IS~ワンサマーの親友   作:piguzam]

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やっぱBattleは難しい(;´Д`)


でもシリアスはもっと難しい(´Д⊂グスン


行き違う想いは暴走する。

「(あ、あぁ……ッ!?何なんだ、あの男は!?)」

 

自分の視界の中で起こる、異常を通り越した戦闘風景。

ラウラ・ボーデヴィッヒは目の前の光景を理解出来なかった。

一度(ひとたび)拳を振るえば敵が地に沈み、一度(ひとたび)足を伸ばせば敵が空を飛ぶ。

まるで獣を思わせる笑みを浮かべながら戦場に暴力の嵐を振るう元次の姿を見て、ラウラは只々疑問を膨らませるばかり。

 

「『――でいぃいいやぁああああ!!!』」

 

「(ドグシャァアアア!!)あぁあああああああ!?」

 

視界の先では、シャルルの握っていたショットガンを膝で蹴り飛ばした後、さらに追撃の蹴りでシャルルを彼方へ飛ばした元次の姿が映る。

 

「『……フウゥゥ……『古牧流・火縄封じ(長筒飛ばし)』……わりぃな、シャルル……IS装備なら銃なんか向けられても、別に怖か無えんだよ』」

 

元次の言葉に、ラウラは「ふざけるな!!」と大声を挙げたかった。

喉が裂けんばかりの怒声を出したかった。

しかし、それは今の自分の身では叶わない事を、本能の奥底で理解してしまっている。

機体のダメージを押して、憎き仇敵を討たんと躍起になっていた自分に浴びせられた、純粋な怒りの塊。

その力を一身に浴び、身体は全ての動きを放棄してしまっている。

まるで、裸一貫で森に迷い込んだあげく、野生の肉食動物にその牙を首筋に添えられたかの様な感覚。

それは、今まで自分が感じた事の無い……いや、正しくは千冬に叱責された時と似通った感情が、ラウラの中を掛け巡っていた。

しかしそれを絶対に認めたく無いラウラの心が、自身の全てが、元次に感じたモノを否定する。

 

 

 

……『恐怖』という感情を。

 

 

 

「(武器を使う相手を、徒手空拳で沈めるだと?……有り得ない、有り得ない!?)」

 

心の中が波打つ状況でも、ラウラの目の前で起こる理解不能の現象は止まる事は無い。

たった今元次が行った戦闘術、『古牧流・火縄封じ』という技に理解が及ばずにいた。

 

「(銃を持った相手を制する技は、確かに軍の格闘術でもあった!!しかし只の民間人が、それを平然とこなすだと!?こ、こいつには恐怖という感情が欠落してるのか!?)」

 

本来、軍属のラウラはカリキュラムの一環として、格闘術や射撃術にも通じている。

しかしどんな一流の軍人でも、顔面に銃が向けられれば少しは萎縮するものだ。

それはISを装備する自分達も同じ。

太古より人間が生誕した時から退化せずに付随する、防衛本能の訴えなのだから。

しかしラウラの目の前で銃を顔面に向けられようとも臆せずにそれを制した元次が、ラウラにはとても異質な存在に映る。

更に戦いは加速し、今度は一夏と対峙した所で、ラウラは一夏にも驚愕の思いを抱てしまった。

 

「俺には、『千冬姉を守れる男になる』って、兄弟より無謀な目標があるからな……だったらどれだけ無謀でも、無理だと決まる最後の瞬間まで、カッコ悪く足掻いてやらぁあああああ!!!」

 

「(ッ!?……馬鹿、な……?……教官……?……ッ!!そんな、そんな事があるものか!!あんな、あんな男に!!教官の栄光に泥を塗った男に!!)」

 

しかし一夏に感じたモノにすら、ラウラは激しい拒絶を示す。

有り得てはならない、有ってはならないのだ。

一夏を否定すると決めていたラウラが、その自分の眼で――。

 

「(教官の姿が重なる等、断じてあるものか!!)」

 

堂々と世界に宣戦布告する一夏の中に、確かに千冬と同じ雰囲気を見た等と、認められる筈が無かった。

しかしその次の瞬間に切り結ばれた一夏と元次の殺陣を見て、更にラウラは混乱する。

一夏の剣筋も、速度も、明らかに自分を相手にしていた時よりも鋭く、洗練されているからだ。

まさか、自分は手加減されていたのか?そう考えてしまう程に強い剣筋をまざまざと魅せつけられて、ラウラの心が揺れる。

その波紋に、更に石を投じて波を際立たせるのが元次だ。

圧倒的に不利な距離で重量級の斧を振り、剣をいなし、挙句の果てには――。

 

「『――剛剣!!猿返しぃいいいいいい!!!』」

 

「(ズバァアア!!)ぐあぁあああああああ!!?」

 

アクロバティックな空中回転で回避し、その剛撃をもって、鋭い剣戟の嵐を蹴散らしてしまうのだから。

只の不良崩れと思っていた輩に、『生まれた瞬間から』軍に入隊して、今日まで厳しい訓練を乗り越えてきたラウラの全てが、目の前で否定される。

 

「『おっしゃぁああああああ!!!』」

 

「(ズドォオオ!!)あぐぅ!?」

 

機転を効かせたシャルルの盾を使った突進すらも、無茶な力技で突破し――。

 

「『やっぱ喧嘩はこうでなくちゃなぁああああ!!!』(ブォオオン!!)」

 

「ッ!?うああぁ!?」

 

「な!?シャルル!?」

 

移動の為の脚を固定されようとも、その妨害諸共、持ち上げて振り回し――

 

「『そぉら!!テメエの相棒だぜ、兄弟!!』」

 

「「(ドガァアアア!!)うわぁああああああ!?」」

 

シャルルの作ったチャンスをモノにしようと、攻撃を仕掛けていた一夏共々、片足の蹴りで迎撃してしまう。

総じてラウラの目の前で元次が起こす戦いは、誰の目から見ても型破りにして、壮絶。

しかもこの男は、それらを成し得ても疲れた表情は全く見せず、寧ろ獰猛な笑みを浮かべるのだ。

そう、まるで今行なっている戦いを楽しむかの如く。

 

「(ば、化け物め……ッ!?あんな型破りな戦い方で、特殊兵器も使わず、何故こうも圧勝出来る!?ISの戦闘は喧嘩とは違う!!ついこの間までISに触れた事すら無い素人が……何故、私を圧倒した力を見せつけてくるんだ!!)」

 

