「……と、まあ。これが、俺が古代ベルカで過ごしたお話だ。どうだ?面白くはなかっただろう?」
話が終わりに近づくと皆の顔が悲嘆にくれていった。これは俺が体験した一年前の出来事だ。ベルカから戻ってきた俺はさらに世界を見るためにいろんな場所に行った。冥界、天界、北欧、ギリシャ、京都。他にもある。
「……相変わらず、あっけからんとしてんな。お前が体験した事だろうが。なんでそんな軽いんだよ?」
「なんで、と言われてもね。俺にとって、あの別れは永遠じゃない。いつかまた何処かで会えると、そう思っているから俺はこんなに平然としてんのさ」
「それでもお前の事を覚えてる訳じゃねえし、なによりお前は死ねない。不老不死に近いお前を殺せる奴なんていないだろう。途方もないほどの長い時間を待ち続けるつもりなのか?」
「まあ、確かにね。俺を殺せる奴がいるなら、グレートレッドだって殺せるだろうな。そんな奴がいない以上、俺が死ぬ事はないんだろうな」
「……ちょっと待ってや。一誠くんが不老不死に近いってどういう事なん?一誠くんは人間なんやろ?」
「う〜ん、口で説明するの面倒だしな……ヴィータ、ちょっとそこのナイフを取ってくれないか?別にフォークでも構わないけど」
「……?ほら、これでいいんだろ?」
「さんきゅ。さてと、これを……思いっきり刺す」
俺の突然の奇行に皆が驚いている間に、俺の手を貫通したナイフを引き抜いた。多少の痛みはあるけど……問題にする事でもないだろう。
「いきなり何をーーーーっ!?」
俺の手の傷がまるで時間を戻すかのように、再生していく。そして数秒と持たずに傷は完全に消えてなくなった。たとえ腕をぶった切られても、跡形もなく消し炭にされても、身体をこなごなにされても、俺は死にはしない。
「分かったか?俺の身体は人間じゃない。お前らとは狂おしいほどに違いすぎるのさ。今の俺は小さな真龍。幻想によって出来ているがゆえに、傷つく事はなく死ぬ事はないんだよ」
「……一誠くん、頼むから心臓に悪い事は止めてくれないか?いくら意味がないと分かっていても、目の前でナイフを突き刺す光景を見るのは心臓に悪いよ」
「あー……それはすいませんね。手っ取り早かったもんで、ついやっちゃったよ。……なんせ俺は独りだからね。俺を完全に理解できる人は1人たりとていはしない」
「そんな事、ない、やろ。皆、一誠くんの事を思っとるし、分かりあいたいと思っとる。それをーーーー」
「悪いけど、俺の事を理解できる人なんかいない。化け物と呼ばれ続ける痛みも、強すぎるがゆえに恐れられる悲しみも、誰も理解する事が出来ない。……俺の事を、力を知れば誰もが思う事なんだよーーーー化け物、ってね」
「うちらが一誠くんの事を聞いて、少しでも恐れたか!?ここにいる皆が、一度でも一誠くんの事を化け物とか言うたか!?うちらが一誠くんの事を化け物なんて言うと思っとるんか!?」
「それは……そうだな。お前の言う通りだよ、はやて。でも俺は、そういう感情を向けられて生きてきたんだ。この力を使って、より良い方向に向かわせようとしても最後に向けられるのは畏怖と畏敬の念だけだった!
ーーーー俺がやろうとしてた事は全部、無駄なのかよ?どいつもこいつも皆、俺の事を『化け物』と呼ぶ。俺は、そんな風に呼ばれたくて力を手に入れた訳じゃないんだ……」
正直、疲れてきた。強すぎる強者は独りであり続けるのが運命なんだ、と言わんばかりだ。『
「何をしても報われない。それならその行動に意味なんかない。何をしても恐れられるくらいなら、何もしない方がマシなのかもしれない。少なくとも、俺が傷つく事はないんだから。
なあ、教えてくれよ。俺は一体どうすれば良かったんだよ?誰かのために戦っても傷つくだけなら、俺の戦った意味って一体何なんだよ?分からないんだよ、もう。俺の戦ってきた意味がさ」
どれほど戦った覚えていない。それでも、お礼を言われた事なんてない。そりゃあ期待していた訳じゃないけど……次につながる物が欲しかった。……でも、そんな物はなかった。
オリヴィエとクラウスと、リッドと約束したんだ。皆が笑っていられる世の中にしよう、って。たとえ俺はそこにはいられなくても、この世界でその約束を果たそうと思ったんだ。
「そんな誓いを背負って戦う事が悪い事なのかよ!?あの時代を生きてきたから分かるんだよ!知ってるんだよ!笑顔ってもんがどれだけ価値のある物なのか!それを目指して何が悪い!?そんな願いを抱えて生きていく事が、悪い事なのかよ!?」
そう言いながらうなだれていると、優しい温もりが俺を包んだ。ーーーー夜天だった。その赤い瞳から涙を流しながら、俺の事を抱き締めてくれた。まるで、あの時みたいだ。最後にリッドと、ベルカと別れたあの時みたいだ。
「もう、良いんだ。お前がそこまで傷ついてまで戦う必要なんてない。お前はもう、十分すぎるほどに頑張っただろう?休んだって、誰も何も言いはしないさ」
この温もりが、俺の固まりきった芯を溶かしていく。自然と涙が溢れてくる。そうか……俺は欲しかったんだ。確かな生きているという実感が、自分は確かに救えたのだという事を知りたかったのだ。
「少なくとも、お前は此処にいても良いんだ。誰もその権利を否定したりなんてしないから。お前は、自分の生きたい様に生きて良いんだ。此処にいる皆、それを肯定するさ」
「……俺はそんな生き方をした事がない。何時だって目標に、目的に向かって生きてきたんだ!好きなように生きるなんて……した事ないんだよ」
「ならばそれをこれから探せばいいだろう?お前にはまだまだ時間があるんだろう?……それなら簡単だろう」
「そうだよ、一誠くん。一誠くんは自由なんだから、これからどんな道だって進んでいけるよ。私たちも手伝うしね♪」
「そうだな。俺らもできる範囲で手伝うし、お前も俺たちをもっと頼れよ。お前はなんだかんだ言ってもまだ九歳のガキなんだからな」
「一言余計だよ。でも……ありがとう」
涙を流しながら、久しぶりに、本当に久しぶりに本当の笑顔になった。忘れかけていたこの感情。心の底から嬉しいと思えるこの感情を、俺はもう二度と無くしたくない。そのために生きていこう。
次回からは、空白期!この間にGOD編、及びD✖Dに入ります。
そこで、感想を見て少々思ったんですが……これが終わってからにはなりますが、vivid編みたいですか?それなら今の内にネタを考えておきたいと思います。
それではまた次回!