リリカルD×D~狩り人の戦記~   作:シュトレンベルク

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平穏なる時の終わり

 

 

ここ最近、戦場に赴く回数が増えてきたように感じる。この細やかな幸せを味わうのももう残りわずかという事なのか?

 

「どうしたんだい、一誠。何か気になる事でもあるのかい?」

 

「ん〜……なんでもない。それよりもお前こそ、何のようなんだよ?わざわざ呼びたしたりして……しかもオリヴィエたちには内緒だなんて、何を考えてるんだ?」

 

実はこの間、オリヴィエ殿下と呼んだらこっぴどく怒られた。イッセーにとって私は友ではないのですか?とまで言われた。しかも、それにリッドやクラウスも便乗してきたから大変だった……。

 

「うん……実は近々、オリヴィエが国に戻されるかもしれないんだ。それで……その」

 

「お別れ会でもしよう、ってか?俺は構わないけど……なんでまた呼び戻されるんだよ。確かオリヴィエは『ゆりかご』の適性が低かったから、ここに送られたんだろ?それなのになんでまた……」

 

「……『ゆりかご』の研究が進んだからさ。それに……ここ最近のオリヴィエの活躍もあると思う。聖王家はオリヴィエを『ゆりかごの聖王』としてまつりあげる気なんだと思う」

 

『ゆりかご』ってのは、聖王家の有する最強の戦略兵器。聖王家が有する最大の兵器であり、最後の切り札。この兵器に乗った者は、このゆりかごの中でその生涯を終える。

 

「勝手な連中だな……。まあ、何も言うまい。しっかし、お別れ会って言っても何をするんだよ?野郎二人でやるって言うのも華が無いんじゃないか?」

 

「もう少し言い方って物があるだろう?……まあ、いいけど。やる事はお茶会とそう大差はないよ。ただ何時もより少しだけ贅沢しようってだけだよ。細やかな贈り物だよ」

 

「……お前さ、それで良いのか?この時を逃せば、お前が想いを告げられるのはもうそれ以外にはあり得ないんだぞ?」

 

「それは……でも、僕もオリヴィエも立場が……」

 

「お前は!お前の想いは!たかが立場で崩れちまうほどに脆いもんなのかよ!?違うだろ!?後の事なんて、後で考えりゃ良いんだ!今の自分に正直になれよ、クラウス!」

 

「僕だって!僕だって、オリヴィエと離れたい訳じゃない!でも、それでも、越えられない一線がある。それに抗う事は出来ないんだ。分かってくれよ、一誠!」

 

分かってるさ、そんな事は。でも、そんな苦しそうな表情を浮かべながら言うぐらいなら、自分の想いに素直になって欲しい。たとえこの想い届かずとも、お前なら納得できるのに。ゆりかごのために死ぬなんていう未来よりも、喜べるのに。

 

「……クラウス、最後のお茶会はお前とオリヴィエだけでやれ。最後の一時くらい、お前が一緒に過ごせ」

 

「え?でも、それは」

 

「最後の挨拶なんて出て行かれる時に出来るさ。でも、お前は俺よりも交友関係が深い。だから、お前がやれ」

 

俺はそれだけ告げると、部屋を出て庭園にある花を見に行った。この花を見る事ももうすぐなくなるだろうから、眼に焼き付けようと思って。だけど、そこには先客ーーーーオリヴィエがいた。

 

「あら、イッセー。ごきげんよう」

 

「……オリヴィエ、君が聖王家に戻るというのは本当なのか?それはどうしてもしなくてはならないのか?」

 

「……本当です。イッセー、しなくても良いのなら要請など来はしませんよ。分かるでしょう?明日、出立となっています」

 

「分からない。分からないよ、オリヴィエ。どうして君もクラウスも諦めてしまうんだ?君だって、ゆりかごのための人生だって嫌だろう?ならせめて君とクラウスだけでも……」

 

「いいんです。私の力が、皆を助けるのに役立つんです。それにもしかしたらこの戦争を終結させる鍵になるかもしれない。それなら」

 

 

「……そんな事を泣きながら言われても、説得力なんかかけらも無いよ」

 

 

「え……?」

 

痛ましい。自分の心を、自分の想いを殺してまで他者のために生命をかけるオリヴィエのあり様が。

 

憎らしい。こんな時代に生まれてきてしまった所為で、お互いの想いに素直になれない。そんな風にしてしまった世界が。

 

「あ、あははは……ダメですね。まだ心が揺らいでしまっているみたいです。こんなのではダメなのに、皆のために私が我慢しなくては、ダメ、なのに……」

 

「…………」

 

辛く、悲しく、苦しい。自分の目の前で友が泣いているのに、何もしてやる事が出来ない。慰める事も、励ます事も、何一つ出来やしない。泣き止むのをじっと待っている事しか出来ない。そんな自分が憎い。

 

「……ふう。もう大丈夫です。心配をかけました。ごめんなさい」

 

「……今も絶賛心配中ですよ。貴女は、いえオリヴィエもクラウスも我慢しすぎだ。たまには吐き出さないと、パンクしてしまいますよ?たまには頼ってください。けして迷惑だなんて思いはしませんから」

 

「そうですか?……それでは、少しだけお願いがあるのですがいいでしょうか?」

 

「なんなりとご命じください。我らが姫君」

 

「クスクス……。それでは、明日の帰還の際に私のボディガードをして頂きたいのです」

 

「……中々酷な事を仰る。俺に貴女を殺す片棒を担げ、と?」

 

「頼れ、と言ったでしょう?……あなたが、親愛なる友が近くにいてくれるのなら、私はまだ耐えられる。だから、お願いします」

 

「……ハァ。貴女も中々酷なお方だ。そう言われたら断れないのを理解しているくせに。それでは、私と契約してください。

 

如何なる敵が現れようと、私は打倒しましょう。しかし、クラウスが来た時は我々の戦いを見守っていていただきたい」

 

「……分かりました。結びましょう、その契約」

 

 

「誓いをここに。親愛なる我が友よ。貴女のために我が拳を振るう事を、ここに誓いましょう」

 

「誓いをここに。親愛なる我が友よ、我らの道を阻む者を止めなさい。そうするならば、私は契約を守りましょう」

 

 

「頼みますよ?我が騎士殿」

 

了解しました(ヤヴォール)我が主(マイ・ロード)

 

今、赤龍帝は友のために、一度は恋い慕った者のために拳を振るう。たとえその先に、悲しき未来しか残っていないのだとしても。たった一つの希望にかけて。

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