IS~ワンサマーの親友   作:piguzam]

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3巻最後の締めの話の構想がまだ出ないので、その間の暇つぶしにでもどうぞ。


IF物語~世界感チェンジ(ハイスクールD×D)

 

もしも鍋島元次の生まれた世界がISの世界じゃ無かったら?

 

 

その場合は、能力も大きく変わっていたでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私立駒王学園。

 

 

今でこそ共学の学校だがほんの数年前までは女子高だった。

 

そのため生徒は男子の割合に比べて女子の割合が圧倒的に多い。

 

発言力もいまだ女子の方が強く生徒会長も女性であるため男子はあまり強くは出られないといった面もある。

 

勿論普通に過ごしている分にはこれといって不自由はしない学園だ。

 

 

 

とどのつまり、男子には肩身の狭い学園の筈なのだが――。

 

 

 

「がはっ――」

 

「い、痛え、痛えよぉ……」

 

「……オメェ等の負った傷よりも、あの子達の感じた恐怖の方が何倍も強えぞコラ?」

 

 

 

そんな駒王学園には、一人の益荒男が存在した。

 

「た、頼む……もう勘弁してくれ……も、もうアンタん所の学園の生徒には、手ぇ出さねえからよ。な?な?」

 

「……」

 

何処にでもある街の裏路地。

アンダーグラウンドの住人達や、法を破る事に快感を見出す若者達の巣窟。

そんな吹き溜まりの様な場所の住人達が、黒い制服を着た男一人に完膚無きまでに叩きのめされていた。

地面に倒れ伏す男達の中には、プロボクサー崩れや空手有段者、果てはナイフで武装した者達まで居る。

しかしこの男にとってはそんなものは全て平等に『大した事無い』程度の認識でしかなかった。

高校の制服に身を包んだ男はポケットからタバコとジッポを取り出して火を点ける。

 

「駒王学園2年1組の鍋島元次だ……飯時以外なら何時でも相手してやる……」

 

身長197cm、体重168kgの巨漢は只ならぬ威圧感を放ちながら言葉を切ると、地面に伏せる不良達に凄みを利かせた形相を見せた。

 

「それともう一つ……ッ!!次にウチの生徒に粉掛けた時にゃ、全身の骨粉砕されるモンと思えッ!!」

 

不良達はその只ならぬ威圧を浴びて涙と鼻水を垂らしながら、ブンブンと首を縦に振る。

偶に街に出歩けば、自分から喧嘩の中へと飛び込む男。

それが鍋島元次であり、彼の日常でもあった。

 

 

 

何時もの様に愛車のイントルーダーで登校を済ませ、同じバイク通学の奴等とバイクの話をする元次。

 

 

 

その見た目から初対面の人間にはかなり怖がられる元次だが、根がかなり良い性格だった事もあって、今では上級と同学年にはかなり親しまれている。

女子からは不良に絡まれた所を助けられた等もあって、逆に人気が高い。

それを妬んだ駒王学園の悪い意味で有名人な『変態3人組』に悪い噂を流されたりもした。

まぁ今となっては誰も変態達の言葉を信じる者はおらず、逆に袋にされる結果となっていたが。

更に元次自身が直々に出向いてシバキ回した為に、今では3人組のストッパーとしても有名になってたりもする。

何せ元次の話が出るだけで、3人は一様に顔を青くさせる程のトラウマが染み込まされている程だ。

 

「な、鍋島君!!また変態3人組が覗きをしてきたの!!もう何とかしてぇ!!」

 

「……ハァ……またか、あのボケ共が……先生は何してんだよ、ったく」

 

昼休みに友人達と話していた元次の元へ、涙を流した女生徒が切実に訴えてくる。

席から立ち上がった元次が見た先には――。

 

「ええい!!放せ女子共!!脳内で犯すぞ!!」

 

「落ち着け元浜!!寧ろこの女の感触を味あわないでどうする!!」

 

「お、おぉぉ……ッ!?DにCに……な、なんとF!?ここはパラダイスか……ッ!?」

 

エロメガネことロリコンで有名な元浜。

セクハラパパラッチ、エロ坊主と呼ばれる松田。

そして変態三人組の筆頭として学園の全女生徒から嫌われている重度のおっぱいフェチの兵藤一誠。

その3人が女子の罵声を浴びせられてるにも関わらず各々が女子の身体を視姦している。

しかも元浜に至っては強姦宣言までする始末だ。

周りの生徒達、それも男女関係無く蔑みを籠めた目で見てるにも関わらず、変態3人組は全然めげない。

 

「あんた達なんて本気で居なくなれば良いのよ!!この害虫!!」

 

「なんだと!?それが人に言う言葉か、このクソアマ!!」

 

「そういう態度を取らせてるのはアンタ達の行いの所為でしょ!!美穂なんて彼氏以外の奴に覗かれたって凄い泣いてるんだから!!」

 

「そんな事知った事か!!我々は欲求に従って女体の神秘を探求してるだけだ!!お前等の都合等知った事では――」

 

「なら、俺が自分の欲求に従って、テメェをボコボコにしても問題無えって事だよな?……元浜ぁ?」

 

ピタリ、と泣いている女子と言い争っていた元浜の動きが止まる。

元浜だけでは無く、抑え付けられていた兵藤と松田の動きも一緒に止まった。

3人の動きが止まった事で抑え付けていた女子も離れ、3人を取り囲んだ空間が出来上がる。

正面から見下ろしている元次の姿を見た瞬間、3人はガクガクと身体を震わせ始める。

だが、それももう後の祭りだ。

 

「な、鍋島……さん……あ、あのこれは――」

 

バギィ!!っと鋭い音が、喋ろうとしていた元浜の顔面から鳴った。

元次がその野太い足を振るって、顔面を爪先で蹴り抜いた音だ。

全力とは程遠くても、殺人的な筋力を持つ元次の蹴りは容易に対象を破壊出来る。

元浜の鼻は陥没し、激痛に苦しみ両手で鼻を抑える。

そんな凄惨な現場を見ても、この場に居る誰もが元浜を助けようとはしない。

全ては3人の自業自得なのだから。

 

「オメェ等のやってる事は犯罪だって知ってるか?分かるよなぁ?高校生にもなって犯罪じゃねえとか寝惚けた事言わねぇよなぁ?」

 

元次は額に青筋を浮かべながら言葉を紡ぐ。

この変態3人組が学校にR-18な代物を持ち込んでるのは、誰もが知る周知の事実だ。

それぐらいなら別に良いと元次は考えていたが、この3人はそれだけでは飽き足らずに嫌がる女子を盗み見ていた。

両者に合意の無い、嫌がる女子の肌を盗み見る行為が、元次の一番許せない所だった。

 

「お、お前のやってる事だって犯罪じゃねぇか!!暴力を振るってる癖に、偉そうな事言うんじゃ――」

 

バギィ!!