遂にラウラは自分の力を……認めたくは無かったが、元次が戦いにおいて自分の全てを上回っていると認識した。

考えたくも無い、唾棄すべき弱音。

しかし、元次の威圧に圧倒された身体は、思い……心とは別に、強者に対しての屈服を表わす。

未だにあの威圧による重み、畏怖の感情から抜け出せない現状が、ラウラに血が出る程に唇を噛ませる。

 

 

 

「(何故だ!!私は強い!!教官に『救われた』あの日から今日まで、ずっと己に厳しい訓練を課してきた!!それなのに何故!!――)」

 

 

 

「『そうか……なら、俺もマジのマジで、二人を相手するぜ……スゥ――グルァアアアアアアアアアア!!!』(ボボン!!)」

 

 

 

「(只、教官と共にのうのうと過ごしてきただけの奴に、私の努力を否定されねばならない!!何故、『赤の他人』のあんな奴が、教官の側に!!――――あ)」

 

 

 

元次が一夏とシャルルに対して敬意を評し、己が最強の力を開放したのを見せつけられたその時、ラウラの脳裏にある記憶が過る。

軽く掠めただけの記憶が、やがて濃密な思い出となり、ラウラにフラッシュバックを起こした。

 

 

 

 

 

まだ、ラウラがドイツに居た頃の――元次と一夏を、自分が倒すと決めた時の記憶が――。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

『遺伝子強化試験体C-0037……君の新たな識別記号は――ラウラ・ボーデヴィッヒだ』

 

知る者のみが知る、ドイツの極秘研究施設。

人口合成された遺伝子から作られ、鉄の子宮で産声を上げたラウラ。

それは何の為の誕生か?

新たな生命の創造?人類の科学の発展の第一歩?愛する者を失った事の執着?答えは全て否。

彼女は……戦う為、兵力として生み出され、育てられ、鍛えられた存在だった。

 

 

 

子供が親におもちゃを貰う代わりに、彼女に与えられた玩具は、人の命を只の1発で奪える銃。

 

 

 

心を育む絵本の代わりに与えられたのは、人体の破壊の仕方や戦術等の教本。

 

 

 

母親の愛情が篭った食事の代わりは、軍で支給されるレーションや、食堂の栄養バランスのみを考えられた、味気無い食事だった。

 

 

 

知っているのは如何にして人体を攻撃するか、判っているのはどうすれば敵軍に打撃を与えられるか。

 

 

 

軍の者全員がそうなのかと言われれば、勿論違う。

彼女達の多くは普通の生活をして、母親や父親、祖父母の愛情の元に育まれてきた。

鉄の子宮で生まれたラウラには、その愛情を与える者が居なかった……その違いである。

その運命を嘆く事も、自らの出自を呪う事も、疑問に思う事も怒る事も無く、彼女は忠実に軍でその腕を発揮していた。

優秀なソルジャー遺伝子を結合させたDNAを持つラウラは、常に最高レベルの実力を維持し続ける程に優秀だったのだ。

しかしその事を誇る事すら、ラウラには無い。

何故なら、『自らが生み出された理由はそういう結果を齎す為』だから。

その過程を維持し続ける事こそ、ラウラは当たり前の事だと認識し、常にトップに立っていた。

 

 

 

――世界最強の兵器、『IS』が現れるまでは……。

 

 

『最強の兵器であるISは、操縦者との適合率が高い程、その真価を発揮する……直ちに、適合性向上のプランを……越境、いや――その先へ』

 

 

 

軍の上層部、そして開発が進んでいたナノマシンチームの協議の結果、人工的に適合性を向上させるプランが決定。

それは、脳への視覚信号伝達の爆発的速度向上と、超高速戦闘状況下における動体反射の強化を目的とした、肉眼へのナノマシン移植処理のことを指す。

これにより移植した者の超人的強化が可能になり、その処理能力は擬似ハイパーセンサーとも呼ぶべき代物へ変貌する。

名を、『越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)』と呼ばれる、強化プロジェクト。

当然、女性であり、軍のトップクラスの実力者であるラウラも、このナノマシン移植手術が施された。

それが、ラウラに一度、全てを失わせる事になる。

擬似ハイパーセンサーとも言える『越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)』の、眼球へのナノマシン移植処理によって異変が生まれた。

理論上では危険性は一切無く、不適合も起きない筈……だったが、この処置によりラウラの左目は赤から金へと変色し、制御不能へと陥ってしまう。

この暴走とも取れる『事故』によって、ラウラの成績は落ちに落ち、結果として『出来損ない』の烙印を押されたのだ。

その時から、ラウラの世界は一変した。

あれだけ自分の成功を喜んでいた生みの親とも言える科学者達の褒める言葉は、蔑みの言葉に。

軍内部で畏怖の感情でラウラを見ていた者の目は、嘲りの目に。

自分を鍛えていた教導官からは、目すら向けてもらえず。

ラウラの世界が、一気に孤独へと変わったのだ。

そしてこの孤独に、ラウラは生まれて初めて恐怖を覚える。

今まで受けてきた教育の殆どが、軍部関係の物ばかりだった反動で、ラウラはどうすれば良いか、前後不覚に陥ってしまったのだ。

闇からより深い闇へと落ちていく日々。

どれだけ必死に訓練しようとも成績は上がらず、周りの目も日に日に酷くなるばかり。

終いには自分を生み出した科学者達が密かに話していた内容を聞いてしまった時、ラウラは初めて涙を流してその場から逃げた。

科学者達が話していた内容――それは、『廃棄処分』という単語だけが聞き取れていた。

これだけではラウラの事とは考え難いが、この時のラウラは、世界中の全てが自分に対する悪意だとばかり思っていたのだ。

 

 

 

このままでは、捨てられる……誰からも必要とされず……嫌だ!!嫌だ!!嫌だ!!

