リリカルD×D~狩り人の戦記~   作:シュトレンベルク

57 / 180
さらば、海鳴

 

 

翌日、出発の1時間前くらいに起きると当たり前だがまだ外は暗かった。部屋を見回してみると、俺と八舞が寝ている寝袋以外は何も残っていないひっそりとした空間だった。荷物は全部倉庫に移したから、当たり前なのだが。

 

こんなにオンボロでも、長い間留まるとそれなりに愛着が湧いてくるものなんだな。一年という期間だけど、それでも楽しい日々を過ごした事に代わりはないのだから。

 

「……朝飯でも作っておくか。他にする事なんざねえしな」

 

三十分もすれば、八舞も起きた。まだ何やら寝ぼけているようだったので水を持たせて洗面所に顔を洗わせに行かせた。朝飯を作り終え食べ終わり振り返る事もせずに俺たちは元住居を出た。

 

「しっかし、まだ冬の感じが残ってるな。まだ朝方は寒いし」

 

「……マスター、本当によろしいんですか?私はまだここに残っていても構いませんよ?マスターが望むなら此処に定住したって」

 

「だーかーら、それはできないんだって。俺がちゃんと龍の性質を抑えられないんじゃ俺は何処かに定住するなんてできない。……まぁ、アースみたいな場所があるなら話は別だけど。でも、そんな場所は滅多に存在しないしな。しょうがねえよ」

 

「でも、今のマスターの顔はすごく辛そうです。そんなマスターの顔を見るのは私の望むところではありません」

 

「別れってのは辛いもんさ。でも、此処には思い出がある。それなら俺は生きていけるさ。生きていればまた何処かで会えるだろうしな」

 

「……分かりました。そこまで言うのでしたら、もう私の方からは何も言いません。でも、辛くなったら相談してくださいよ?」

 

「分かっているさ。……ん?」

 

これは結界?しかも魔導士組の張ったタイプか。そう思いながら待っていると、ベルカ組(はやてと夜天除き)とミッドチルダ組(ユーノ、プレシア、アリシア、シエナ、管理局除き)が現れた。俺を止めにでも来たのか?

 

「一誠、お前がこの街を去ると言うのは本当なのか?」

 

「Yes、と答えさせてもらうぜ。こいつは俺自身が自分で掛けた盟約だ。誰にも邪魔できないし、させない。もしお前らが力ずくでも俺を止めると言うならーーーー俺はお前らをこの場でぶちのめす」

 

俺が赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を展開しようとすると、八舞が俺を抑えた。何のつもりだろうかと思って八舞の顔を見てみるとーーーー憤怒の表情を浮かべていた。こんな顔初めて見たんだけど。

 

「……マスター、この場は私に任せていただけませんか?直ぐにケリをつけますので」

 

「……殺すな。これを守れるなら全力だそうが何をしようが自由だ。良いか?絶対に殺すなよ」

 

こうやって釘をさしておかないとこいつ此処にいる全員を皆殺しにしかねない勢いなんだけど。めっさ怖い。俺が何とか御さないと今にも殺しそうだな。気をつけよう、うんマジで。

 

「今マスターは新たな一歩を歩もうとしてる。それを邪魔するって言うんなら……あなた達を此処で撃滅する」

 

ほら!ほら今、撃滅って言った!もう完全にマジ切れモードじゃねえか!一体どうなるのか俺にも分かんないっての!もうホントに何時でも抑えられるように準備しておこう……

 

先ずは先手を切ったのは、シグナムとフェイト。前者は鋭き一撃を、後者は早き一撃を持って八舞に向かって行った。八舞はまったく慌てることなく右手の槍でフェイトの攻撃を逸らし、左手のペンデュラムでシグナムの腕を捕まえて投げ飛ばす。

 

後続からなのはの砲撃と同時のヴィータの鉄鎚。砲撃を風の塊で相殺しつつもヴィータの攻撃を回避してカウンターに蹴りを叩き込む。地面から生えてきたザフィーラの鋼の軛を破壊しつつも、風を纏わせたペンデュラムでアルフの放った魔力弾を破壊する。

 

まったく持って戦力差がはっきりしすぎている。これじゃあ長期戦に突入するぞ。そう思っていたら風を操作して相手の動きを封じ、槍の一振りで前衛組であるフェイトとシグナムを墜とした。守護獣&使い魔ペアをペンデュラムで貫き地面に叩き落とした。

 

残るはヴィータとなのは、それに遠くにいるシャマルだけど……もういいだろう。これ以上の戦闘継続はほぼ無意味と言っても過言じゃないだろ。主力が落ちた今、この戦線はもう持たないし。

 

「八舞、もう行くぞ。前衛組とサポート組の大半が落ちた今、これ以上戦っても無駄だ。それに時間が過ぎてる。これ以上は時間を掛けられない」

 

