リリカルD×D~狩り人の戦記~   作:シュトレンベルク

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魔乖咒師

 

 

あれから半月、久しぶりに遊んだりしながら相手をしていたが俺の両親の命日も近付いてきたため俺たちは海鳴を離れた。駒王市の近くにある山の墓に訪れていた。両親が亡くなってはや十年。公式には俺も死亡扱いとなっているため兵藤家で生きているのは俺のおばあちゃんだけだ。

 

でも今更会いに行くなんてできない。容姿もそうだけど、環境も性格も昔とは全然違う。こんなので俺はあなたの孫です、なんて言える訳がない。だから俺はお祈りを済ませたらさっさと離れるつもりだ。八舞とシエナは下の休憩所に置いてきた。

 

初めて来た両親と俺の墓は綺麗に掃除してあり、ちゃんと手入れしてあったのが見てとれた。俺は水をかけた後、花を備えて両手を合わせた。本当はいろいろと話をしたいけど……そんな事をする資格も余裕もない。立ち上がり、さっさとその場を離れようとしたその時ーーーー気迫が飛んできた。

 

「……危ないな。急になにするんですか?俺はあなたの事なんて別に知らないんですけど?」

 

「っ!」

 

不意打ち気味に拳を出したのに当てるどころか、回避された挙句に腕を掴む。そんな行動を汗の一つもかかずにしてしまう。実際、一誠は驚きはしたものの打ち込まれた拳は威力を除けば、速度は大した事がないと感じていた。

 

無論、それは光速機動を可能とする一誠の視点であり、通常の観点からみれば殴ってきた人物の拳の速度は高速と言っても過言ではない。殴ってきた人物は見たこともない女性だった。銀色の髪に真紅の如き瞳にグラマラスな肢体。美人の範疇に十分入れる領域の人物だった。

 

「私の拳をかわした上にその腕を掴んだだと……貴様、一体何者だ。それとこの墓に一体何の用だ?」

 

「墓参りにきちゃいけないわけ?それといきなり殴ってきた人に誰かなんて説明する気はない。もう行くから放っておいてくれ!?」

 

絶妙なタイミングーーーー意識の空白を急に突かれ、目の前にいる女性とはまったく違う攻撃が飛んできた。腕をクロスにして咄嗟に後ろに飛んだにもかかわらず、すごい衝撃が飛んできた。それでも十分驚くべきことなのだろう。しかし問題なのは、それを放ったのが七十歳を超えていそうな老婆だったことだ。

 

「ほう……今のも防ぐのかい。あながちアイリスの攻撃をかわしたのは偶然じゃないのかね」

 

「師匠!どうして此方に?お加減が良くないと言うのに……」

 

おばあちゃんか……一体どうなってるんだ?兵藤家ってのは化け物クラスの実力者の巣窟なのか?しかし……久しぶりに見たおばあちゃんの身体は痩せ細っていた。見ていて痛ましいぐらいだ。十年前に見た時はもっとふくよかだった。

 

「……あんた、名前は何て言うんだい?いや、そうじゃないね。一体、十年間も何をしていたんだい?一誠」

 

「……さすがはおばあちゃんだ。俺の気でも読んだのかな?まぁ、それはどうでもいい。世界を渡り歩いていただけだよ」

 

「そうかい。……一誠、戻ってきな。あんたには兵頭を継ぐ資格と義務があるんだからね。一真が死んだ今となっては、あんたが継ぐしかないんだよ」

 

 

「断る!あの父さんが継ごうとしなかった物を、息子の俺が継ぐ気なんてない!俺は赤龍帝兵藤一誠だ!兵頭になんてならない!」

 

 

「ふぅ……あの時の優しかった一誠は何処に行っちまったのかね?まあ何でもいい。歴代が脈々と継いできた物を此処で途切れさせる訳にはいかないんだ。あんまり我が儘を言うもんじゃないよ」

 

兵頭ーーーーそれは兵藤家の当主が継ぐ名前。先代を倒すことで継がされるそれは、より強い者に渡されていく。ある意味で俺という存在によって完成する名だ。昔、まだ祖父が存命だった頃に聞いた話だ。

 

「父さんも母さんも、俺にそれを継がせるのを是とはしなかった。兵頭は呪いの名だと、忌み嫌っていたほどだった。その名を継げば、戦いを求め続ける権化に変わるだけだと言っていた。俺が継げばそれは亡くなった父さんと母さんに対する裏切りだ。俺は、そんな物を継ぐ気はない!」

 

戦いを求め、より強い女性と子をなし子々孫々に強さを求めさせるめちゃくちゃな呪いだと。覇龍(ジャガーノート・ドライブ)よりもたちが悪い代物だ。一代限りに留まらず、永遠に戦わせる物を継ぎたいとは思わない。

 

「一真と耀華はそんな事を言っていたのかい。……あたしとしてもこんな物を継がせたいとは思わないんだがね。あの人と約束しちまったからね。いつか受け継がせると。

 

でもあたしはもう年で、足腰も弱い。さっきの不意打ちの一撃があたしの全力だ。それを防がれちゃあたしに勝ち目はない。だからと言って引き下がるほど、あたしは腐っちゃいない!」

 

「上等だよ。こっちだって引く気はない。俺にだって家族がある。守りたいと思える人が大勢いる!だからそんな滅びしか生まないような物を受け継ぐ訳にはいかないんだ!」

 

足腰が弱ったと言っても、おばあちゃんの力は成人男性の何倍もある。おそらくこの石畳ぐらいなら砕く事もできるだろう。俺は左腕に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を纏い、いつでも立ち向かえるようにしていた。ぶつかりそうになった瞬間に彼女ーーーーアイリスさんが割って入ってきた。