 

 

 

ラウラは震える身体を抱き締め、机と教本、ベットのみの質素な部屋で、耐え難い恐怖に震えていた。

誰からも愛情を与えられなかった末の……頼れる寄る辺の無い恐怖。

もはや、ラウラの精神が崩壊するのは時間の問題だった。

 

 

 

そんなラウラが、初めて目にした、自分に手を差し伸べてくれる、『光』。

その人物こそがラウラが教官と呼ぶ……織斑千冬との出会いだった。

 

『ここ最近の成績は振るわないようだが、なに、心配するな。1ヶ月で部隊内最強地位へと戻してやる』

 

その絶対的な言葉に偽りはなく、ラウラは千冬の教えを忠実に実行するだけで、メキメキと実力を取り戻していった。

ラウラはIS専門の部隊で、再び最強の座に君臨したのだ。

更にラウラの実直な訓練を見ていた部隊員や科学者達の評価すらも変わり、ラウラは闇から抜けだした。

そして、その闇から抜け出す切っ掛け、いやチャンスをくれた千冬の事を、ラウラは心酔する。

千冬のIS操縦者として、そして生身での他を寄せ付けない強さ。

初めて基地に現れた時に突っかかった無礼な男隊員を、只の一度睨んだだけで気絶させてしまう程の強さに。

その戦乙女と評するに相応しい凛々しさと、そして自分を信じる姿。

千冬の圧倒的なカリスマの影響を、文字通り身体で感じたラウラは、千冬の全てに強く憧れる。

自分もああなりたいと……。

 

『どうしてそこまで強いのですか?……どうすれば、強くなれますか?』

 

気付けば、ラウラは口に出していた。

一年という期間付きでも、結べた繋がり。

それを少しでも残したい……知りたい……そう思ったから。

 

 

 

――だが。

 

 

 

『私には弟と……その、何だ……好いている奴がいる』

 

その時、千冬がわずかに優しい笑みを浮かべ、尚且つ少し嬉しそうに頬を染める。

そこで帰ってきた千冬の表情と言葉はラウラの憧れた千冬の姿ではなかった。

ラウラは、その表情に何故か心がちくりとしたのを覚えている。

 

――違う。

 

強く、今までに無い程に、そう思った。

ラウラがそう思っても口に出さなければ、千冬が言葉を続ける。

 

『弟は一夏……そして……好いた男は、その……元次という……一夏を見てると、わかるときがある。強さとは何なのか、その先に何があるのかを』

 

『……』

 

『そして元次からは……何の為に強くなるのか……何の為に、強さを振るうのかを、感じ取った』

 

『……良く、分かりません』

 

実際ラウラには分からなかったし、知りたくも無かった。

自らが憧れる強い人に、優しい顔をさせ、慈しむ様な顔をさせる者達の事など。

 

 

 

――自分が知らない千冬の顔をさせる者達の事なんて。

 

 

 

『今はそれでいい。そうだな。いつか日本に来ることあるなら会ってみるといい。……ああ、だが1つ忠告しておくぞ。あいつ……一夏に――』

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「上等!!本気の兄弟を倒さなきゃ、千冬姉を守るなんて夢のまた夢だもんなぁ!!」

 

「僕だって、意地があるんだ!!……一夏の足枷なんかに、なったりしない!!」

 

思考の海から戻り、前を見れば、局面は最終へと移行していた。

その局面で立ち、武器を握る二人の男を、ラウラは憎悪に染まった瞳で睨みつける。

 

「(認められるか!!認めるわけにはいかない!!教官にあんな表情をさせる織斑一夏と、鍋島元次を、認めるわけにはいかない!!)」

 

未だに元次の威圧に侵された身体だが、ラウラは膨れ上がった身体で獰猛な笑みを浮かべる元次の姿を見て……歪に『嗤った』

 

「(ああ、なんだ……答えは直ぐ其処にあったんじゃないか……私が、あの化け物より強くなれば良い……そうすれば、教官も私を認めてくれる)」

 

感情の制御が効かず、迸る憎悪と力への執着。

そして、再びあの闇から引き上げてくれた千冬に自分を認めさせるにはどうすれば良いか?

目の前に居る、ただ暴れるしか脳の無い男以上に認められるには?

自分の憧れる人は、あの化け物の何を認めている?

少し前に、その人自身から聞かされていたではないか。

 

「(奴の経歴がどうであれ、教官はあの男が強いから認めているんだ……私にも、奴を超える絶対的な力があれば……ッ!!)」

 

その歪んだ執着心が、強い願望が、『心の中に直接響く声』に答えを見出す。

 

『願ウカ?……汝、ヨリ強イ『力』ヲ欲スルカ?』

 

普段のラウラなら、こんな声に一々答えたりはしない。

だが、その問い掛けは、今のラウラが何より欲するモノだった。

 

「(誰でも良い。寄越せ、力を!!あの化け物を打ち倒す、私の思い描く――比類無き最強を、唯一無二にして絶対の力を!!!!!)」

 

Damage Level……D.

 

Mind Condition……Uplift.

 

Certification……Clear.

 

《Valkyrie Tra――ザザッ――ce System》………boot.

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「ぐぅ、うぁああああああああああ!!!」

 

叫び、紫電、融解。

その三つの要素をシェイクしたのが、ボーデヴィッヒに起こっている現状。

何とも嫌な気分にさせられる不協和音だ。

 

「……な、なぁ、ゲン……ラウラに一体何が?」

 

「……さぁな。少なくとも、嬉しい悲鳴じゃねぇって事は確かだと思うけどよ」

 

いよいよ大詰めを迎えた俺達の喧嘩だが、その寸前で中断せざるを得なかった異常事態。

突如として悲鳴を上げたボーデヴィッヒが苦悶の表情を浮かべながら、ドロドロの粘土みてーになった自分のISに取り込まれていく。

明らかな異常事態ってヤツだ。

俺は直ぐにエナジーソードを収納して、何が起こっても動きやすい体勢を取る。

 

「よぉシャルル。もしやあれが噂のセカンドシフトってヤツか?なら、俺はあのガキの成長を祝って赤飯を炊いてやるんだがな」

 

「……それだったら僕は、コロンビエを焼いてお祝いしてあげるトコなんだけどね」

 

コロンビエって確か、キリストの聖霊降臨祭の日。1年の中で、わずか一週間の間しか食べられない希少なお菓子だったな。

って事はありゃセカンドシフトじゃねえ……良い出来事じゃねえって事かよ。

そんな風にジョークを飛ばし合いながら事の成り行きを見守る俺達だが、何とも気になる事がもう一つある。

 

「さて、あれが異常事態だっつーのは確定として……一体何処の誰の仕業だろーなぁ……楽しい喧嘩の邪魔しやがったのはよぉ……あぁん?」

 

「喧嘩邪魔されてキレそうなのは分かるけど、落ち着けよゲン。まぁラウラの仕業じゃ無いとは思うけどな……あんなに苦しんでたし」

 

「……とりあえず、直接関わってるかは分からないけど、知ってるっぽい人達は居るみたいだね」

 

は?どういう事だ?

