リリカルD×D~狩り人の戦記~   作:シュトレンベルク

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神と精霊

聖書の神ーーーーそれは万物を創造した唯一神。そして天界のトップにして全ての者の父。信徒に愛をふりまく者。そしてシステムを創り出した者。さらに言うならば……すでにこの世の者ではない。三大勢力の戦争中にその命を落とした者。それこそが現在の三大勢力トップ陣営の認識だ。

 

「そんなお前がどうやって兵藤の身体から出てくるような経緯に至るって言うんだ……!?」

 

「残念だが、語る口は持たぬし、そのような些事を話して時間を減らすわけにはいかぬのだよ。卿らは気付いていないのか?あの少女の持つ力は人の持つべき力ではないことを」

 

「なんだと……?それは一体どういう意味だ!UーDが一体どうしたと言うのだ!答えよ!」

 

「ふふっ。中々勇ましい少女だな。だが……少々身の程という物をわきまえたまえ。私は兵藤一誠と違い、王というものに何の感慨も抱かない。私としては“王”という人種はどうでもよいということだ」

 

「ならば、私どもに教えていただけませんか?神よ、彼女のーーーーUーDの一体どういった点がマズイのでしょうか?」

 

「……あの力は人ではなく人外が持つ物だ。プログラム体か何かは知らないが、人間と同じ肉体構成で耐えうるわけがない。あのまま放っておけば、肉体はぼろぼろとなり崩壊することは自妙の理。というわけだ」

 

「……それならば、あなたは一体どうするというのですか?あなたの口ぶりではどうしようもないように聞こえますが、あなたは如何するというのですか?」

 

「ふむ……言ったとしても卿らが信じるとは到底思えぬが、まあよかろう。ーーーー私は神だぞ?私が起こす物は決まっているし、全ての信徒に愛をふりまく者だ。全ての人間は私が奇跡を起こしうる対象になる。

 

……まあ、我が身は一つであるがゆえ起こしたとしても、それを伝えられる者は限られているがな。特に今に限ってはもっと範囲が小さいと言わざるをえないが、それでも大丈夫だろう」

 

人間では到底起こしうることの出来ない物、それこそが奇跡。些細な偶然で起こりうる物でもあるが人の起こした物は奇跡とは呼ばないだろう。超自然的確率で起こりうる物こそが奇跡と呼ばれる物であるが故に。

 

そして一誠の身体は真龍の血肉によって構成されている。夢や幻想を象徴する存在であるが故に、その身に集まる力は並大抵な物ではない。それこそ……一誠は独力でも奇跡を起こす事が可能かもしれないほどに。

 

末端であるが故に、グレートレッドほどでもないかもしれない。されど一誠がグレートレッドに求めたのは己の力に耐えうるほどの肉体だ。その身に溜められる力は神格すらも上回っているだろう。その身で起こす奇跡は一体如何程になるのか、分かったものではない。

 

「やはりグレートレッドの肉体を基に創られただけあって、私の前の身体よりも溜めこめる力をはるかに上回っているな。素晴らしい才覚だ」

 

「兵藤の身体はお前に使われるためにあるんじゃないんだよ!お前の勝手な考えを兵藤に押し付けるんじゃねえよ!」

 

「まあ、これは私の勝手な予想だ。気にするな。さて、私もそろそろ行くとしよう。……兵藤一誠の呼びだした予備戦力が到着する時間だからな」

 

「予備戦力?お前は一体何を言って……」

 

アザゼルがそう言うと同時に、けたたましいアラートが鳴り響いた。その音で固まっていた他の者たちも動き始めた。アラートが鳴り響いた理由は大規模な空間震が海上で起こったからだ。同時に、聖書の神の右手の甲に王冠のような紋章が浮かんだ。

 

空間震が治まるとそこにいたのはーーーー1人の女性だった。だが、その者の纏っていた気配は人間のそれではなかった。いや、そもそも空間震の中から現れた段階でまともではないのだが。

 

例えるならば、風を纏った女王。何者も眼前に立ち塞がることを許さないと言わんばかりの雰囲気だった。だが特筆するべきはそこではなく、背中から生えている三対六枚の天使の翼(・・・・)だった。そして彼女の右手の甲もまた光っていた。

 

聖書の神はそれを見たと同時に、転移用の魔法陣を構築し始めた。そして誰にも気づかれることもなく、アースラから出ていき現れた女性の元にたどり着いた時にようやくアースラ組は気が付いた。

 

「……あなたは誰?マスターの身体のようだけど、あなたはマスターじゃない」

 

