八神はやての魔法レッスン
あの事件から数日後、俺はめっちゃくちゃ暇だった。事件の時に忙しかった反動かもしれないが、ともかく俺は暇だったんだ。
「分かったか?八神」
「いや、そんな事言われてもこれっぽっち分からんのやけど……」
「むっ。そんなんだからお前は八神なんだぞ」
「ウチの名字を罵倒すんの辞めてくれへんかな!?っていうかこのやり取り何回目やと思ってんの!?」
「……何回目だっけ?」
「もう五回以上やっとるわ!……ハァ。それで?一体何すんの?大概の事はやり尽くしたやろ?」
「いや、お前に魔法教えんの忘れてたなと思ってな」
「ああ、そんな事も言うとったな。……それで?具体的に何するん?」
実はこいつ、結構楽しみにしてたな。すごい目がキラキラと輝いてやがる。まずは……あれか。
「まずはオーラを感じる事だな。……と言ってもな、大概この段階で挫折する奴が殆どなんだよな。やっぱり才能もあるけど、根性も必要だから」
「それじゃあどないするん?」
「ん〜とな、お前のオーラを刺激してみようと思う」
俺は八神の頭に手を乗っけて、魔力を流し込み俺の魔力と八神の身体から溢れる魔力の違いを認識させる。
「……なんか気持ち悪いんやけど、これなんなん?」
「俺の魔力を流し込んだから、拒否反応を起こしてるんだ。つっても害はない。精々今みたいに気持ち悪くなるだけだ。……それでお前、自分のオーラは分かるか?」
「う〜ん……何となく」
「そうか。まあ、最初はそんなもんだろ。それじゃあ次はそのオーラを手に集めてみろ。こんな感じでな」
俺が右手を上げてそこに魔力を集める。すると真っ赤な色の魔力弾が出てきた。
「おお〜。綺麗なもんやな」
「次はお前の番だぞ。やってみろ」
「ふん!……あれ?ふぬぬぬっ!あれ?出来へん。あんなに簡単そうやったのに」
「素人にそんなに簡単にやられてたまるか。……ちゃんとコツがあるんだ。体全体から魔力を集めろ。魔力ってのは血液みたいに体全体に流れてんだからな」
「う〜ん……こんな感じ?」
何と八神はこれだけで見事に魔力弾を出してみやがった。とはいえ、ただ集めただけじゃ魔力弾とは呼ばないんだが。それでもこいつ相当な才能があるな。そんな物に胡座かいてたら、すぐに劣化するが。因みに八神の魔力光は白色だった。
「上手いな。今度はそれを変化させるとしよう。初心者はペットボトルを使ったりするが……まあ、いらないだろ」
「そんな適当でいいん?」
「お前な。ここまでトントン拍子でいってんだぞ?初心者はもっと時間がかかる。つうか、これ本当は悪魔の技術だからな?」
「え?そうなん?」
「ああ。悪魔の技術が便利だったから作られた物が魔法だからな。人間は面倒くさがりだからな。そういう物が欲しくなったって訳だ」
「自分もやろ?」
「まあな。……さて、変化がどういう物か説明する前に」
「前に?」
「まずは夕飯にしよう。腹減ってたら意味ないしな。今日は俺が作ってやるよ。なんせ今日はお前の誕生日らしいからな」
「……知っとったん?」
「この間、お前の主治医の人に聞いた。お前も黙っているなんて水臭いことすんなよ」
「で、でも迷惑やろ?それに一誠くんはお客さんやで?お客さんを働かすわけには……」
「いいんだよ。俺がそれでいいんだから、お前は気にせずにその善意を受け止めればいいんだよ」
「勝手に言ってくれるわ。……ありがとうな」
「はてさて、何のことやら」
ここにくる前に買っておいた食材が無駄にならずに済んだな。ここまでやって拒否られたら大変だったな。それから夕食を作り終えるまで静かな時間が続いた。でもそんな静寂は嫌いじゃなかった。
それから夕食を食べ終え、魔法の変化の説明を始めた。とは言ってもそこまで大したことじゃないんだな。俺はコップに水を注いだ物を持ってきた。
「魔力の変化に必要なのはイメージだ」
「イメージ?」
「そうだ。魔法使いが魔法陣を必要とするのは、そこに基礎的な情報を書き込みさらにイメージを一定の方向に固定するためだ」
「はぁ〜、魔法使いも大変なんやね。それでそのコップは何の関係が?」
「あのな、いきなり初心者にそんな高度な技を求めるわけないだろ。実物があった方がやりやすいからだ」
こんな感じで。と言いながら、コップの水を凍らせたり、空中で曲芸みたいに他の生物の形にしてみたりした。
「おお〜曲芸士みたいやな」
「慣れればこれ位はな。まあ、まずは凍らせたり浮かせたり。それ位だ。焦らずにやれよ。幾らただの水でも危険な物は危険だからな」
「はーい」
それから寝るまで、八神の魔法修行は続いた。一緒に寝ようと言われたので、ついていった。もともと泊まりがけのつもりだったから、別に良いんだが……
「何で同じ布団?」
「ええやん。別に困ってへんのやろ?」
「はいはい……っ!?」
急に八神の本棚にあった鎖で縛られた本が出てきたと思ったら、鎖が壊れてさらに物凄い勢いでページが捲られていく。あれは……魔導書?
「な、なんなん?」
「分からない。でも大丈夫だ」
「何でそんな事言いきれんの?」
「だって俺は、世界最強だからな。我が前に敵など存在しないのさ」
『
そして魔導書が完全に起動しその先にいたのは、四人の騎士たち。
「闇の書の起動を確認しました」
「我ら闇の書の蒐集を行い主を守る守護騎士にございます」
「夜天の主に集いし雲」
「ヴォルケンリッター、何なりとご命令を」