄昏の愛

 

膨大な魔力の奔流に襲われ、身体もぼろぼろと結合崩壊しているにも関わらず一誠の内心はひどく穏やかだった。それもこれも流出を発動させた事で自分の咒と渇望を知ってしまったからだろう。

 

一誠の咒は『自分が愛した者を自分を要因として失くす』という物だ。だからこそ、一誠は温もりが欲しいと泣き叫んでいる。隣人に手を差し伸べ温もりを欲する。そして手を繋ぐという事は相手を理解するという事だから、相手の本質を理解してその力を使う事が出来た。

 

だが、それもここで終わりだ。自分はここで死に、忌まわしき咒はここで絶える。覇道に溺れ、ただひたすらに力を求めてその果てに辿り着いた今なのだ。余りの滑稽さに笑いが抑えられない。さあ、早く俺に終焉をくれ。このどうしようもない人生に幕を下ろしてくれ。

 

そういう万感の想いを込めて迫ってくるブレスを見ていたのだが、いつまで経ってもこちらに当たらないのを不審に思い周りを見渡しているとすべてが時間という名の解けぬ鎖で凍りついていた。自分の身体も同様に崩壊が止まっていた。どうやら動けているのは肉体の精神だけで、肉体の変化の方は完全に凍りついているようだ。

 

「これは……一体」

 

「……なんだ、まだ全然子供じゃないか。こんな小さいのがあんなのと戦ってたのか?」

 

「……貴方は?」

 

「俺か?俺は蓮。藤井蓮だ。お前と話したいって言ってる人がいるんでな。ついて来てもらうぞ」

 

「確定ですか」

 

「どうせ拒否したってお前に残っているのは終焉だけだ。それなら少し付き合ってもらうぐらい、どうと言う事はないだろ」

 

青年を改めて見ると、なんと言うか女顔っぽいが男なんだろう。平穏の刹那をこよなく愛し、そのために疾走し続ける永遠の刹那。今の『座』にいる覇道神を守る守護者の1人。グレートレッドを次元の狭間ごと停止させているのは彼なのだろう。彼がこれを解かない限り、俺の終焉は訪れない。ならばついて行っても別に構わないだろう。どうせ暇なのだから。

 

「分かりましたよ。何処へなりとも連れて行って下さい」

 

「ああ……って言っても、もう着いているがな」

 

「え?……ッ!ここは?」

 

一回瞬きをしただけにも関わらず、急に何処とも知れない海の浜辺に来ていた。身体は動けるようになっているが、ボロボロの状態で固定されている。それにしても何処かで見た事があるようなきがするな、この海は……あ、まさか

 

「この海ってサン・マロですか?」

 

「……よく分かったな。と言うか見ただけじゃ分からないだろ、普通」

 

「似たような状況で見たことがありますからね。こんなに綺麗な海は世界広しと言えどもそう多くはありません。……と言っても、俺が見た時もこんなに綺麗ではありませんでしたが」

 

こんな輝きを出せるとしたら産業革命以前かそれほど時が経ってない頃じゃないと出せないのではないだろうか?それにしても……恐ろしく生命の気配がしない空間だな。仙術で大体百メートル圏内を近く出来るようにしたが、海の中には生命体の反応がないしちょっと遠くに人の気配はするけど……それを鑑みても少なすぎる。

 

「……ん?どうかしたか?」

 

「一体ここは何処なんですか?ここがサン・マロではないのは分かってます。生命の気配が殆どしないし、そもそもここは地球じゃない(・・・・・・)。そうでしょう?」

 

「まあ、確かにその通りなんだけどな。ここにお前を呼んだのはさっきも言ったが、お前と話したいって言ってる人がいるからだ。ここがどこかなんて自分で考えろ。そこまでしてやる義理はないんだからな」

 

中々に辛辣な言葉だが、当然とも言えるだろう。彼が守護者である以上、今代の『座』を守る義務がある。もしかしたら、(ほぼあり得ないが)今代の覇道神を傷つけるかもしれないような人物を招くというのは平穏な刹那を尊ぶ彼からすれば不本意だろう。そんな彼が自分の渇望と裏腹の事をして俺をこの世界に呼んだ。そんな事が出来るのは……

