永い永い眠りの旅
ただただ彷徨う
広大で果てしない宇宙を……
どれだけの時が流れたのか?10年?100年?1000年?
自分自身のスパークがまるでの夢を見せるがごとく己の母星を思い出す。
金属と錆の星、かつて輝かしい繁栄を見せた機械の星……
力と暴力が支配し、しかして知恵によって滅んだ同胞達……
私はその滅びから抗うため、牙を爪を翼を……そして体を捨て、己のスパークと己の種族の最大の特徴であるトランスフォームコグをいれたカプセルになって広大な宇宙に飛び去った。
願わくはこの安らぎが永遠に続くように……そう想っていた……
気が付けば私はとある星の引力圏に侵入していた。
侵入したからなにかできるというわけではないが、その引き寄せられる力に私は眠りの旅の終わりを感じた。
己を入れたカプセルが星の大気圏に侵入し、その摩擦の熱で焼ける。
スパークである自分は熱など感じないが、この熱量ではコグが壊れてしまうのは見えていた。
カプセルの設計の時に大気圏突入の際の摩擦熱のことは考慮し忘れていたようだ……しかたあるまい知恵ある者達とは違い、私は獣なのだ。
そうこうしているうちにカプセルがもの凄い衝撃と共に地表にたどり着いた。
墜落したとも言える。
もはやカプセルは原型をとどめておらず粉々に砕かれ、中にあった己のトランスフォームコグは外界へと露出する。
しかしだからといって私にできることはない。
私は今スパークだ、幽霊なのだ。物に障ることも触れることもできない。
伝説の神様だか破壊神だとかならできるかもしれないが、あいにく私はただの獣だった。
少し自慢することがあるとしたら、他の奴より賢かったことぐらいか。
こう言うと知恵ある者は己の種族自体が頭が…………なんだったか。失礼な奴らだお前らが賢すぎるのだ。私は獣だ……
地上に転がった己のトランスフォームコグ……墜落から母星における暦でどれだけの時が経ったのだろうか……
雨風に吹かれ、所々錆びつつあるそれに近づくものがいた。
まるで母星にいる同胞のような金属の体を持つ……獣?いや翼があるから鳥かもしれない。
どうやら近づいて来たこの獣は金属が主食らしい。
風化しつつあるとはいえ、カプセルもトランスフォームコグも金属だ……喰われるのか?
始め怪しげにスンスンと匂いを嗅いでいた獣はとうとう己のトランスフォームコグを食べ始めた。
……あぁ、食べないでくれ、うん?あら?おっと~?
どういうことか己のトランスフォームコグ食べた獣にスパークの私が吸い寄せられる。
必死に抵抗するも獣が食べれば食べるほどその引き寄せる力は強くなる。
あ、ダメだこれは。
そして気が付けば私は己のトランスフォームコグを食べていた獣に成っていた。
なにを言っているかわからんが私もなにを言っているかわからない。
かつて私は未来から来たとかぬかしていた変な奴がよこして見せてくれた地球とかいう星で流行っていた言葉というのを使ってみる。
あいつは今頃なにをしているのだろうか?奴の言ってることはちっともわからんが、危ない奴なのは獣の本能が告げていた。
『からむな、ろくなことがないぞ』
こんなところだろうか。奴が車?だとかいう謎の存在に変形するので真似てやったら度肝抜かしていたのは今でも笑えるネタだ。
そのあとのプレダコンがどうの、予想以上に学習能力が高いだのブツブツ言っていたような気がするがあいつの言うことだ信用してはいけない。
それにしても私の体はどうなっているのだろうか、動く分には問題ない。
前足よし、後ろ足よし、頭も動く、翼も問題ない。おお飛べる!結構変な感覚だが飛べる。どういう原理だこれ?
まあいい、細かいことをいつまでも考えていても意味はない。
だが一番の問題は私の体内にある2つの物だ。
片方は今しがた食べられてしまった己のトランスフォームコグ。
もう片方はこの獣が元から有していたなにかのコアだ。
なんというか、このコアっぽいものにコグが融合してしまった感じだ。
はてさてどうしたものか……まぁ、時間はあるゆっくり考えていくとしよう。
ひとまずはひと眠りだ。きっと夢の中で妙案が浮かぶはずだ。
******
おはよう、突然で悪いが困ったことに私は捕まってしまったらしい。
私を捕まえたのは私よりもはるかに小さい二本足の生き物だった。
よく見たら未来の博士が言ってた人間っぽい?
