リリカルD×D~狩り人の戦記~   作:シュトレンベルク

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喫茶店『翠屋』

 翌日、散策の意味も兼ねて早朝から走っていた。すると前方から男女、おそらく高校生の、兄妹かな?が来ていた。それにしてもあの男の人は強いな。

 

『そうだな。人間にしては強いな。下手な上級悪魔と同レベルじゃないか?』

 

 俺はフードを被っていたが、向こうの男の人もこちらに気付いていた。そのまま何もせずに通り過ぎたが。

 

「あんな小さい子も走ってるんだ……。凄いね、恭ちゃん」

 

「感心していてどうする。ペースを上げるぞ(何なんだ?あの子供は。少なくとも俺じゃあ勝てる気がしない。一体どんなレベルの修行をしていたんだ?)」

 

「ああっ!ちょっと待ってよ!」

 

 仲睦まじいというかなんというか。その後は図書館や駅などの重要な場所を見て回った。そして昼時になると、とある喫茶店に結構人が集まっていた。

 

「『翠屋』か……。まあ、別に興味もないから別に構わないんだけど」

 

 そう思って踵を返そうとすると、危うく人にぶつかりかけた。おっと、危ない危ない。謝ろうと思って顔を上げると、朝に見かけた兄妹の妹さんだった。

 

「あれ?君、今朝走ってた子?……もしかして迷子?」

 

「違います。つい最近来たばかりなので地理を把握しようと思って走っていただけです。迷子なんかじゃありません」

 

「そ、そっか。って今までずっと走ってたの?それじゃあ、お腹空いてるでしょ?ちょっと付いて来て」

 

「あ、ちょっと!」

 

 いきなり手を握られたら、無理やり引っ張って連れて行かれた。いきなりやられた物だから、体勢が崩れてしまった。

 

「いらっしゃ、って美由紀か。その子はどうしたんだい?」

 

「ただいま、お父さん。この子、今朝言ってた子だよ。今までずっと走ってたんだって、それでご飯でもどうかな?と思って」

 

「無理やり連れてきたら駄目だろうに……。悪いね、僕は高町士朗。この喫茶店『翠屋』のオーナーをしているんだ。君は?」

 

「……兵藤一誠です。ただ通りがかっただけなのに連行されるとは思いませんでした」

 

「ははははっ。それは申し訳ないね。……ところで何を食べる?美由紀の所為とはいえ、こちらも迷惑をかけたからね。一品くらいはおごるよ」

 

「それじゃパスタの……ボロネーゼで。あと、食後にコーヒー」

 

「かしこまりました」

 

 それでしばらく料理が出てくるのを待っている間、店の中をぐるりと見渡してみた。なんとなく温かい雰囲気がこちらにも伝わってきた。

 

「そう言えば兵藤君、ご両親に連絡とか入れなくても大丈夫かい?」

 

「ああ、大丈夫ですよ」

 

「?もう連絡済……って事はないんだろう?何でだい?」

 

 

「今更俺のことを心配してくれる存在なんていやしませんから。まあ有り体に言うなら、死んでるって事です」

 

 

「…………済まない。不躾な事を訊いてしまった」

 

「気にしてませんよ。亡くなったのは四年も前の事ですし、それからはずっといろんな所を転々としてただけですから」

 

「……ちょっと待ってくれ。君はいったい今何歳なんだい?見たところ十歳に行くか行かないか位だと思うんだが……」

 

「ええ。俺は九歳ですけど、それが何か?」

 

 なんかオーナーさんがとんでもなく驚いたような顔をしていた。なんかおかしなことを言ったのか?どう思う、ドライグ。

 

『普通九歳児が天涯孤独の身だと知ったら驚くし、気の毒だと思うだろう』

 

 そんなもんかな?ずっとそんな生活を続けてたから、別におかしくはないと思うんだが……。

 

「はい、どうぞ。士朗さん、少し不躾ですよ」

 

「あ、ああ。済まない、桃子」

 

「私ではなくこの子に言って下さい。……えっと、兵藤一誠君だったかしら?」

 

「はい?」

 

 パスタの皿を置いたのはやたらと若々しい人だった。何だろう、オーナーの親戚?或いは娘さん?ぎりぎりで……母親?かな。

 

「初めまして、高町桃子です。士朗さんの妻です」

 

「初めまして、兵藤一誠です。この度はここに引っ越してきたので散策してた所を、娘さんに捕まりました」

 

「あ、あははは。ごめんなさいね。ところで一誠君はどこに住んでるの?」

 

「?あの廃ビルですけど?」

 

 俺が指さしたのは、ちょうど窓から見える俺が今住んでいる住居だった。それを見ると、さらに二人が固まった。……そんなにおかしいかなぁ?

 

「えっと、あそこって確か半年くらい放置されてた場所じゃありませんでした?士朗さん」

 

「あ、ああ。……本当にあそこに住んでいるのかい?」

 

「はむ、はむ。……だからそう言ってるじゃないですか。なんでわざわざこんな事で嘘つかなきゃいけないんです?いやあ、実は四年前に両親が死んだ時に俺も死んだとみなされたみたいでね。俺の戸籍って存在しないんですよね」

 

 俺があっけからんというと、唖然と言った表情になっていた。別に今まで困った事もないし、問題なんか無いんだけどな。

 

『相棒はどうも常識という部分で抜けている部分が多すぎる気がするがな』

 

 そんなの裏の世界じゃまったく役に立ちやしないじゃないか。何時如何なる戦える状況にしておく必要があるんだろう?

 

『それはそうできるならそれにこした事はないんだろうが……』

 

「一誠君、悪い事は言わないからここに住みなさいな。少なくともあそこほど不衛生じゃないわよ?」

 

「そうだな。それに困った時も頼りやすいしな。その方が良いだろう」

 

「そこまで迷惑をかける訳には行きませんよ。貴方達には貴方達の生活がある。それを俺が阻害する訳にはいかなでしょう」

 

「そんなこと気にしなくてもいいのよ?」

 

 

「お気づかいには感謝します。それでも、これは俺が気にする問題ですので。ご馳走様でした。美味しかったです」

 

 

「あ、ちょっと!」

 

 俺はその場にお金を置くと、ダッシュでその場を離脱した。面倒くさい事になったな。

 

『俺はあの二人の申し出に乗っても良いと思ったがな』

 

「そりゃ精神衛生上の観点から見ても、その方が良いだろうさ。でも、俺は世界最強の赤龍帝なんだぜ?」

 

『狙われないため、か?』

 

「正確には狙わせないため、だな。俺個人なら対処できるレベルでも、周りの人間が巻き込まれちゃ話にならないからな。俺個人ではできない事もあるさ」

 

『相棒が思っているほど弱くはないと思うが?』

 

「そういう問題じゃないさ。これは俺個人の問題なんだからな」

 

 そのままスーパーで買い物を済ませると、道に青い宝石が落ちているのを見つけた。持ってみると、俺の身体を支配しようとしてきたが、一瞬で制御してやった。一体、何なんだ?これは。そう思いながら、暗くなった道を歩いた。

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