俺が倒れたのは、単純にレーヴァテインを使用した事による魔力の過剰使用とブレイズカートリッジの反動だ。ブレイズカートリッジは普通のカートリッジの2〜3倍の大きさがある代わりに、通常のカートリッジの数倍の魔力が圧縮して込められている。そんなの反動がでかくてもおかしくはない。
だがそんな事を知らない八神たちは慌てて地球に戻って検診をしたらしい。ただの魔力の過剰使用と疲労だと分かると逆に怒っていた。そんな事言われても困るんだがな……。
そんなこんなで迎えたクリスマスイブ。聖夜と呼ばれる今日もいつもと変わらず、八神の家でだれたり夜天やヴォルケンリッターと喋ったりしていた。俺は慣れているから夜天、と呼ぶけどヴォルケンリッターや八神はリインフォースと呼ぶ。それはどうでも良いんだが、八神が何かを思い出したかのように話しかけてきた。……だいぶわざとらしかったが。
「一誠くん、クリスマスパーティに行かへん?」
「クリスマスパーティ?」
「そや。うちの友達にすずかちゃんって子がおるんやけどな。すずかちゃんの友達の子の家の人が毎年やってるらしいんよ。それに誘われたんやけど、一誠くんも行かへん?」
「何故そんな関係もなさそうな人のところに行こうとするのか分からん。大体向こうの人だって迷惑だろう。いきなり知りもしない奴に来られたりなんかしたらさ」
「う〜ん、でも予定が合うようやったら誘ってもええか?って聞いたら、大丈夫って返事が来たらしいで?多分、大丈夫やろ」
「んな適当な……。まあ、いいか。分かった。もちろんヴォルケンリッターは連れていくんだよな?わりとお前の立場は怪しいからな」
「その言われようはあんまりやけど、分かっとるよ。魔力の蒐集をして貰ったんや。それがあかん事やって分かってても、やってもうたんや。しゃあないやろ」
「分かってるなら良いけど。いいか?人間は万能じゃない。万能なのは唯一神と呼ばれている奴だけで良いんだ。不完全であるが故に、俺たちは繋がりを求めるんだからな」
う〜ん、俺は何を説いているんだ。俺は宗教家か。って話だよ。まあ、楽しめる時に楽しんでおいた方がいいだろう。
「……それで場所は?」
「それはな、ケーキがめっちゃ美味しいところやで。場所は見てのお楽しみや」
そんな意味深な返答をされ、待つこと数時間。夕方になり、八神曰くケーキのめっちゃ美味しいところに向かっている最中、ヴィータがすごく顔を緩ませているのを見た。
「楽しそうだな、ヴィータ。アイスが出るわけでもないのにさ」
「料理もギガウマだってはやてに聞いたからな!楽しみなんだ!一誠は違うのか?」
「ん〜……まあ、甘いもんもご無沙汰だったし、久しぶりに食ってみるのもいいかもしれないな。それで夜天は何故さっきからそわそわしてるんだ?」
「い、いや、今までパーティなどした事も行った事もなくてな。ちょっと緊張しているだけだ」
「アホか。王宮とかで開かれるパーティじゃないんだ。もっとラフな感じで良いんだよ。今からそんなガチガチに緊張しててどうすんだよ?」
「ひょ、兵藤はまったく緊張してないんだな」
「俺は王宮で開かれるパーティにだって出た事くらいある。それに比べれば、こんな民間で開かれるパーティに緊張なんてしないっての。堅苦しくない分、こっちの方がはるかにマシだっての。
知ってるか?王宮のパーティの食事ってあるだけでそんなに取れないんだぜ?大体は踊っているか、喋っているか、酒飲んでるか。この三択しかやってないしな」
「そんなに嫌いだったのか……」
「と言っても、俺は好き勝手食ってたけどな。要するに面倒な事が多い、という事さ。気にする程の事でもないんだ。今は忘れて楽しめよ」
「……ああ、そうだな。精々そうさせてもらうとしよう」
「着いたで〜。ここがパーティ会場の『翠屋』や!」
「ああ、やっぱり……」
俺たちの目の前にあったのは、言わずとしれた喫茶店『翠屋』だった。いや、まあ、ね?何となく分かってはいたよ?ケーキの美味しいところなんて、そう多くはないんだからさ。でもさ、ここまでドンピシャじゃなくてもいいんじゃない?しかも覚えのある気配もするし。何やってんだよ、あの人たち。
「?どうしたん?一誠くん」