「……分かりました。我を通そうとするのは結構だけど、あなた達とは違う考えの人間もいるんだと言う事。そして力なき意思は無駄だという事を知りなさい」

 

八舞はそう言うと、霊装を解除して降りてきた。俺はシグナムとフェイトとザフィーラ、それにアルフに回復魔法を使って傷を治した後に結界を破壊した。そしてそのまま歩いていき、駅に着くと子供組はちょっと怒り気味で大人組は少し苦笑していた。

 

「一誠くん、遅すぎるやろ。一体何をしとったん?……それでなんでそんなに八舞さんは怒うてはるん?」

 

「自分の従者ぐらいちゃんと御しておいて欲しいものね。私たちが遅れたのは魔導士組に足止めされてたからだし」

 

「え"……シグナムたちが?もしかしてなのはちゃん達も?よく考えると此処に来てへんし……」

 

はやてと士郎さん、それにプレシアさんが冷や汗を流していた。未だに八舞の気分は晴れないし、困ったもんだよ。本当に厄介な事をしてくれたもんだ。よく見るとシエナが重装備だった。ついて来る気なのか?

 

「私もついて行きますけど、良いですよね?昨日ついて来てもOKって言ってたし」

 

「俺は別に構わないけどさ。親父さんは了承したのかよ?いろんな神話体系からお誘いを受けてるからな。留学という形だけど、大変だぞ?」

 

「いろんな魔法が知れるならその位は平気。労力とも言わないレベル。それに旅行も出来るし。お父さんからはお前もいい具合に魔法に狂ってきたな、って言われた。そう言ったらお母さんにしばかれて、今お説教の途中。だから今いない」

 

「それは……まあ、何と言うか……ご愁傷様?止めもしなかったのは、魔法使いとしてのサガなのか?」

 

俺は小規模な結界を張り、右手にメザンティスを取り出した。いきなり鎌が出てきた事に皆が驚いている傍で俺は夜天に手を差し伸ばした。選択の結果を聞くために。

 

「さあ、夜天。時はきたぜ?お前はどういう決断をしたんだ?俺か家族か、どっちの選択をしたんだ?教えてくれよ」

 

「わ、私は……」

 

「リィンフォース。決めたんやろ?それやったら言わなあかん。リィンフォースの未来はリィンフォースが決めなあかんねんから」

 

 

「私はーーーー行けない。主はやて達と共に、これからの未来を歩いていく。だから、お前たちと共には行けない。それが……私の答えだ」

 

 

「……了承した。今、お前は決断した。それが如何なる結果になろうとも、お前はその結果を受け止めろ。いいな?」

 

「……ああ。それじゃあ、元気でな。我が友よ」

 

「なにを永遠の別れみたいに語ってんだよ。たとえお前の身体が限界なんだとしても、それを俺が認めると思うのかよ」

 

「知って……いたのか。確かにこの肉体はあと一月もてばいい方だ。何時死んでしまうか分からない位、この身体は不安定だ。だから、私は最後の最後まで主はやて達と共に生き抜く」

 

「いい覚悟だ。でも、俺はお前が死ぬ事を認めない。あの時代から残された友を俺がみすみす見捨てると思うか?ーーーーさあ、これがこの街で起こす最後の奇跡だ。刮目して見るがいい!」

 

 

「世界が産まれた。命が産まれた。思いが産まれた。想いが産まれた。全ては神からの贈り物。

 

なれば人よ。求めよ。渇望せよ。さすれば、我らが天主の輝きが自ずと浴びせられるであろう。

 

来たれ、神々の祝福よ。今ここに汝らの救いを求めている者がいるならば、汝らが威光をこの世に知らしめよ。

 

Briah(創造)ーーーーDer Segen von Göttern(神々の祝福)

 

白き光の粒が天上より降り注ぐ。それは雪のように仄かな物でありながら、まるで一度の奇蹟のような輝きを放っていた。だが、今宵この時間にこの奇蹟が与えられるのはたった1人だけ。その奇蹟を与えられた者は、新たな生命(カタチ)へ変化する。

 

「お前はまだ終われないだろ。新たな生命を背負って、生きていけ。管制人格はまた新しく作るんだな。ではこの一言を残してお別れとしよう」

 

 

Auf Wiedersehen(さようなら).Überdies, treffen wir uns im Tag davon wenn(また何時の日か会いましょう)




どもども、シュトレンベルクです。

リリなの一時終了。リィンフォースが来ると思った皆様、残念でした。リィンフォースは来ません。なんせナハトヴァールの呪いを消しただけなのに、夜天の書が完全に直っている筈がないから!

ここから多少空白期を過ごします。具体的に言うと、北欧に行ったり京都に行ったり原作介入したり……一誠は割と忙しいです。その後にD✖D編に突入します。グレモリー眷属が出て来るのを楽しみにしている方々、もうしばらくお待ちください。

それでは、皆様また次回お会いしましょう!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。