さらに数日間北欧で過ごした俺たちはシエナが北欧魔法を会得したのを確認すると、アースガルズを出発した。そこからいろんな土地をまわった。人外に襲われていた人を助けたり、美食巡りをしたりしていた。
「しっかし、こんな場所でお前に出会うとは思わなかったぜ。そうは思わないか?デュリオ」
「いや〜これも主のお導きって奴じゃないですか?アーメン」
「っていうか教会屈指の
「そんなこと言いだしたら、あんたもそうでしょ?それに今の俺は美食巡りしてるだけなんですから問題ありませんって」
デュリオ・ジェズアルドーーーー教会屈指の
「お前、俺は中立だから良いんだよ。ミカエルさんたちに怒られるのは俺じゃなくてお前なんだぞ?……とはいえ、そんな事をお前に言ってもほぼ無意味に近いんだろうな。じゃあな、デュリオ。久しぶりにお前と飯が食えて楽しかったよ」
「もう行くんだ。それじゃあ、主の導きがあらんことを。アーメン」
ギリシャに来たのは有名な店で食いたかったから。別にオリンポスの神々に会いに来たわけではないから、オリンポス山を登るつもりもない。まだもぐもぐと飯を食べている八舞とシエナに金を置いていくと、散歩していた。
外国人が多くいるこの街でも、俺のような外見は珍しいのか注目を集めていた。その類の視線を無視しながら歩いていると、急に後ろからぶつかられた。何かと思ったら当たり屋という奴だった。
「痛ってぇな。もうちょっと周囲を気にしながら歩けや。俺の肩にヒビが入っちまったじゃねえか。慰謝料払えよ、なあおい、聞いてんのか?」
「……今時珍しいぐらいのチンピラだな。肩にヒビが入ったって?悪いけど確認させてくれよ。良いよな?別に。本当にヒビが入ってるのか確認するだけなんだから」
チンピラの肩を掴みながら徐々に力をこめはじめる。徐々に痛みは増していき、肩から軋む音すら鳴り始めた。ふむ、もうちょっとでヒビが入るかな?チンピラが何か言ってるけど、無視して力を込めた。そして折れる寸前で力を込めるのを止めた。
「これに懲りたら、今後こういう事はやらない事だ。人は外見じゃ判断出来ないんだからね」
「て、てんめぇ……覚えてろよ!」
「無理。君みたいなチンピラをずっと覚えているなんて滑稽だよ。そんな事をしている余裕なんて俺にはないからね」
誰にも見えないように肩を治した後で散歩に戻った。所々で魔力を感じる。挑発してるんだろうな……一瞬枷付きではあるものの全力で魔力を放出させて吹き飛ばした。まったく……面倒な事をしてくれる。
ここ最近では魔術も広がり始め、魔術結社ができたりしていた。その所為か知らないが、旅の途中に俺に教えを乞おうとする奴が後を立たない。正直な話、面倒くさいんだよな……。どうして自分で考えずに教えてもらおうとするのかね?
魔術は神話を元にしているんだから、神話から自分で魔術を創れば良いのに。原初の魔術師と言われても、魔術なんて物は探せば幾らでも題材がある。俺は十字教、つまりはキリスト教を題材にしている物が多いが、それでも他の神話を元にしたりしている。例で言えばルーン文字を使った魔術だ。
俺をわざわざ誘導させようなんて甘い事はさせねえよ。誰が向かって来たって関係ないけど、こんな風に自分からこない奴にする事なんざ何もない。俺は元来た道に戻って八舞たちを迎えに行こうとした。あのチンピラがいるかもしれないけど……どうでもいいか。
空を見上げてみると、雲一つないような快晴状態だったのに真っ黒な雲が集まっていた。そっか……一体何の用なのかと思ったら、俺を殺して最強を名乗ろうとでも思ったのかね?ーーーー本当に甘いな。むしろ馬鹿じゃないのか?
「そんな魔術でやられる訳がないだろうに……そんなチンケな術式で如何にかなるとでも思ったのか?」
術式分類ーーーー広範囲殲滅魔術。街ごと俺を吹き飛ばそうって訳か。術式をまとめている場所を見つけようとしていると、一気に雲がバラバラに引き裂かれた上に術式破壊。さらに潜伏していた魔術師たちを凍らせていた。ーーーー俺ごと、だがな。無論、魔術障壁で防いだが。
「危ねえな、もしこれで死んでたらどう済んだよ。デュリオ。……まあ、
「俺は一々狙いをつけるのが面倒なたちでね。一応謝っておくよ。でも協力したんだから礼の一言ぐらいは欲しいもんだね」
まあ、効かない事が分かっているから撃ったんだろうけど。天候を操る
「それでなんでまた狙われてるんだ?……いや、君なら狙われる要素しかないよね。なんで皆、世界最強なんて地位を欲しがるんだろうね?美味しいご飯が食べられればそれだけで満足だと思うんだけど」
「最強を目指したがるお年頃なんだろ?なったらなったで面倒くさいんだけどな。まあ、どっかのお馬鹿さんな魔術結社が狙ってきたんだろうけど、さ。遺体は粉々にしといてくれ。少なくとも俺には無用の長物だからな」
「ちゃっかりと後始末もさせるとは……さすがと言うかなんと言うか。それじゃあ……はい」
デュリオが指を鳴らすと何処からか氷が粉々に砕け散った音が聞こえてきた。こんな音を聞くことが珍しいからか、少し感慨深い物があるな。所詮は氷漬けの遺体が粉々に砕け散った音だけど。デュリオと別れて店に戻ってくると、まだ八舞とシエナはもぐもぐと飯を食べていた。しかも追加で注文していたらしく、置いておいた金だけでは足りなくなっていた。どんだけ食うんだよ……。従者の暴食具合に若干恐れをなしていた。