あれから管制人格を目覚めさせ、八神の防衛に回したらしい。さすがに場にいずらかったから俺は帰っていた。それにその場にいたとしても、夜天と顔を合わせる覚悟が俺にはない。みみっちい野郎だな。とは思うんだが、どうも身体が動かない。
残りのページも数十ページにまで至ったらしい。呪いの事を知った八神は俺に完成した時に、その呪いの解除を頼んできた。まあ確かにできないではないし、やる事自体もやぶさかというわけではないから別段構わないだろう。
とある夜、異様な術式の発動を感知した。異様と言ってもその内容はただの結界と人払いを合わせただけみたいだったが。単純に知らなかっただけなんだが、気になって行ってみた。ついた場所は廃工場らしき場所だった。
「なんでわざわざこんな誘拐の定番みたいな場所を選ぶのかね?正直理解に苦しむわ」
『わざわざ誘拐なんて事をする輩の気持ちがわかったら、それはそれでまずいとは思うがな。所詮はその程度の手段しか取れないような輩なんだからな』
「ずいぶんと辛辣だな。どんな物であれ勝ちは勝ちになると思うが、お前的には気に入らないんだろうな」
『当然だろう。そんな事をしてまで勝って嬉しいのか?』
「俺たちみたいに覇道を求める奴らでもない限り、真っ正面から戦うのは愚の骨頂だろう。しょうがないと言えばしょうがないんだろうが……」
気にいらないな、確かに。でもまあどうしようというのだろう?強さがあったって、やはり才能の差という物も実在する。それは確固たる事実。生まれついての強者に勝つというのはわりと無理難題だ。
「さてと、なんか勝手をされても嫌だし介入するとしようか」
転移術式構築……完了。
光輝の鎧を纏う。裏業界の連中は赤龍帝の力をちゃんと認識している。その力の膨大さ故に、萎縮してしまって話にならない事があったりする。面倒な例だと喋りかける度に謝罪されたことがあった。そういう事も気にかけなきゃならんとは……面倒だ。
「それじゃあちゃっちゃっと済ませるとしようかな」
ついた場所は……火の海だった。いきなりこんな事を言われても、お前何言ってんの?とか思うかもしれんが、事実その通りだったんだからしょうがない。しかもこの炎、ただの炎じゃない。魔力で構成されている。しかし蒸し暑いな、此処。掌に炎をまとめあげ、浮かせておく。これが爆発したらこの周囲一体を吹き飛ばす自信があるな。
火が完全に消えると、そこには少女が三人にその他拳銃などの武器の類を持った男たちがたくさんーーーー大体14〜5人って所かな?まあ人攫いするならこのぐらいはいるのかな?
「……てめぇ、何者だ?こいつ等の仲間かなんかか?」
「……何の話だ?」
「とぼけんじゃねえ!てめえもこの月村と同類の化け物かって訊いてんだよ!」
男が指さしたのは紫色の髪の子の女の子だった。気配的に見て……吸血鬼か?でもツェペシュとカーミラの縁者って感じでもなさそうだな。あいつ等特有の不気味な感じがしないし。俺が黙っていると話しかけてきた男が拳銃を向けてきた。
「さっさと答えろ!いつまでも黙りこんでじゃねえぞ!舐めてんのか?」
俺は拳銃ごと男の手を握り思いっきり力をこめた。すると拳銃と一緒に手も粉々に砕けた。複雑骨折とか言うレベルではなく、文字通り砕けたという表現が当てはまるくらいに骨を破壊した。
「……まったく、笑わせるな。その程度の得物しか持ってないくせに向かってくんじゃねえよ」
「……お前っ!」
「たかが吸血鬼風情に何を恐れる?血を吸う事か?人間ではありえないくらいの身体能力を持っている事か?
