闇の書?夜天の雲とか言ってたくせに、何を言ってるんだ?……うん?待てよ。夜天って確か……
「おい」
「あん?なんだよ」
「貴様は何者だ?何故主の側にいる。闇の書を狙っているのか?もしそうなら」
「そうならどうだって言うんだ?ベルカの騎士は相手の話を聞く気あんのか?話がしたいなら武器を仕舞え。ここで戦えばどうなるかぐらい、分からない訳じゃないだろう」
「貴様……!」
「なぁ、シグナム」
「なんだヴィータ。今忙し」
「そいつ……気ぃ失ってんだけど」
「「え?」」
うわ、本当だよ。さっきから妙に静かだなと思ったら……失神してたんかい。首筋に手を当ててみたが、脈拍は正常。問題ないだろ。
「貴様何をしている!」
「見てわからんのか?脈を測ってただけだ。……さて、少し話を聞こうじゃないか。おいそこの守護獣」
「……なんだ」
「こいつが起きるまでここで自分達の主を守っていろ。こいつに危害を及ばないか心配ならな」
「さて、一応名前を聞いておきたいんだが、いいか?」
「……良いだろう。だが、そちらも答えてもらうぞ」
「構わねぇよ」
「私は烈火の将シグナムだ」
「鉄槌の騎士ヴィータ」
「湖の騎士シャマル」
「盾の守護獣ザフィーラ」
「赤龍帝兼
俺が名乗るとなんかすごい驚かれた。あれ?俺、そんなおかしな事したっけ?
そしては場所は変わり、リビングで相対した。しかしベルカの騎士か……。近接戦闘においてはガチで一騎当千を誇るからな。それを三人に加え、さらに守護獣付き。相手にのは正直面倒だな。
「さてとさっきも名乗ったが、兵藤一誠だ」
「……それは本当なのか?」
「何を疑ってんだコラ。正直に、名乗った相手に嘘付くほど俺も落ちこぼれちゃいねぇよ。そんなに信用が無いのか?烈火の将。ヴォルケンリッターのリーダー」
「いや、そういうわけではない。ただ信じられないのだ。ベルカの戦場で『常勝不敗の王者』と呼ばれた者と会えるとは」
「……俺にその名を名乗る資格はないよ。まあそれは置いといて、お前らの目的はなんだ?」
「魔力を蒐集し闇の書を完成させ、主に大いなる力を持たせる事だ」
力を持ってどうするっていうんだよ。ただ力を与えられた奴の末路なんて悲惨な物だぜ?力に呑み込まれれば、その力を振るう目的もなく力を振るってしまえば、それはただの暴君と変わらない。
「……ふ〜ん。そんな物いるのか?ぶっちゃけお前ら一騎当千のベルカの騎士がいれば十分だろ?なんでそんな事になってる訳?」
「そこまではさすがに……。そういう設定になっているとしか」
「お前、いい加減にしろよ!そんな設定になって、狙われるのはお前らじゃない!はやてなんだぞ!お前らだって万能じゃない!そんなんで救えなかった時、どうするんだよ!?」
「なっ……」
クソッ!イライラする!こいつらはあの頃の俺みたいだ。力があった自分に酔いしれて、結局守りたいと思った誓いも守れず、大切な人を泣かせてしまった俺みたいじゃないか!
「どうしたん、一誠くん?」
「……ッ!八神、起きたのか」
「うん。ところで……この人たち誰なん?」
「自分で聞けよ……。ほら、お前らの主だぞ。挨拶ぐらいちゃんとしろ」
駄目だ。今の俺じゃ熱くなり過ぎる。ちょっと外に出ておこう。このままじゃ駄目なのに、それを分かっているのに……それでも尚引きずってしまっている自分がいる。俺は一体、どうすればいい?
「どうすればいいんだろうな?○○○……」
初めて吐いた弱音。今まで自分を律してきた。……いや、逃げてきた。もう考えないようにしていた。だって怖いから。あの時の事を思い出すだけで胸が張り裂けそうになる。死んでしまいたいと思うほどに。
友との約束を裏切り、守ると誓った誓いも果たせず、大切な人を悲しませた。そんな自分を許せなくなる。自分に殺意を覚えるという言葉を実感する。そう思えてしまうほどに……自分が憎い。
俺は、二度と過ちを繰り返さない。そうあの場所で誓った。見守っていてくれ……そんな甘っちょろい事は言わない。でも願わくば……。
「この思いを、この誓いを裏切りたくない。こんな俺を友達だと言ってくれる、あいつの為にも」