「いや……何でもない。ただこの世は思うがままにはいかない事もあるんだな、と改めて実感していただけだよ。ほら、お前が先に入らないと俺たちが入れないだろ?」
「あ、うん。それじゃあ……」
そして入っていった俺たちの目の前にいたのは、出来上がっている大人たちとまるで現実逃避のように喋っている子供たちという絵面だった。しかも大人の中には、紅髮の人とかつい最近見たばかりの人たちもいた。
「あ、はやてちゃん!シャマルさん!」
その光景をぼけっと眺めていたはやて家一行は声をかけられる事でようやく復活した。そんなにショックだったんだ……。酒場に行けばざらな光景だけどな。俺の姿を見た少女が今度は固まった。
「……すずかちゃん?どないしたん?」
「…………」
「どないしよ、一誠くん。すずかちゃん、固まってもうたわ。っていうか、一誠くんって、すずかちゃんと知り合いなん?」
「知り合い以上友人以下って感じかな?八神、悪いが俺はあそこに突っ込まなきゃいけないから先に楽しんでおいてくれ」
「わ、分かった。気を付けてな」
「ああ」
まっすぐ大人の集団に向かっていく俺を見て本気?みたいな視線を向けてくる奴が何人かいるけど、失礼な奴だな。まあ、そんな事がどうでもよく感じる程に俺はあの人たちに聞きたい事があるんだ。
「こんなとこであんたたちは何をやってるんですか?サーゼクスさん、アザゼル、ミカエルさん。っていうか何でセラさんとガブリエルさんまでいるんだ……」
「「「「「一誠くん(さん/兵藤)」」」」」
「グレイフィアさんは……もう潰れてるし。そんなに酒に強くないんじゃなかったか?無礼講って事で飲ませたか?どうもそれっぽいな」
「あはは〜♪一誠くんだ〜♪久しぶり〜、もう寂しかったんだよ?」
「ちょっと酒臭いんで離れてください。ほら、これ水」
「ありがとう〜……って、苦っ!?」
「そりゃただの水じゃありませんからね。とびきりキツい酔い覚ましの薬を溶かし込んだ特製水ですからね。……さて、他の連中にも飲み込ませるか」
懐からペットボトルを取り出してお猪口のような物に注ぎ、酒だと思わせて飲ませた。被害者続出中……人間の大人にも飛び火した。その光景はさながら、学級崩壊した学校のようだった。
「おい、兵藤!あれを早くなんとかしろ!青い顔になっている人までいるぞ!」
「え?なんで?こんなに面白いのに。止めるなんて嫌だよ」
「そんなにストレスでも溜まっているのか!?早く本当のお前を取り戻せ!お願いだから!」
「ええ〜……しょうがないなぁ。夜天のお願いだから聞いてあげるよ。
指を鳴らしながら、ごく小規模で力を開放した。癒しを司るラファエルの力で大人の身体の調子を整え、疲弊した体力も回復させた。まったく面倒な事をさせてくれるな。若干3名程苦しんでいるが知ったことではないのだ。
「い、一誠くん、これは何かのイジメかね?全身が痛いんだが」
「さてね?ここに来た理由も話さずに酒飲んで楽しんでたんですし、いい気味じゃないですか?」
「そ、それは謝るから、何とかしてくれないか?私はともかくセラフォルーとグレイフィアは……ね?頼むよ」
「……ハァ。しょうがないですね。……はい、おしまい」
手を叩いて鳴らすと、青色の波動が波のように広がって全員を包み込んだ。体力回復の魔法陣と体調整理の魔法陣をぶつける事で少し効果は落ちるものの、全員に効くようにした。
「ふむ……さすがは赤龍帝だ。私も見たことのないような魔法を軽く扱ってみせるとは……やはり素晴らしい」
「ああ、いたんだ。起きぬけに魔法の考察とは、やっぱりあんたも魔法使いって感じだな」
「一誠くん。魔法って秘匿される物やないんか?」
「え?秘匿する必要があるような面子じゃないし、別に構わないだろ」
「え?いやいや、なのはちゃんとかアリサちゃんとかすずかちゃんとかおるやろ」
「裏事情を知っている奴に、砲撃魔法をばかすか撃つ様な魔法使いを俺は一般人とは呼ばん。……管理局の面子までいるし?俺的にはさっさとここを出たいんだけど……離してくれないし」
なんかガブリエルさんに捕まって後ろから抱きつかれている。俺はマスコットかなんかか!なんかセラさんも羨ましそうな目でガブリエルさんを見てるし、他の面子はニヤニヤしてるし、喧嘩売ってんのか!?
