まあいきなり現れたあの妙な悪魔の事は放っておいて、封印術式を使ってジュエルシードを全て封印したんだが……。
「どちらにしてもこれ以上はこの空間が持たないか。もともとあちらこちらがぼろぼろだったしな」
そう、いろんな所に次元の狭間に続く穴が空いていた。俺は別に何の問題もないから、そのまま飛び降りたが。しかし何時きても辺鄙な場所だな……。
『ここにはグレートレッドか神が廃棄した兵器位しかないからな。静寂の象徴でもあるからな』
「なんでオーフィスといいグレートレッドといいこんな場所を好むのかね?する事なさすぎで暇だろ。いくらここに果てがないって言ってもさ」
『さあな。さすがにそこまでは俺にも分からん。……単体の個として完成しているから、という理由かもしれんがな』
「あいつらは別に完成なんてしちゃいない。じゃなきゃ、俺が同等のレベルに至れるわけがない。単純に世界を知らないだけだろ。オーフィスは最初の頃とは違うんだろ?」
『あれは本質が変化しているからな。仕方ないといえば、致し方ないのだろうが……』
単体として完成しているオーフィス。全ての生物、文字通り生きとしいける全ての生き物の夢や幻想が集まって生まれたグレートレッド。完成しているが故に、他者と関わろうとしない。だが、今のオーフィスはグレートレッドを打倒するという目的の為に動いている。
「人間が他者と関わろうとするのは、人間という存在が不完全な存在だからだ。……長き時は無限という完全を不完全な存在にするのか」
『そうやって黄昏ているのは構わんが、そろそろ動いたらどうだ?わざわざこんな場所に留まる必要はないだろう』
「それもそうだな。……うん?あれは……」
上の方からアリシア、だったか?の死体が入った機械が落ちてきた。まあどんどん『無』に当てられて消えていっているんだが。このままだと消えるか。……しゃあない。
『相棒は本当にお人好しだな。俺なら放置するがな』
「やれる力があるならやるべきだろ。それにこれ位へでもないしな。
死体を回収して簡易な服を着せてから、住んでいる所の
これはミカエルが火を象徴する存在だから。ガブリエルの力を使っていたら赤いところは青くなるし、ウリエルなら緑に、ラファエルなら黄になる。因みにルシフェルなら黒になる。
右手をアリシアの死体に向けると、右手から黄金の粒子が降り注ぎアリシアを包んでいく。そして身体全体が粒子に包まれ、次の瞬間には粒子が身体に沈みこんだ。
「蘇生終了、っと。初めてやったけど、出来るものなんだな」
ミカエルのもたらす奇跡。どんな重傷をおっていても、たとえ死んでいたとしても蘇らせる神の奇跡を使う力。天使長という神の次に万能な存在であるからこそ起こせる奇跡。他の熾天使でも四大天使でも起こす事ができない力だ。
「さてと、次はあれの準備かな?」
倉庫の中をごそごそとあさっている最中にアリシアが起きた。思ってたよりも早かったな。
「……ここは?」
「おっ、起きたか。……あったあった、これだな」
「お兄さんは?ここはどこ?お母さんはどこ?」
「一気に質問するな。まず俺はドライグだ。ここは海鳴市って場所だ。お前の母親の居場所は知らんが……これから行くところにいるだろ。多分な」
「……本当に?」
「多分、って言ってるだろ。それでお前さん、立てるか?」
「えーっと……無理みたい」
「そうか。まあしょうがないか。よっこらせ」
「うわわわわっ!」
俺はアリシアを抱きあげて術式を展開させた。目標はーーーー管理局の次元航行艦アースラ。あ、もちろん鎧は解除している。着いてみると、艦内は慌ただしかった。何かあったんだろうか?まあ無視して歩き回った。
「お、いたいた」
「ドライグさん?どう…し…て…」
「どうした?なのは……って、え?」
「どうかしたか?」
「何故アリシア・テスタロッサが生きている!?」
「俺が蘇生させた。言っただろう?神の奇跡に辿りついてもいない者がって。そんな事を言った俺ができないわけがないだろう」
何を驚いているのかと思った。まあ、こいつらの概念では神ってのがいないみたいだしな。万能な唯一神の力の事は分からないだろう。俺の私見だけど、唯一神の宗教の神も似たような力を持っているだろう。それでもここまではないだろうが。
神様にとって重要なのは自分の宗教を信仰してくれる信者の数だ。神様の力は、その信仰の度合いによって異なるからだ。だからこそ三大宗教の一つと言われるキリスト教はここまでの力を発揮できる。とはいえ、俺のは異界の神だけどな。
「よいしょ。……それでなんでこんなに慌ただしいんだ?何か変な物でも出たか?」
「いや、それが何でもプレシアは癌があったらしい。もはや手遅れのレベルの物が。ただそれが殆ど完治に近い状態になっているらしいんだ」
「ふ〜ん。多分それも俺だな。殴った箇所がたまたま病気の箇所だったんじゃないか?」
「そんな適当な……」
「まあその辺は適当にでっち上げろよ。それじゃ、俺は帰るから。……おっと、忘れてた。ホレ」
もともと渡す気で持ってきたのに完全に頭から抜けていた。俺にとってはどうでもいい物だが、こいつらにとっては重要度高そうだしな。
「おわっ。これは……メモリーディスク?」
「ああ。管理局の悪事のデータの一部分だ。……ヒュドラ事件のな」
「なっ!?それはどういう」
「さあて、ね。俺はこの辺で退散するさ。お邪魔虫はいない方がいいからな」
一度足を踏み鳴らすとそこを中心に魔法陣が展開された。ただの移動用の魔法だけど、わりと便利なんだよな。用意するのが面倒なんだが。
「お兄さん!」
「うん?どうした?精々ここからは頑張っていくことだな」
「助けてくれてありがとう!」
「……どういたしまして」
俺の視界を光が包み込み、そして光が消えた先には俺の存在は残滓すらも残らなかった。