ーーーー馬鹿馬鹿しい。お前等は蚊を恐れんのか?お前等は野生の生物を恐れるのか?お前等が言っているのはその程度の事だ。
知ってるか?世界で最も恐ろしい化け物ってのは人間なんだぜ?魔物を殺し、悪魔を殺し、堕天使を殺し、神を殺す。英雄などと呼ばれる化け物がいる癖に何寝言を言ってんだ?」
「この世界に英雄なんているわけねえだろ!」
「結局俺が言いたい事はさ。お前等の格は知れちゃってるって事さ。それにその程度の玩具で俺を殺せるとでも思ってんのか?それなら傑作だな」
実際俺の体に弾丸なんて効きゃしない。常時展開型の防御用の魔方陣が勝手に弾いてくれるからよける必要は無いしな。呪術対策もしていない、ただの弾丸なんて尚更だね。それでも撃たれるとうるさいから撃たれないにこした事はないんだけど。
「ーーーー『
鎧にうっすらと蒼色が浮かびあがる。水を統べる大天使にして月の守護者であるガブリエルの力をこめる手始めに収束させていたさっきの炎を当てて天井を吹き飛ばし、工場全体に月の光を降り注がせる。月を司るガブリエルの力をより強力にする為だ。
「このヤローーーーッ!?」
「な、なんで弾が出ないんだよ!こんな時に故障か!?」
「馬鹿野郎!全員分が一気に故障する訳がないだろ!」
「……お前、何をしやがった?」
「自分で確認しなよ。拳銃がどうやって弾丸を飛ばしているか、なんて事はさ。分かりきってる事でしょ?」
「まさかーーーー!?」
「そう、そのまさか。全ての弾丸に込められている火薬を湿気させて、炸裂しないようにしただけだよ。理屈としては単純なことだろう?」
「この……化け物が!」
「勝手にほざいてろ」
腕を薙ぎ払い、男たちを吹き飛ばす。止めを刺そうか考えこんだが、やめておいた。無益な殺生をする必要はないだろう。そう思って少女に近付こうとすると、白衣を纏いながら気持ちの悪いーーーー下卑た笑顔を浮かべている奴がいた。
「くっくっく……私も運が良い。良質な実験材料が自ら現れてくれるとはな。しかも魔術師もいるとは嬉しい誤算だな」
「……あんた、誰?」
「実験材料となる者に名乗る必要などあるまい。化け物がこの世に存在して良い筈がない。貴様は未だしも吸血鬼などという存在はな。人を畜生と同レベルで見ている者を捕まえて何が悪い?むしろ化け物退治をやっているのだ、感謝こそあれど咎などあろう筈がない」
「……それで?お前程度がどうやって俺を捕まえる気だ?用心棒らしき雑魚は全員そこで寝てるぞ」
「くっくっく……あの程度の金に釣られる様な連中にはそもそも期待してなどいない。君たちの相手をするのは私の最高傑作さ」
そう言った後に後ろから現れたのは、兎に角いろんな動物をぐちゃぐちゃに混ぜ込んだ様なそんな気持ちの悪い生物というのもおこがましい物だった。
「
「それはどうだろうね?」
その物言いにムカついた俺は氷の槍を五本作り出して串刺しにした。人間をベースにして作ったからか、心臓などの重要器官を貫いた。がーーーーその傷は煙をあげながら修復し続けた。そして暴れまわり氷の槍を破壊した。
「そんな、嘘でしょ!?」
「クククッ、ひゃーはっはっはっは!どうだね、私の
「……ハァ。この程度か?この程度でそんな大言壮語をべらべらと喋ってたのか?高々復活するだけの生物が強い物かよ」
「なんだと?……クククッ、負け惜しみかい?自分で倒しきれなかったからと言って負け惜しみはいけないな」
「まあ確かに?今の攻撃ならいつまでやっても倒しきれないかもな?……でも、誰が今の攻撃が俺の全力だなんて言ったんだ?」
「一体何を……」
「ーーーー
『Welsh Dragon Balance Breaker!!』
「そんな、馬鹿な!
「よくその程度で吠えたな、雑魚。たかが
「くっ!こんな所で!」
キメラが殴りかかってくるが、掌で受け止めきれるレベルだった。腕力は下位のドラゴンレベルはあるのか。まあ抵抗できない一般人程度なら楽勝だな。
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』
「まあ、恐れるにはまったく値しないな。再生するなら生き返らなくなるなるまで殺し続けるか、再生しても絶えずダメージを与えてれば死ぬだろ。まあ、それも酷かな?」
受け止めた拳を握り潰し、逃げ出す前に脚を踏み潰し行動できなくさせる。そして『
「主よ、今この者を救済し、罪深き者に断罪の鉄鎚を下し給え」
その剣を振り下ろし、キメラを真っ二つにした。そしてまた再生するかーーーーと思いきや、その考えは簡単に打ち砕かれた。
「再生、しないーーーー!?」
「馬鹿な!そんな筈はない!赤龍帝!貴様、一体何をした!?」
