アースガルズに到着してから早数日が経過していた。シエナはヴァルキリーたちに魔法を習ったりしていた。北欧の魔法は割と難易度が高いんだが……まあ、問題にする程でもないだろう。
八舞は特にやる事もないのか、書庫で本を読んでいた。……まあ、暇そうにしている八舞を見て挑んできた神を返り討ちにするとかして、暇を潰すことはできてるみたいだけど。
「悪いね、爺ちゃん。急に訪ねて来たのにいろいろとお世話になっちゃってさ」
「ほっほっほっ、気にすることはないじゃろ。今のところ、何処からも苦情は出ておらぬし神も暇そうにしておったしの。いい刺激になるじゃろ」
「それなら良いんだけどね……それにしても、爺ちゃんはまったく変わらないよね。部下のヴァルキリーにセクハラすることも含めてさ。昔はこんな風には感じなかったけど、中々どうして楽しいもんだね」
「お前さんは本当に変わったもんじゃの。トールやフレイヤが最初にお主を見た時、本当にお主かと疑ったほどじゃからの。身体的にも精神的にも本当に変わったもんじゃ」
紅い髪に赤と金の瞳。しかも神格のような力を得ていることに驚きはしたが、なんてことはない。たとえ外見が違おうとも、その精神は変わってはいなかった。いや、一回りも二回りも成長していた。それはブリュンヒルデとの覇気のぶつけ合いから理解していた。昔、此処に来た時と変わっていないならあんな楽しそうな表情は浮かべないし、あそこまで圧倒的な覇気を放ってはいなかった。
昔、此処に来た時の一誠は莫大な力を宿しているが道に迷った子供のような雰囲気だった。何をすれば良いのか分からず、かと言って何もしなくていいと言われても納得できない。はっきり言うなら……力の振るいどころを求めているような状態だった。自分たちでは教えることが出来なかったそれを、一誠は自分で掴んで戻ってきたことにオーディンたち北欧の神々は喜んでいた。
「それで一誠よ、お主は一体何をしておったのじゃ?風の噂でいろんな話を聞きはしたものの、やはり此処は本人に聞いた方がよかろう」
「別に構わないけど……一体何の話を聞きたいわけ?俺はそんなに上手く喋れる自信がないから、質問してくれれば答えるけど」
「ふむ……いろんな場所で戦闘や救助活動をしておったと聞いたのじゃが、それは真かの?」
「ああ……確かにしてたけど、それがどうかしたの?」
「一誠よ、お主今まで一体どれだけの者を殺しておる?」
「う〜ん……十や二十じゃきかないぐらいには殺してると思う。でも、俺はそれ自体は別に後悔してないよ。大体は身の程を知らない雑魚ばっかりだったし、私利私欲のために殺そうとしている連中だったから」
「そう、か……。なら儂から言うことはそんなに無いじゃろ。でもの〜……三大勢力と関係を持ったと聞いた時は実にたまげたぞ。孫の余りの交友関係の広さにの」
「あはは……関係って言ったって精々傭兵と依頼主程度の関係だよ。俺は中立でなくちゃいけないからね。俺が何処かの組織に属すれば、それだけでパワーバランスが崩壊しかねないし」
「世界最強の肩書きも中々面倒じゃの。何処かの組織の庇護かに入ればそれだけで大分楽になるじゃろうに。しかもお主は世間的には死んでおるんじゃろ?ならば尚更では無いのか?」
「あっても俺みたいにあっちにふらふら、こっちにふらふらしているような人間には邪魔なだけさ。飛行機も船も俺には無用の長物だしね。行きたい場所には自分の手で道を切り開いて行くさ」
そのスタンスは1人で旅をしていた頃から変わらずに続いていた。自分の行きたい場所には文字通り切り裂いて行っていた。すべての
とはいえ、上から街を見下ろす行為にまったく興味がない訳ではない。まあ、いつか乗れるだろうと考えている一誠はすぐに乗りたいとは考えていないのであろうが。鉄の塊が大量の人を乗せて飛べることに疑問はあるがたったそれだけの事だからだ。
「爺ちゃん、真面目に聞くけどさ。……ロキの奴は何処に行ったんだい?どうせ息子も連れて行ってるんだろうし、注意が必要なんだけど此処にはいないみたいだしね」