 

そこで松田の反論する言葉は途切れた。

元浜と同じ様に、元次が鼻を圧し折ったのだ。

 

「ンな事は俺が一番判ってんだよ……だが、俺を頼って来てる奴が居るなら、暴力使ってでも助けるしかねえだろーが」

 

元次は堂々と言い放って、3人の前にヤンキー座りをして目線を合わせる。

暴論であり理不尽な物言いを堂々と言い放つ元次に、3人は更に顔色を青くした。

コイツは言葉で止まる人間じゃないと、身体で理解したからだ。

普段と変わらない様子で人を怪我させてニンマリと笑う元次を見て、3人は涙を流す。

 

「俺は目には目を、歯には歯を、って言葉が好きでな……犯罪には犯罪を。テメェ等の女子に対する覗きって暴力には、拳の暴力で対応させてもらうぜ?」

 

その言葉を最後に拳が振るわれ、変態3人組は学校を早退して病院へと運ばれていった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「……泣いて頼まれたとは言え、やりすぎですよ、鍋島君」

 

明けて次の日、元次は昼休みに校内放送で生徒会室への呼び出しを食らい、生徒会室に居た。

そして、現駒王学園生徒会の面々+生徒会長である支取 蒼那から直接にお叱りを受けている。

しかし説教されてる本人はドンとソファーに座って何処吹く風だ。

 

「……聞いているんですか、鍋島君」

 

「ん?あぁ、ちゃんと聞いてるッスよ。生徒会長」

 

「でしたら、今後はこういう事が無い様にして下さい」

 

「いやいや。寧ろそれは俺の台詞なんスけど?逆に聞きてえんスけど、生徒会はあの3人の犯罪行為を見過ごして良いというご意見で?」

 

「そうは言ってません。ですが、貴方の遣り方は余りにも乱暴過ぎる。貴方は本来、何の権限も無い一般生徒なんですから」

 

「……ハァ」

 

淡々と言葉を紡ぐ支取生徒会長に対して、元次は大袈裟に溜息を吐く。

その行動に支取の後ろに居る他の生徒から咎める様な視線が飛ぶが、元次はその全てを無視する。

ただし、嫌に強い視線を向けてくる男子には軽めの威圧を飛ばして黙らせた。

大体元次からしてみれば、何であの3人組の所為で自分が説教を受けなくちゃならないのか、という想いでいっぱいだった。

 

「ならッスよ?ちゃんとあの3人に対して何かしらストッパーを掛けて下さいや。生憎と俺は暴力しか持ってねえんで、それ以外の解決は難しいっすから」

 

「ですから、貴方が拳を振るわなければ……」

 

「なら、会長さんは泣きながら自分を頼って来た奴には応えるな、と?」

 

「そうは言ってません。それは極論過ぎます」

 

「本質は変わんねぇッスよ。要は俺が頼られなくても良い状況を生徒会が作ってくれりゃ良いんスから。例えば……『次に覗きをした場合、強制退学』とか」

 

「……通告も無しに次の処罰をいきなり退学にするのは……」

 

元次の出した案に、支取は難しい顔をして難色を示す。

しかしそれも込みで元次は考えていたのか、特に顔色を変えない。

ならば続きがあるのだろうと考えた支取は「続けて下さい」と言葉を掛けた。

元次はそれに頷いて、自身の案を語る。

 

「先生達にかけあったら良いと思うんス。ぶっちゃけ今までの覗き行為や持ち込み禁止物に対するお咎めをしてない訳ですし、今回の覗き行為で見過ごせなくなったから、この処置を取りたいって感じで」

 

「確かにそれなら、先生達と話し合って調整してもらう事は可能ですが……」

 

「俺に拳を使うなってんなら、俺のトコに泣いて相談に来る奴を減らす為にそれ相応の解決策を作って下さい。只でさえこちとら、今日から謹慎七日間なんて言われてイラついてんスから」

 

これ以上説教されたらキレちまいそうだ。と言葉を締め括りながら髪をガシガシと掻く元次に、生徒会の誰もが息を呑む。

この男、普段から喧嘩している時の怒りもかなりのモノだが、本人曰く「キレてはいない」らしい。

そんな男がキレたらどうなるのかと、その矛先が自分達に向えばどうなるのかと慄いたのだ。

しかしそんな生徒会メンバーの中で、支取だけが今の元次の言葉に驚いた表情を浮かべる。

 

「謹慎ですか?何故貴方が?」

 

「ん?まぁアレっすよ。変態3人組の松田と元浜が騒いだ結果らしいッス。『自分達は暴力を振られた被害者だ』とかうんぬんかんぬん」

 

「……原因は自分達にあるのに反省の色がまるで無しですか……分かりました。今の鍋島君の提案を採用します」

 

「そうっすか。じゃあ俺はこれで。先生からは話が終わったら帰る様に言われてますんで」

 

「待って下さい。さすがに貴方の謹慎理由はふざけ過ぎています。私が先生に直接話をして謹慎を取り下げてもらいますので、ここに居て下さい」

 

腰を上げて帰ろうとする元次に支取が待ったを掛ける。

支取だけでは無く、後ろに控えていた生徒会の面々も同じ気持ちだった。

遣り方はどうであれ、元次は3人組に泣かされた女の子の為に拳を振るったのに、これではあんまりだ。

そう思って支取は元次の謹慎を取り下げる為に動こうとする。

だが、当の本人は手をヒラヒラと振ってその申し出に待ったを掛けた。

 

「良いっすよ、別に。体良く降って湧いた7連休だと思えば良いんスから」

 

「その言葉を聞いたら益々駄目ですね。学生の本分は勉強なんですから、そういうズル休みは承認出来ません。座って待っていなさい」

 

「げっ、藪蛇だったか……やっぱお固い会長にゃ言うべきじゃ無かったぜ」

 

「何か言いましたか?」

 

「いいえ、何も……はぁ」

 

元次の言葉を聞いた支取は眼鏡を光らせながらそう言い放ち、反論しようとする元次を視線で黙らせる。

さすがに正直過ぎたか、と後悔する元次を支取はソファーに座って待つ様に命令して生徒会室を出て行った。

今の内に逃げようかと考えた元次だが、既に自分の周りには生徒会の女子が集まってニコニコ笑いながら元次に座る様に促す。

さすがに敵意の無い女子に拳を振るう気にはなれず、元次は観念してソファーに座りなおした。

漸く大人しくした元次を見て、女子の内2人が元次の向かいのソファーに座る。

一人は黒髪の大和撫子を思わせる生徒会副会長の真羅 椿姫。

もう一人は水色のロングヘアーにキリッとした眼つきの由良 翼紗だった。

 

「あぁちくしょう、ミスったか……副会長ぅー、ここはどうか見逃して下さいっす。お願いしまーす」

 

「そういう訳にはいきません。もう諦めた方が良いですよ、鍋島君」

 

「そうそう。ここで逃げたら会長、多分君の家にまで押しかけると思うな」

 

情けなく頭を下げて懇願する大男に、生徒会メンバーの殆どがクスクスと笑っていた。

対面に座る真羅と由良も苦笑いを浮かべている。

 

「くっそ、俺のバラ色の7連休が……おいそこの男子、お前も生徒会役員だろ?ちょっと会長を止めて来いや」

 

「はぁ?何で俺がそんな事しなくちゃいけねえんだよ」

 

