リリカルD×D~狩り人の戦記~   作:シュトレンベルク

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既知は終わり、未知は始まる

 

空中でまるで誰かを待っているかのように、固まっている娘ーーーーユーリ・エーベルバインを見つけた2人は八舞は約1キロは離れた場所に位置どり、聖書の神はそのまま近づいた。恐れるものなど何もないと言わんばかりの行動だった。

 

一誠が身体に張っている恒常発動型の魔術障壁は一誠が無意識領域を使用して発動している物だが、聖書の神には魔術的な知識を有していないため“奇跡を模倣する”魔術を使える筈がないからだ。

 

「一誠さん……?いいえ、あなたは違いますね。あなたは誰ですか?なんのために此処に?」

 

「やれやれ、私というのはそんなに分かりやすいのかね。それでもやはり言わねばなるまい。……お察しの通り、私は兵藤一誠ではない。だが、名前はないので卿の好きに呼んでもらって構わない」

 

「……一体何をしに来たんですか?私は何も壊したくない。1人でいたいんです」

 

「……なるほど。侮られるというのはここまで不快な物だったのか。兵藤一誠が何故あそこまで怒っていたのか納得も出来るというものだ。無策でここまで来たわけではないという事を教えてやろう」

 

聖書の神は聖槍を構え、ユーリは霧状の腕『魂翼』を構えた。まるで剣術家が試合をしているかのように、相手の行動を読みあう。次はどう来る?その次は、さらにその次は……。果てなきその行動を打ち破ったのは、八舞が足止めの為に放った暴風の風切り音だった。

 

槍と魂翼がぶつかり合う。聖槍は天使の力(テレズマ)によって構成されているため、さらにそこに上乗せで天使が元来持っている光の力を加える。魂翼もまた魔力で構成されているため、無限の魔力精製機関であるエグザミアによって無限に強化され続ける。

 

たとえ魔力弾が飛んできたとしても、己が持つ武器を薙ぎ払うだけで簡単に消える。これは別に魔力弾の強度と威力が低い訳ではなく、単純に武器に込められた威力が高すぎるだけなのだ。たった一撃で海を割れるほどの一撃なのだから、当然と言えば当然なのだろうが。

 

さて、後方ではアザゼルを含む魔導師組と戦闘をしていた。とはいえ、八舞は風を統べる精霊である。少し気流を乱してしまえば、それだけで魔導師組は空中で姿勢を保つのに精一杯になり、実質アザゼルとの一騎討ちになっておりました。

 

「くっ!……お前、何者だ?聖書の神が言っていた兵藤の予備戦力ってのはお前の事なんだろう?」

 

「ええ。その通り。何者か、って聞かれてもね……私はあの人の従者であり、信奉者だから。あの人のために力を振るうそんな精霊だから」

 

「信奉者、ね。大層な力を持っているようだが、兵藤に術でもかけてもらったのか?しかも、俺たちの知っている類の精霊じゃないしな。本当にあいつの行動範囲は広いもんだな!」

 

「別に術なんてかけてもらってないし、あんな精霊たちと一緒にしないで。一回マスターと一緒にウンディーネを見た時の衝撃と言ったらなかったわ。ーーーー私はマスターと繋がっている。それだけであなたなら分かるんじゃない?」

 

「……セフィロトの樹、か?まったく、あいつはこと魔術や魔法に関して長け過ぎなんじゃないか!?俺たちだって知っていても使えない術を簡単に使いやがる!」

 

セフィロトの樹は人間しか宿すことが出来ない。強すぎる力である神器所有者を殺している堕天使がそれをする訳がないし、やった時点で戦争の秒読み段階に至り戦争が始まる。

 

「私はそんなあの人の強さに憧れたし、正直言って惚れたと言っても過言じゃないでしょうね。ならば、あの人から下された命令は必ず遂行させてもらう!たとえ全力を出さなくても、あなた達を足止めする位なら可能だしね」

 

「へぇ……舐められたもんだな。まさかこれが俺の全力だと思ってんのか?」

 

「あなたこそ、私が全力を出していると思う?マスターから多少の枷は付けられているけど、それも私の意思次第で外せる物よ。それにあなたと私が全力でぶつかり合えばどうなるか、分からないあなたじゃないわよね?アザゼル総督?」

 

“王冠”になれるほどの逸材は稀少だ。この座位にいる者は他の座位にいる者に己の力を分け与えることが出来る。もちろん、数がいるかいないかで供給量が変わるわけではない。それでも、数が少なければその分濃度は高くなることに違いはない。

 

供給される天使の力(テレズマ)の濃度が濃すぎることに気づいた一誠は八舞に段階的なリミッターをかける事で、天使の力(テレズマ)を身体に慣れさせる手法を取る事にした。そうでなければ、多すぎる力に身体が耐えきれずパンクする可能性が多いにあるからだ。

 

