覇王との邂逅
「それじゃあまず、どうやって俺が古代ベルカに行ったか、なんだが……こいつを使ったんだ」
俺が懐から取り出したのは、色褪せた宝玉。もはやかつての力はないが、それでも俺にとっては思い出が深い物だ。皆、この宝玉に関心があるようだな。
「こいつの名前は『時々満ちる刻の箱舟』。俺はこれをとある依頼で受け取り、向かった先が……」
「ベルカの時代に行った、と。それならこれは、時間と空間の移動を可能にしているのか?」
「そうだよ。……と言っても、決められた時代にしか飛べないしこれはもう壊れてるから使えないけどね。……それで俺が跳んだ先は古代ベルカの戦争の真っ最中の戦場。あんだけ大量の死体を見たのは初めてだった。」
「それで?それだけじゃないんだろ?その戦場で何があったんだ?」
「それはーーーー
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しっかし、ここは一体どこなんだ?戦争中なのは見れば分かるが……。
『相棒、あれは一体なんだ?』
「ん?……さっそく見つけたな。しっかし馬鹿みたいな量の魔力だな。遠見でも魔王クラスはあるんじゃないか?ドライグ、準備してくれ」
『分かった』
『Count Start』
「さて、俺も行くとしようかね。まずは景気付けに一発目」
魔力を収束させて放った魔力弾は確かに暴れまわっている奴に当たりはした。したんだがーーーー
「ありゃまったく聞いてないな。垂れ流している魔力で防いでいやがる。……いや、違うな。単純に魔力が威力を削ぎまくった結果、全然ダメージがないだけか」
俺は撃ったと同時に走りだし、現場に向かっていた。暴れまわっている奴の矛先は俺に向き、戦っていた連中は突然の援軍?に驚いていた。
「このモブ野郎!俺の邪魔してんじゃねえ!こちとらあの駄神の所為でこんな所に送られたんだ!精々、俺の憂さを晴らさせるのが筋ってもんだろうが!」
「また意味の分からん事を……。どんな場所であろうと、もう一度生を貰ったならそこで満足すれば良いだろう。何がそんなに不満なわけ?」
「こんな戦争ばっかやってる世界に転生して嬉しい訳がないだろうが!こうやって憂さ晴らしをやってねえと狂っちまいそうなくらいだよ!」
「なら、そうなる前に俺が殺してやるよ……!
『Welsh Dragon Balance Breaker!!』
「お前が誰かなんて知らねえし、何が目的なのかも知らねえが……しゃらくせえんだよ!
とんでもない量の魔力が集められてさらに圧縮されてやがる。なるほど、確かに魔王クラスの魔力を使用するなら最も効率の良い攻撃だな。でもなぁ!
「グレートレッドの全力の攻撃はそんなに甘っちょろくはなかった!あいつに勝った俺がその程度の攻撃で倒れる訳にはいかないだろうが!ドライグ!」
『応よ!天龍の力……見せつけてやれ!相棒!』
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』
大幅に倍加させ、力を増幅させて開放した。蒼い神狼の一撃と赤き天龍の一撃がぶつかり合った。その攻撃は拮抗していたが、にわかに蒼い神狼が押し負けていた。
「そんな!?この俺が魔力量で負けるなんて、そんな事あるはずがない!一体何をしやがったテメエ!」
「さあねえ……。まあ、言える事なんざ一つだけだ。ここまで好き勝手やった代価を払う時が来たってだけの話だ」
「なっ!?好き勝手やって何が悪い!俺は殺されたみたいなもんだろうが、それをまた殺そうってのか?ふざけんじゃねぇぇぇぇぇぇっ!!」
「へぇ。まだ上がるんだ。さすが、って所かな?でもなぁ……それがどうしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』
死にたくないという
「くっそぉぉぉぉっ!この俺がこんな所で、死ねるかぁぁぁぁぁぁっ!
俺の一撃は確かに命中した。手応えもあった。それなのに何故か目の前にいる奴は生きていた。それにさっき命中する寸前に言った言葉からして……
「肉体復元……。なら、魔力が尽きるまでその身体を破壊し続けるだけだろうが!」
「そんな簡単にやられてたまるかよ!おい、『サクラ』!もっと魔力を出せ!このモブ野郎を殺せるだけの力を!」
……?何言ってんだ?こいつは。まったく意味が分からん。そう思っていると、後ろから馬に乗った指揮官みたいな奴が現れた。さっさと逃げればいいのに何がしたいんだ?こいつは。
「あの男はユニゾンデバイスを使っている。気をつけてくれ。それとさっきの援護は感謝する。おかげで部下を引かせる事ができた」
「ああ、そうかい。忠告は感謝するよ。(ユニゾンデバイスとやらが何かは知らないが)用がそれだけなら、あんたも下がった方がいいんじゃないの?指揮官が前線に出ちゃダメでしょ」
「私にも王族としての矜恃がある。このまま任せっきりで何もせずに帰るなどという事はできない。それに……」
戦場に倒れている自軍の兵士の遺体を見回しながら、痛ましそうな表情を浮かべながら拳を握りしめた。
「私もこのままでは死んでいった者たちに示しがつかない。せめて一撃当てない事には、私も引くに引けないんだ。協力しては貰えないだろうか?」
正直、意外だった。俺の知っている偉い奴って神様か魔王……はそこまで偉ぶってないか。あるいは上級悪魔ぐらいの物だが、どいつもこいつも雑魚のくせに偉ぶってきやがった。その点、こいつは自分の地位に偉ぶらない。気に入った、と言っても良いだろう。
「良いぜ。それなら俺はお前の俺の剣であり盾となろう。あんたの障害は俺が切り裂こう。あんたの身は俺が守ってみせよう。だからあんたはあらゆる者を穿つ矛になれ!」
「我が身は矛、か……。面白い、面白いな。私はシュトゥラ国のクラウス・G・S・イングヴァルド。君の名を聞かせてもらえるかな?龍の騎士殿?」
「龍の騎士?そんな表現は初めてだな。俺は力の権化、ありとあらゆる者の頂点に立つ二天龍が一体、『赤龍帝』の兵藤一誠だ。行くぜ?準備は大丈夫か?クラウス殿下ァッ!」
「良いとも!我らが敵を葬り、勝ち鬨を上げようじゃないか!そうだろう?『赤龍帝』兵藤一誠!」
「何をごちゃごちゃと言ってやがる!テメエらは俺の欲望の糧になってりゃ良いんだよ!」
これが『覇王』クラウス・G・S・イングヴァルドと『赤龍帝』兵藤一誠が初めてコンビを組み、共に『転生者』ハルツィア・ノルドレイに戦いを挑んだ瞬間だった。