「止めねえと、お前が俺の謹慎処分の理由になっちゃうかもな」

 

「まさかの脅迫!?それ完璧に俺をボコすって言ってる様なモンじゃねえか!!」

 

「ボコす?そんな軽いとでも?誰にそんな生意気ほざいてんだね君は?」

 

「何のキャラだよその喋り方!?そして生意気言ってすいませんけど会長に取り合うのは勘弁して下さい!!」

 

「っち、トコトン使えねえ野郎だ」

 

「あれ?何で俺ここまで言われてんの?おかしいな、俺って何かしたっけ?目から汗が止まらねぇや」

 

結局、生徒会役員唯一の男子である匙では支取は止められず、元次の謹慎は解除されたのであった。

匙の涙、元次の7連休、そして変態3人組の覗き禁止宣告による涙……プライスレス。

こんな日もあったが、概ね鍋島元次の日常は平穏そのもの。

正に平和な日常の中で楽しく青春を謳歌していたのだ。

 

 

 

しかしある日を境に、その生活は一変する。

 

 

 

「au!?」

 

ある日の放課後。

愛車のバイクを受け取りに行く道中で、元次は変わった人間を発見した。

何も無い所で顔面からズッコケるというアクロバティックな芸を披露する人間に遭遇したのだ。

最初はキョトンとしていたのだが、何時まで経っても起きないのを心配して、元次は近づいていく。

 

「おい。大丈夫か?」

 

「auu……Thank you」

 

近づいて声を掛けた元次に反応して、目の前の人は言葉を返してくる。

声の高さからして少女らしく、良く見れば着ている服は教会のシスター服だ。

しかしどうやら外国の人間なのか、流暢な英語で喋ったので、元次は参ったなと内心思う。

英語の成績は余りよろしく無いので、聞き取れる自身が無かったからだ。

元次の差し出した手を取った少女だが、突如突風が吹いて、彼女の頭に乗っていたヴェールが飛んでしまう。

 

「kya!?」

 

「おっと(パシ)ほら、外れたぜ?」

 

しかし飛ばされる前に上手い事ヴェールをキャッチした元次が、少女へとヴェールを返した。

そこでやっと少女が顔を上げて、元次と顔を合わせる。

 

 

 

――ヴェールに包まれていたのは、まるで『聖女』の様な少女だった。

 

 

 

彼女――名前はアーシア・アルジェントというらしい。

らしいというのは、元次が聴力をフル活用して、名前らしき部分を聞き返すと彼女が微笑んだので、多分そうだというだけ。

何とか身振り手振り、そしてスマートフォンの英訳サイトに文字を打ち込んで見せるという四苦八苦のコミュニケーションを取って、元次はアーシアの話を纏めていた。

 

曰く――

 

迷子、教会、AMEN

 

断片的過ぎるが、何とかここまで拾う事は出来た。

っというか最後のだけは何か違う気がする。

多分、アーシアは街外れにある教会へと行きたいのであろうと元次は考える。

ここで会ったのも何かの縁だし、少し助けてやるかと、元次は目の前で悩むアーシアに目を向けた。

直ぐに携帯の英訳サイトに自分が道案内をすると翻訳させてそれを見せると、アーシアは嬉しそうに目を輝かせた。

ここで元次に下心が無いかと言えば、実はそうでもない。

自分の人相を見ても怖がらずに普通に接してくれるのが嬉しかったので、その恩返しも兼ねての申し出だった。

そうして、言葉の疎通が出来ない奇妙な組み合わせの二人は教会に向かっていったのだが……。

 

「うわぁああん!!」

 

二人が公園に差し掛かった時だった。

遊んでいた少年がド派手に転んで膝を擦り剥いて泣き出したのだ。

 

「ッ――」

 

「ありゃ痛そうだな……バンソーコーあったっけか?」

 

さすがに泣いてる子供を無視していくのは気が引けて、元次は応急処置の出来そうなモノを鞄から探すが、見当たらなかった。

さてどうしたものかと頭を捻る元次だったが……。

 

「……ッ!!」

 

「あ、おいアーシア?」

 

突如、隣りを歩いていたアーシアが走り出したのを見て、元次は声を掛ける。

しかしアーシアは元次には答えず、子供の元へと走って行った。

もしかして何か薬でも持ってるのかなという疑問と、さすがシスターだな、という尊敬の念が元次の中で湧き上がる。

そしてアーシアは一目散に転んだ少年へと駆け寄ると少年の擦りむいた足へと手をかざした。

 

 

 

次の瞬間――

 

 

 

「――マジかよ?」

 

 

元次は目の前の光景に驚いた声をあげる。

アーシアが擦り傷に手をかざすと淡い緑の光が輝き、傷をみるみると癒していくのだ。

良く見るとアーシアの両手の指に光る指輪の様なモノが現れている。

これは普通の世界ではありえない事だ。

手を翳しただけで光が出て、しかも今作った傷を治す等、現代医学では出来るモノでは無い。

普通ならアーシアに対して畏怖の目を向ける所だが、元次は違った。

 

――まさか俺と『似た』……いや、『対極』の力を持ってる奴が居るなんて。

 

彼の心中はそれに尽きた。

彼もまた、人ならざる異常な力の持ち主であるからだ。

その光景に見惚れていると、彼女がこちらを向いて悪戯をした子供のように可愛らしく舌をだした。

 

「……わぁ!?痛くない!!ありがとう、お姉ちゃん!!」

 

「……?」

 

と、傷を治してもらった子供がアーシアに満面の笑みでお礼を言うが、日本語が分からないアーシアは首を傾げている。

さすがにそれぐらいなら通訳出来るので、元次はアーシアに言葉を通訳して教えてあげた。

その言葉を聞いたアーシアは同じ様に笑顔を浮かべて、少年に手を振る。

少年は手を振り元気に去っていき、彼女も少年が見えなくなるまで手を振り嬉しそうに微笑んでいた。

そこからまた再開した道案内だが、先ほどよりもアーシアの表情は優れない。

理由は直ぐに分かった……あの力は、年端のいかない子供には受け入れられても、青年なら畏怖するのが普通だ。

その青年が誰を差すかは言うまでも無く、アーシアの隣に居る元次の事である。

その考えに至った元次は自分の考えを何とか伝えようと首を捻り、直ぐに携帯に文字を打つ。

日本の日常でも若人なら一度は使った事のあるであろうシンプルな英単語。

それを打ち込んだ元次はアーシアへと携帯の画面を翳す。

 

『Great』

 

その文字を見たアーシアはキョトンとした顔で元次に視線を向ける。

その視線を受けた元次は自分が出来る最高の笑顔を浮かべて、親指をグッと立てた。

所謂『グッドサイン』だ。

その動作で言いたい事、伝えたい事の全てが伝わった訳では無いのかもしれない。

だが、元次の仕草から何かを受け取ったのだろう。

元次のコミュニケーションを見たアーシアは、満面の笑顔を浮かべていた。

 

 

 

「――やっと見つけたわよ、アーシア」

 

 

 

――しかし、その時間は唐突に終わりを告げてしまう。

 

「ッ!?……」

 

「……ん?誰だテメェ?」

 

