なんやかんやしながらまだ眠っている全員を叩き起こし、朝食を食わせた。
「あぁ……学校行きたくない〜眠い〜」
「何を寝ぼけたことを言ってんだよお前は。お前が高校に行きたいって言ったんだろうが。あんまりボヤいているようだと投げ飛ばすぞ?」
「ちょっ!?この格好のまま学校に行くなんてごめんだよ!それに投げ飛ばされたら前見えないから魔法も使えないし!」
「ならボヤくのを止めろ。体調不良でもないのに誰が休ませるか。俺が無意味な行動が嫌いなんだってことぐらい、言わなくったって分かってるだろ?」
「分かってるけどさ……帰ってきたの今日の3時だよ?しかも今は7時。たった4時間しか寝てないんだから、これぐらいの愚痴は勘弁してほしいよ。師匠から膨大な量の供給をされた所為で気分悪いしさ」
「シエナ、そこまでにしておきなさい。これ以上食い下がっても事態は好転したりはしませんよ。諦めた方が身のためです」
「うー……分かってるよ。どうしようもなくても文句が言いたくなることぐらいあるじゃん。ところで……アイリスさん、なんかあったの?顔が真っ赤なんだけど」
「……さてね。あ、そろそろ時間だ。俺は仕込みに入るけど、お前はちゃんと学校に行けよ?後でアーシアさんに聞いとくから」
「なっ!さっきはあんな事言ったけど、私はそんなこすい真似はしないよ!失敬だなぁ!」
「はいはい。さようでございますか。俺がそういう態度を取るのはお前に対する信用の表れだろうよ」
シエナが何か喚いていたが、放置して朝食を片付けた。そして喫茶店のメニューを作り始めた。下拵えは昨夜、というより今日か。の間にしておいた。俺もたまに眠いとかボヤいているが、俺の身体には別段睡眠が必要なわけではないのだ。人間だった頃の習慣が抜けきっていないだけだ。
シエナは茉奈のように異界の天使に至る際、アダムとイブが『知恵の実』を食した際に人間の身体に刻まれた『原罪』を消去している訳ではない。ただ圧倒的なまでの
『原罪』を消去する事で一種類ながらも圧倒的な力を振るう茉奈。『原罪』を消去せずに多くの魔術を使用する事でどんな場面であっても即座に対応してみせるシエナ。どちらが強いとは即座には言い切れないだろうな。俺でも無理だ。だが、一対一の戦いになればシエナは茉奈に勝てない。馬力も違うし、何より生来
まあ、茉奈はわりと特異な例だからこんな事は通常あり得ないと言って良いが。そんな事はどうでも良いか。仕込みをしつつ、そんなどうでもいい事を考えているとイリナたちが出てきた。昨日よりはマシだがまだ表情は悪かった。
「……おはよう。もう大丈夫なのか?連絡ならこっちの方から入れておいたから、まだ休んでいてもいいぞ」
「ありがとう、イッセーくん。それでも教会には戻った方が良いと思うから」
「そんな事しても、余計に傷つくだけだよ。教会側は、主が死んでーーーーいえ、亡くなっている事を知っている者を置こうとはしない。異端指定をくらうだけだよ」
「……厳しい言い方だけど、概ねシエナの言う通りだ。アーシアさんが異端指定を受けたのは、悪魔が癒した事が問題なんじゃない。魔の象徴である悪魔を癒せるという事が、主の不在に繋がってしまう事が問題だったんだよ」
「……一誠さんは知っていたんですね。どうしてそこまで冷静でいられるんですか?私には無理ですよ。今にも狂ってしまいそうなぐらいです」
「俺は目に見えない奴のためになんて戦えない。むしろその点において、俺はお前らを尊敬してるんだよ。よくもまあ、今までいるかも分からない奴のために戦えたもんだな。
でもさ、俺は言ったよな。主だけを戦うための理由にするな、ってさ。それは何も今みたいな事態を危惧して言ったわけじゃない。主のためなら何をしても許される、なんていう危険な思考を抱かせないためだ。今の
全ての者を愛するはずの主のためと言いながら、異端と呼ばれる者を殺していく。……それは違うだろう?生きとし生ける者は誰かに愛され誰かを愛するために生きているんだからな。そんな教えを受けてきたお前らの想いってのは、信仰っていうのはそんなに軽いものな訳?」