 

「おいおい、そんなに言う事はないんじゃねえの?蓮、心配しすぎだぜ。今のそいつにそんな事を起こす気は毛頭ないだろうさ」

 

「それにどう見ても身体はボロボロだしねぇ。ちょっとつついたら簡単に死んじゃうんじゃない?」

 

「……貴方たちは」

 

「遊佐司狼ってんだ。こっちは本城恵理衣。名字で呼ばれるのを嫌がるから俺らはエリイって呼んでる。無理に覚える必要はないぜ?」

 

「そうですか。では一応名乗っておきます。兵藤一誠です。隠れている人も(・・・・・・・)よろしくお願いします。と言っても、そこまで長くはいられないでしょうが」

 

一誠がそう言うと、至狼とエリィは驚きの表情を浮かべたかと思いきやすぐさま面白そうににやにやと笑みを浮かべた。そして2人の背後が少し騒がしくなった。そして何を思ったか、姿を表した。

 

「お前、どうして分かったんだ?アンナの魔法で分からなくなっている筈なんだが」

 

「そうですね。肉眼では見えませんでしたし、聴覚で捉える事も出来ませんでした。……でも、人は生きている以上生命力とも言うべき物を隠す事は出来ません。だから、仙術で探しただけですよ。まあ、半分は鎌かけだったんですけど」

 

実際、当てずっぽうに近かった。仙術で感じていた気配が唐突に、まるで霧か何かみたいに消えていったからそう思っただけだ。そんな時にこの2人が近づいてきたからもしかして、と思ったから適当に言っただけだ。当たろうが外れようがどっちでも良かったのだが、まあ当たったのだし喜んでおこう。

 

観念したのかどうかは分からないが、認識阻害が解かれたそこにいたのは大半が似たような格好ーーーー軍服を着ていた。あのマークって何処かで見た事があるような気がするんだけど……なんだったっけ?

 

「それにしても本当に小さいですね。こんな子供があんな龍と戦っていたなんて……本当に驚きましたよ」

 

「と言うか身体中ボロボロなんだけど、治療してあげた方が良いんじゃない?」

 

「無理よ。あれだけの力を使ったんだからこうなるのは目に見えているし、メルクリウスでもなければこんなの誰も治せないわよ」

 

「………………」

 

「無言で睨むの止めた方が良いですよ、マキナ卿。正直、ちょっと怖いです」

 

一体この人たちは誰なのだろうか。それが一誠の感想だった。金髪の快活そうな女性とどこか優しげな青年。それに自分とそれほど変わらない背丈の少女。あと青年の妹っぽい人と寡黙な男性。何処にでもいそうな人ではあるが、その中に大量の魂が見える。こんな姿でも此処にいる殆どの人間は大量殺人者なのだ……まあ、外見が当てにならないのは自分もそうなのだが。ちなみに普段はもう3人ほどいるのだが、今は偶々いないらしい。

 

そう思っていると、何か巨大な存在がこの世界に入ってきたような感じがした。それは他の者たちも感じたようで何か憎々しげな表情を浮かべていた。これだけで少なくとも来たのは招かれざる客だという事が分かった。

 

感じられる強烈な気配。色彩で言えば、黄金、白、赤、血のような紅、そして水銀。こちらの気配は此処にいる誰よりも血に塗れている、と言うよりも溢れんばかりの大量の魂を感じる。特に強烈なのは……黄金。いわゆる総軍クラスまで魂を食らってきたのだろう。水銀の方は質の面ででかい。これは黄金にも匹敵しうる力だろう。流石は『黄昏』の守護者、と言うべきなのだろう。……今の自分には至極どうでも良いが。

 

「突然来た事は謝罪しておこう、ツァラトゥストラよ。だが、私としてもそこの少年には興味があるのだよ。カールもその点は同じようだがな」

 