唐突に現れた1人の女性。

闇夜の様な黒色の髪の女が、何とも薄ら寒い笑みを浮かべてアーシアを見ていた。

元次からすれば唐突に話し掛けてきた女程度の認識だが、アーシアは相手が誰か知っているらしい。

しかし青褪めた表情で震えている所を見れば、どうやら友好的な関係でも無さそうだ。

それに、自分を見る目がまるで路傍の石ころを見る様に冷めてる時点で、元次は目の前の女に敵意を持った。

 

「下等な人間如きが話し掛けないでくれるかしら?私はアーシアに話し掛けて――」

 

「テメェの都合なんざ知った事じゃ無えよ、このうすらボケ。しかも何だ?下等な人間如き?中二病患者はお断りなんだよ。とっとと消え失せな」

 

初対面の相手にも関わらず、元次は辛酸な言葉を吐きかけて女性を侮蔑した。

何故なら、相手の女の話し掛けてる目的のアーシアが怯えてるからだ。

ならば、友好的に話し合う必要性は皆無であろうと元次は判断した。

何よりこの手の、相手を最初から見下してる輩は男女関係無く、鍋島元次の嫌いな相手だからだ。

しかしこの元次の言い分に、黒髪の女は酷く憤慨した。

分かりやすく言うなら至高の存在と謳う『種族』の自分が下等な『人間如き』に中二病扱いされて切れたのだ。

 

「……ええ、良いわ。もう良い。貴方程度の浅はかな人間に至高の種族である私の事を理解しろと言う方が――無茶な話しだったわね」

 

バサァ

 

その言葉を皮切りに、世界が異質な変化を遂げた。

夕暮れの美しい朱色の空が変色し、紫を混ぜた歪な色合いへと変化する。

更に二人の目の前に居る存在が、本来『ある筈の無い』モノを背中から生やして――。

 

「――なんだ、堕天使か」

 

自分達の頭の上を浮遊していたのだ。

目の前の女が背中から生やしたのは烏の様な色合いの黒い翼。

しかしそんな現実から掛け離れた光景を見ても、元次は特に態度を変えない。

それどころか、逆に正体を言い当ててきた事に、レイナーレは少し驚くも、直ぐに嗜虐的な笑みを浮かべる。

 

「あら?知っていたの?なら話は速いわね……光栄に思いなさい。貴方程度の人間がこの至高の堕天使であるレイナーレの手で殺されるのだから。恨むならこうなった自分の不運。いえ――」

 

そこで言葉を区切った人外……レイナーレは、元次の後ろで震えるアーシアへ視線を向ける。

 

「貴方に不運をもたらした『魔女』を恨むのね」

 

「ッ!?……」

 

「……魔女?どういう意味だ?」

 

レイナーレの言い放った言葉にアーシアはビクリと震え、元次は訝しげな視線をレイナーレに向ける。

この反応は普通じゃないと感じた元次は大人しくレイナーレの返答を待つ。

何も知らないまま『聞けなくなる』のは後で面倒だからだ。

 

「ふふっ。巻き込まれた上に言葉も通じない貴方が知る由も無いでしょうけど、それで死んだら可哀想だものね……良いわ。冥土の土産に教えてあげる」

 

既に自分の中では、元次は死の運命から逃れられないと思っているのか、レイナーレは嬉々として元次の質問に答えた。

この聖女の様に心優しい少女が魔女と呼ばれた皮肉な運命――その悲しき人生を。

 

「そこのアーシア・アルジェントはね、教会を追放された異端のシスターなのよ。その理由は、その子が人以外の悪魔を癒せる力を持ってるからなの。聖女とまで呼ばれていたアーシアは今では魔女と呼ばれ、教会から唾棄された存在。私達と同じで堕ちた存在って訳。だけどそのお蔭で、私にチャンスが巡ってきたわ」

 

レイナーレの言葉を裏付けるように、アーシアの手が小刻みに震える。

顔色は先程よりも酷く、もはや青を通り越して蒼白になっていた。

何故日本語で喋っているレイナーレの言葉が通じてるのかは分からないが、アーシアの反応から嘘ではないと元次は判断する。

目の前の人外な存在が語る通りなら、この世界には悪魔と堕天使が居る事になると元次は考察した。

恐らくレイナーレの言い方から、教会は悪魔と対立してるという事になる。

その異形……人外を癒してしまったアーシアは聖女の位置から魔女の烙印を押されてしまったのだろう。

 

「堕ちた聖女のアーシアの身体にある、悪魔ですら癒す事が出来る神の与えた奇跡――神器(セイクリッド・ギア)。私はそれを彼女から抜き取る為にアーシアを保護したの」

 

「……」

 

何が保護だ。と元次は無言で毒づく。

もしもレイナーレの言う保護がもっとまともなモノなら、アーシアがここまで怯える事は無い。

ならば、恐らく今日まで酷い扱いを受けてきたのだろう。

そもそも保護した目的がアーシアの中に眠る神器目当てという時点で、下衆な思考が見えている。

元次の静かな変化に気付かず、レイナーレは更に言葉を紡ぐ。

 

「それがあれば、私もアザゼル様やシェムハザ様に愛を頂けるの。神器を抜き取った人間は死んじゃうんだけど……まぁ良いわよね、アーシア?だって貴女の人生が狂わされた忌むべき物を貴女の身体から取り除いてあげようというのだから。貴女も私に感謝して、神の元へ逝けるでしょう」

 

ブチッ!!

 

不意に、何処か分からない場所から何かが引き千切れた音が鳴り響くが、自分に酔ってるレイナーレは気づかなかった。

唯一気付いたのは、『音の発生源』の側に居たアーシアだけだが、彼女も何の音か判らなかった。

そして、遂にレイナーレは元次に視線を向けると、その手に光で形成された槍の様な物を作り出す。

 

「さあっお喋りは終わりよ。早く死にましょう?そして私はアーシアの神器を手に入れて、高みに上るのよっ!!」

 

「ッ!?NO!!」

 

「……アーシア?何の真似かしら?早くどきなさい。そこの人間を殺せないでしょう?」

 

しかしレイナーレがその手に持つ槍をいざ投擲しようとした瞬間、元次の後ろに居たアーシアが彼を庇う様に前に出る。

その動きに目を細めるレイナーレだが、アーシアは震えながらも動こうとはしなかった。

 

「――!!――!!」

 

「……はぁ?……あのねぇ、馬鹿な事を言わないでアーシア。その人間は私達を見たの。儀式を完璧に済ませるには、ちゃんと不安の種を摘んでおくのが当たり前でしょう?」

 

「――!!――!!」

 

「そうね。そいつは只の無力な人間よ。でもその男は計画の一端を知った。なら殺しておくのが得策なのよ……なにより、至高の存在たる私を馬鹿にした罪は万死に値する――」

 

「ごちゃごちゃうるせえよ、烏女」

 

ピタリッ。

 

まるで時間が止まったかの様に、公園内の空気が凍った。

最も、今の元次の言葉を理解しているのはレイナーレだけであって、アーシアは元次が何かを言ったぐらいにしか理解出来なかったが。

しかし、言われた張本人のレイナーレには耐え難い侮辱だった様だ。

目尻は吊り上がって怒りを刻み、先程までの美少女の仮面が剥がれた本性の貌は、只々醜かった。

 