 

「アイリス、何をやっている。どきなさい。これは私たち兵藤の問題だ。ヘルブストのお前が横槍を入れるべきではないんだよ」

 

「……分かっています。これが褒められた行為ではない事ぐらい。でも、貴方方のやっている事は間違っている!折角会えた家族なのにどうして戦うんですか?家族っていうのは、支えあうものでしょう!?」

 

「これはもう、そういう領域じゃないんです。己が想いを貫くために戦う。どっちも引けないから、争う他ないんだ。俺は引けない。戦いの権化になんてなるつもりはない!」

 

 

「一真さんと耀華さんがそんな事を望むと思っているんですか!?お2人を大事に思っていた貴方が、あの2人想いを裏切っても良いんですか!?」

 

 

「それは……望まないだろうな。父さんと母さんは優しかった。どんなに辛くても挫けない人たちで、俺を殺そうとしてきた奴に立ち向かい俺を守ってくれた強い人たちだった」

 

俺を切り捨てればまだ生きていられたのに、最後まで身を呈してまで俺を守り亡くなった2人。その強さに憧れた。誰かを守る事のできる、そんな強さに憧れたんだ。現実は厳しいけど、それでも誰かを守れる強さを持ちたいと最初は思っていたんだ。いつしかそんな夢もいたがなくなってしまったが。

 

「って言うか、おばあちゃん。この人は誰?おばあちゃんのお弟子さんっていうのはさっき師匠って言ってた点から見れば分かるけど、名前は知らないんだけど」

 

「あたしの姉の孫……つまりはとこだね。名前はアイリス・マリア・ヘルブスト。滅の魔乖咒師でヘルブスト家では最強と呼ばれていてーーーーあんたの許嫁だよ」

 

「……………………は?許嫁?誰が?誰の?」

 

「アイリスが一誠の。あんたたちは昔顔合わせもした事もあったし、遊んでたりしてた事もあったのよ?一真は一誠が兵頭を継ぐのは反対してたけど、アイリスの婚約は賛成してたのよ?」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?何だよ、それ!初耳にもほどがあるくらいに初耳なんですけど!大体兵頭になった者は自分で添い遂げる奴を探すんじゃないのかよ!何で許嫁なんているんだよ?」

 

「あたし達は分かってたのさ。一誠が兵頭になれば、それはもはや最高傑作の領域に至るって。それにあんたの中にいた赤い龍と神龍達の事にも気付いていた。

 

だからこれ以上の段階がないなら探させるのは無駄って考えたのと、アイリスが私を除けば最後のヘルブストだから。最後の兵頭と最後のヘルブスト。これ以上ない組み合わせとも思ったんだけどね。一真たちはもう1人の幼馴染ちゃんとどっちにしようか考え込んでたらしいよ?」

 

どうでもいい……心底どうでもいい。しかも俺の意思全無視かよ。でもちょっとだけ思い出した。魔乖咒師って確かとある物品を解析して作られた物だとか。でも技術自体は完全に廃れてるらしい。魔法や魔術を調べている最中に出てきた文献に書いてあった。……その文献自体もぼろぼろで読み解くのが厳しかったんだけど。

 

その文献によれば、魔乖咒師というのは八祖という八家で構成されていたそうだ。闇、滅、歪、偽、異、時、無、そして□。最後のは何かしらの理由で滅び、文献の一つも残らなかったようだが始祖の名前から見て夢ではないかと思っている。まぁ、もういないと思っていたので深追いはしなかったが。

 

家名は闇はシュトレンベルグ、滅はヘルブスト、偽はフィッテイヴァルフォック、歪はクライン、異はゾルグ、時はクロノ、無はカナン、□は不明という具合だったのは覚えている。読んだのも世界最強に至る数日ほど前ぐらいだったのですっかり忘れていた。

 

「その顔だと知っているようだね。とはいえ、時代の流れによって衰退した魔乖咒師は数も減ってきたしいろんな家の血が混ざりあった所為もあったのか、弱体傾向なんだよ。

 

その中でもアイリスはヘルブスト家のサラブレッド。滅の魔乖咒を完全に扱える。……と言っても、術を全部使えるわけではないから今全部習得している私の所に修行に来てるんだけどね」

 

「ヘェ〜おばあちゃんはオールマイティか。全部習得しているっていうのも結構無茶苦茶だと思うんだけど」

 

「全部って言ったって、滅だけは第五咒法まで極めたけど他は第四咒法まで。正直な話、継いでくれる人間がいてくれた方が嬉しいけど……これも時の流れだと思って諦めるさ」

 

俺が継ぐ、とは言えない。いまさらどの面下げて学ぶと言うのだ。学んだとしても、俺には使いきれない事が目に見えている。そもそも、おばあちゃんが特別なだけであって通常魔乖咒というのは一種類しか習得できない。それは魔力の質が異なるから、っていうのと一つの魔乖咒を習得するのに大量の時間がかかるからだ。

 

「……それじゃあ、俺はもう行くよ。元気でね、2人とも」

 

「一誠。あたしはあんたに兵頭を継がせるのは諦めた。でもね、あんたはあたしの最後の家族なんだから、何時でも戻ってきて構わないからね」

 

「……ありがとう。それじゃあ、アイリスさん。貴女がもし魔乖咒を極めてもまだ、あの言葉に従うのなら駒王市で俺を見つけてください」

 

「はい。できる限り早く極めて向かいますから……覚悟しておいてくださいね?」

 

「ははっ、分かりましたよ。それじゃあ、また何時かお会いしましょう」

 

そして久しぶりの再会と驚くべき衝撃の話を済ませて俺は戻った。今守りたい家族の所に。

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