俺は今、 戦場にいる。この間みたいな跡地じゃなくて人がばったばったと死んでいくあの戦争だ。そんな場所に俺はリッドと一緒に立っていた。
「ざっと確認したところ、5、600人程度ってところだな。問題ないのか?リッド」
「当たり前。こんな戦場は何時もの事だし。それよりも、なんでイッセーまで来てるの?私は守る気全然無いぞ?」
「その心配は無用だ。俺だってこの程度の人数にやられる気なんか無いからな。精々お前の戦いぶりを見ながら戦わせてもらうさ」
「まあ、いいけど……あのユニゾンデバイスは連れてないんだ」
「サクラの事か?この程度なら要らないって。王クラスともなれば、その限りではないがな。これぐらいならユニゾンはいいだろ」
「舐めた発言してるな。まあ、私はこの異名に偽りない事を証明するだけだが、な」
それでいいさ、と言いながらまるで普段通りの雰囲気で戦場に出る。左手に槍『ラヴィアス』を、右手に大剣『アリファール』を持つ俺とグローブを持つエレミア。実は戦場に出る前にクラウスに言われたんだ。戦場ではリッドの前には出るな、と。
リッドは消滅魔法ーーーーいわゆるイレイザーと呼ばれる物が多用される。その攻撃は防ぐ事も叶わず、あらゆる攻撃はその鉄腕の前では届かない。それにリッドは格闘技で戦うらしい。これはどうでも良いか。
「そんな事を言われてもな……ったく、面倒だな。俺の戦い方は、基本的に近接戦闘だっての」
「ん?クラウスに何か言われたのか?まあ、私としても巻き込まれないように気を付けろとしか言えないけど」
「はいはい。分かってるよ。ったく……そんなに俺は頼りないのかね?少しは信用しろよ、まったく……」
「そんなことを言われても、私はクラウスと違ってイッセーと一緒に戦ったことがあるわけじゃないし。しょうがないでしょ?」
そりゃあそうなんだがな。思わざるを得ないって時もあるからな。という言葉を紡ぐ暇もなく、戦いが始まった。
馬の首を切り飛ばし、敵の心臓や首を的確に突いて殺す。そんな作業みたいな行動を繰り返しながら、リッドの方を見るとイレイザーを左手に纏わせながら敵を殺していく。そして敵はすさまじい速度で数を減らしていき、そして最後の敵もリッドによって殺された。
「終わり、と。お疲れさん、リッドォッ!?」
チッ!マジかよ。俺も敵認定されてるし。これはさっきまでみたいに手加減するなんて自殺行為に等しいな。これはあんまりやりたくないんだが……しょうがないか!
「ーーーー
斬魔の光輝である『
「敵意ぷんぷんじゃねえか。これがリッドが1人で戦ってきた理由か。……なるほどなるほど。ったく、水くさいな。これぐらいじゃあ離れねえしやられもしねえよ!」
ラヴィアスが発生させた氷を踏み砕き、ものすごい速度で走ってきた。そして左手で俺の生命を奪おうと動く。
「…………ッ!」
「そう簡単にはやられてやらねえよ。お前が何を考えてんのかなんて知らないがな。俺はそこであまっちょろくはないぜ?」
イレイザーを纏わせた左手をいなし、風の塊をぶつける。直前に後ろに下がって威力を軽減したみたいだけど、ダメージは与えた。と言っても、これで相手を本気にした可能性は高いだろう。
事実、この後に俺の攻撃が当たったのは攻撃の合間を縫って繰り出した攻撃だけだった。それ以外は両方ともかすり傷程度で、体力だけがじりじりと減っていった。ったく、強いな。ああ、まったくもって……
「面白い!本調子ではないとはいえ、俺を相手にしてここまでもった奴はそういない!誇っても良いくらいだぜ!」
「……ここまでやってそれだけしか傷を負わないって……イッセーもたいがい化け物だね」
「今更だな。っていうか、意識戻ってんならさっさと言えよ。余計な傷を増やしただけじゃねえか。しっかし、強い。強いな、リッド。ここまで盛り上がったのは久しぶりだよ」
禁手《バランス・ブレイカー》を解除し、無手の状態にして傷の治療を始めた。しっかし、イレイザーの攻撃ってのはあんまり受けたい部類の攻撃じゃないな。一発でお陀仏だ。
「イッセーだって、全力は出してないでしょ?力をセーブするのに手一杯で止められなかったけど、まさか対等に打ち合えるなんてね。驚いた」
「……セーブしてた?あんだけやったのにか?どんだけ強いんだよ、お前は。俺の予想が軽く越えられるとはとんでもないな」
「それはこっちの台詞だよ。でもまあ、殺さなくて本当に良かったよ。ありがとう、イッセー」
その時のリッドの笑顔は本当に綺麗で、俺は一瞬言葉を失った。その後、直ぐに話を続けながら戻ったけれど、その時の胸のうずきが一体なんなのか当時の俺には分からなかった。