「……今、何と言ったのかしら?私の耳には、私が『烏女』と呼ばれた様に聞こえたのだけれど?」

 

「ッ!?――!!――ッッ!!」

 

レイナーレの言葉で元次が何を言ったのかを理解したアーシアは早口に言葉を捲し立てて元次に何かを伝えようとする。

しかしそんな早口の英語が元次に理解出来る筈も無く、そしてアーシアの言葉を聞く耳持たずの元次は、不機嫌な表情でレイナーレを見据えた。

 

「何だ?難聴持ちかよ?ならもう一度言ってやる。ごちゃごちゃうるせえぞ、この漁り好きの烏女」

 

「ッ!?……どうやら、余程死にたいらしいわね……ッ!!」

 

元次の中傷が聞き違いでは無いと判断してレイナーレは憤怒の形相を浮かべて元次を見やる。

その表情を見たアーシアはもうどうしようも無いと思い至ったのか、呆然とした表情で地面に膝をついてしまう。

しかしそんな中で、元次は不機嫌な表情から一転して、心底馬鹿にした笑みを浮かべた。

 

「的を射てんだろ?アーシアを殺してそのアーシアの持ってたセイクリッドなんたらを使って男に取り入ろうとしてんだ。死体を漁るなんて烏しかやんねえよ。その薄汚ねえ羽と合ってお似合いじゃねぇか」

 

「……下等な人間の分際でッ!!」

 

「テメェはそれ以下だっつってんだよ、『害鳥』如きが偉そうに粋がるんじゃねえ……それになぁ……」

 

元次は言葉を続けながらも、地に座り込むアーシアへと視線を向ける。

彼女は自分の責任で元次が死んでしまうと決定づけたのか、ボロボロと涙を零して謝罪を続けていた。

そんなアーシアに元次は一度笑みを浮かべてから、レイナーレが1人で語ってる間に携帯の翻訳サイトで作った英文をアーシアに見せる。

スマホを自分の手から手渡し、レイナーレへと視線を向け直した。

 

「テメェはアーシアを自分と同じ存在だとかほざきやがったが……自惚れんじゃねえぞ?テメェ如き他人の力に縋りつく寄生虫みてーな腐れアマが、こんなにも優しい女の子と同列に成り上がるなんざ一生有り得ねえ――身の程を知れや、アホンダラァ」

 

ブチッ!!

 

二度目の何かが千切れる様な音。

これはレイナーレの額から鳴った音であり、所謂堪忍袋の緒が切れたという状態だった。

そして、それはレイナーレが理性を失い怒りのままに行動する事の予兆である。

 

「――この、下等種がぁああああああああッ!!!」

 

慟哭とも取れる雄叫びを挙げながら、レイナーレは自身に作れる最大級の光の槍を持って元次へと高速で迫る。

対する元次はそんなレイナーレの行動を不敵な笑みで見据えていた。

何故、この力の前に怯えないのか?といった疑問は最早レイナーレの頭の中には残っていない。

殺す!!至高の存在へと至る自らを浅ましいカラスと称したあの男に、生まれた事を後悔させる!!

唯それだけしか、レイナーレは考えていなかった。

 

「ッ!?NO!!GENJIIIIII!?」

 

ここで、携帯に書かれた文面に意識を取られていたアーシアが悲鳴をあげた。

目の前の言葉の通じない恩人が、自分の所為で死ぬ。

そう考えただけで、アーシアの心に何とも言い難い悪寒が広がったのだ。

何より言葉が通じない不器用な遣り取りでも自分の為に道案内をし、周囲から恐れられたあの力を「凄い」と褒めてくれた元次を死なせたくなかった。

自分の為にあんな『言葉』をくれた人に、自分の所為で死んで欲しくなかった。

 

『Asia is my friend ―― Even if I have anything, I protect a friend』

 

アーシアは俺の友達だ――俺は何があっても、友達は守る。

 

元次は自分の為に叫んでいるアーシアの悲鳴を聞きながら、『何時もの様に』構えを取る。

脚を肩幅に開いて腰を落とし、腰を捻って腕を引くと、腕の筋肉が巨大な力こぶを形成した。

傍から見ればオーバーアクションの状態から渾身の裏拳を繰り出そうとしているというのが丸わかりの構え。

まるで薙ぎ払うかの様な構えを取る元次に対して、レイナーレは所詮人間のやろうとしている事だと高を括る。

……目の前の男が、アーシアの様に『力』を持っている事に気付かずに。

 

「(ギリィ!!)……」

 

「死ねぇえええええええ!!人間風情ぃいいいいいい!!」

 

その言葉と共に、立ち構える元次と飛翔するレイナーレが接近し――。

 

 

 

 

 

「――まったく……てめぇ『等』は『何時も』同じ事をほざきやがるな――ヌウン!!!」

 

 

 

 

 

ピオォォォォーーーーーン!!!!!

 

 

 

 

 

振るわれた元次の剛拳が、『大気に罅』――否。『地割れ』を刻んだ。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「……これは一体、どういう状況かしら?」

 

先程、堕天使の力を察知して眷属と共にこの結界内へ侵入した女性はそうごちる。

無理も無い事ではあるが、彼女は目の前の光景が信じられなかったのだ。

彼女や彼女と共にこの結界の中に入ったのは、世間一般で言われる『悪魔』という存在だ。

 

 

 

先程レイナーレが言った様に、この世界には人間以外に知的生命体が存在している。

 

 

 

それは一般的に悪魔、天使、堕天使等の人外と呼ばれる種族の事だ。

彼等は悠久の永きに渡って3すくみの対立をしていた。

次元の狭間という世界の境界の先にある『冥界』や『天界』などに住んでいるのだが、時として例外も存在する。

それは、人間社会に進出した同族の住まう土地の管理者や、人間の願いという欲望を対価によって叶える悪魔家業等、千差万別だ。

彼女はその前者、つまりこの駒王学園のある関東某県駒王市の管理を任されていた。

そして今回、仇敵である堕天使の力を感じ取り、自らの管理する土地での目的を吐かせようと魔法陣を介して転移してきたのだが――。

 

「……どんな事をすれば、あんな風に破壊出来るの?」

 

彼女達が転移してきた場所……そこは凄惨な光景が広がっていた。

元は公園だった場所なのは辛うじて分かる。

自分達の立っている側は間違いなく公園の原型を保っているからだ。

しかし――。

 

 

 

「……グラララ……やれやれ。やっぱ俺の力は危ねえな……これでも一割無いぐらいの出力なんだが……」

 

 

 

自分達と同じ駒王学園の制服に身を包んだ男――彼の拳の先は違う。

彼の立つ場所を境にした向こう側はまるで圧倒的物量の『隕石』が墜落し、滑走した様な形でエグレていた。

結界の端までの全てを破壊し、両脇の地面や噴水等が巻き込まれた様に倒壊し、全てが地面に瓦礫の山となって丘を形成している。

そしてその瓦礫の中から一対だけ外気に出ている――黒い鳥の様な翼。

 

