リリカルD×D~狩り人の戦記~   作:シュトレンベルク

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聖剣合戦・後編

 

 

ペリドールは突如現れた銀髪の女性にまったく気がつかなかった。こうして相対して初めて、その実力を測ることが出来た。聖人の頑強さは普通の人外を大きく凌駕している。そんな相手にまったく怯むことなく立っているこの女は一体何者だ?

 

しかしアイリスはそんなペリドールの事を欠片も気にしてはいなかった。むしろ苦悶の表情を浮かべながら膝をついている3人を気にかけていたくらいだ。この3人が今動けないのは、一誠から供給される天使の力(テレズマ)の量が格段に上がったためだ。八舞は翼から放出量を上げる事で対応したが、シエナと祐樹は初めての事態だったため何もできなかった。

 

今は八舞の真似をして落ち着いてきてはいるが、それでも気分が悪くなってきている。供給量と放出量が比例していないのだ。六対十二枚の八舞ならまだしも、まだそこまでの段階に至っていない2人には厳しすぎるのだ。八舞は一誠が何かしら大きな感情の発露、或いは動きを見せたのだと理解した。

 

一誠が一気に力を使う時は余程の強敵か、自分の大切なものが侮辱されるか危険に晒された時。先ほど見た限り強敵と言えば強敵なのだろうが、自分でも対処できそうなレベルだった。とすれば侮辱されたのだろうか?いや、そんな事は気にせずとも良いだろう。自分はこの邪魔者共を排除するだけなのだから。供給された天使の力(テレズマ)の大半を身体強化に回した。

 

八舞たちの身体は一誠の従者になった時から、『天使に似た何か』に変わっている。天使の力(テレズマ)が強引に肉体を異界の天使と同じ物に変えたからだ。異界の天使ではこの世界の天使とは違うため、天使に似た何かという表現になってしまうのだ。

 

「……貴女がマスターが言っていたアイリス・マリア・ヘルブストですか?」

 

「ええ。あなたが八舞さんですか?お初にお目にかかります。私が『滅』の最後の魔乖咒師、アイリス・マリア・ヘルブストです。以後お見知り置きを」

 

「……なるほど。『滅』の魔乖咒師か。まだ生き残りがいたのか。あの時に全滅したと思っていたが、中々どうして貴様らもしぶといじゃないか」

 

「あなたがコカビエルですか。『八祖』を崩壊に陥れた張本人。私の先祖の方々の仇、と言うわけですか……思っていたよりも弱いですね」

 

「なんだと……?」

 

「年老いた我が師よりも弱いですよ、あなたは。なるほど、これなら当時のレベルの低さも知れるという物です。その程度の実力の者と戦った程度で満足しているあなたの程度の低さも、ね!」

 

アイリスは地面を踏み砕き、コカビエルと同じ高さまで跳び上がると強烈な回し蹴りで地面に叩き落とした。どれぐらい強烈かと問われれば、一撃で空気が揺れ動いたのを実感させるくらいには強力だった。人間の身でそのような事を可能とする者はそう多くはいないだろう。その昔、まだ一誠の父親が存命だった頃には多くの者が修行をしにきた。しかし大体の者がたった数日で逃げだす。一誠の祖母が目標としたのは神格とて倒せるほどの力量なのだから、当然なのだが。そんな修行をさせる者にアイリスは数年間付き従い、教えを請うてきたのだ。幾ら歴戦の堕天使であってもそう簡単に倒せる相手ではない。

 

合間を縫って聖剣で攻撃しようとしたところで、急に空間に穴が開きそこから腕が出て聖剣の刀身を掴んだ。その刀身を掴んだ者の腕は籠手に包まれていた。その籠手を見た瞬間にペリドールはエクスカリバーを手放して霊装としても使っている愛用のロングソードを取りだし、ルーンを刻んでいる紙を取り出した。

 

その穴から出てきたのは一誠とその一誠に抱えられた女性だった。一誠はエクスカリバーを力を込める事で刀身を半分残した状態で破壊した。それを放り捨てるとシエナたちに抱えていた女性を投げ渡し、光輝の鎧を纏って黄金の色に輝く六対十二枚の翼を展開したあとにゼノヴィアたちの方を見た。その威圧感によって誰も動けなかったが、ゼノヴィアとイリナにアーシアの顔を見て鎧の中で眉を動かした。

