「今回の任務はSSランク級はぐれ悪魔のゼファードとそれに追随するAランク級はぐれ悪魔数体の討伐、及びもしいれば被害者の救出だ。お前たちはAランク級の相手をしろ。分かったか?」
「そういう連絡はもう少し早くしてほしいな。いきなりはぐれ悪魔の討伐だなんて言われても困るよ」
「相手は待ってくれやしない。この瞬間にも救われるべき信徒が襲われていたらどうする。いや、信徒じゃなくても救われるべき民だ。俺たちが動かない理由にはならない」
イリナとゼノヴィアに招集をかけて他の祓魔士が揃う前に現場に急行した。正直、嫌な感じがする。何故相手は襲撃をかけてきた?襲撃された場所はヴァチカンからそう離れてはいない場所だ。そんな場所を襲撃する意図はなんだ?
目の前に立ちふさがる魔獣の首をすれちがいざまに切り飛ばし現場に急いだ。現場につくとそこはもはや地獄絵図だった。そこらへんの石ころのように放置される遺体に犯されている女、悲鳴をあげながら殺される子供。もはや完全に焼けている家屋。
「あん?なんだ、おま……」
俺たちを見つけたはぐれ悪魔の首を跳ね飛ばす。正直な話、その時にはもはや思考はあまり動いていなかった。ただ目の前にいるクズ共を殺すことしか頭になかった。その時の俺はまさしく殺意に呑み込まれた獣だった。とはいえ、すぐさま親玉のSSランク級はぐれ悪魔ゼファードが目の前に現れてくれたおかげでそれ以外は殺さずに済んだが。
「おうおう、
「もうなんでも良いからさ、とっとと死ねよ。お前ら」
神速の一撃で両腕を切り飛ばした。だが、その腕はみるみる内に再生していった。ものの数秒も経たずに完全に治っていた。これはーーーーフェニックスの再生能力か。面倒だな。
「おおう、速い速い。速すぎて一瞬、眼が追いつかなかったぜ。大分高位の
「……ゼノヴィア、イリナ。作戦通りに行動を開始しろ。こいつは俺との戦いをご所望らしいから、俺がやる。だからさっさと行け」
「……了解。行きましょう、ゼノヴィア。ここはイッセー君に任せても大丈夫だから」
2人が走っていったのを確認しつつ、光の剣をしまいアリファールとラヴィアスを取りだして構えた。目的が何なのか知らないが、少なくともこいつは強者との戦いをご所望のようだ。その傲慢さを抱かせたまま殺してやる……!
殺意を眼に宿した俺の瞳は赤と金の色から蒼と翠の色に変わっていった。身体が昔よりも成長し安定してきたからか、
『怒るのは分かるが、殺意に支配されるな。それと頭に血が昇りすぎだ。少し落ち着け』
『エレオノーラの意見に賛成ね。貴方も常々言っていたでしょう?身体は冷静に、しかし心は滾らせろって。今の貴方に言えることよ』
もちろん意識がより深く同調し力を引き出せるということは、こんな風に
「でも、俺はこいつが許せない。自分の欲でここまでの被害を出したこいつらを、俺は放っておく事なんて出来ない。それなら……全員を此処で全滅させる」
「何をさっきからごちゃごちゃ言ってんだ!戦うんだろ?あんまり俺を退屈させてんじゃねえぞ!殺るんだろ?そのための策だって持ってんだろ?それなら戦えよ。あんま俺を萎えさせてんじゃねえぞテメェ!」
「はあ……本当にうるさい上にウザい。何を考えてんのか知らねえけどさ、お前は俺と戦いたいんだろ?身の程知らずはよく吠える。文句いうぐらいならそっちからかかってくれば良いんだよ」
「上等だぁぁぁぁ!後悔するんじゃねえぞ!」
相手の戦闘スタイルは不死身という利点を使った魔力を帯びての近接格闘に悪魔らしい魔法。それにSSランク級に相応しく、下位の最上級悪魔クラスの戦闘技能と戦闘を楽しみながらもちゃんと戦略だてて行動している。でもーーーー
一発も攻撃が当たらない。ゼファードの攻撃はまるで何処から攻撃が飛んでくるか分かっているかのように紙一重で攻撃を回避し、一誠の攻撃は何処に逃げるか分かっているかのように面白いと思えるほどに攻撃を当てていた。
「馬鹿な!そんな事があるはずがねえ、俺の攻撃がまるで当たりゃしないのにお前の攻撃は面白いように当たる?どんなやつにだって勝ってきたんだぞ!?俺は最強のはずだろ!」
「ああ……なるほど。お前は今まで、
いくらSSランク級の力を持っていたとしても、今まで格下の存在としか戦ってこなかったゼファードにとってこれは想定外にもほどがあった。猫だと思っていた存在が実は屈強な獅子であったかぐらいの違いがある。
事実、さっきからゼファードの身体はがたがたと震えていた。本人は武者震いかなにかかと勘違いしていたようだが、これは相手の絶対的なまでの強さ故に身体が起こしていた危険信号だったのだ。
だが、今まで負けた事のない者がその違いを理解できるはずがないのだ。結果的にみて、ゼファードはそもそもの選択を間違っていたと言わざるを得ないのだ。
