リリカルD×D~狩り人の戦記~   作:シュトレンベルク

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奪う事とは?

 

 

あれから俺はサクラとしっかり話しあった。罵られもしたし、怒られたり、泣かれたりもしたが……最終的には仲直りする事が出来た。

 

そしてあれから数日後、俺とサクラは戦場ーーーー正確に言うと蹂躙された街に来ていた。戦火の悲惨さを見る事も目的の一つだったが、一応生存者がいないかどうかの確認、及び残された死体の埋葬などをしようと思った。

 

「しっかし、何もないんだな。あんまり実感がなかったんだが……こういう事もあるのが戦争、か。中々世知辛いものだな」

 

「前のマスターは戦場で戦うことはあっても、こんな風に何も出来ない蹂躙するような真似だけはしなかったんだよ。まだ前のマスターの方が情があったってことだよね?」

 

「そうか。あいつは無辜の民には攻撃しなかったのか。そいつは確かにこんな風にする奴らよりも人道的だな。……とはいえ、戦場でのあれは弱いものいじめに近かったがな」

 

「うっ……マスターとしては原作に関わりたかったみたいなんだよ。でも、その数百年以上前に転生しちゃったから……それでも、最初の頃よりはマシだったんだよ?最初の頃は本気で自殺しかかってたんだから」

 

「原作、ね……。どんな内容かも知らないし、いつ起こるのかも知ったこっちゃないし、知らないけどさ。どうしてそんなに他人が作った物語に拘るのかね。

 

俺だってそういうタイプの人種はたくさん見てきたし、程度の過ぎる奴は潰してきた。1人自分が愛し自分を愛してくれる奴がいれば十分じゃないか?」

 

「マスター、それは確かに理想図だよ。でも自分の好きなキャラに会いたいって思ってるんじゃないかな?」

 

「そんなもんかねぇ……。ん?ちょっと待ってくれ」

 

贅沢な奴だと思いながら歩いていた時、微かだが声が聞こえてきたような気がした。微弱な魔力の波を放ち、その反応で人を探す。いわゆるソナーのような術を使い辺り一帯を探した。

 

「……いた!あそこの瓦礫の山の中だ!手伝ってくれ、サクラ!」

 

「分かったんだよ!」

 

俺は瓦礫の山に腕を突っ込み、引き抜く容量で瓦礫を後ろの方に吹き飛ばした。サクラには中の人に向かって声をかけてもらっている。そして三度目になると、ようやく金色の髪が見えた。周りの瓦礫をどけながらゆっくりと身体を引っ張りだした。

 

「ふぅ、大丈夫か?」

 

「え、あ、はい。助けてくれてありがとうございました!」

 

「礼なんていらない、って。それよりも助かってよかったな。俺は兵藤一誠。こっちはユニゾンデバイスのサクラだ。君の名前は?」

 

 

「ユーリ……ユーリ・エーベルヴァインです。よろしくお願いします」

 

 

これが俺と一度だけ知り合った彼女ーーーーユーリ・エーベルヴァインとの出会いだった。これ以上瓦礫の山の近くにいるのもあれだったので、まずは軽く離れた場所に移動する事にした。そして、なぜユーリがあそこにいたのかを聞いていた。

 

「たまたま滞在していたら襲われて家族と離ればなれに……とするとユーリちゃんの家族とはこの街で別れた事になるんだよね?そして行方も分からない、か……」

 

「あ、あのごめんなさい。いきなりこんな事言われても困りますよね」

 

「何も知らないよりは良いと思うけど?それにユーリちゃんはもう少し愚痴っても良いんだぜ?俺たちは気にしないしな。そうだろ?サクラ」

 

「うん!全然構わないんだよ!そう言えば、ユーリちゃんの家族ってどんな名前なの?」

 

「えっと……星光の殲滅者(シュテル・ザ・デストラクター)雷刃の襲撃者(レヴィ・ザ・スラッシャー)、それに闇統べる王(ロード・オブ・ディアーチェ)です!」

 

「なんて言うか……思っていたよりもすごいスケールの名前だな。しかも全部騒々しいな……。その名前をつけた奴は一体何を考えていたんだ?」

 

「さ、さあ?そこまでは……。そう言えば、なんで兵藤さんたちはここに?」

 

「一誠で良いよ。俺は戦争の傷跡って物を見にきたんだ。あと可能性は低いけど、生存者の救出も目的の一つかな」

 

「戦争の傷跡、ですか?」

 

「そうだ。戦争が世界に刻み込む傷跡。それは呪いと同じさ。ただ周りの者たちを蝕み続け、新たな生命を走らせる呪い。その極端な一例を見にきた」

 

「この街、ですか……。どうして人はこんなに争うんでしょうか?みんな仲良くすれば、悲劇なんて起こりようもないのに」

 

「まるでオリヴィエ殿下みたいな事をいう子だな。……人のありようだから、だろうな。人である限り、強欲という感情からは逃れられない。

 

もっともっともっと、ってそうやって求め続けた結果がこれなんだよ。ーーーー他者を蹂躙し、手に入れる。そして奪われた者も奪い返そうと武器をとる。これの連続さ」

 

