時は満ちた。夜天の書の蒐集が完了し、俺は八神に呼びだされた。八神もそこそこ魔術の運用が出来るようになったから、連絡用の術符を渡しておいた。
さすがに地球でやるのは気が引けたので、近くの無人世界での作業となった。だがそこにはーーーー
「これ、何人ぐらいいるんだろうな?」
「さあな。だが、どちらにしても我らの邪魔をする為に集まったと見るのが妥当だろう」
「邪魔くせえな。たとえばれてたって、管理局がなんでこっちの動向をばっちり把握してんだよ」
「やっぱり一誠くんが言っていた監視していたのって、やっぱり管理局の人間だったのね。……でも何の目的で?」
そう管理局の魔導士が大体一個中隊レベルかな?まあ、とにかくそれぐらいの数がいた。別に恐れるには値しないんだけど……儀式の邪魔をされると面倒だ。さっさと鎮圧するとしよう。
「夜天、全員を下がらせろ。
「あれを、か?……分かった。だが無理だけはするなよ」
「分かっているさ。これから大事が待ってんだ。この程度の雑魚に拘っている程の余裕はない。ーーーー一撃で全員を撃墜する」
ちなみに俺はバイザーをつけているから、相手に顔は見られていない。別に見られても構わないんだが、面倒なこともまた事実。さっさと意識を奪って終わらせるとしよう。
俺の全身から鎖が軋む音が聞こえる。その音はだんだん大きくなり……砕け散った音が鳴り響く。そして俺の胸元から一本の剣がせり出てきた。それを握り、一気に引き抜く!
「あれは……なんだ?まるで私のレヴァンティンのようじゃないか」
そう今俺が握っている剣は、シグナムの使うレヴァンティンをさらに荘厳にし実用的な面をより大きくした一本だ。
「烈火の将、『紅の魔人』という言葉に聞き覚えはあるか?」
「なんだ?藪から棒に……その者の腕の一振りは戦場の全てを焼き尽くし、ありとあらゆる戦術は意味をなさないと言わせ占める程の戦略破壊級の生物だと聞いたが……まさか!」
「そう、それは兵藤と今あいつが持っているレーヴァテインの事をさしている。あいつの攻撃により甚大な損害を受けた指揮官がそういう噂を流したのだ」
「なぁ、リインフォース。あれはどういうもんなん?そんな事を言われたかてよく分からへんのやけど……」
「主はやて、あれのコンセプトは『リンカーコアを持たない者でも、魔法を使えるようにする』という無理難題にも程があるという代物です」
「じゃあなんで、一誠くんは使えとるん?そんな無理な事を実際に使えとるって事は、他の人にも使えるいうことやないん?」
「あの剣はリンカーコアから発生する魔力の代わりに、生命力などの類を消費します。つまり本来は使い続ければ、寿命を使いきって死んでしまうのですが……何故か兵藤はその様な事がないのです。
それとあれはSSランク級のロストロギアに分類されます。当時はそういった区分はなかったので、ただの骨董品のような扱いだったようです。それでもあれは最大出力で放てば、世界を焼き尽くせる程の威力が出せる……らしいです。誰も確かめた事はありませんが」
「それじゃあさ、さっきの鎖が軋むような音はなんだ?まるであの剣を封印しているように見えんだけど」
「あの剣は際限なく、力を生み出し続ける。それはまるで呪いのように力を生み出し続ける所為で、凄まじい速度で生命力を吸い上げるので生み出された封印術式……だそうだ」
「……何故さっきから不確かな返答なのだ?」
「全部兵藤から聞いた話だから、私も詳しい事は分からないんだ。烈火の将のレヴァンティンはあの剣をモチーフとして、最初の夜天の主が作った物だ。それだけ、破壊力では誰にも遅れを取らない力があるのだ」
これを最初に持った時は驚いたな。俺の魔力をぐんぐん吸い上げて来るもんだから、惚けてたら○○○○に叱られたんだよな。懐かしい思い出だ。ちなみにさっき言った戦場を焼き払った時は15%程度の出力しか出なかったのに、めっちゃくちゃ疲れた。
