それから支給された寂れた建物を時間逆行の魔法で建物自体の強度を戻した後、この魔法は汚れている場所を元に戻すような類の術ではないため皆で大掃除をした。と言っても、広いだけあって直ぐには終わらないし時間も掛かった。
そして今日、俺が教える筈の聖剣使いとの対面をする事になった。実力的に見ておそらくそこそこの中級悪魔とほぼ同レベルと見ても良いだろう。神器を持っているならまだしも、武器だけならやはり基礎の身体能力の差という物が大きいからだ。
「すまないな。まだ此処に慣れていない所為か遅れてしまったようだな。ーーーー君たち2人の教官を務める事になった、兵藤一誠だ。よろしく」
「初めまして。ゼノヴィアだ。……イリナ?どうしたんだ?挨拶しなければ失礼だろう」
「一誠、くん……?本当に一誠くんなの……?」
「会うのは大体八年ぶりと言ったところかな?ーーーー久しぶりだな、イリナ。ああ、本当に久しぶりだ。また会えて実に嬉しいよ」
あれからずいぶんと長い時間が過ぎた。こうやって旧友に会うのがとても懐かしく感じるほどに。俺の生活は大分騒がしい所為で特に懐かしく感じてしまうな。
そう思いながらイリナの視線を受け止めていると、泣きながら抱きついてきた。抱きとめつつ、髪と背を撫でながらなだめていた。ゼノヴィアは反応できていなかったがこればかりは勘弁してもらおう。死んでいたと思っていた幼馴染が生きていたというのはそれだけで嬉しいからな。それから数分後、イリナは自分から離れていった……顔は真っ赤だったけど。
「……さて、感動の再会が終わったところでまずはお前たちの実力を見させてもらう。エクスカリバーは持ってきているな?」
「イリナは放っておいて良いんですか?あまり話を聞いていないようですが……」
「まあ、その内戻ってくるだろ。まずはゼノヴィアの方から調べるとしようか。ーーーー試験内容は単純だ。かすらせても良いから俺に一撃を与えてみろ。それだけだ」
「……それだけ、ですか。舐められたものですね。いくら貴方が強くてもかすらせることぐらいはできます。侮るのも大概にしてください」
「実力を測る為の試験だろうが。舐められたくないと言うなら、お前が速攻で当てれば話は簡単だろう。怒らずともたったそれだけの話だろう?」
結果から先に言うと、三十分の間ゼノヴィアは当てることが出来ず体力切れで試験終了。イリナも
「う〜ん……分かっちゃいたけどこんなにか。って言うか、やっぱり思った通りだったな。何とか矯正していくか」
聖剣を上手く扱いきれてないし、なにより因子を活用していない。ゼノヴィアは力任せだし、イリナは攻撃に意外性がない。これじゃあ全然駄目だな。ゼノヴィアはデュランダルを扱えるだけの因子があるんだから、もうちょっと活用してもらわないと困るな。
「はい、休憩終了。これからの指導方針と問題点をあげていくからな。まずはゼノヴィア。お前は
「は、はい……分かりました」
「次にイリナ。お前も因子の活用を視野に入れて修業するけど、
非凡な剣はどれかと聞かれれば、俺はおそらく天閃と祝福と破壊だと答えるだろう。他は透過する剣に、幻覚を見せる剣に、自由自在に変化する剣に全てを支配する剣だ。でも非凡であることは、ひいては突き詰めやすいことにも繋がる。意外性のある剣と言うのも、それはそれで大変なのだ。
「ゼノヴィア、
はっきり言おう。俺には聖剣に対する適性という物がない。ただ
「…………」
「お前が突き詰め続ければ、これぐらいは出来るようになるしデュランダルならこれ以上の事だって簡単だろう。なんせ純粋な破壊力ならデュランダルに勝る聖剣はそうないからな」
「……はい、分かりました。努力を重ねればこのレベルまで至れるんですよね?」
「ああ、もちろんだとも。そしてイリナ、
上手く使えば、剣を鋼糸状にしてトラップとして機能させて相手を殺す事も可能だ。いくつもアイデアが思い浮かぶぐらい万能性に優れた剣だってことだ」
そして教会にある聖剣の中では一、二を争うほどの難易度を持っている。器用な奴が使う代物だから、扱いは割と難しい。持ち運びも便利だし、汎用性という一点ではこれほどの剣はそうそう無いだろう。
「さて、修業自体はさっきとあまり変わらない。だが、俺は防御の魔法陣を展開するから因子を引き出さないと当てられないぞ。いきなり二対一をするのではなく、一対一で聖剣の扱いと因子の活用法を学んでもらう。二対一になってから俺は武器を持って相手をするから」
まだ聖剣に振り回されている現段階で二対一の戦いをするのは危険だ。因子の活性化をさせて戦えば聖の力の強化と斬れ味が増す。下手すればそれだけで死にかねないから、今は力をしっかりと制御させる段階だ。
「さて、まずはゼノヴィアからだ。イリナはその間、休んでおけよ。地面に膝か背中がついた段階で交代とするから。それじゃ……来い!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
こればかりは当たっては砕けるを実践してもらう他ない。そうやって因子を活用する方法を見つけだしてもらうしかないだろう。俺では感覚が違うしな。俺のは共振を起こして聖剣本来の力を引き出すという手法。ゼノヴィアが、イリナがどんな方法なのかは俺には分からない。
「まだまだ!全然活用しきれてないぞ!もっと自分の中を探ってみろ。そうじゃなきゃ力なんて引き出せないぞ!」
牽制のつもりか飛んできた拳を掴んで一気に投げ飛ばした、受け身はちゃんと取れたようだがそれでも衝撃はあったのだろう。苦悶の表情を浮かべながら呻いていた。
「おーい、大丈夫か?交代だから暫く休んでおけ。……立てない?脳震盪でも起こしたか。しょうがねえな」
俺は右手で
「あんまりやんちゃだと、振り落としちまうぞ?良い子は大人しくしてるんだな」
そう言うと、顔を真っ赤にしてゼノヴィアは黙った。ちょっと離れた地面に座らせて戻ると私、怒ってますみたいに頬を膨らませたイリナが待っていた。相変わらず子供っぽい奴だなと思いながら稽古をした。結局日が暮れるまで一度たりとてイリナとゼノヴィアは攻撃を与えられなかった。