「ちょ、ちょっと一誠くん!髮の色が……」
士郎さんが俺の方を指差していたので何かと思ったら、俺の髪が普段の茶色っぽい色から赤色に変わっていた。ああ、あいつ今この辺にいるんだ。
「……ああ、グレートレッドがこの辺の次元の狭間を通ってるんでしょ。その影響ですよ」
「……どういう事だい?」
「それを答える為にはまず皆さんの認識を一つにまとめておく必要があるでしょう。まず俺が全世界の人外たちに何と呼ばれているか、分かりますか?」
「世界最強の化け物……でしょう?赤龍帝くん」
「ええ。確かに、俺はそう呼ばれています。ならばそんな莫大な力に人間の身体で耐えられるか。ーーーー答えは否。俺は自分の宿す力に耐える為にグレートレッドの肉体を素体として、俺の身体を作り上げた。俺は純然たる人ではない。俺は龍人に分類されるんですよ」
「悲しくはないんですか?」
「純然な人間ではなくなったことかい?いや、まったく。俺がグレートレッドと相対した時、すでに俺の身体はボロボロだった。グレートレッドから肉体を作らなければ、俺は今この場にいないのさ。
そんな俺を見て、全世界の人外の連中は言ったよ。化け物ってね。まさか化け物と呼ばれているような連中に化け物と呼ばれるとは思いもしなかったよ」
そんな俺の笑い声はどこか乾いていたらしい。まあ、俺自身も認めたくはなかった。でも仕方が無い。だって、それは真実だから。俺は最強の龍を相手にしても勝てる位で、グレートレッドとオーフィスを除いた誰もが俺と同じ地平には立てないんだから。
「……?どうかしました?」
「一誠くん、悲しいなら泣いても良いんだよ?この場所にいる誰も君を責めはしないんだから」
「そうだな。お前をそこまで追い詰めたのは俺たちの責任でもあるんだ。責めたきゃ責めれば良い」
「いらないよ。涙なんてあの場所に置いてきたんだ。だから俺は泣かない。……泣いてはならないんだから、ね」
「あの……場所?」
「そう。俺が古代ベルカと別れを告げたあの場所に」
「なぁ、一誠くん、聞かせてぇな。一誠くんが過ごしたベルカの時代の話を」
「……楽しい話じゃない。人間が本当の意味で簡単に死んでいく時代の話だぞ?本当にそんな話が聞きたいのか?」
俺がそういうと真剣そうな表情で頷いた。周りを見ても大体そういう感じのリアクションだった。俺は髪を掻きつつ、置いてあったコップに酒を注いで一気飲みした。アルコールが身体を巡って行く感じがする。
「それじゃあ話そうか。くそったれみたいに最低な男が過ごした古代ベルカのお話を」
今、新たな幕が上がった。
次回からは古代ベルカ編が始まります。今後ともよろしくお願いします。