「部長、あの翼は……」

 

「……ええ。間違い無く堕天使の翼よ……驚いたわ。下級とはいえ、人間の身で堕天使を倒すなんて……」

 

紅蓮の如き紅髪を翻す彼女の傍には、彼女を守る形で、腰に小さな魔法陣を展開した美青年が立っている。

その青年の言葉に対して、紅髪の女性は注意深く、この事態を引き起こしたであろう張本人へ視線を向ける。

彼女は相手の巨躯を誇る高校生らしからぬ生徒の事を知っていた。

同じ駒王学園に通う生徒なら誰もが知っている程の有名人だからだ。

 

「…………あの殿方、学園でも有名な方ですわね」

 

「……確か、二年の……鍋島先輩」

 

更に彼女の横に付き従う形で微笑みながら立っていた黒髪の美女は、頬に手を当てて元次の姿を見つめていた。

しかし彼女の様子は他の皆とは少し違い、微笑みの仮面の下はある種の動揺に包まれていた。

これは彼女の過去に関する事なので今は触れないが、動揺と同時に期待すらも生まれているのだ。

更にその隣に立つは、元次とは対照的な小柄な体格に白い髪と金の瞳を持つ、何処か猫の様なイメージを持たせる少女の姿もある。

皆思いは色々あるが、視線は一様に、瓦礫の中から翼を掴んで血塗れ7割死のレイナーレを引きずり出す元次へと注がれていた。

 

「彼の近くに居るのはシスターだし……何が起こったというの?」

 

「そいつぁ、俺も知りてえトコなんスけどねぇ?」

 

『『『『ッ!?』』』』

 

紅髪の美女からすれば只の独り言の様なモノだった。

だというのに、瓦礫の中から堕天使を引っ張りだした元次の視線は自分達を不機嫌そうに見ているのだから驚いてしまった。

いきなりの接触に、彼女だけで無く彼女の仲間も同じ様に硬直するが、元次は「ほぉ?」と意外そうな声を出すだけだった。

 

「随分とまぁ、ウチの学校の有名ドコが雁首揃えて居るもんだな……そうは思わねえッスか?――リアス・グレモリー先輩よぉ?」

 

「……それは貴方も同じ事が言えると思うけど?二年一組の鍋島元次君?」

 

お互いに不敵な笑みを浮かべながら会話する元次と、リアス・グレモリー。

片や日本人では有り得ないとまで噂される北欧出身という噂の美女。

そして片や神が与えた奇跡とまで謳われるであろう強靭な肉体を持つ益荒男。

美女は容姿端麗な眷属を引き連れ、益荒男は片手で堕ちた天使を地面に引き摺りながら、邂逅を果たした。

 

「かっ。そりゃごもっともで……しっかし、ネームバリューなら俺よりも凄えんじゃねえですかい?3年のグレモリー先輩とそこの姫島先輩と言えば、駒王の二大マドンナだなんて言われるじゃ無いっすか」

 

「あら、それはありがとう」

 

「あらあら。お褒めの言葉をどうもありがとうございます♪」

 

「それに、駒王一のイケメン王子って呼ばれてる木場に、一年のマスコットって呼ばれてる塔城、だっけか?1,2,3年の良い所取りなオールスターとは驚いた」

 

「あはは、君に知られてるのは光栄だね」

 

「……何で、そんなに私達の噂に詳しいんですか?……案外、ミーハー?」

 

「NO。馬鹿言っちゃいけねえよ。あの変態3人組が良くアンタ等の噂してっから自然と耳に残っちまうんだよ。言うまでも無く木場は妬み、他の女性陣は良く性的に噂されてるぜ?」

 

元次は律儀に全員と会話をしつつも、油断せず、警戒も怠らなかった。

それは名前を呼ばれた面々も同じであり、互いに一触即発の状態を保っている。

しかし、両者の間には決定的な見解の食い違いがあったからだ。

 

「まぁ、ンな事は至極どーでも良いや……そら」

 

ここで元次は引き摺って来たレイナーレを4人の前に放り投げると、拳をバキバキと鳴らして戦闘態勢に入った。

 

「まだアーシアを狙うってんなら、同じ学校のモンでも容赦はしねえ……全員血だるまになるまでぶっ潰してやるよ、来な」

 

呼吸するのが苦しくなりそうな威圧感を醸し出して拳を構える元次の言葉に、4人は目が点になってしまう。

何故、堕天使を放り投げて自分達を敵と見定めたのか?

更に言えば、アーシアとは恐らく彼の後ろで呆然としているシスターの事だろう。

つまり元次は、この4人をレイナーレの仲間だと勘違いしているのだ。

さすがにこの事態は予想外だったのか、紅髪の美女……リアス・グレモリーは慌てつつも声を張り上げる。

 

「ちょ!?ちょっと待ちなさい!!私達は堕天使の仲間じゃないわ!!」

 

「あぁ?……マジか?」

 

リアスの言葉を訝しげに聞きながらも、一応構えを解いてくれた事に一同は安堵する。

実力は未知数であり、あの天変地異を引き起こしたのが彼なら、戦うのは幾らなんでも無謀だからだ。

何よりあの威圧感を感じ取った全員が同じ答えを導き出していた――軽く向けられた威圧感で、膝を屈しそうになった。

つまり、元次の実力は自分達では足元にも及ばない強さを持っていると。

元次が構えを解いたのを見計らって、リアスは再び口を開いた。

 

「ええ。私達は『悪魔』なのよ。堕天使とは違――」

 

ボゴォ!!

 

う、と続けようとしたリアスの耳に聞き慣れない音と有り得ない光景が飛び込む。

リアスの言葉を聞いた元次は、側にあった太い電柱を片手で、しかも大した苦労も無く引き抜いてしまったのだ。

それをまるでバットの様に軽々と振り回して電線を引き千切り、肩に担いだ構えを取る。

 

「良し、掛かってきな。プチッと殺ってやんよ」

 

「なんでよ!?」

 

いきなりの撲殺宣言に、リアスは飛び出そうになってた目を戻してツッコミを入れる。

まさか自分達の存在が知られていないとは思っていなかった故の、理解の食い違いが発生していた。

 

「まぁ、あんな烏女が堕天使だとか言うなら、悪魔も居るのは分かるが……悪魔ってのはトドのつまりアレだろ?人の弱みにつけ込んで悪事を働く危ねえ奴等?」

 

「……え、ええっとぉ……それは、何の知識かしら?」

 

あんまりと言えばあんまりな言われ様だ、とリアスは眉間を指で抑える。

初対面で頭ごなしに自分達の種族そのものが否定されるとは思っていなかったリアスは口元をヒクヒクさせながらも笑みを浮かべて元次に質問する。

残念ながら引き攣った笑みを浮かべるリアスを見た元次の心中は、「何だこの変な女?」という失礼極まる考えに染まっていた。

 

「あん?漫画でも映画でも悪魔なんてそんな扱いじゃねーか。俺は世の中に散らばる知識を統合して考えてっけど?」

 

「あ、あらあら。それは幾らなんでも、ちょっと……強引過ぎると言いますか……」

 