それから私は特に抵抗もせず、人間モドキに好きなようにさせていた。体の一部を取られ、取られたところにより機械的な物を仕込まれ……
幾年の歳月が流れ、なんという因果だろうか私は母星の頃に捨てたはずの体そっくりのボディを手に入れていた。
ボディがそっくりなのでトランスフォームコグを起動させる。自身の体を変形できるようにさらに造りかえる。
さらに人型に変形してみる。変形するのはいつぶりだろうか……星を発ってから……数百万年は過ごしたか?
超久しぶりの変形にウキウキしていると、人間モドキがとんでもなくビビっていた。
すっかり忘れていた。この星の原生生物は機械っぽいやつも金属っぽいやつもいるが変形するのはいないんだった。
人間モドキの会話を聞いてやれば、この身体の最も適したボディで持てる科学の全てをつぎ込んだとか……
なんでも戦争を終わらせるために作ったとんでも化け物が制御不能でハルマゲドンなのだとか。
私はその破滅の魔獣と言われるデスザウラーとかいうのを叩きのめすために生み出したという。
その私が勝手に人型に変形したから暴走したのかと慌てたらしい。
対策していたのに、私が関係なく対策をぶっ壊した形になったようだ。スマヌ……
それにつけてもなんということでしょうか。争いがいやで、母星を飛び出したというのに戦うために作られていた。
まぁ仕方ないね。この人達に罪はない。罪深きは作ってもらった恩を仇で返したそのデス、デス……デスザウルス?とかいうやつの方だ。
え?デスザウラーだって!?そうそうそんな名前そんな名前。
まぁ任せたまえ、私にかかればそんな奴イチコロよ。
そう思っていた時期が私にもありました。
なんだあれ、セコイとしかいいようがない。
装甲には如何なる攻撃が通用せず、やたらめったら放つ荷電粒子砲に当たると滅茶苦茶に吹っ飛ばされる。
痛いってレベルじゃない。荷電粒子砲に当たった後その勢いでゴリゴリと地面に擦り付けられた時のあの音は思い出すだけで嫌になる。
まぁこちらもあいつの顔を散々炎のブレスで焼いて嫌がらせしてやった。滅茶苦茶嫌がってたね、ざまぁみろ!
え?なんでそれで無事なのかって?無事なものか私のメンタルはズタズタだ。見栄を張って行ったのにあれでは恥ずかしいではないか。
え?普通は荷電粒子砲をくらえば一瞬で蒸発するって?それは……まあ……その……気合いか……な?言わせるな恥ずかしい。
まぁ次の出撃で最後なんだろ?上手く封印できるといいな。
わかってるよ、時間はかせぐ。でも……あれは倒してしまって構わんのだろう?
あれからどれほどの時が流れただろうか……あの時私をゾイドにした人間達は文明の崩壊と共に消え、そして世界は再び人とゾイドの争いの時代に入った。
今あの化け物を知る者はいない……私を除いて。
デスザウラーの最後、それはゾイドイブの停止による全ゾイドの活動停止。それにより動かなくなったデスザウラーにいろいろと手を加え、封印に成功した。
ゾイドイブはゾイドの心臓であるゾイドコアを作ったり、パワーあげたりといろいろできる。自分達が作ったものなのに人間でもよくわからないらしい。
そんなものを使って良いのかはさておき。
それでゾイドイブの力でゾイドを活動停止させたわけだ。デスザウラーもゾイドだ例外ではない。だからあいつはそれを阻止せんと迫ってきたのを妨害するのが私の役割だった。
まあ、私のゾイドコアはトランスフォームコグと融合してしまっていたからか活動停止するわけでもなくその後は自由にさせてもらった。
人間の驚きの顔は今でも笑えるトップ3に入っている。え?一位はなにかって?あの博士が度肝抜かした時かな?
なんとか化け物を封印したはいいが文明を存続させるほどの力はなかったのか、気が付けば彼らはいなかった。
ゾイドイブの活動停止以降私は人をしばらくの間見なくなった。
寂しいものだ。だが時の流れは残酷でもある。私が他のゾイドよりも寿命が長いのも元の種族が原因か……
今、世界は2つの国に分かれて戦争をしている。いつ終わるともわからない戦争に多くのゾイドや人が生まれては死んでいった。
私は未だに己と共に戦ってくれた人の事を忘れられない。
私は獣だ。けれど……彼とは……上手くいっていた気がする。パートナーっていうもののすばらしさを私は知ったのだ。私の背に乗り共に戦う彼はまさしく友だった。
そんな彼とは彼が死ぬ間際にとある約束をしたのだ。内容は秘密だ。
彼のような人にまた会えるだろうか。会えたらいいな。
私は獣だ。知恵ある獣。友との約束のため、私はこの星の行く末を見守り続ける。友の墓の上でいつまでも、いつまでも。
私は獣……トランスフォーマーであり、プレダコンであり、ゾイドだ!!