真琴×光秀短編集   作:とましの

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全力で悪戯する

麻雀において培われるのは論理的思考だという。現に光秀は論理的思考や判断力に優れている。

対して麻雀にあまり触れてこなかった俺だがチェスは得意だった。

 

そして今回、俺はどうしても光秀に勝ちたいと考えていた。

あらゆる勝負事に勝つと自負する光秀はチェスでも強い。だが俺にも考えがある。

 

戦略が戦術に負けることはない。

光秀が盤上で最強だとしても、俺はその外から打ち勝つ方法を見いだしてみせる。

 

「あー……これ三手目で俺のチェックメイトだな」

缶ビールを片手に勝負を始めた光秀は、この試合中に三缶空けている。にもかかわらず頭は冴えているらしく駒を動かす手に迷いもない。

余裕綽々とした態度の光秀を眺めながら俺はルークの駒を置いた。

「さすがにチェスは初心者だわ。今回は良い勝負だったな」

これで最後とばかりに光秀はキングの駒を手にした。

「光秀」

「待ったはなしだぞ」

光秀は笑いながら駒を置く。

 

その瞬間を、俺はずっと待っていた。

 

「愛してる」

 

ガン!

光秀の手によって勢いよく置かれたキングの駒は、あきらかに俺たちの脳内で組み上げられた一手とは違う位置にある。

置く場を間違えるとは初歩的で致命的なミスだな、光秀。

そしておまえの驚いた顔は可愛いが、勝負の世界は厳しいものだ。

俺はゆっくりと駒を手にした。

「てめぇ……」

「ほらチェックメイト」

今度は俺が光秀に死刑宣告を向ける。その時点でこのゲームは終了した。

 

だが俺の目的はチェスに勝つことじゃない。

試合を終えて俺がチェス盤を片付けるそばで光秀は新たな缶を開けていた。

「で? あそこまでして勝ちたかったってことは相当な罰ゲームを考えてるんだろ」

「そうでもないが、今はやりたくない」

「なんだそれ」

あんな形で勝負を決めればいくら光秀でも腐るに決まっている。不機嫌そうに顔をしかめてビールを飲む光秀を俺はまっすぐに見つめた。

「今週末、土曜の夜がいい」

「は? 学会の後じゃねぇか」

「学会の後ならシラフだろ。酔ってない状態が良い」

「へー……」

ああこれはもう完全にやる気が死んだな。

光秀のことだから、卑怯な手で勝利した俺への怒りなんて持たないだろう。しかしあそこで動揺した自分自身への呆れは抱くはずだ。

「言っておくが、さっきのあれは勝つための手段じゃないからな」

今夜はもうこのまま酔いつぶれて寝るだけだろう。そんな光秀に俺は言葉を向けた。

すると光秀は怪訝な目を返してくる。

「チェスで戦っているうちに俺たちは思考の世界でひとつになっていたはずだ。だからこそ改めて愛してると言いたくなった」

「……もう黙っとけ頼むから」

俺は真面目な話をしているのに、光秀は赤くなった顔を背けてしまった。

 

 

 

土曜日の光秀は午後から学会で医大を離れている。そして夜遅くに帰宅した光秀は予想通りアルコールを一滴も飲んでいない状態だった。

合鍵を使い先に部屋で待機していた俺を見るなり光秀は渋い顔をみせる。

「例の罰ゲームか。で、どうすりゃいいんだ?」

「とりあえずベッドに寝てくれ」

指示をすると光秀は複雑な顔でベッドに腰を下ろす。

俺は速やかに光秀を押し倒すと元々緩んでいたネクタイをはずしてやった。

「罰ゲームって、シラフのまんまヤることかよ」

「ああ、そういえば最近はいつもアルコールが入ってたな。光秀は」

「うるせ……って、何やってんだ」

光秀の両手首をつかむと頭上で固定してネクタイで縛り上げる。ただそれだけの事なのに光秀は緊張した表情を見せた。

俺はそんな光秀の上へ馬乗りになるとシャツのボタンをわざとゆっくりはずしていく。

 

少しずつ露となるその肌を、筋肉に沿って撫で上げれば光秀も神妙な顔を見せた。

「おまえそれで焦らしてるつもりかよ」

「焦らしてるんじゃない。楽しんでるんだ」

「……なんだそれ」

俺の意図が読めない為か光秀は少しずつ機嫌を損ね始めている。

俺はそんな光秀へキスをする速度で顔を近づけた。とたんに光秀は驚いた様子ながらも目を閉ざす。

眉間にシワを寄せてきゅっと目を閉ざすその反応が可愛くて仕方ない。しばらく顔を眺めているとキスが来ないことを怪訝に思ってか、光秀が恐る恐る目を開かせた。

 

ここまで可愛い生き物が他にあるだろうか。

 

このままでは俺の理性が崩壊する。そう考えた俺は、予定より早いが最後の遊びに移ることにした。

枕元に隠していた瓶を手にするとふたを開ける。

それを見た光秀は呆然とした顔で問いかけた。

「なんだそれ」

「カル○スだな」

「んなことは見りゃわかるんだよ。なんでそれがここで出てきたんだって話だ」

「疑似ぶっかけ?」

俺の説明では理解できなかったらしい光秀が固まった。

俺の天才ぶりについていけない光秀も可愛いな。

「カ○ピスの原液をこうして光秀の腹に垂らすと……」

そう言いながら液体を光秀の引き締まった腹部に垂らしてやった。

トロリとした液体が割れた腹筋の隙間や胸に流れる。

「なかなか卑猥に見えるだろ?」

「バカかお前は」

やっとのことで理解したらしい光秀からお褒めの言葉をいただいた。

 

そうか、もっとやれと言いたいんだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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