いろんな場所を転々とする日々を送っていたある日、ミカエルさんから連絡がきた。珍しいなと思いながら、話を聞いていた。依頼の内容は教会所属の聖剣使いを鍛えて欲しいという物だった。
「なんでまた俺にそんな依頼を?俺は別に誰かに物を教えるのは上手じゃありませんが……?」
「そうでしょうか?私が聞いた話だと、兵藤くんの授業は金を払ってでも受ける価値があるものだ、と聞いたのですが。……それを抜きにしても、君に鍛えてもらえばそれだけで相当な力になると思うのです」
「相当な力に、ねぇ……俺はそこまで他人に俺の力を押しつけたことはないと思うんですけどね。それで、教える奴ってのは一体誰なんですか?」
教会の聖剣使いって言うと、大抵の得物はエクスカリバーと見て構わないだろう。大戦中に七本に別れた聖剣。天閃、擬態、破壊、透明、祝福、幻影、そして行方知れずの支配。これのどれかを教えることになるのかな?
「ゼノヴィアと紫藤イリナという2人組のペアです。ゼノヴィアはデュランダルと
紫藤イリナ……昔一緒に遊んだりした幼なじみという奴だ。そっか教会のエクソシストになってたのか。まあ、別に教えたところで別段俺に害があるわけでもないし、構わないかな。
「分かりました。その依頼、受諾しましょう。その代わり、住居を用意してもらいたいんですが……出来ますよね?」
「それはもちろん可能ですが。来るのは何時ぐらいになるでしょう?それによって変わってくるのですが……」
「う〜ん……大体一週間弱ですかね。それじゃあ、これから仕事なので切りますよ」
「はい。よろしくお願いします。それでは」
俺は通信を切るとほぼ同時に、八舞が出てきた。依頼のための情報収集をしてもらっていた。教会の膿取りの仕事をしている真っ最中なのにその教会から仕事が来るとは……因果な物だな。
「どうだった?当たりだったか?」
「はい。やはりあそこの研究所は聖剣使いの研究を行っている施設のようです。何十人という単位の子供が集められ、非人道的な実験を繰り返しているようです。……どうされますか?」
「私見で言わせてもらうなら、今すぐにでも叩き潰した方がいいな。こういう類のことは電撃戦でケリをつけた方がいいだろうし、これ以上子供が傷ついていくのを放置するのは得策じゃない。……よし、直ぐに潰すぞ。手遅れになる前にな」
聖剣使いの因子の研究ーーーー聖剣を使える人間に宿っている特定の因子。それの研究を行っている施設の調査、及び危険性次第では破壊の依頼を誰かからかはわからないが出された。受けた時は半信半疑だったが、いざ調査してみるとただの人体実験だった。
確証を得られるまでは動けなかったけど……間違いない。これは一部の連中の独断だ。もしこれが天界の連中の総意だったのなら、俺は天界を滅ぼさなきゃならなかったんだが……とりあえず一安心だな。
研究所に着くと
とある扉を蹴り開けると、毒ガス満載の部屋に大量の子供がいた。毒ガスを翼で消し飛ばしつつ浄化を開始した。半分近くはもはや手遅れだ。手の施しようがない。
俺の死者蘇生の術には二つ条件がある。まず第一に肉体が清潔であること。傷がない状態と言えば分かりやすいだろうか?第二に魂がまだ残留していること。猛烈な執念を持って生きているのが難しいというのに、これは中々酷な条件だと言えるだろうな。
「八舞!お前は逃げてる研究者の連中を皆殺しにしろ!それが終わり次第、資料を集めてくれ!」
「分かりました。……邪魔だ!」
「ドライグ!」
『Transfer!!』
まだ生きている子供全員に力を譲渡させる。苦しげな表情はなんとか穏やかな物に変わりつつあった。それに胸を撫で下ろしたところにいくらかの書類を持った八舞が現れた。
「すいません、マスター。1人取りのがしてしまいました。それとこれが聖剣使いの子供たちの研究資料です」
「ありがと、別に失敗したからって悔やむ必要はないさ。……聖剣の因子が足りないなら抜き取り他の者に与えれば良いのではないか、か。それがこの子達を殺した理由か。極端に聖剣の因子が少ないと思ったらそういうことか」
「この後はいかがなさいますか?この子達の処遇のこともそうですが、これからの道行きも決めねばなりません」
「まずは死んだ子供たちを埋葬しよう。このまま放っておくことは出来ない。そして次に教会にこの件を申し立てる。それまでこの子達の身柄は俺たちが預かるし、終わった後もなんとかしよう」
利用されるだけ利用されてそこで終わり、なんてあっちゃいけないんだ。助けられる命は助ける。切り捨てられてしまった他の命の為にも、俺は助けなきゃいけない。助けられる手があるんだから。