このレーヴァテインは何かは知らないが特殊な鉱石を使って作り出した物のようで、リンカーコアからの魔力ではなく、保持者の魔力を使っているらしい。俺以外の所有者が持たなかったのは単純に、魔力がただ漏れで足りなくなった魔力を生命力で補っていたらそうなっただけ。
「くっ!また厄介な物を出した物だ。だが、ロストロギアの不法所持の罪で君を逮捕させてもらう!」
「おやおや、クロノ執務官。あんたはこの剣の事をよく分かってないみたいだな。こいつはお前らが言うところの寄生型ロストロギア。こいつを俺から無理やり引き剥がせば、俺は死ぬ。それは夜天の書ーーーー闇の書も同様だ。お前らにその覚悟はあるか?無理矢理人の命を奪い、こいつらを奪う覚悟が貴様らにあるのか?」
「それによって犯罪を犯すのなら、僕たちにはそれを止めなきゃならない義務があるんだ!」
「ハハハッ!……笑わせんなよ。自分の組織もきちんと制御できないような奴らが、人様のやろうとしている事に首突っ込もうとしてんじゃねえよ。勘違いも甚だしいってもんだぜ?」
「闇の書を完成させる事がどういう事か、分かっているのか!?それが完成すれば、世界の一つを呑み尽くすんだぞ!」
「だからそれを終わらせにきたんだろう。夜天の呪いは今日、この日をもって終わりを告げるのさ。邪魔するようなら……殺すぞ?」
「この……っ!」
「クロ坊、これ以上は無理だよ。あいつはこっちの言い分なんて聞く気はないんだ。犯罪者なんて皆そんな物だよ」
「おいおい、ほざくじゃないか猫さんよ。こっちだってあんた、否あんたらに襲われてんだぜ?自称正義の味方のする行動とは思えないな。……まあ、でも?これ以上は平行線だっていう意見には賛成だな、っと」
飛んできた魔力弾を斬り裂き、続く第二射も回避する。喋ってる途中に撃たれるって言うのもどうなのかね。まあ、別に気にする程の事でもないから別に構わないんだがな。
「ロード……カートリッジ。ブレイズ・アイン」
レーヴァテインに内蔵されているカートリッジ射出口から、通常のカートリッジの2〜3倍以上の大きさのカートリッジが出てくる。同時にレーヴァテインから出ている炎の大きさが赤色を通り越し紅色に変化し、超高熱を纏っていた。
「ーーーー
剣の軌跡に従い、直線かつ拡散するように超高熱の炎の砲撃斬撃が正面に展開する管理局の魔導士たちを攻撃もろとも焼き尽くした。とはいえ、死ぬ程ではなく重くても重傷が精々だ。なんせカートリッジに内蔵されている魔力しか使ってないからな。しかも
「ぐっ……。どういうつもりだ?」
「何が?」
「何故手加減した?全員が生き残る様に配慮してくれたのは、感謝する。だが、君ほどの実力の持ち主なら、殺す方が容易い筈だ。それなのに」
「あのさ、何を調子乗ってんの?そりゃ、あんたの言うとおり俺にとってあんたらの命に価値なんてないよ。でもどうするかなんて事はこっちの勝手だろうが。それに敗者が吠えんなよ。敗者は黙って勝者の選択に従えば良いんだ」
「…………」
「後さ、そこの猫さんやい。復讐かなんか知らないけどさ、先代の呪いを
「違う!私たちは、闇の書を封印する為に!」
「その為に殺すって?正義の名前が聞いて呆れるな。たとえどんな過程を経ようとも、あんたらは殺そうとしていた事に変わりはない。それに監視なんてしている暇があったのなら、何か方法を考えていれば良かったんだよ。蒐集活動を止めようとしなかった時点で、あんたらに俺たちのやった事を否定する権利なんてないんだよ」
「子供に一体何が分かるって言うのよ!お父さまの苦しみがあんたなんかに分かる訳がない!」
「そりゃそうだ。人殺しのしようとしていることなんて分かるもんかよ。何様だよ。……まあ、もう俺の言いたい事なんかない。精々後悔でもしながら野垂れ死ね」
「悠久なる凍土ーーーー
凍てつく棺の内にて、永遠の眠りを与えよ。
ーーーー凍てつけっ!」
『Eternal Coffin』
「何?ーーーーっ!」
声が響くと同時に足元から徐々に凍りつき始めやがった。凍結の魔法、しかもこの感じ……届いてはいないが間違いない!