「どうしてそんなに冷たいんですか?昨日私に優しくしてくれた、この街の人はもういない。あの温かさは、温もりは、もう戻ってこないのに!」

 

「……本当に珍しい考え方をしている子だな。それに、優しいんだな。知らない面識もない人を心配出来るほど、優しくないだけさ。だからこそ、人は疲れ果てそして望んでいるんじゃないかな?平和を。でも、そこまでの道は簡単じゃない」

 

「それでも、それが皆にとって幸せになるなら求めるべきだと思うんです!」

 

「そうだな。確かにその通りだ。でも、そう簡単にいかないのが大人の世界なんだよ。まったく……世知辛いとはまさにこの事さ。あんたらはどう思う?訊かせてくれよ!」

 

 

「なんだ、気付いてたのかよ。絵空事はもう終わりなのか?」

 

 

俺がそう言うと、いろんなところから武器を持った男が大体14人ほど出てきた。しかも頭領みたいな奴はさっきからにやにやしてやがる。ムカつくな。顔面陥没させてやろうか。

 

「さっきからさ、お前らの視線が鬱陶しいんだよ。さっさとくればいいのに、何を考えてるかは知らないがずっとこちらを伺いやがって……それで?何のようだよ?」

 

「へっ、いちいち言わなきゃ分かんねぇのか?あんただって、俺たちが何者かなんて教えるまでもないだろう?」

 

「……死んだ人から物を奪うなんてなってねえな!死して尚奪われるとは、死者に対する尊厳ってもんがねえのか?」

 

「死んだら所詮それまでだろうが。尊厳もへったくれもあるかよ。死して尚、人様の役に立てるんだから泣いて喜ぶだろう?」

 

「……はぁ。思っていた以上に腐ってるみたいだな。ユーリちゃん、ちょっとの間目と耳を塞いでなよ」

 

「え?へ?一誠さん……」

 

「サクラ。準備はいいか?」

 

「私は何時でもOKなんだよ、マスター。全力でやっちゃうんだよ!」

 

「いいねいいね。そうだよ、その息でいかなきゃいけないな!俺たちに楯突く全ての者を吹き飛ばせ!我が覇道を阻む者なし、ってなぁ!ーーーー禁手化(バランス・ブレイク)!」

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!』

 

「まだだ!まだ終わらねえよ!サクラ!」

 

「うん!」

 

 

「「ユニゾン・インッ!!」」

 

 

サクラとユニゾンしても、鎧自体には何も変化は無かった。だけど俺の髪の色は金色に変わり、さらに中から力がこみ上げてくる。この世界に来てから燻り続けていた天使の力(テレズマ)が唸りをあげている。ーーーー並み居る敵を蹴散らせと。力なき者を救うために力を振るえと。

 

「はははははっ!まったく、爽快な気分だな。力を振るえるってのはやっぱり気分が良い!」

 

『凄いんだよ……。こんなに莫大な量の力、見たことないんだよ。それにこの力……純粋な魔力じゃない?』

 

「おいおい、サクラ。今はそんな事はどうでも良いんだよ。今は俺たちの目の前には敵がいて、俺たちの後ろには守るべき無辜の民がいる。それだけ分かっていれば、十分だろうが!」

 

「くそったれ!何の力を使ったか知らないが……この化け物が!テメエこそ、その手でどれだけの血に濡れて来た!」

 

「ああ、確かに。俺は多くの人間を殺してきた。……でもなぁ、俺はその死に責任を持っている。多くの想いを背負い、生きている。だからこそ、今俺はその信念に従って行動するだけだ!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

腕を一度薙ぎ払うと、周りにいた連中は吹き飛び首領だけが立っていた。そこだけは立派だな。最後まで立っているなんてよ。だが、それは俺が赦す理由にはならねえよな!

 

「止めて下さい!もういいじゃないですか!どうしてまだ拳を握るんですか!?」

 

「ユーリちゃん?どうした、いきなり。……ああ、安心しなよ。殺しはしないさ。腕の一、二本は折らしてもらうがね」

 

「そうじゃなくて!もう相手に力がないのに、どうしてまだ拳を握るんですか?放っておけば良いじゃないですか!」

 

「……そうやって放っておいた火種が俺たちを襲う可能性は、決して低くないんだ。もしかしたら大切な人たちの生命を脅かすかもしれない。そうなってからじゃ遅いんだよ。それに……あまりこういう事は言いたくないけど、奪うなら奪われる覚悟をしなくちゃいけないんだよ。如何なる者であってもね」

 

「それは……」

 

「詭弁、かもしれない。だけど、真実なんだよ。……しかしまあ、ここまで言われたらしょうがないよな。行くよ、ユーリちゃん」

 

「あ、はい!」

 

俺たちは盗賊の連中を放置し歩いていると、ユーリちゃんの家族らしき人がこちらを見つけたらしいので、ユーリちゃんを行かせて俺たちは戻った。

 

奪うなら奪われる覚悟をしなくちゃいけないんだよ、か……。そんな覚悟、自分だって持ってないくせによく吠えたもんだと、自虐的な感情を浮かべながら歩を進めた。

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