「ほう。そこまで分かるのか。さすが、セフィラーを通して繋がっているだけのことはあるな。天使の力(テレズマ)によって構成されている翼はそんなに使い勝手がいいのかね?」

 

セフィラーとは“王冠(ケテル)”“智慧(コクマ)”“理解(ビナー)”“慈悲(ケセド)”“神力(ゲブラー)”“(ティフェレト)”“勝利(ネツァク)”“栄光(ホド)”“基礎(イェソド)”“王国(マルクト)”この十個からなるセフィロトの樹の事だ。全ての人間はこのセフィロトの樹を宿している。

 

それぞれの座位の事をセフィラーと呼び、全ての座位はパスによって繋がっている。そのパスの数は二十二本もあり、タロットの大アルカナと同数であるため予知された歴史とも呼ばれるが……それは今はどうでもいい事だろう。

 

さらにこの座位にはそれぞれ神名が与えられている。王冠はエヘイエ、智慧はヨッド、理解はエロヒム、慈悲はエル、神力はエロヒム・ギボール、美はエロハ、勝利はアドナイ・ツァバオト、栄光はエロヒム・ツァバオト、基礎はシャダイ・エル・カイ、王国はアドナイ・メレク。

 

普通ならこの名で呼ぶところなのだが……一誠はそれを嫌いその座位にいる者を必ず名前で呼ぶようにしている。理由は名とは確固たる己を証明する物だから、という事。彼女は彼のたった1人の従者であり、たった1人の信奉者なのだ。

 

「この翼は実用性の意味でも使えるけど、私が使っているのはそういう意味じゃない。この身はマスターである兵藤一誠の物であるという事の証明。私はただ“王冠(ケテル)”であるあの人の命令に従い動くだけなんだから」

 

「大した忠誠心だな。私がまだ存命だった頃のミカエルたちセラフの面々のようだな。まあ、それは今はいい。今の私と兵藤一誠の目的は同じであるが故に、卿にも力を貸してもらう」

 

「ふーん……まあ、それなら構わないでしょう。我が名は八舞。風を統べる精霊であり、マスターである兵藤一誠より神の火(ウリエル)の力を授けられ、“栄光(ホド)”の座位を授かりし者。あなたとマスターである兵藤一誠の目的が違えない内はあなたに協力しましょう」

 

「あくまでもマスターが第一、と。これは中々に面白いな。こんなに自分を慕ってくれる者がいながら何故、兵藤一誠は1人で旅をしていたのやら。少々理解に苦しむな。

 

協力に感謝しよう。私は聖書の神だ。名前はない故、好きに呼んでもらって構わないが、あまりふざけた名前にはしないでくれたまえよ?」

 

「考えておくわ。それで私の役回りというのは何なの?まさか私を戦わせる訳ないわよね?私はたった1人の敵相手に力を振るうような鬼畜な真似はしたくないんだけど」

 

「心配せずとも彼女と戦うのは私の仕事だ。卿にはもしも他に誰か来た場合の足止めだ。必ず複数人はくる筈だから、一対多の戦いになるが構わんだろう?」

 

「別に構わないし、問題はないけど……私の仕事ってたったそれだけなの?正直な話、私はいらないと思うのだけど」

 

「万全を期したかったのではないか?不確定要素があっては自分の思い通りに戦えないからな。それにたとえ相手が幼子たちと言えども、その中にアザゼルがいる可能性は大いにあるからな」

 

「……なるほど。まあ、堕天使のトップがいると言うなら呼ばれる事も納得できるわね。それならせいぜい私も全力を出すとしましょうか」

 

絶大なまでの覇気を放ち主からの命令を遂行しようとする唯一無二の信奉者たる精霊と圧倒的なまでの力を宿し奇跡を起こしうる存在である聖書の神が今、手を結んだ。これによっていかなる結果が生まれるのか?それは今は誰にも分からぬ事でありました。




どもども、シュトレンベルクです。どうでした?小説にはなかった八舞完全体(作者予想)は?正直な話、よく分からなかったので作者の勝手な予想ですが。

セフィラーの説明はちゃんと調べました。なんか神様視点になると地の文が説明口調になってしまいましたが、ご勘弁ください。

Dies iraeを最近プレイしだした作者です。MADの獣殿はどれも格好よすぎです!もはやあのお方が主人公では?と思わざるを得なかった作者が暴走した結果生まれた聖書の神(残滓)でした。

それではまた次回をお楽しみに!

5/29 八舞の座位を訂正
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