「古典的に古い悪魔の思われ方ですね……」

 

「あ、あのねぇ!?私達はそんな古臭い伝承の悪魔じゃ無いわよ!!大体映画とか漫画の知識でそう決めつけられるのは全くもって心外だわ!!」

 

元次の間違って無いだろ?と言いたそうな理由にリアスは青筋を立てて反論する。

さすがにこの思われ方は各々思う所があるのか、姫島朱乃は困惑し、塔城は考えが古いと一蹴。

木場に至っては頬を掻きながら苦笑いするしかなかった。

まぁ元次からすれば「自分で悪魔名乗っておいて心外もクソも無えだろ」としか思えなかった。

ここに至ってリアスは漸く、元次がこの世界の常識を知らない一般人だと思い至って、一から説明を始めようとするが――。

 

「……ならよ、まだこの空模様が変わって無えのは、アンタ等の仕業じゃ無えって事か?」

 

「ッ!?気を付けて!!何処かに堕天使が潜んで――」

 

「貴様ぁあああああ!!良くもレイナーレをぉおおおおお!!!」

 

しかし、元次の言葉でまだ堕天使が潜んでいる事に気付いたリアスが注意を呼びかけたと同時に、光の槍を構えた男が元次へと突撃してきた。

しまった、完全に油断していた。

後悔と自責の念がリアスの胸中に湧き上がるが、時既に遅し。

自分達の居る位置では、元次に迫る堕天使の男を倒すのは間に合わない。

もう後数秒もしない内に、堕天使の光の槍が元次の身体に刺さってしまう――。

 

 

 

「背番号55。ゴジラ・松井ぃ」

 

バチコォオオオオオン!!!

 

「へっぶばぁあああああああああああ!!?」

 

『『『『――は?』』』』

 

 

 

ならなかった。

 

この時、アーシアを含めたこの場の全員が目の前で起きた事実を理解出来ずに行動を停止してしまう。

電柱を持った元次の後ろから襲い掛かった堕天使の男を、元次は振り向き様の電柱フルスイングで吹き飛ばしてしまったのだ。

吹き飛ばされた堕天使はレイナーレの居た瓦礫地帯を己の身体で吹き飛ばしながら飛んでいき、遂には結界の端にブチ当たった。

そのままズルズルと結界を滑る様に落ちて、地面に倒れ伏し動かなくなる。

全くもって理解し難い光景に全員が沈黙していた中で、元次は再び電柱を地面に突き刺して、リアス達に向き直った。

 

「まぁ、今の奇襲を先に教えてくれたって事と、その烏女を助けようともしねーって事は、グレモリー先輩の言う通り仲間じゃ無えって事なんだな?疑ってすんませんね」

 

「……え、ええ。判って貰えた様で何よりだわ」

 

ホント、切実に。という言葉は己の内に飲み込んで、リアスは引き攣った笑みを元次に向ける。

正直に言うなら、今の一連の動きがリアスには見えなかったのだ。

ならば、もしもあの攻撃が自身を襲った場合、避ける事も防ぐ事も叶わない。

チラリと自分の仲間……眷属である木場と塔城に目を向けるが、二人も芳しく無い表情で首を軽く横に振る。

この二人は『ある特性』によって、木場は速力、塔城は攻撃力と防御力が普通の人間以上に強化されていた。

しかしそんな二人を軽々と超えるだけの速度と攻撃力を、目の前の人間が叩きだしてしまったのだ。

これだけで警戒に値する事である。

 

「(シュボッ)……フゥ~……ったく、まだ空模様が戻らねえのか……こりゃ他にも隠れてるって事だな」

 

しかし警戒されてる当の本人はというと、気楽にタバコを吸いながら鬱陶しそうに頭をガシガシと掻いていた。

本来なら年齢の問題がある行為だがそれを注意する気になれない程、リアスは驚愕している。

 

「しゃーねぇなぁ……アーシア、ちょっとこっちに来てくれ」

 

「?……??」

 

「あっ、そうだった。日本語通じねーんだっけか……えーっと、アレだ……カモン、アーシア」

 

「???」

 

「ガッデムシット。英語力たったの5か、ゴミな俺め」

 

しかもまだ何処かに堕天使が潜んでいる状況だというのに、何やらシスターの少女とコントを繰り広げている。

その光景に毒気を抜かれたのか、リアスは溜息を吐きながら苦笑いを浮かべて「しょうがないわね」と呟く。

このシスターを守ろうと行動していたのを思い出し、リアスは元次の性根が善に近いと確信する。

更に言葉が通じない事に困った表情を浮かべる元次を見ていたら、警戒するのも馬鹿らしく感じていた。

 

「そこのシスターさん。彼はこっちに来てと言ってるわ」

 

「ッ!!(コク)」

 

と、リアスの言葉を理解したアーシアは英語で返事をしながらテクテクと元次達の元へ歩いてくる。

とりあえずこれで良い?と目線で元次に問うリアスだったが、自分に向けられているのは訝しげな視線だった。

 

「……あのレイなんちゃらとか先輩にしろ、何で日本語喋っててアーシアに言葉が通じてんスか?」

 

「ああ。私達はこの世界のどの言葉でも話せるの。相手に合わせて自分の言語が切り替わってるといったところかしら」

 

「へぇー、そりゃ便利っすね。バイリンガル要らずたぁ羨ましい」

 

「貴方も悪魔に転生すれば習得出来るわよ?どうかしら?」

 

「そいつぁ遠慮しときます。転生うんぬんは知らねえけど、俺は人間なんでね……ちょっくら派手にいきますんで、アーシアと一緒にそこに居て下さい。巻き込まれても責任は取れませんので、あしからず」

 

そして、アーシアがリアス達の元まで下がった事を確認した元次は、レイナーレと対峙した時と同じ構えを取る。

その剛腕が狙う先は、先ほどレイナーレ諸共破壊し尽くした側の反対、つまり公園の無事な部分の残り半分だ。

『アレと同じ』モノが来ると予想したアーシアはその場に座り込んでジッとし始めた。

アーシアの突然とった謎の行動にリアス達は首を傾げるも――。

 

ギュウゥィィィイイン――。

 

「……部長……鍋島君の手に纏ってるのって……」

 

「えーっと……ちょーっと……マズイわね」

 

「あらあら。なんて猛々しい力の塊でしょうか」

 

「……途轍も無い、破壊の塊です」

 

元次の構える拳に集まる半透明のエネルギーの塊を視界に収めた瞬間、アーシアの行動の意味を理解した。

自分達が持つ魔力とは違い、只『破壊のみに割り振られた』強烈な波動の塊を見て、リアス達は冷や汗を流す。

細かな分析をしなくても、離れていても伝わり、肌で感じ取れる程の莫大な力の奔流。

どんな風に作用する力かは分からないが、リアス達は一つだけ分かった。

 

『巻き込まれたら確実にタダじゃ済まない』

 

それを理解したからこそ、リアス達はアーシアに倣って地面に座り、被害を少なくする為に防御結界を張る。

普段なら自信を持てる自分達の防御結界が、この時ばかりは紙切れの様に見えていた。

 

「んー……まぁ、震度10ぐらいで良いだろ――よっこらせっと」

 

何とも気の抜ける掛け声と共に、誰でも避けられそうなスローモーションで放った元次の裏拳。

 

 

 

ピオォォォォーーーーーン!!!!!