「「そんな訳ない!!」」
2人は生気に満ち溢れた表情で断言した。これ以上は俺が何かを言う必要はないだろう……と思いきや、また2人はなんかしょぼくれ始めた。怪訝げな顔をしながらアイリスが話しかけた。
「……どうかしたんですか?何か心配事でもあるんですか?」
「……いえ、これからどうしようかと思いまして。よく思い返してみるとこれから行くところなんてないし、どうやって暮らしたものかと。自慢ではありませんが、不器用なので」
「……分かった分かった。ウチで面倒見れば良いんだろ?分かってるから睨んでくんな。元々、お前らのことは俺の方で面倒見るつもりだったからな。その方面で心配する必要はないだろう。むしろ心配するべきなのは今後の身の振り方だろうがな」
「身の振り方……それってどういうことなの?」
「少しは自分で考えろよ。……まあ、良いけど。ゼノヴィアはデュランダル使いであり、イリナは元が付くとはいえ俺に教えを受けた聖剣使いだ。お前らの希少度はお前らが考えている以上に大きいんだよ。最悪各勢力に襲われるぞ?お前ら」
まあ、俺が保護している時点でそんなことをしてくる奴はいないだろうが、俺のことを知らない奴は向かってくるんだよな。そういう輩ほどなんか偉そうで非常にむかつくんだよな。ちなみに俺の前でそんな行動をした奴は大概死んでいる。俺の怒りを買うことを恐れた奴らか、俺自身の手によってだがな。
「師匠がセフィラーを刻んで保護すれば良いじゃん。幸いと言うべきか、2人とも実力なら人間のうちでも上の方だし私達で鍛え上げればすぐに強くなるでしょ?」
「……お前は今夜、俺に死ねと言うのか?鬼畜か、お前は」
「今夜?……ああ、そういうことか。それはさすがに私にもどうしようもないと言う他ないんだけどなぁ。私たちにはどうしようもない、と言うよりどうすることも出来ないし」
「どういう事なんですか?」
「ああ〜ええっと……八舞さん、パス!私はもう学校に行かなくちゃいけない時間だし!」
「あの子はまた……良いんですかマスター。私の方で説明してしまっても」
「構わん。むしろお願いしたいぐらいだ。俺には説明できる気がしないしな」
「分かりました。……マスターと契約しセフィラーをその身に刻むという事は、マスターに一生の忠誠を誓い共に歩み続けることなのです。従者と言えば耳に聞こえは良いかもしれませんが、実質は奴隷に近いのです。
その一生涯をマスターに捧げることで我らは力を得るのです。その際に身体には莫大な量の
「そのある物っていうのは……」
「性欲だよ。あまりの激痛に身体が死を予感したんだろうね。子を残そうとする本能に襲われるんだよ。しかもとびっきり、強烈な奴にね。……あの時は本当に大変だったよ」
「無論、意味もなくマスターに身体を求めるわけではありません。供給主であるマスターが身体を共にする事で、
なんかこっちに視線を感じるが俺は何も言わんぞ!さっき言っていた衝動には大体一年に一回は襲われるらしい。その度に搾り取られて大変な目にあうのだ。あれは……本当に大変だったな。その時の俺は実に哀愁漂う雰囲気だったと祐樹に言われるほどだった。
どもども、シュトレンベルクです。
今回はセフィラーを刻む時の弊害を説明しました。ちなみに八舞は最初から分かっていたわけではありません。八舞の場合は抱きしめながらテレズマを流しこんだため、聖槍によって肉体を改変するのと違い発作のような物が直ぐには大きくなりませんでした。
便利になったための弊害ですね。ちなみにシエナの初めては中2の頃で、祐樹はその一年後でした。ここで問題発生!イリナは元々加える気だったのですが、ゼノヴィアどうしよう?という状態になってしまいました。そこで少しアンケートを取りたいと思います。
賛成か反対かだけでも構いませんので、送って下さると幸いです。それではまた次回!