「コキュートスの凍結封印だと?洒落た真似をしてくれるじゃないか!」
「すまないが、ここで君には倒れてもらう。大幅な計画の変更はあったが、それでもここで終わりにするとしよう」
「あんたが猫さんの言うお父さまとやらか……!あんた腐ってんな!さすがは“自称”正義の味方だ!まさか人間相手に上位の凍結系の封印魔法をぶつけてくるなんてな!」
「ロッテとアリアから君の事を聞いたからね。手加減の効く相手ではないと分かった以上、私も全力でいかせてもらうさ」
「なるほどね……。訂正させてもらう。確かにあんたは良いな!復讐という感情で腐っちゃいるが、それを上回る潔さがある。驚嘆と尊敬に値するよ!」
「ふむ……こんな私にそこまでの賛美痛みいると言ったところかね。……だが、この会話もここで終わりだ。名残惜しくは有るが、後にははやて君たちも行くだろうから待っていてくれたまえ」
「は?……ああ、なるほどなるほど。名前は知らないが、おっさん。それは違うよ。俺がこの程度の氷の中で眠れる訳がないだろ。こいつだって、本領はこんなもんじゃないんだからな!
ロード・カートリッジ!ブレイズ・ツヴァイ!」
レーヴァテインからさらなる炎が吹き出し、競り負けていた炎が爆発的な威力を放出し氷を溶かしていく。しかし相変わらず凄まじい威力だよな。限定状態なのに。この剣は北欧神話に登場する神剣のレーヴァテインをモチーフにしている。完全開放状態で放てば、文字通り世界の全てを焼き尽くす。その神話の焰をたかが魔法の氷如きで抑えておける訳がない。
「馬鹿な……闇の書を封印する為に作り出した術式が負けるなど、そんな事があり得る筈がない!」
「世界をまるまる焼き尽くす業火を持っているのがこいつだ。たかだか封印魔法如きに負ける筈がない。……さておっさん、覚悟はできてるか?」
俺の思いに、猛りに応えるかのようにレーヴァテインから放出される炎が強くなっていく。おっさんも諦めたのか、ただ黙するだけだった。猫さんたちーーーーロッテとアリアが俺を止めようとするが間に合わない。凶刃が振り下ろされる寸前だった。
「止めて!!……一誠くん、もうええよ。グレアムおじさんを許してあげてえな。ウチはもう恨んでへんから」
「殺されそうになったのに?そりゃ、俺からすればどうでもいい存在さ。でも後顧の憂いは断っておくべきだろう?……いや、お前が良いならいいよ。もう手は出さない」
俺はレーヴァテインを仕舞って、八神たちの元に向かった。あのおっさんに言う事なんて何もない。はっきり言って復讐しようが何しようが俺にとってはどうでもいいことだ。それに知り合いが巻き込まれていない限りは。だが、そいつが良いって言うなら手は出さない。出すべきではないのだから。
「さあ、夜天。終わりにしよう。ベルカの……夜天の呪いに終焉を与えよう。ナハトヴァールを出せ」
「ああ」
夜天の左腕に現れたのは、のたうつ蛇の様な物が絡まる籠手だった。ナハト、ここで終わらせよう。お前がその身を血で濡らす必要はもうないのだから。
『