「彼奴が何処におるのかはさしもの儂でも分からぬよ。注意が必要なのはそうじゃが、敵対せぬ限りは彼奴も何もして来んよ」
「そりゃあ、そうなんだろうけどさ。あいつの琴線が何処なのか、いまいち俺には分からないんだよ。面白半分で敵になりそうな気もするし、俺的にはもうフェンリルの相手はしたくないんだよ」
あの無駄にしぶとい狼の相手をしたくない。あれならば確かに神を殺せるだろうけど、どうして誰もフェンリルを縛っておかないのか分からない。二天龍クラスの実力を持っているあれに簡単に勝てるなんて思ってる奴はいないと思うんだけど……
「縛ってもロキは放っておかん。グレイプニルを造るのとてタダではないのだ。造っては壊されてはお話にならん」
「トール……それならロキ自体を何処かに縛り付けてればいいじゃないか。いくら神格だと言ってもそこまでされればさすがにどうしようもないだろ。……まあ、いろんな意味で無理だろうけど」
主要な神格であるロキにそこまでするには理由が必要だが、現段階でロキはそこまで大きな悪事をしているわけではない。それなら俺が口を出せるわけがないし、そんな事をする資格もない。
「話は変わるが、お前の従者のお嬢ちゃんーーーー八舞とか言ったか?強いな。まさかこの儂があんな女子に傷をつけられるとは思わなんだ」
「あんたまさか……ミョルニルを使ったりしてないだろうな?オリジナルのミョルニルをあんたが使ったりすれば、喰らった奴は唯じゃ済まないんだぞ?」
「安心せい。ギリギリじゃが使うとらん。なんとかスピードを見切れて捕まえることが出来たわ。まったくなんちゅう速さじゃ。全力を出したお前ほどではなかったが、それでも苦労したぞ?」
「一撃必殺のパワータイプのあんたに捕まってちゃ駄目だな。もうちょっと訓練する必要があるかな?」
「お主も中々酷なことを言うの。儂は雷神じゃぞ?雷とほぼ同速度で移動出来る儂でも追いかけきれんお主が異常なだけじゃぞ?光を超える速度ってなんじゃい。生まれてこの方、そんな輩は一回たりとて見たことがないわい」
「もし、あんたと同レベルの速度で動ける奴が俺たちの敵にまわったらそんな泣き言は通用しないだろ。何時如何なる時にでも対応出来るようにする。これは必要な事だし、当たり前な事だ」
「トールと同じ速度で動ける奴、のう……そんな輩がもしこの世にいると言うなら見てみたいものじゃよ。世界最強の存在は速度など関係なく威力で押し潰して来るからの。お主のようなタイプは珍しいことに変わりはないぞ?」
「力が強ければいいってもんじゃない。速度が速ければいいってわけでもない。要するにバランスだよ。バランスを欠いた奴ってのは弱いもんだよ。実際、俺は速度特化だけどパワーもあるし、トールのおっさんだってパワー特化だけどスピードもある。強い奴ってのは平均的に強いのさ」
「偏りがあるようでは強いとは言えない、か。その理論でいくとオーディンは弱いことになるのではないか?」
「ほう……?いい度胸をしておるじゃないか、トールよ。儂だって主神じゃぞ?軽々しく弱いなどと言われてはたまらんのう」
あ〜あ、この老人2人は……まったくこんなのが北欧の軍神だと一体誰が思うんだろうな?明らかにしょうもないことで争っているようにしか見えないな。肩を竦めながら、2人の仲裁に立つ俺だった。
どもども、シュトレンベルクです。
ロスヴァイセは?と思っていらっしゃる方もいると思いますので、説明しておきますが現時点ではロスヴァイセはオーディンの護衛ではありません。
ですので現時点では一誠との絡みはなく、むしろシエナにいろいろと教えている立場にいます。ヴァルキリーに大人気なシエナでした。
さて、次はどこにしようかな〜?と考え中の今現在なのでした。この絡みをお願い!と言うお便りもどしどし送ってきてください。出来る限りなんとかしますので。
さて、それではまた次回!