「……一神教であるキリスト教では神は全能を象徴する。そして天使長であるミカエルはそれに届きこそしないが、同等の力を持っている。ミカエルの直訳は『神とはどういった者か』だしな。そして神は聖なるものの象徴。滅ぼせない訳がない」
「龍の分際で聖なる力を振るうだと?聖書において、龍は邪悪な者の象徴だろう!そんな物を宿す貴様が、聖なる力を使える訳がない!」
「さあね。そこまでは知った事じゃない。それにあんたが考える必要はないさ。……ここで死ぬんだからな」
「くっ!こんな所でこの私が死ぬわけにいくものか!」
馬鹿なマッドサイエンティストは魔物をばら撒きながら壁にしていた。腕を振るうだけで全部バラバラに砕け散ったが。ただの肉壁だな。こいつ等も無残な事この上ないな。追おうかと思ったが……その必要はなかったみたいだな。
俺が縛られている三人組に近づくとすごく警戒されていた。俺、そんなに怖いかな?……怖いな。普通に次々と魔物を頃してれば怖がられもするか。しょうがないな。
「ーーーー
縛っていたロープの一部分だけ焼いて解放した。長時間そんな状態でいたのか、神経が痺れて動けないみたいだが。なんか金髪の子がこっちをやたらと睨んでくる。
「……あのさ、睨んでくるの止めてくれないか?」
「あんたがせめて顔を見せてくれるなら、考えても良いわよ。大体、あんた何者よ。いきなり来て意味わかんない事言ってるわ、起こすわでもう訳が分からないわ」
そう言われてはしょうがないと思って、
「分かる必要ないだろ。好奇心は猫をも殺す。不必要な事に首を突っ込む事は、自分の命を縮める結果になるだけだぞ」
「たとえ不必要な事であっても、私は知りたい。自分だけが除け者だなんて事は私は嫌いなのよ。たとえそれがどれだけ危険な事であったとしてもね」
「ふ〜ん……今時珍しい考えを持ってるね。まあ、俺が語っても良いんだけどさ。そこのお嬢さん方はさせてくれないだろうし、もう時間切れだよ」
「すずか(アリサお嬢様/シエナ)!!」
「お姉ちゃん(鮫島/お父さん)!!」
「一誠くん。君も来ていたのかい?」
「ええ、まあ。それで高町さん。白衣着た変な奴見ませんでした?」
「え?ああ、外に縄で縛りあげて放ってあるけど……それがどうかしたかい?」
「いえいえ、それだけ分かれば十分ですよ。あいつは俺の獲物なんで、この手で殺すと決めてあるんですよ。それでは」
地面を思いっきり踏みつけて、廃工場の入り口に着地すると二人のメイドさんに監視されている、あのマッドサイエンティストが縛られていた。俺を見た二人が不審そうな視線を向けていたが、監視付きで構わないから話をさせてくれと言うと納得してくれた。
「よぉ。無様をさらしてんな。俺らの事を実験材料とか言ってた奴にはピッタリだけどな」
「……フン。貴様のような化け物と相対するとは。私も不運だったようだな」
「知るかよ。たくさんの者を実験材料にした自分の所為だろ。……それにしても人が変わったな、あんた」
「こんな状態になれば諦めもつくという物だ。……ところで貴様、お前の後ろにいる二人が何者か知っているか?」
「知らねえよ。あのな、俺からすれば身体が人間だとか、人間じゃないとかどうでも良いんだよ。要は心の持ち様なんだからな。
俺は人間だ。人間と在らんとし、人間であろうとして生き続ける限り俺は人間だ。それは誰にも否定させないし出来ない。要は俺の心次第だからな。
だが、俺は同時に化け物だ。全ての生物の頂点に立ち、ありとあらゆる者をなぎ倒す力を持っている化け物だ。ああ、確かに。お前の言ってる事は正しい。だが覇道を極めるっていうのはそういう事だ」
「ふん、私には分からんな。私にとって人外は全て化け物だ。悪魔は人を欲に誘い、堕天使は神器所有者を殺している。教会の者たちも危険な思想を持つ者が多い。
赤龍帝、何故お前は人外の存在を肯定できる?ここに来ている者たちもそうだ。何故人外の仲良くできる。いつ自分たちに牙を向けるか分からぬ者を何故信用できる」
「俺にとっては誰でも一緒だからだが……人となりを知っているからだろうな。ツェペシュとかカーミラの連中に比べれば、ここの連中は信用できる。もう少し、あんたは他の者と関わりを持つべきだったな。あんたがこの先どうなるかなんて分かんねえけど……次は真っ当な人生を歩むんだな」
「くっくっく。……まあ、無理だろう。正直、私は人外などおらずとも人は生きていけると思っている。神に頼らずとも人は生きているし、悪魔に頼らずとも生活できるのだからな」
「そうかい。……じゃあな、
「じゃあな、
なぜか敵役の方が際立っている……。アリサはまだしもすずかとシエナが空気。ど〜しようど〜しよう(遠い目
そんなこんなで物語は進んでいます。とりあえずこれで大体の主要キャラと関係を作る事ができました。ちなみに一誠が最初に入った時火の海だったのは、シエナが魔法を使ったからです。それではまた次回!