されど緊急時には自分の意思でリミッターを破れるようにしている。さらにここで全力の八舞とアザゼルがぶつかり合えば、魔導師組の命が危険に晒される。それはアザゼルにとっても、マスターである兵藤一誠の事を第一に思っている八舞にとっても望みうることではない。

 

前方で繰り広げられている金色の閃光と赤き翼がぶつかり合い、弾かれながらも何度もぶつかり合っている姿を視界に入れる。現在は五分五分のようだけど、段々UーDが聖書の神のスピードについてこれなくなってきていた。元々、スピード型である一誠は身体中に加速型の魔法陣を書き込んでいる。

 

たとえ魔術は使えなくとも、魔法は使える聖書の神は魔法を起動したらしい。しかしこの術は、単に一誠のーーーー真龍の肉体であるからこそ出来るのであって、人間の身体でここまで加速すれば身体がバラバラになるのは目に見えている。

 

事実、この中で最高速度を誇るフェイト・テスタロッサはその余りの速さに驚いていた。シャマルが黒い笑みを浮かべているがそちらには顔を向けていない。途方もない威力の聖槍と化け物のような速度。鬼に金棒という言葉をここまで体現している存在はそういないだろう。

 

一誠の最高速度は雷光を超えることも可能だ。その代わりそこまでの速度を叩き出せば一誠とて唯ではすまない。だが、自分の身体でない以上聖書の神が加減する訳がない。

 

もはや速度的には音速の域に足を踏み入れている。身体が傷だらけになっても即再生する所為で損傷と言えるほどの損傷がない。見ている方としてはまったく気分のいい物ではないことに違いはない。

 

「あいつ……マスターの身体を好き勝手使ってこれでどうにもならなかったら絶対に許さない」

 

「まあ、見ていて面白いもんじゃねえわな。一切の手加減抜きでやってやがる。兵藤だってあそこまでの速度を出す時は禁手(バランス・ブレイカー)状態になるってのに……!」

 

今ここにいる誰よりも、付き合いがあるだけあってアザゼルと八舞の怒りは計り知れないほどに大きかった。そして本来の目的を忘れていないか?と思えるほどに聖書の神は攻撃を繰り出していた。さすがに止めようと2人が動き出そうとした時、聖書の神は動きを止めた。

 

「これは……?」

 

 

「おいおい、いつまで人の身体を好き勝手使ってくれちゃってんだよ、てめえは」

 

 

「何……?まさか、もう起きたというのか。まだあれから一時間も経っていないというのに。……なるほど。中々の規格外だな、卿は」

 

「その喋り方辞めろよ、気持ち悪い。さっさと自分の穴倉に帰れ、聖書の神。今を変えるのは俺たち生者だけで十分だ。死者は黙って見守っていればいい」

 

「我の助けは要らぬと?自分たちの手でなんとかしようと言うのか?戦ってみてよく分かったよ。やはりあれは人の持つべき物ではない。ここで一度破壊しておくべきだろう。それが卿は嫌だと言うのかね?」

 

 

「嫌だね。全てを救うこと。それこそが夢幻の象徴である俺が望む物さ。皆、助けたいから殺したくないから救いたいから必死こいて戦おうとしてんだろ。

 

ーーーーもう一度言ってやるよ。聖書の神、お前は自分のいるべき場所で見守っていればいい。皆がお前に頼りきりの時代は終わったんだ」

 

 

「ふっふっふ……ハーッハッハッハッハッ!そうかそうか!神の時代は終焉を迎え、人の世の始まりは、福音の鐘はとうの昔に鳴り響いたという事か。なるほど、私の時代は終わった、か。

 

なれば赤龍帝よ、救ってみせよ。その己が持つ傲慢さによって手の届く全ての者を救ってみせよ」

 

「全て、は無理だな。この想い、この意思がある限り俺は諦めない。俺はここで新たな自分を知った。ならばその信念に従うだけなんだからな」

 

神という既知は終わり、人間という名の未知が始まる。ここから先は誰にも分からぬが故に、本当の意味での物語はここから始まる。既知は終わり未知との出会いを祝福しよう(アクタ・エスト・ファーブラ)

 

黄金の輝きをその身に宿し、万物にその威光を知らしめんとする。黄金色の髪と黄金と紅のオッドアイ。新たな意志をその心に抱き、その者は告げる。

 

「さあ、古き世界に別れを告げよう。新たな世界の幕開けを知ることの出来ぬ未だ誰も見たことのない、未知なる世界は今ここに幕を開く!」




どもども、シュトレンベルクです。わりと急ピッチな今回のお話。皆さん、如何でした?

なんか急に成長を遂げた一誠でした。ところで偶にタグで見かけるISSEIってどういう意味なんでしょうか?作者は未だにその辺のことを理解していません。教えてくれると嬉しいです。作者的に。

実はこの最後ら辺の部分はとある二時小説を参考にしています。パクリじゃないよ?リスペクトだよ。の精神でお送りします。それではまた次回!
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