月城町みたいな話   作:とましの

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六人目ルート

「……だから言っただろーが」

河原にある高架下にブレザー姿のふたりが転がってる。それを面倒臭さとともに見下ろしながら俺は大きく息を吐き出した。

「俺は強いんだ。何度ケンカ売りに来たって結果は変わらねぇよ」

バカかよとつぶやきながら頭をかいた俺はふと背後から聞こえた声に眉を潜める。振り向くと少し離れたところに小さな子供が立っていた。

「すっげー!!」

何を勘違いしたのか感動したらしい子供の大声は高架下によく響く。あげくそいつは何を思ったのかデジカメで写真を撮り始めた。なにやってんだこいつ。

すると写真を撮られるのは嫌だったらしいバカふたりは慌てた様子で逃げ出す。それを眺めながら、そういえばあの制服は近くの私立のモンだったかと考えた。

 

けどそれより今はあっちのガキが撮った写真を潰すのが先だ。

「何やってんだおまえ」

「おまえヒーローだろ。かくしてもムダだからな。いまショーコ写真とったからな!」

「……は?」

ガキはどうあがいてもガキなんだろうな。意味不明なことを言い出したあげく、自慢げにデジカメの画像を見せてきた。

何枚か確認するがケンカの現場は収められてない。むしろ写っているのはほぼ俺の後ろ姿だ。

「けどすげーな。みっちゃんと同じ学校にヒーローがいるなんてな。それガクランってやつだろ」

「みっちゃんって誰だよ」

デジカメにある画像を何枚か消した俺はそれを子供に返してやった。俺の背中写真なら構わないが、さっきのふたりが入り込んでるのはマズいだろう。

バカどもはどうでもいいが、あっちからケンカがバレるのはいろいろマズい。

「みっちゃんは俺の一番だ」

「あー、兄貴か何かか」

「そんなわけないだろ!みんなの兄ちゃんはイジワルくてズルくてヒドイんだぞ!おやつ取ったりオモチャこわしたりとかな。ケンカもすげーするんだぞ」

ムキになって否定し始めた子供を連れて高架下を離れる。そもそもこいつはここで何やってるんだって話だよな。

 

「みっちゃんは優しくてすげーかしこいぞ。何でもしってる。おれにいっぱい教えてくれるからな。漢字とか」

「へー、それはすげーわ」

適当に話を聞き流しつつ河原を離れると周囲に視線を走らせる。この子供の保護者らしき人間が見当たらないんだが。

「で、おまえの親御さんはどこだ。それともそのみっちゃんってのと来たのか?」

「おれはひとりできた。みっちゃんのトモダチを探してるんだ」

「園児ひとりで河原に来んなよ」

危ないだろーがとつぶやいた俺の目の前で子供は指を一本立てた。

「おれはぴかぴかの一年生だ」

「あー、それは悪かった。で、なんだっけ?」

「みっちゃんのトモダチになってくれ」

 

何て言えば良いのか……たぶん、この子供は本気なんだろうな。けどすげぇバカげた話だと思うわ。小学校一年生が兄貴のようなヤツのダチを探すってのは。

しかも同じ学校って時点でその兄貴もどきも高校生だろ。

 

河原を離れた俺はとりあえずコンビニでジュースを買って子供に渡した。どこから来たのか知らないが、手ぶらで歩き回ってりゃ水分補給なんてしてないだろうし。

車止めに腰を落として座ると子供も真似るように隣に座る。

「言っとくけどな、ダチってのはそうやって頼んでなるモンじゃねぇよ」

「そうなのか!?」

「おまえはどうやってオトモダチを作ってんだよ。小学校にいるだろ?」

「同じクラスとか隣のクラスはみんなトモダチだからな。100人ノルマまであと少しだ。でもみっちゃんはトモダチいないからたのむしかないだろ」

あー、あれだ。一年生の歌か何かであったよな。友達百人できるかなってやつ。たぶんこいつはそれを本気でやってるタイプのヤツだ。

 

「ヒーローはトモダチいないのか」

少し呆れているとかなり生意気な質問をぶつけられた。

「ダチはいなくはないけどな。勉強が忙しくて遊ぶヒマがねぇわ」

オレには医者になるという夢がある。そしてそれを叶えるためには勉強しなければならない。うちの高校で一位を取る程度で満足なんてしてられない。なのに高校の外に出ればバカがケンカ売ってきやがる。

こんな状況でオトモダチと仲良しごっこなんてしてられるはずがなかった。

 

「みっちゃんも勉強ばっかだぞ。だからかしこい。ヒーローもトモダチいないなら、みっちゃんとトモダチになればいいだろ」

「……あー……そうだな」

子供はいつも真っ直ぐに自分の望みへ向かおうとする。そしてたぶん俺もこいつくらいの時はそうだったんだと思うわ。ヒーローに憧れて近所のオッサンに戦いかたを習いにいくほど真っ直ぐで愚かだった。

「ならそのみっちゃんってのに伝えてくれよ。校内であったら声かけろってな」

「わかった」

ボトルのジュースを半分も飲んでいない子供の頭を撫でた俺はゆっくり立ち上がる。

「帰るぞ、家の近くまで送ってやる」

「おー!」

気合いだけは十分な子供を連れて歩きだした俺は苦笑いをこぼした。俺みたいなのが家まで行ったら親御さんも困るだろう。けど近くの公園かどこか、車の少ないところまで送ればそれでいいよな。

 

 

 

 

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