シャルルの言ってる意味が判らずに視線で問えば、シャルルはアリーナの観客席の一角を指さす。

そこは企業や政府の代表が座る来賓席で、ハイパーセンサーで拡大してみると、何人かの男女が顔を真っ青にしていた。

 

「あの人達って……」

 

「確か、ドイツの政府関係者だったと思う。代表候補生講習の一環で見た顔だったから」

 

「チッ。って事は、ドイツはこれに心当たりがある……だが、こうなったのは予想外の事態って事か」

 

寧ろこの現象を知っていて、こうなる事を願っていたってんなら、奴等の面は喜びに染まってる筈だ。

だが、俺達のオープンチャネルは観客席に届いてる。

その台詞を聞いて更に顔色を悪くするトコを見ると、バレちゃマズイモンだって事になるのか。

前のクラス対抗戦の時とは、随分と毛色が違うみてえだが……どうなる事やら、だ。

 

「おい二人共、お前等シールドエネルギーの残量は?」

 

もしも戦いになるんなら、二人は下がらせた方が良いだろう。

白式もラファールも、外観装甲はボロボロになってるし、二人のシールドエネルギーも心許ない筈だ。

……まぁ、殆ど俺がやったんだけど。

 

「……元が3200で、今は120だ」

 

「僕は2800から2430差し引いて、370かな……元次はどれぐらい?」

 

俺の問に、一夏は苦い顔をし、シャルルも苦笑いして答える。

白式は120,ラファールが370か……やっぱ二人は後衛に回って貰うとするか。

一夏が悔しそうなのは、射撃武器の無い白式じゃ役に立たないと感じてるからなんだろう。

酷な話だが、それは仕方無え。

 

「俺は3680だ……決まりだな、シャルルと一夏は下がれ。もしアレが襲いかかってきたら、俺が相手をすっからよ」

 

未だにグネグネと気持ち悪く変貌を遂げるボーデヴィッヒのISを見ながらそう言うと、後ろから落ち込んだ声が聞こえてきた。

 

「……うん……悔しいけど、今の僕達じゃ元次の足手纏いになっちゃう」

 

「……すまねえ、兄弟……肝心な時に、お前と一緒に戦えなくて……自分が、情けねえ……」

 

……ったくよぉ。そんな面で、ンな事言うなよな、一夏。

お前が落ち込んでるってのに、嬉しくて笑っちまうじゃねえか。

 

「気にすんじゃねえ……それに、まだアレが襲ってくると決まった訳じゃ――」

 

と、背後に居る二人に言葉を返していた時に、正面から聞こえていたグネグネという気持ち悪い音が聞こえなくなった。

それを感じ取った俺は、再び前を見る。

 

 

 

さてさて、一体何が出てく――は?

 

 

 

 

グニュグニュグニュ……『……』

 

「……冗談だろ?」

 

 

 

 

振り返ってその先を見つめた俺は、信じられないという声音でそう呟くしか出来なかった。

前に視線を向けた俺の視界に飛び込んだモノ……それは、巨大に変貌したボーデヴィッヒのIS。

しかし、只大きくなった訳じゃ無え……それだけなら、俺もここまで驚いたりしねえ。

驚いたのは、ボーデヴィッヒのISが変貌した、『その姿に』だ。

俺よりも頭3つ分位デカくなったボーデヴィッヒのIS……それは、『別の人間』の姿を形取っている。

日本の打鉄の様な、鎧武者の肩当てをモチーフにしたアンロックユニット。

腰当てのスカートアーマーは軽装にされ、最小限の防御と機動性を意識させられる。

顔は出来の悪い泥人形の様にのっぺらぼうで輪郭のみしか分からないが、『彼女』の『髪型』は逆に精巧に真似られている。

 

 

 

 

 

そして、奴が手に持った武器は、ボーデヴィッヒのISに存在しなかった『日本刀』――そう。

 

 

 

 

 

『……』

 

「……千冬さんと……『暮桜』……?」

 

 

 

 

 

 

千冬さんの現役時代の愛機、第一世代型IS『暮桜』と、『世界最強の刀』、『雪片』が、俺の前に立っている。

余りにも予想外過ぎる出来事に、俺の頭はフリーズを起こしてしまう。

何だ?何でボーデヴィッヒのISが、千冬さんの暮桜になるんだ?それにボーデヴィッヒは何処に?

……一体、何が起こってんだ?

正に異常事態と言えるこの出来事に、観客も騒然としてしまう。

 

 

 

「――ふっざけんじゃねぇええええええええええッ!!!」

 

 

 

しかし、誰もが目の前の光景に呆然とする中で、俺の背後から純白の機体が飛び出す。

それも、今まで感じた事の無い、強い怒りを目に宿しながら。

 

「ッ!?一夏!!」

 

「ッ!?待て兄弟!!1人で出るんじゃねえ!!」

 

「うおぉおおおおおおおおおおおお!!!」

 

俺とシャルルの声すら届かず、一夏は憤りの叫びを挙げながら、暮桜モドキに突進していく。

 

『……ッ!!』

 

ガキィイイン!!!

 

「ッ!?」

 

しかし、一夏の渾身の剣戟は、暮桜モドキの急加速からの切り返しで弾かれてしまう。

横合いからの強烈な切り返しに、一夏は手から雪片を飛ばされ――。

 

『……ッ!!』

 

「(ギィイイン!!)ぐああああ!?」

 

流れる様に繰り出された唐竹割りの斬撃で、撃破された。

白式の腕を斬られた一夏は後ろに吹き飛ぶが、その途中で白式自体が量子化され、一夏の身体から消え失せる。

それを、剣を振り上げて追撃を構える暮桜モドキ。

 

「『テメェ兄弟に何してくれてんだコラァ!!ストロングライトォオオオオオオ!!!(ボォオオン!!)』」

 

『(ドガァアアア!!)ッ!?』

 

その前に飛び出した俺が、暮桜モドキにストロングライトを浴びせて、アリーナの端まで吹き飛ばす。

くそったれ粘土野郎が!!巫山戯た事しやがって!!

 

「一夏、大丈夫!?」

 

「無事か、兄弟!?」

 

「ぐっ!?くぅ……アイツ……ッ!!」

 

シールドエネルギーが心許無いシャルルは吹き飛んだ一夏に駆け寄り、腕を抑えて膝を付く一夏を支えた。

俺も腕を戻して急いで振り返るが、斬られた腕を抑える一夏の顔は怒りに歪み、腕からは血が流れてる。

って血だと!?まさか――。

 

「あの野郎ぉ……零落白夜まで真似してやがってぇ……ッ!!」

 

斬られた腕を抑えながら吐き捨てる様に言う一夏の台詞で、俺の中の予想に確信が付いた。

ボーデヴィッヒのISに起きた何らかの事象は千冬さんの容姿だけで無く、雪片の能力までも再現してやがるらしい。

全力の零落白夜は、シールドエネルギーどころか装甲までも貫き、操縦者に直接ダメージを与える。

だから使用する際のフルパワーは固く禁じると千冬さんは言ってた。

一夏や千冬さんみてーな人間なら無闇にそんな事する筈も無えが、『アレ』は違う。

アレは、人を、命を斬る事に躊躇いも無い……人斬りに堕ちた、殺人の剣だ……ッ!!