 

「……コカビエル、お前あれを話したのか」

 

「ああ。それがどうした。所詮いつかはバレる事になるのだ。それが偶々今だっただけの事だろう?」

 

「もうさ……マジでお前ら死ね。いらない事ばかりしやがって、悪いけど今の俺は大層機嫌が悪い。血の一滴すら残さずに殺してやるよ」

 

「これはマズいどころの騒ぎじゃないぞ。バルパーの旦那、コカビエルの旦那。これは退くべきだろう。どう見ても今のこいつとは戦うべきじゃない」

 

「この程度で臆していてはこれから戦えなくなるぞ。逃げたいなら何処へなりとも逃げるがいい。俺は止めはしないからな」

 

「逃がしはしないよ。聖剣計画の研究者に戦争狂の堕天使。生かしておく価値がない。お前ら諸共に消してやろう」

 

 

「それは困るな。そいつらを連れて帰るのはアザゼルの命令なんだよ」

 

 

「黙れ。邪魔するようなら貴様もここで殺すぞ?白龍皇。少なくとも半死半生の状態にしなければ気が済まない」

 

「貴様!よくも私のエクスカリバーを」

 

「黙れ。人間のゴミ屑が。囀るな、喋るな、喚くな。空気が汚れる」

 

一誠が腕を向けただけで天空から光の柱が降り注ぎ、バルパーの身体を文字通り消し潰した。赤龍帝の力を使っているわけでもないのにこの威力だ。一体赤龍帝としての力も使えばどういった事態になるのか、白龍皇は興味を抱いた。

 

アザゼルから自分のライバルである赤龍帝は世界の頂点に立っている、と聞いた。その実力の一端を垣間見る事が出来るのかと思ってきてみたが、いなかったので内心不満だったが無造作に放った今の一撃で理解した。自分の実力は足元にすら届かないどころか、足元が見えないほどに離れていると。だが、それに絶望する事はなくむしろ感動していた。世界最強の強さに、ただの人間としてそこまでの強さに至った事に。そしてそれをいずれ打倒しようと燃えていた。

 

だがそれは今ではない。今やればゴミ屑のように殺される。一誠の視線は完全にコカビエルに固定されていた。アザゼルからも兵藤一誠と相対するような事態は必ず避けろ、と命じられているため介入できない。仕方ないので聖人の方に視線を向けた。聖人も顔を引きつらせながら剣を構えた。白龍皇が動きだした事で第三ラウンドが始まった。

 

ペリドールはルーンで炎を操り、さらにロングソードを使って風の術式を使って応戦した。白龍皇は特色である半減の力を用い、さらに鎧の防御力で防いだ。だがペリドールもただの聖人ではない。空間を支配し、さらに白龍皇の行動を阻害していく。

 

一方、赤龍帝とコカビエルの戦いだがもはやただのワンサイドゲームに変わってしまっていた。遠距離から光の槍を投げても迎撃され、近距離でも身体強化されている事で圧倒される。しかも何が怖いのかと聞かれれば赤龍帝である一誠が何も喋らないのだ。無言で攻撃してくるため、恐ろしい事この上ないのだ。

 

一誠はマジギレするとむしろ何も喋らなくなる事を知っているシエナは正直、コカビエルに同情している普段は神々しい鎧である光輝の鎧が今はむしろ禍々しい物に変わってしまっている。もはや機械的な作業に変わってしまっているが、誰も何も言えない。教会組はまだショックを受けているし、他の皆とてまだ混乱しているからだ。

 

「……飽きた。あれだけ大口叩いておいてこの程度かよ。なんなの?お前。弱いやつほどよく吠える理論を実行してんの?もううざったいからさ、死ね」

 

「くっ!この俺がこんな場所で負けられるかぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

コカビエルの最大出力の光の槍と一誠の放った魔力弾がぶつかり合った。しかしそれだけの威力を持ってしても相殺には至らず、多少減衰させるのが精々であり、それだけでも殺すには十分な威力だった。コカビエルが死を覚悟した瞬間に白龍皇がその魔力弾に触れた。

 

『DividDividDividDividDividDividDivid!!』

 