「もうどうでも良いよ。お前の底は知れた。せめてもの慈悲だ。俺がちゃんと殺してやるから安心しろ。……まともな方法じゃないがな」
恐怖のせいで再生能力すらもまともに機能しなくなったゼファードの胸元にラヴィアスを突きたて、ただぼそりと呟いた。
ーーーー
突きたてられた槍を中心に身体は凍てつき、五秒とかからずに見事な氷像が完成していた。それを見ても特に感慨を抱くこともなく、アリファールを振り上げまっすぐに振り下ろして氷像を粉々に破壊した。
「……所詮は欲に溺れた存在か。他愛もなかったな。こんな奴にここまでされるとは……ミラ、人の生体反応とか分からないか?」
『無理ね。私にはそこまでの精密な動作は無理。いえ、私だけじゃないわね。私以外の者にもできる訳がない。いくら同調率を高めていると言っても、私たちにそこまでの精密動作をするなんて不可能よ』
流石にそこまでは期待出来ないか。と言っても、被害者の数が多すぎる。焼死体になっている者もいる現状で、生きている人間が死んでいる人間よりも多いとは到底思えない。悪魔も順当に駆逐できているようだし、まずは後続の
そう考えていると、山の方から強烈なまでの冷気を感じた。魔力で視力を強化しつつ、その場を見てみると複数の堕天使がいた。忌々しい……漁夫の利でも狙ったのか。メザンティスを取りだして空間を引き裂きつつその場に向かうと、四葉家一家が固まっていた。
「……
『
無造作に鎌を振るうと、堕天使の連中の身体の一部が斬られていた。これが『
もちろん、正確に狙えば一撃で殺せるけど数が数だ。総数すら認識していないのに、身体の正確な部分なんて狙えるわけがない。せいぜい敵か味方かの認識をするので精一杯だ。しかもこいつは平時と同じく、俺の魔力を使って攻撃を放つためとてつもなく燃費が悪い。だから俺自身滅多な事では使わない。
急に落とされた事で、俺の事を認識した者がいた。俺の顔を知っていたのか、恐怖に満ちた顔をしながら震えた指でこちらを指差していた。
「せ、赤龍帝……おい、そんな人間共に関わっている場合ではない!早く、早く」
「逃がすと思ってんの?……ああ、やっぱり四葉一家だね。こんにちは、お久しぶりですね真夜さん。胸糞悪い連中を何とかしますんで大人しくしていてくださいね。……さてと、お前ら覚悟は出来てるか?」
「ま、待て!我々はもう退く。この人間たちにも手を出さないと誓おう。だから!」
「逃がしてくれ、って?冗談はほどほどにしなよ。君たちは俺の知人に手を出したんだぜ?まさかお咎めの一つもなしに帰れるわけがないだろう?」
「くっ……!この、化け物が!貴様のような者が何故生きている!?他者に意図もたやすく力を振るうような者が、何故こんな場所で生きている!
貴様のせいで死んでいった多くのものがいる!その中には理不尽な理由で死んだ者もいるだろう。貴様のような化け物は存在してはならんのだ!」
「くっくっく……ふははははははははは、あーっはっはっはっはっは!……人外がよく吠えるな。神器を持っているというだけで人間を殺す貴様らに理解してもらおうなど、はなから考えていない。
貴様らに分かるか?自分が望んだものでもないのに、ただ神器を持っていてそれは危険かもしれないから。たったそれだけの、理不尽な理由で命を奪われた者たちの悲しさが苦しさが。分かるはずがないよな?弱者の気持ちなんて、貴様らに理解できるはずがないのだから。
もうごちゃごちゃ言わずに死ねよ。俺にとってお前らは敵だ。俺の大切な知人を危険にさらした貴様らを生かしておく理由なんてないんだからな」
「ま、待て!話し合えば分かる!話し合えばーーーー」
「耳障りだ。死ね」
メザンティスの一振りはそこに残っていた堕天使全てを抹殺した。そして言葉を交わす事もなく、俺はその場を離れた。ちらりと後ろを向くと、頭を下げていた真夜さんとその従者さんに呆然としていた四葉深雪、そして構えていた四葉達也。
俺はそのまま空中に移動し、まだ生き残っている悪魔の首をまとめて跳ねた。そして龍の翼でゆっくりと地面に降りた。
「お疲れさん。悪かったな。こき使っちまってさ」
『いえいえ、お気になさらず。久しぶりにこれだけ戦えて私としては満足ですから』
「そうか。そりゃ良かったよ。ーーーーはぁ〜しっかし、胸糞わりいな」
その呟きは虚空の中にゆったりひっそりと沈み込んだのであった。
どもどもシュトレンベルクです。今回は新設定の竜具との同調率を上げると一誠の瞳の色も変わる、というのを他の竜具の禁手名と一緒に上げたいと思います。
斬魔の光輝『
破邪の穿角『
退魔の祓甲『
討鬼の双刃『
砕禍の閃霆『
封妖の烈空『
崩呪の弦武『