それを確認した瞬間、俺の身体にもドロドロとした怒りの念が湧いてきた。

このまま飛び出してグチャグチャにしてやりてぇトコだが、まずは二人の避難を優先しろと、俺の理性が訴えかける。

一夏の腕から血が流れたのを見た所為で、観客席からも悲鳴が挙がる。

特にドイツの代表達の絶望っぷりは酷い。

何せ、世界でたった二人しか居ない男性IS操縦者に怪我させちまったんだからな。

しかも世界最強の家族であり、IS開発者と懇意にしてる奴の。

 

「――ちょっ、駄目だよ一夏!!」

 

「離せシャルル!!あの野郎ふざけやがって!!ぶっ飛ばしてやる!!」

 

と、後ろからシャルルと一夏の叫び声が聞こえ、そっちに目を向けると、走りだそうとしてる一夏をシャルルが止めていた。

一夏の目にはシャルルも俺も入っておらず、アリーナの端でゆっくりと動き始めた暮桜モドキのみに向けられている。

おいおい……生身であの暮桜モドキに向かおうってのか、兄弟……それだけ、頭に来てんだよな。

怒りに燃える兄弟に視線を向けていると、ピットに繋がるカタパルトから、ラファールを纏った先生が二人現れた。

よく見ると、クラス対抗戦の時に話した先生達だ。

 

「遅くなってごめんなさい!!ここからは私達が引き受けるわ!!」

 

「織斑君とデュノア君は急いで退避!!鍋島君は、二人の護衛をお願い!!君が一番残存エネルギーが多いから!!」

 

先生達はそれだけを手短に言うと、こっちに向かおうとしてた暮桜モドキに向かっていって、戦闘を始めた。

それを、俺は只拳をギュッと握りしめて見つめる……先生にああ言われた以上、俺は下がらなきゃならねえ。

何がどうなってボーデヴィッヒがああなっちまったのかは分かんねえが、一個だけ確かなのは、アレをやった奴は凄え気に入らねえって事だけだ。

千冬さんの剣を……想いを……穢す様な真似しやがって……ッ!!

耐え難い所業に歯が砕けそうなぐらいに噛み込むが、ここで立ち尽くしていても仕方無いので、俺は言われた通りにシャルルと一夏の元へ向かう。

一夏は相変わらず頭に血が上り過ぎていて、シャルルの拘束から逃れようとしていた。

 

「落ち着いて一夏!!ISも無いのにあんな所に行ったら駄目だよ!!げ、元次も一夏を止めて!!」

 

「うるせえシャルル!!アイツは、アイツだけは許せねえんだ!!早く離せ!!ゲン!!俺の邪魔すんならお前でも容赦しね――」

 

 

 

バゴォ!!!!!

 

 

 

「がふ!?」

 

「わぁ!?い、一夏!?」

 

只ひたすらにキレて暴れる一夏に、俺はISの腕を解除して手加減しまくったパンチを頬に見舞った。

しかしそれでも一夏には強烈だった様で、殴った方向に思いっ切り吹っ飛んでシャルルの戒めから抜け出した。

口も切ったのか、盛大に口の中から血が飛び散り、地面を赤く汚す。

そのショッキングなシーンを見てシャルルは口を抑えるが、俺はそれに構わず地面に座り込んで俺を睨む一夏の前に立つ。

 

「……どうだ?……少しは頭冷えたか?……兄弟」

 

「……ゲン」

 

口から流れる血を拭いながら俺を睨む一夏に、俺は静かな声で問う。

一夏は俺の言葉に答えないが、俺は構わず口を開いた。

 

「お前がキレてる理由も、あの粘土野郎をブッ倒したい気持ちも、痛い程分かるぜ?……俺だって同じだからな」

 

「……じゃあ、何で止めるんだよ……千冬姉の技を、あんな風にされて……その剣の想いも知らねえのに、只形だけ真似られて……何で行かせてくれねえんだよ……ッ!!」

 

「一夏……」

 

一夏は立ち上がると、俺の胸倉を掴んで睨みながらそう言った。

シャルルはそんな一夏を複雑な表情で見る。

一夏がここまで怒ってる理由……それは家族として、千冬さんのデータを使われてる事が気に入らねえんだろう。

昔、一夏が話してくれた、千冬さんの剣を振る想い……それを知ってるからこそ、俺達は我慢ならねぇんだ。

只姿形を真似ただけじゃ飽き足らず、そうなるに至った本人の想いも知らず、データだけで中身を再現する。

それは確かに本物に限り無く近くなるだろうよ……でも、それは何処まで行っても真似事。

本人が何を思って、あの剣を……どんな気持ちで振るったのかが、ポッカリと欠けてやがる。

それに、今の人斬りに堕ちたあの剣こそが、一夏のキレる最大の理由。

自分が姉から昔、皆を守るために教えられた剣。

誰かを守るという情の気持ちが込められた剣……それを、相手を倒す為だけに振るうのが許せないんだ。

世界で一番尊敬してる人の剣があんな物に成り果てた事が何よりも悲しくて、悔しい筈。

……でも、俺は今の戦う術を持たない兄弟を止めなきゃならねえ。

 

「……白式を動かせない今の兄弟を、あんな場所に行かせる訳には行かねえ……今の兄弟のやろうとしてる事は勇気でも何でも無え……只の『犬死に』だ」

 

「判ってる……そんな事は判ってるんだよ……でも……」

 

そこで言葉を切った一夏は、伏せていた顔を挙げて俺を真剣な表情で見つめる。

 

「俺は千冬姉の弟なんだ……『家族』の想いを穢されて、ジッとなんてしてられねえんだよ!!……俺だって……命賭けてでも、自分の想いを貫ける一人前の男にならなきゃ、千冬姉を守れなくなっちまう……ッ!!」

 

家族。

その言葉が、一夏の涙声の様な声が、俺の心を揺らす。

……両親に捨てられてから今日まで、身体を張って何時も一夏を守っていた千冬さん。

育てられ、見守られ……家族の愛情を貰ってきた。

そんな人の大切な剣を、自分が守りたい。

大事な人の為に戦いたい……そんな思いを押し潰して、俺は一夏を止めて良いのか?