半減してもそれはコカビエルを戦闘不能の状態にした。空から落ちていくコカビエルを見下ろし、次に白龍皇に視線を向けた。ここで赤龍帝と白龍皇の戦いが始まるのかと思いきや、一誠は降りた。

 

「……とっととコカビエルを連れて失せろ、白龍皇。あの聖人も逃げたようだし、貴様らがここに残っている意味はない。俺の気が変わらないうちに消えろ」

 

「ああ。そうさせてもらうとしよう。我が名はアルビオン。覚えておいてくれ」

 

「それは白龍皇の名前であって当人の名前じゃないだろうに。……お前は何も言わなくていいのか?ドライグ」

 

『そうだな。無視か、白いの』

 

『無視では無いさ。だが、実際私達の間にどんな会話がある?』

 

『……そうだな。特にない。だが白いの、以前の様な敵意が伝わって来ないが?』

 

『それは赤いの、お前も同じだろう。そちらも今までと段違いに敵意が低いぞ』

 

『お互い、戦い以外の興味対象があると言う事か』

 

『そう言うことだ。こちらはしばらく独自に楽しませて貰うよ。偶には悪くないだろう? また会おう、ドライグ』

 

『それもまた一興か。じゃあな、アルビオン』

 

そう言うと、白龍皇は現場から去っていた。ため息を付きながら一誠はゼノヴィアとイリナの様子を確認した。明らかに茫然自失と言った感じだった2人を見てさらにため息を付きつつ、2人を抱き上げ……ようとしたところで、刀身が半分ほどになっているエクスカリバーを持って祐斗に近づいた。

 

「木場くん、良いのかい?もはや刀身は半分ほどしかないが、それでもエクスカリバーだ。折った方が気分的にマシになるんじゃないか?」

 

「兵藤さん……いえ、結構です。そんな事をしなくても、皆は僕の中にいる。皆の想いを背負って生きていきたいと思います」

 

「そっか。まあ、君には大切な主と信頼できる仲間がいる。頑張りたまえよ、グレモリー眷属の騎士(ナイト)木場祐斗くん」

 

「……はいっ!」

 

「それじゃあ後は任せるよ。悪いね、リアスさん。此方としてもやらなきゃいけない事もあるしね。……まったく、コカビエルも面倒な事をしてくれたもんだ」

 

「あ、あの……イッセーさん。主は、我らが主が亡くなっておられるというのは本当なんですか?」

 

「……残念だけど、本当だよ。でもね、アーシアさん。普通の信徒からすれば主は目に見えず触れられもしない存在だ。一部の者を除けばいる事を認知できない存在だ。それでも人は神を信じるんだよ。それは何でだと思う?」

 

「……分かりません」

 

「俺たち人間は心の支えが必要だからだ。たとえ傍にはいなくても何処かで見守ってくれている。そう思えれば、人間は生きていけるからだよ。そうでなくても俺たちは誰かを愛し、愛されるために生まれてきたんだから。我らが主という存在は己の心の中にいるんだからね」

 

「私たちは……愛し愛されるために生まれてきた……?」

 

「きっといつか、その理由を理解出来るようになるさ」

 

一誠はそれだけ言うと折れたエクスカリバーと破壊(デストラクション)とデュランダルを回収し、ゼノヴィアとイリナを抱き上げた。何の反応もしないほどにショックを受けている様子の2人を悲しげな表情で見つめていた。そして連れてきたボロボロの状態の女性を八舞に任せて帰途についたのだった。

 

「……そう言えば、アイリスさんも今日からはこの街に?」

 

「そのつもりですけど……どうかしましたか?」

 

「いや、客間がね。さすがにもう空きがないな、と思いまして。まあ、いざという時は俺の部屋を開ければ良いんですけどね」

 

そう言った瞬間、その場にいたゼノヴィアとイリナを除いた女性陣の眼がキュピーンと輝き、一誠が妙な寒気に襲われたという話があったとかなかったとか。




どもども、シュトレンベルクです。暑い日が続く今日この頃ですが、皆さん大丈夫でしょうか?

さて、エクスカリバー編もここで終了。第二期が始まったばかりなのにね!他の魔乖咒師も出して欲しい!というお便りが多々見受けられましたので、なんとか出してみたいと思います!

次回からは第四巻の内容に入っていきます。大分原作から離れてるけど、お楽しみに!それではまた次回!
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