劣化させているだけあり、今の威力はただの聖水と同レベル。フェニックスの炎とぶつかり合い、旧校舎はほぼ崩壊寸前だ。それが何故壊れないのか?それはーーーー
「さすがはミラだな。この炎の中でも中々快適だな」
建物自体を凍らせて柱を補強したから。もはやここにはリアスさんも眷属も誰もいない。外からみれば断続的に爆発音が聞こえるだけだろうな。それにしてもこれじゃあ埒が明かないな。飛んでくる炎を凍らせつつ切り裂いた。
「チィッ!兄上に聞いてはいたがこれほどか!だか、俺とて不死鳥と謳われたフェニックス家の者だ!こんな所で負けるわけにはいかない!」
「意気込みや良し、と言ったところかな?まあ、俺とあんたの差は意気込みだけで埋まるような代物じゃないがな。ちょっと前のルヴァルさんみたいだ」
「それは光栄だ、と言おうか。だが、こんな所で俺も負けるわけにはいかないんでな!」
「ッ!?」
ライザー・フェニックスが炎を無差別にばら撒き凍りついた柱を全部破壊しやがった。もはや障害物のない状態だからこそ出来る芸当だな。俺が動揺した一瞬にライザーは建物から避難した。それぐらい頭はまわるか。一気に落ちてきた壁を見ながら思った。
「……まあ、この程度でやられる訳がないんだがな。
「呑気なものね。あの子たちが心配じゃないの?……手っ取り早い手段なら幾らでもあるでしょうに」
「あるけどさ。面倒じゃん。これだけの瓦礫を一気に除去するんだからさ。……ねえ、ミラ。久々にあれ使おうか?」
「え、ちょ、ちょっと待って!心の準備が」
「駄目。それにもう遅いよ」
狼狽しているミラの唇を奪う。何も卑猥な意味でしている訳じゃないんだぜ?これをする事で、俺とラヴィアスの同調率を上げることでようやく使える技があるんだよね。でも、これはそうそう簡単に扱えるものじゃない。肉体的に成熟しないと身体の方がついていけないからだ。
これをした時の副作用は接吻によって同調率を上げたから、グレートレッドの力よりも神龍の力の方が強くなる。その所為と言うべきか髪の色も瞳の色も変わる。この技の確認をする為にわざわざ全員がやってきやがった。それで八舞とちょっとした戦争チックな物が起こったんだ。……あれは大変だった。
槍に戻ったラヴィアスを掲げて呪文を唱えた。
「我、掲げしは氷結を司りし神龍の槍なり!」
「天地万物の全てを凍てつかせ、大いなる力を証明する!」
「数多の罪と儚き幻想をこの身に宿す神龍となりてーーーー」
「世界に今一度、荘厳なる我らの雄叫びを響かせよう!」
魔力が爆発的に拡散し、目に映る全ての物を凍らせていく。その魔力の膨大さはフィールド全体を凍らせる程であった。世界が氷に包まれ、その状景はさながら
そして観客席やグレモリー眷属、はてはライザーまでもが口を揃えてこう告げた。あの時の兵藤一誠は王者のようであった、とーーーー
「分かってはいたけど、これは発動時の余波が半端じゃないな。俺1人なら良いけど、他の奴も巻き込んじまうのが難点だな。……全員無事みたいだし良しとしよう」
その場にいた全員が何を言っているのか分からなかった。目に映る全ての物を凍らせた力が余波だと言うなら、本気で放った力は一体どれほどの物だと言うのか。自分の目の前にいるこの存在は、一体何なのか?
「むっ、なんだよ。まさか君たちさ、世界最強が君たちのーーーー君たち程度の理解の範疇に収まるものだとでも思ってたのかい?そんな訳ないだろ。全ての神話体系の神々を凌駕し、最強の龍神を真龍を倒すことの出来る者がわざわざ全力を出すとでも思ったのかい?」
そう、思っていた。だが修行をつけてもらっている最中にリアスは考えていた。彼女が一誠の実力を兄であるサーゼクス・ルシファーに尋ねた時、彼はこう答えた。少なくとも自分は凌駕している、と。だがあれから十年近くが過ぎた今、兵藤一誠は一体どれほどの力を手にしているのか。
そして今、確信した。兵藤一誠の実力は少なくとも自分ていどでは測りきれる物ではないと。同時にこの地上に遍く全てを妥当しうる力を持ったこの人間を放置しておくのは危険だ、とも。しかし理解もしていた。兵藤一誠という1人の人間を倒すのは世界中の全ての神話体系を協力させても不可能だということを。
氷結の力を統べる荘厳なる氷の覇王は何も恐れてなどいない。彼の眼前に敵などおらず、あるのはただ彼の前に立ちふさがる壁だけなのだ。彼はただ目の前にある壁を壊しながら突き進むだけなのだ。それがどれほど危険な物であったとしても。そんな彼の有り様がとても、とてつもなく危うく見えた。
一誠は氷の鎧を纏い、氷に彩られた華麗な龍の翼を広げた。ラヴィアスは
「来いよ、ライザー・フェニックス。不死鳥と謳われた業火を俺に見せてみろ!さすれば俺はお前の力を称して、この形態で放つ最高の一撃で終わらせてやろう」
「その前に貴様を倒せば済む話だろうが!俺は……負けん!フェニックスの名を背負うこの俺が負けるわけにはいかないんだ!」
ライザーの放った最大級の業火はこの冷気の中でも揺らぐことはなく、一誠を呑み込んだーーーーように見えた。だがしかし、最強はそこまで甘くはない。ライザーの放った業火は一誠の身体を傷つけるまでには至らなかった、ということだ。
しかし一誠は満足していた。全力を振るえないのは仕方ないが、それでも勝つ気で向かってきたライザー・フェニックスは力を振るうに足る者だと判断し、
「ああ、良い一撃だった。なに、悔やむ必要はない。この冷気の中でなければ、確実に傷を負っていただろうからな。だがこれで終わりにしよう」
フィールド中に広がる冷気が集まりはじめた。そして世界中に響き渡るような凛とした声でたった一言、こう呟いた。
ーーーー
大地から高速で氷の柱が現れ、次々とライザー・フェニックスの身体を貫いた。再生を上回る速度で穿たれ、さらに受けた傷が氷によって再生しにくくなっていた。そしてダメージを受けすぎたライザーは光に包まれ、フィールドから消えた。
『ライザー・フェニックス様、リタイア。よってこの勝負、リアス・グレモリーの勝利』