兄弟が死ぬ……俺はそれが怖いだけじゃねぇのか?

勿論怖いに決まってる……大事な兄弟が、今日まで一緒に育ってきた兄弟が死ぬかもしれないんだぞ?

いや、生身でISに立ち向かったりしたら確実に死ぬ。

そんな死地に、俺は兄弟を赴かせて良いのか?

兄弟の思いを尊重したい、でも命も守りたい……その二重反率が、俺を悩ませる。

 

「頼む、兄弟……俺に行かせてくれ……家族だからやらなきゃいけねえって義務感じゃねえんだ……俺が『やらなきゃいけない』んじゃないんだよ。これは『俺がやりたいからやる』んだ」

 

「……」

 

「それに……」

 

一夏はそこで言葉を切ると俺から視線を外して、再びあの暮桜モドキに視線を向ける。

 

「あんなわけわかんねえ力に振り回されてるラウラも気にいらねえ。ISとラウラ、どっちも一発ぶっ叩いてやらねえと気がすまねえんだ……それをせずにこの場から引いたら、それはもう俺じゃねえよ。織斑一夏じゃない」

 

ボーデヴィッヒを殴る……そりゃ確かに、俺だってあんな間違った力の使い方してるボーデヴィッヒをブチのめしてやりたいとは思ってる。

一夏は千冬さんを守る為に。

ボーデヴィッヒは千冬さんに認めてもらう為に。

思いは違えど、同じ様に大切な人の為に強くなろうとしてる一夏が、あんな紛い物の力を見て許せる筈も無いだろう。

……決まりだな。

苦悩の末に、俺は真剣な表情で俺を見つめる一夏に答えを出す。

 

「……最低でも、ISが無きゃ話にならねえ……ISが無い兄弟を、態々自殺させる訳にはいかねえからな」

 

案の定、一夏は俺に物凄く悔しそうな表情を見せてきた。

でも、まだ話は終わりじゃねえよ。

 

「だから、お前の白式をどうにか起動出来る様にしようぜ」

 

「…………え?」

 

笑みを浮かべた俺の言葉に驚く一夏。

まぁその反応も当然だろう、さっきまで行かせないって言ってた張本人がコロッと意見変えてるんだから。

でもまぁ、一夏の目を見て決心がついちまった。

 

「男が家族の為に、テメエの命張るっつってんだ……ここでお前を止めたら、俺はお前の兄弟じゃ無くなっちまう……お前を信じてるって絆を否定しちまうからな」

 

そうだよ、俺は試合を始める前にボーデヴィッヒに言ったんだ。

俺と一夏は絆で繋がってるって……人と人との断つ事の出来ない繋がり。

目に見えない『信じる』という気持ちで繋がってるって。

冴島さんからも教わったじゃねぇか。

 

『兄弟と呼ぶんは誰でも出来る……せやけど、それがホンマモンの繋がりなんかは誰にも判らへん……せやったら、互いを兄弟と呼ぶ者同士がせなあかん事は一つ……何時でもお互いを信じる事や……どんな時でも、例え裏切られたと感じても信じる……それがホンマの兄弟っちゅうもんやと、俺は思てる』

 

一夏が俺の……世界でたった一人の、絆で繋がれた『兄弟』だっつうんなら、俺が信じねえで誰が信じるんだよ。

今回の騒動の主役は一夏だ……なら、俺は兄弟の花道を手助けしてやんねえと、な。

その思いを再び胸に刻みこんでいた俺に、一夏は今日一番の笑顔を向けてきた。

 

「ゲン……ありがとう」

 

「礼は良いって。それより、何とかして白式を叩き起こすぞ」

 

万感の思いを込めて礼を言う兄弟にそう返しながら、俺はどうしたもんかと頭を捻る。

現状、一夏の白式は俺がダメージを与えすぎた所為でシールドエネルギーがもう無い。

まず一番やらなきゃいけねえのは、白式を復活させる事だ。

シールドエネルギーは車やバイクで言う所のガソリン、ガス欠じゃ動かねえ。

 

「兎に角、お前が戦うなら、エネルギーを補給しねえといけねえ」

 

「あぁ。でも、ISのエネルギーを補給する機械は、確か整備室に行かなきゃ無い筈だろ?」

 

「そこなんだよなぁ……仮に整備室まで行って補給出来たとする。その後アリーナに戻るのを……」

 

「千冬姉が許可してくれるか……無理じゃね?」

 

「諦めんな。諦めたらそこで試合終了だぞ」

 

実際始まる前の段階で躓いてんだがな。

二人で仲良く頭を捻るが、元々頭の出来がそこまで良くない俺はもうギブアップ寸前。

一夏もISに関しては俺とどっこいどっこいだから、同じく妙案が浮かばない様だ。

さて、二人では足りないこういう時は……。

 

「代表候補生のシャルル君。知恵を貸してくれ給え」

 

「あぁ。ここはシャルル以外に頼れる奴が居ねえ。迷える俺達に力を貸してくれ、シャルル」

 

「何で二人してそんなに変わった言い回しなのかな?……まぁ、一夏が頼ってくれるのは嬉しいけど……方法はあるよ」

 

「「マジか」」

 

3人寄れば文殊の知恵、どころかシャルル一人の案で速攻解決。

まさかこうもあっさりエネルギーをどうにかする手があったとは……シャルルwikiパネェ。

頼れるシャルルに尊敬の視線を向けていると、シャルルはラファールの手を片方だけ解除して、背中から一本のコードを出した。

それでどうすんの?って視線で問うと、シャルルは微笑みながらその先端を一夏の白式の待機状態であるガントレットに差し込む。

 

「これで、僕のリヴァイヴの残りシールドエネルギーを白式に送り込むんだ。一夏、白式のモードを一極限定にして?」

 

「お、おう、分かった……一極限定モードに固定……これで、良いのか?」

 

「うん。じゃあ、いくよ……リヴァイヴのコアバイパスを解放……エネルギーの流出を許可」

 

シャルルの言葉に続いて、リヴァイヴから白式に繋がったコードにオレンジ色の光が奔る。

これでIS同士のシールドエネルギーの譲渡が出来るのか……スゲーな。

学園の授業で習わなかった技術を見て感心するが、ここで一つの疑問が思い浮かぶ。

 