「心配せずともそこの彼は我らの女神の敵になるような事にはならない……いや、なれないのだからその仏頂面を少しは緩めてはどうかね?愚息よ」

 

「あの……あなた方は?」

 

「ふむ、申し遅れたな。聖槍十三騎士団国円卓第一位首領ラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ、破壊公(ハガル・ヘルツォーク)愛すべからざる光(メフィストフェレス)とも呼ばれている」

 

「聖槍十三騎士団国円卓第十三位副首領カール・クラフト、水銀の王(メルクリウス)。他にもヘルメス・トリスメギストス、カリオストロ、ファウスト、ノストラダムス、パラケルスス、クリスティアン・ローゼンクロイツ、ジェフティ……等々、名前など数えるのも疲れるほどにあるのでね。好きに呼んでくれたまえ」

 

「同じく聖槍十三騎士団国円卓第九位大隊長エレオノーレ・フォン・ヴィッテンヴルグ、魔操砲兵(ザミエル・ツェンタウア)

 

「同じく聖槍十三騎士団国円卓第十二位大隊長ヴォルフガング・シュライバー、悪名高き狼(フローズヴィトニル)

 

「同じく聖槍十三騎士団国円卓第四位ヴィルヘルム・エーレンブルグ、串刺し公(カズィクル・ベイ)

 

「赤龍帝、兵藤一誠です。先ほどは助かりました。ありがとうございました、黄金の獣殿」

 

「ふむ、あれには私も驚いたな。卿が私の聖遺物(エイヴィヒカイト)を使った時にはな。ところでツァラトゥストラよ。かの女神が彼を呼んだのではないのか?此処にいないようだが」

 

「……俺はまだ完全にこいつを信用している訳じゃねぇんだよ。そう簡単にマリィを呼べるわけないだろ。って言うか、お前はさっきから馴れ馴れしいぞ、ラインハルト」

 

「女神の恋人として警戒するのは分かるがな。些か心配しすぎなのではないかね?このような状態、それにこれだけの面子がいる状態で命を奪えるわけがなかろう?」

 

「そういう問題じゃない。さっきのあの馬鹿でかい龍との戦いは俺も見た。俺みたいな奴が言えた義理じゃないが、あんなのと戦えている時点で普通じゃない。幾ら傷ついていようがな、安心出来る理由になんてならないんだよ」

 

 

「大丈夫だよ、蓮。この子にはそんな事は欠片も考えていないんだから、ね?」

 

 

急に後ろから声がしたから振り向くと、金髪の女性がいた。けして裕福と言えるような身なりではなく、寧ろ貧相と言った方が良いだろう。首にもまるで斬首痕のような物が見える。だが、その光は温もりは本当に暖かかった。この人が第五天ーーーー今代の覇道神。『黄昏』の女神。

 

「マリィ……俺が呼ぶまで来ないでくれって言っただろ?何が起こるか分からないんだから……」

 

「そう言って全然来てくれないからこっちから来たんだよ。それにそんなに心配しなくても大丈夫だよ。さっき『座』に触れてきた時になんとなくだけどそう思ったんだ」

 

そもそもこちらには『座』に対する興味がない。世界を包む覇道神になる気なんてまったくと言って良いほどにないのだ。そんなに強くなる必要性すら感じない。今はただ早くこの生を終わらせたい。だが、こちらとしても黄昏の女神と呼ばれる彼女には訊きたい事があった。

 

「……どうして貴女は、『皆を抱きしめたい』なんて考えられるんですか?」

 

「え?」

 

「俺は自分の渇望の構造上、他人の渇望を理解できる。でも、貴女の渇望だけは分からなかった。俺は怖い。自分の大切な人が死ぬかもしれない、その事実を考えるだけで恐ろしい。何よりも怖い。俺の両親も、あの人も、俺という存在の所為でそういう事態に陥ったのだとすれば……俺は俺という存在を許せない。だからこそ訊きたい。貴女は何故そんな事が言えるんですか?」

 