 

 

 

それは耳に残る独特な音と共に何も無い筈の空間、大気に地割れを刻み――。

 

 

 

グバババババババババッババババァ!!!

 

 

 

その先の空間が、一気に破壊された。

一瞬の空白から一転して、刹那の大爆発、とでも称する程の破壊。

拳の先から放たれた『地震の衝撃』は、公園の姿を一気に壊滅させて飲み込む。

その破壊は留まる所を知らず、遂には結界に衝撃波が衝突し――。

 

パキィイイン!!

 

一瞬の拮抗すら許さず、結界の全てを破壊してしまった。

結界を壊すと同時に衝撃波もうねりを潜め、完全に消え去る。

後に残ったのは、中央を残して盛大に破壊された公園と、瓦礫の上に横たわる2人の女性堕天使。

 

「こ、これは……」

 

「……何て、デタラメな破壊力……ッ!?」

 

「……」

 

呆然とした表情を浮かべるリアス達だった。

自身の前方に展開していた防御結界は、元次の繰り出した衝撃から離れていたというのに、粉微塵に砕かれている。

それはつまり、攻撃の余波だけで自分達の防御は意味を成さなくなった事と同義。

余りの次元の違いに、リアス達は呆然と呟く他に無かった。

 

「……あぁ……やっぱり……そうなのですね」

 

しかし唯一人、この異様な雰囲気の中でリアス達とは違う感情を持った者が居る。

その者の名前は姫島朱乃。

リアス・グレモリーと並んで駒王学園の二大お姉さまとして有名な悪魔だ。

彼女は元次の攻撃を見て、何処か納得がいった表情を浮かべ、こちらへ歩いてくる元次に熱い視線を送っていた。

瞳は悪魔らしく魔性の色気を帯び、表情は熱に浮かされた様に情欲を表す。

何故、元次と初対面の筈の朱乃がこの様な表情をするのかと言えば、彼女はずっと探していたのだ。

 

 

 

十年前のあの日の様に、『大気に破壊の地割れを刻む男』を、十年前のあの日からずっと。

 

 

 

この話に関しては彼女の出生が関係してくるので割合するが、朱乃は十年越しに自分の探し求めていた男に会えた事で、身体から沸き上がる歓喜に打ち震えていた。

しかしそんな朱乃の視線に気付いていないのか、元次はタバコを咥えたままにある少女の前に腰を降ろす。

 

「……ah……genji」

 

「おいおい。何て面してんだよ、アーシア……初めに言っただろーが」

 

この事件に立ち会う切っ掛けとなった少女、アーシア・アルジェントの泣きそうな顔を見て、元次は苦笑しながらポンと頭を一撫でする。

日本語が通じていない事を忘れたのか、元次はそのままアーシアに対して目を見ながら口を開いた。

 

「俺は何があっても、ダチを守るってよ?……これでも、ちったあ強いんだぜ?」

 

「……ッ!!(コクコク)」

 

「あー、だから泣くなってのに……ったくよぉ」

 

言葉が通じなくとも、アーシアには伝わったのだろう……自分を心配してくれる、元次の暖かな心が。

自分に対して向けられる優しい笑顔に安心したのか、アーシアは涙腺を緩ませて涙を流す。

そんなアーシアに苦笑を浮かべながら、元次は彼女の頭に乗せた手で、安心させる様に撫でる。

一頻り泣いて気持ちを幾分か吐き出せたのか、アーシアは嗚咽しながらも目から流れる涙を止めた。

そんなアーシアを見て「良し」と一声漏らした元次は立ち上がって紫煙を吐きながら、呆然とするリアス達に目を向ける。

 

 

 

「まぁ、一先ず今日は用事がありますんで……明日にでも話ましょうや?そっちも話したい事があるんでしょうし?」

 

 

 

こうして、一先ずの邂逅を得た悪魔と人間。

 

 

 

この出会いは世界に何をもたらすのか?

 

 

 

――それは、まだ誰も知らない。

 

 

 

 

 

ハイスクールD×D 海の王者の末裔。

 

 

 

 

 

 

これは、鍋島元次の生まれた世界がISでは無かったらというIFの物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鍋島元次 ステータス。

 

 

 

破壊力、防御力――EX

 

最早人間の域を軽くぶっ千切った天然チートな肉体。

そのスペックの高さは「1割の出力で防御結界諸共、悪魔や堕天使などの人外をブチのめせる」程に高い。

現在までの間で元次に素のスペックで勝てるのはただ『1人』だけである。

 

特殊能力――『地震を起こせる程度の能力』

 

鍋島元次の家系である鍋島家は、代々『海の王者の末裔』として、この能力を会得している。

地震を起こすだけでは無く、その衝撃を直接撃ち込む事も可能。

震度は1~自由に操る事が可能な、正に『世界を滅ぼす力』である。

元々は祖先である大海賊白ひげ、『エドワード・ニューゲート』が口にした悪魔の実・超人系『グラグラの実』の能力。

しかし何故かこの一族の男子のみに、このグラグラの実の力は受け継がれてきた。

 

神器――むら雲切

 

元次の身の丈を遥かに超える3m超の分厚い薙刀。

その長大にして超重量を誇る一撃は海すら割る。

神器にしては珍しく特殊能力の一切無い物だが、その強度は神格の域を超えている。

有り得ないほど頑丈で絶対に刃こぼれせず曲がらず、折れず。

その世界最強クラスの『丈夫さ』こそが唯一絶対の強みである。

また、この武器に地震の力を付与させる事で超振動を起こす高周波ブレードと化す。

衝撃だけで無く斬撃の形の衝撃を飛ばす事すら可能。

 

特殊能力――武装色の覇気

 

全世界の全ての人間に潜在する「意志の力」を己の身体に具象化した現象を指す。

「気配」「気合」「威圧」などの感覚と同じである。

習得は非常に困難であるが、元次はとある事情からこの覇気を会得している。

この武装色の覇気は普通は物理攻撃が効かない筈の悪霊や不死の化け物の『存在自体』にダメージを与えられる。

故にこの覇気の前では特異体質等のアドバンテージが一切無効化されるという、正に『異常殺し』の力。

 

特殊能力その2――覇王色の覇気

 

数百万人に一人しか身につけることができない、特殊な覇気。

発動すると、周囲の精神力が弱い者を気絶させることができる。

この力で倒せるのは、圧倒的な実力差があり、戦うまでもないほど弱い相手である。

しかしまだ元次の中に眠る力であり、不安定で使う事が出来ない。

それは元次が生まれながらの強者であり、窮地による覚醒を促すという事が出来なかったからだ。

よって元次が使える威圧は、生まれながらにして持つ獣の様な凶暴性を叩きつけるという荒業しかない。

しかしこの威圧であっても大抵の相手を呼吸困難に陥れる事が可能。

 

 




詳細な能力を書いたのは、この番外が読み切りだからです(多分)

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