「あれ?だったら俺のオプティマスのエネルギー渡した方が良いんじゃね?」

 

少なくともシャルルのなけなしのエネルギーよかあるんだが……。

 

「うーん……これは相手とコアを同期させることで他機へのエネルギーバイパスを構築するから、シールドエネルギーの受け渡しを行えるんだ……元次、コアの同期出来る?」

 

無理ですな。俺が馬鹿じゃ無けりゃそれも可能なんだろうが、言ってる事チンプンカンプンですもの。

シャルルは喋らずに首を横に振る俺を面白そうに見つめ、直ぐに一夏へと向き直る。

そのままシャルルは解除した手で一夏を指差し、口を開いた。

 

「約束して……絶対に負けないって」

 

「ッ!?……勿論だ。負けたら男じゃねぇよ」

 

シャルルの言葉に、一夏は少し驚いたものの、直ぐに頼もしい笑顔を浮かべて言葉を返す。

しかしそんな一夏の言葉に対して、何故かシャルルは更に笑みを深めた。

 

「ふふっ。じゃあ負けたら、明日から女子の制服で通ってね♪」

 

「えっ!?……よ、よ~し、良いぜ!!なにせ負けないからな!!」

 

「うんうん。そうだよね♪元次にあれだけの啖呵切ったんだから、負けないよね♪」

 

シャルルの何とも酷い提案に、一夏は頬を引き攣らせつつも承諾する。

更に一夏の返答に対してプレッシャーを掛けるシャルルは、依然として笑顔だ。

……恐らく、これはシャルルなりの発破の掛け方なんだろう……と、信じたい。

まさか本当に一夏の女装が見たい筈は無い……筈……多分。

と、兎に角これで白式のエネルギーは何とかなりそうだし、一応役者が舞台に上がれる段取りが付いたな。

 

 

 

――と、かなり楽観的な事を考えたその時。

 

 

 

ズバァ!!!

 

「「キャァアアアアア!!?」」

 

「「「ッ!?」」」

 

 

 

暮桜モドキと対峙していた先生二人が、コッチへぶっ飛んできた。

そのぶっ飛ばした犯人である暮桜モドキが、残心しながら俺達の方へ、表情の無い顔を向けてきた。

おいおい、元はといえ国家代表とか代表候補生クラスだった先生達を倒しやがったのか!?

ド派手な音を立てて俺達の前に落ちた先生達の操るラファールは、アンロックユニットが斬り落とされ、脚のスラスターが悲鳴を上げている。

終いには煙が上がって、ギュウゥンっと何かが沈む音がし、それに続いてオプティマスにメッセージが表示される。

 

『ラファール2機、シールドエネルギー残量300。機体中破。駆動系損傷により、戦闘続行不可能です』

 

「う、うぅ……」

 

「な、何……急に動きが……」

 

「しっかりして下さい!!大丈夫っすか!?」

 

目の前に倒れる先生の1人を助け起こすと、怪我が痛む様で顔を顰めてしまう。

 

「ぐっ……ッ!?に、逃げなさい3人共……ッ!!あれは、織斑先生の動きをトレースしてるわ……ッ!!貴方達じゃ、倒せない……ッ!!」

 

痛みに耐えながらも俺達に逃げる事を促す先生達だが、もうこの人達も戦えないだろう。

ラファールの駆動系はイカれちまってるし、何より――。

 

『……(チャキッ)』

 

「まぁ、やっこさんは俺達を逃しちゃくれないみたいっすね」

 

「で、でも、貴方達だけなら……」

 

「冗談言わないで下さいよ。怪我してる女を見捨てたりしたら、故郷に帰った時に婆ちゃん達に顔を合わせられなくなっちまう」

 

何より怪我した女を見捨ててくだなんて、後味が悪すぎる上に情けなさ過ぎるぜ。

元より暮桜モドキの方がヤル気になっちまってるんだから、逃げ様が無えわな。

先生達と戦っていた場所に立ったまま、此方に顔を向けて剣を構え直す暮桜モドキ。

この状況じゃ下手すると背中向けた途端にバッサリといかれるだろう。

何より、運ぶ怪我人が二人も増えちまった。

これじゃ余計にこの場から撤退するのは無理で愚策としかいえねえ。

 

《(ピッ)すまない鍋島。遅くなった》

 

《本当に遅いッスよ千冬さん。今までどうしてたんですか?》

 

と、暮桜モドキと睨み合う中で、やっと千冬さんから連絡が来た。

しかも何故かプライベートチャネルを使ってだ。

何時もは凛々しいその表情も、今は悔しそうな表情に覆われている。

 

《上役の戯言に付き合わされて、此方の身動きが取れなかったんだ……弁解の余地も無い》

 

《……戯言、ね……どうにも千冬さんのお顔を見ると、かなり嫌ーなニュースっぽいですけど?》

 

《……まず、言いたい事はあるだろうが……お前に、アレの相手をしてもらいたい》

 

ワォ、のっけから嫌な予感がするぜ。

まさか千冬さんご自身から、あの暮桜モドキを倒せと命じられるとはな。

 

《この大会は生中継で全世界に流れている。故にここで非常事態宣言を発令すれば、IS学園の警備に疑問の声が挙がってしまう。それと同じ理由で――》

 

《生徒を守る先生達がコレ以上あの襲撃者に負けでもしたら、今度は生徒の保護者からも声が出る……だから、他の先生達も出せない、と?》

 

《……そういう事だ……すまない、元次……これは学園長からの指示……いや、命令だ……覆せなかった》

 

滅多に俺に謝る事が無い千冬さんが、心底申し訳ないといった表情で俺に謝る。

それも仕方無いと思う……学園長って事は、千冬さんの直属の上司。

ここで歯向かえば、千冬さんは社会人としてペナルティを負うか、下手すればクビなんて事も考えられる。

一夏を養う千冬さんからすれば、そんな事はあってはならない。

社会人としては真っ直ぐで正しい事だと、俺は思う。

それと……まだガキの俺に戦わせる事に負い目があるんだろうな。

前のクラス対抗戦の時の無人機は、俺が勝手に行動しただけ。

今回は千冬さんから直接、アレと戦ってこいって言われてる。

……自分が生徒に対してそんな危険極まりない指示を出す事が、千冬さんには心苦しい筈だ。

あぁ、畜生、何で千冬さんのこんな悲しそうな顔を見なきゃいけねえんだよ。

折角兄弟と楽しい喧嘩してたってのに、こんな訳の分かんねえ事態になっちまうし。

学園長もそんな指示を権力使って千冬さんにやらせやがって……これが終わったら絶対に1発ブン殴る。

挙句の果てにゃ、千冬さんの剣を穢し、束さんの夢を踏み躙りやがって……考えれば考えるだけムカッ腹が立ってくるぜ。

 