「……カリオストロに導いてもらって蓮と出会って、私はいろんな事を経験したの。そんな中で私は皆を抱きしめたいと思った。私は非力で、不幸をなくす事なんて出来ない……でも皆、何時かはきっと幸せになれる。そう思うから、私は皆を抱きしめたいの」

 

驚愕だった。これがすべての者に等しく降り注ぐ女神の愛だと言うのか?自分の非力さを呪って力を求めるのではなく、非力だからこそ皆を抱きしめたいと願った?凄い。これは凄い。自分の渇望など目ではない。否、それどころの話ではない。誰のどんな渇望であろうともこの人の愛の敵ではない。

 

「はっ、ははははは……そっか、そうなんだ。参ったな……知りたくなってしまった。愛とは一体何なのか、知りたくなった。つい先刻まで死ぬ気満々だったと言うのに、今では生きたいと思ってしまっている。……なあ、ドライグ」

 

『……なんだ?』

 

その場にいたほぼ全員(カール・クラフトだけは変化なかったが)が籠手が喋った事に驚いていた。だが、今そんな事は如何でも良い。『生きたい』と願った所為だろうか?自分の内側からどんどん力が溢れてくる。

 

「生きたい。そして……負けたくない。まだ力を手伝ってくれるか?」

 

 

『相棒、何を今更な事を言っているんだ。俺たちはそもそも一心同体のパートナーなのだろう?ならばそんな問いは愚問だ。ーーーーああ、貸すとも。相棒のために、俺も力を尽くそうじゃないか』

 

 

「……ありがとう。さてと、それじゃあ俺は行きますね。でもその前に、女神よ。貴女の訊きたい事は何ですか?」

 

「ううん。もう良いの。頑張ってね」

 

「ありがとうございます。それでは短い間でしたが、お世話になりました」

 

途中から気付いていた。自分は覇道のぶつかり合いによって発生する特異点にいるのだと。どうりでよく分からなかった訳だと内心苦笑しつつも、この場に来て本当に良かったと思っている。自分にはまだ知らない事がたくさんあるのだと。まだ7歳の癖に悟ったような雰囲気を出して、でもその実まったく分かっていなかった。まだ自分には出来る事が、知るべき事が沢山あるのだ。

 

世界中を歩き回り、様々な物を見てきた。一方的な観点から見てきた事は否めない。一誠はまだ子供だ。現実を知ったとしてもそれを認められるかどうかは分からないだろう。でも、それは当たり前なのだ。所詮は7歳の子供でこれから様々な渇望に触れる事で、ようやく人間として成長していく。

 

善と悪ーーーーそんな単純な物では測れない、本当の世界の姿を目の当たりにしていく事だろう。それでも今はただーーーー生きたい。そして、負けたくない。自分の願いのためにただ勝利を欲するのだ。手始めにグレートレッドを倒す。負けっぱなしは嫌だと思うからこそ、再び挑む。

 

強固な意志を持った一誠は特異点を飛び出し、次元の狭間に戻った。それを見届けた蓮は停止を解除した。他の者たちも一誠が離れたのを確認すると散り始めた。

 

「結局、マリィはあいつに何を訊きたかったんだ?」

 

「……あの子、泣いてたんだ。一人ぼっちなのが辛くて、苦しくて、悲しくて。誰かに助けを求めたい。でも、そうしたらまた誰かが傷ついてしまうんじゃないか?って怖がってたの。だから言いたかったんだ。『君は一人ぼっちじゃないんだよ』って。でも、さっきのあの子ならもう大丈夫」

 

「……なるほど。やっぱりマリィは凄いな」

 

自分の女神(恋人)の凄さに感嘆の声を上げつつも、この刹那を楽しもうと共に黄昏の浜辺を歩き始めた。




Dies勢の口調が上手く再現出来ませんでしたが、ご勘弁ください。

それはさておき今回の話は、やっぱりマリィの愛は最高だよね!というコンセプトの元で作られました。面白かったらいいな、と思います。

それではまた次回!
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