リリカルD×D~狩り人の戦記~   作:シュトレンベルク

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皆のために

 

 

この職場に務めてはや半年。教会内では『聖女』の噂で溢れていた。なんでもその聖女は傷ついた者の傷に手を当てるとみるみる傷が治っていくらしい。いろんな人がその聖女の起こす奇蹟に頼りに来るのだとか。

 

ーーーー正直、馬鹿馬鹿しいにもほどがある。ただ傷を治せるだけじゃないか。こういうのも教会の常套手段の内の一つだ。そして自分たちに都合が悪くなると異端指定されるのだ。やられた方にはたまったもんじゃない。

 

『相変わらずなんと言うか捻くれているな、相棒。何がそんなに気に食わないんだ?』

 

「勝手に期待しておいて、いざ都合が悪くなると切ることだ。その今、聖女と呼ばれている娘ーーーーアーシア・アルジェントだったか。その娘だって聖女と呼ばれるためにシスターになったわけじゃないだろうに」

 

『だがそれが人間というものだろう。結局は自分たちの都合で動かねばならないんだ。むしろ相棒のような人種の方が珍しいと思うがな』

 

「俺は特別な事なんて何もしてないさ。ただ手が届く範囲の者を助けようとしているだけ。俺にはその力があって、そうするだけの余裕があるというだけさ。余裕があれば、人を助けるぐらいは容易いしな」

 

新たな覇龍も完成しつつあり、今となってはやる事が無くなってきて若干暇を持て余している。修行に関しても、メキメキと頭角を表し始めているしジークフリートに関してもさらに実力を伸ばしていた。俺とまともにやりあえるぐらいには、だけどな。

 

「しっかし暇だ。調整もあらかた済んで後は実戦での使用をしてみないと分からんし。イリナとゼノヴィアに関してはもはや自力で伸ばしてもらうしかないから、俺のやる事はない。ジークも最近は忙しそうだしな。……なんかやる事ないかな〜」

 

着実に堕落の一歩を歩いている一誠だった。現在は家の庭で自分の修行をしていた。それも通常どころか異常の一線すら介したような修行だ。だが、それに慣れきっている一誠にとってこの程度の修行で音をあげるなんてあり得ないそうだ。

 

周囲360度全方位に展開され、ほぼ同時に飛んでくる魔力弾を回避しつつ機があれば飛んでくる魔力弾を破壊していく。しかもさらにスピードが増してくる。もはや眼で追う事は不可能と言っても良いだろう。だが、一誠はそれを眼を閉じた状態で行っていた。その昔、初代孫悟空に仙術を習った時にしていた修行だ。

 

仙術と魔術の応用で魔力の流れを眼ではなく、肌で理解し感じ取る事がこの修行の目的だ。なんらかの手段によって眼が使い物にならなくなった時、その状態でも戦えるようにするためだ。

 

ジリジリとではあるが、数は減りつつある。とはいえ、一誠ほどの猛者であってもすぐに消しきれない。いや、消せる事は消せるのだろうが一つ一つ対処しきる忍耐と反射神経の修行であるため、そんな無粋な事はしないそうだ。

 

この修行が終わるのにさらに2時間の時間を要し時間的に見てもはや昼の時間帯になっていた。修行をしながら複数同時思考(マルチタスク)でこれからどうするか考えていた。

 

自分の性質上、あまり長期間この場に留まる訳にはいかない。しかし、孤児の子供たちを放っておく事が出来るのか、と聞かれれば否と答える他ない。だがあの子たちを俺の旅に連れていく事は出来ない。それならばどうする?いくら考えても答えは出てこなかった。

 

「一誠さん、ちょっと良いですか?」

 

「うん?どうしたんだい、祐樹。俺に何か用でもあるのかい?」

 

この娘は木場祐樹。聖剣計画の被験者の1人で、神器聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)を持っている。未だに行方不明の双子の兄がいるらしい。

 

「えっと……今、大丈夫ですか?ちょっと相談したい事があるんですが」

 

「良いよ。ちょうど今終わったところだからね。他にする事もないし、話を聞くぐらいは構わないよ。……それで、何か用事があるんだろう?そこに隠れている子たちも含めてさ」

 

仙術を使っている今の状態だと、何処に隠れていても発見出来る。隠れるなんて行動は無意味だ。とはいえ、仙術は使いすぎれば邪気みたいな物も取りこんでしまうから注意しなければならない。まあそういう欠点もあるが、使い勝手のいい技である事には違いない。

 

「私に……いえ、私たちに戦う術を教えてください!」

 

「……なんでまたそんな事を聞いてくるのさ?」

 

自然と眼が細くなっていく。誤魔化させはしないと、その理由を聞かなければ納得しないという意思を込めて。でも、祐樹はまったく怯まなかったむしろ堂々とした眼でこちらを見返してきた。

 

「一誠さんや八舞さん、それにシエナさんも何時までもここにいるという訳にはいかないでしょう。だから、私たちは孤児院の皆を助けたいんです。誰でもない、自分たちの手で守りたいんです!だからーーーーっ!」

 

「いいよ、別に最後まで言わなくったって分かったから。君たちも同意見なのかな?」

 

皆が一様に頷いていた。これは梃子でも動かないな。覚悟を決めた奴の顔になってるし、こりゃあ俺も真面目にやるしかないか。俺の教え方は基本的に習うより慣れろ方式なんだよな。……まあ、潰れないように俺の方で気をつけるしかないか。

 

「……分かったよ。教えてもいいよ。ただし!泣き言を言わない事。もし言うようなら、俺はそこで教えるのを辞める。いやいややったって身につく訳がないんだからな。分かったか?」

 

『はい!』

 

本音を言えば、戦い方を教えるなんてしたくない。でも、この子たちは選んだ。それならば俺もそれにちゃんと応えなくちゃならないんだ。彼らの気持ちにもちゃんと応えてあげたいという想いと戦って欲しくないという想い。

 

相反する二つの想い。この二つを抱きながら教える事は、俺にとっても皆にとってもけしていい事じゃない。だから、皆に生きていてもらうために教えよう。幸せを築いてもらうために。

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