《だが、お前が嫌だと言うならそれでも良い。今から部隊を編成して突入する様に動くから、お前はその場の怪我人を連れて退避を《俺がやりますよ……やらせて下さい》……元次》

 

さっきまでとは全く違う言葉を出そうとする千冬さんの言葉を遮る。

冗談じゃねえ、折角あの粘土カスを潰せるチャンスだってのに、引いて堪るかってんだ。

大体そんな事したら、千冬さんが学園長とか他の連中に責められちまうじゃねえか。

ドイツの誰かが作った訳の分かんねえ代物の所為で、一番悔しい筈の千冬さんが責められる……そんな理不尽で、胸糞悪い事、させるかよ。

 

《只、一つ条件があるッス》

 

《条件?……何だ?》

 

俺の言葉に首を捻る千冬さんに、俺は『猛熊の気位』を発動させつつ答える。

 

《この馬鹿騒ぎの幕引きは、兄弟にやらせたい……それだけです》

 

《……》

 

俺の出した条件に、千冬さんは真剣な表情を浮かべた。

身内を態々戦場に立たせろっつってんだ、その反応は当たり前だろう。

だが、千冬さんは管制室で俺達のやりとりを見てた筈だ。

例え声は届いていなくても、一夏の表情を見てれば分かってくれると、俺は思う。

 

《……良いだろう……お前達に任せる》

 

長い沈黙の末に、千冬さんはOKを出してくれた。

っしゃ、そうこなくっちゃな。

千冬さんのOKを受け取った俺は先生達から離れて前に立ち、暮桜モドキを見る。

向こうは雪片モドキを構えたままで、動こうとはしていない。

……見れば見るほど、不出来で不細工な真似事だな……気に入らねえ。

 

《元次》

 

《何ですか?》

 

俺は何時でも動ける様に神経を集中しつつ、話しかけてきた千冬さんの言葉に返事を返す。

既に向こうも飛び出す準備は終えてるから、耳は千冬さんの言葉に集中しつつも、意識はしっかり前に向けている。

 

《この状況でお前の強さを見せつけ、負傷した先生達を守れば、お前を目の敵にしている女性権利団体の連中も少しは大人しくなるやもしれん……だから――》

 

一度言葉を切って溜めを作った千冬さんは、何時もの不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

《世界中に、見せつけてやれ……ッ!!お前の、鍋島元次の――――男の強さを!!》

 

 

 

 

 

『お前の強さを見せつけろ』

 

俺が子供の頃から尊敬して止まない千冬さんの、俺の実力を認める言葉。

それを聞いた瞬間、俺の体中に歓喜の電流が奔る。

あぁもう……何でこの人はこうも俺をその気にさせるのが上手いんだか……。

 

 

 

 

 

そんな事を言われて、応え無え奴ぁ――。

 

 

 

 

 

「『やってやりますよ……ッ!!――――来やがれ!!ドグサレ人形ぉ!!!』」

 

 

 

 

 

――漢じゃ無えよなぁ!!!

 

 

 

 

 

千冬さんの言葉に答えると同時に、俺は自らの身体を最高状態にシフトする。

俺の挑発を聞いて戦闘の意志有りと取ったのか、暮桜モドキは剣を構えたままの姿勢で突撃してきた。

その速度は一夏の瞬時加速より速えが……千冬さん程じゃねぇ!!

 

『ッ!!(ブォン!!)』

 

圧倒的な加速度から繰り出される胴薙ぎの斬撃。

確かに千冬さんの剣筋に似てるが……あの人の剣はもっと、もっと速えんだよ!!

俺は構えた状態から、体の力を抜き、脱力しながら身体を深く沈める。

脱力して緩んだ筋肉で溜めを作り、肘を折りたたんで作った引き手の拳を――。

 

「『――ハァ!!!!!』」

 

真っ直ぐに振りぬく!!

 

『ッ!?(ズドォオオオオン!!!)』

 

刹那の瞬間、暮桜モドキの斬撃が当たるか当たらねえかの瞬間。

その瞬間的な間合いで拳を爆発的に加速させ、相手の力全てをこっちの攻撃力に変える、究極のカウンター。

それは速いスピードで走ってる時に、壁にブチ当たる事と同義。

モロにカウンターが入った暮桜モドキは放物線を描いて、再びアリーナの端へと戻っていく。

 

「『……『古牧流、虎返し』……今のは先生達を痛めつけてくれた礼だ』」

 

多分聞こえていないだろうが、それだけ言って、俺はハイパーセンサーで後ろの様子を見る。

既に先生達はラファールから抜け出して、一夏達の前に立っていた。

俺の傍には変わらず、無人のラファールが置いてある。

一方で肝心の一夏達の方は、まだエネルギーの受け渡しが終わってない様だ。

 

「お、おいゲン!?ちょっと待ってくれ!!俺はまだ……」

 

「動いちゃ駄目だよ一夏!!僕のリヴァイヴも損傷が酷くてバイパスからの流出が遅れてるんだから、もし途中でコードが抜けたら最初からやり直しになっちゃう!!」

 

どうやら俺が待ちきれずに暮桜モドキを潰そうとしてる様に見えたんだろう。

一夏は焦りながらコッチに来ようとしてるが、それをシャルルに止められている。

 

「『安心しろ。別にテメエの獲物横取りしたりしねえよ……だがなぁ――』」

 

俺は一夏に聞こえる様に声を少し大きくしながら、向こうでゆっくりと起き上がる暮桜モドキを見据える。

一夏にも言った様に、俺だってあの姿見てたら凄え腹が立つんだよ。

俺の大事な人達の誇りと夢が穢されてんだぞ?これ程面白く無え事は無えよなぁ!!

今まで我慢に我慢を重ねて、腹の底でグツグツ煮え返っていた怒り。

そして兄弟との意地を賭けた大事な喧嘩を中断してくれやがった苛つき。

思い返すだけでハラワタが捩れちまいそうな程の怒りが、俺の身体から燃え上がる蒼いヒートとして、怒気を乗せた声として顕現する。

 

「『お前だけがキレてると思うんじゃねぇぞ?……俺だってかなりドタマきてんだよぉ!!!最初から最後まで独占だなんて欲張り言わずに、お前が準備整うまでアイツをブチ殺がすのぐらいは、俺に譲れや!!兄弟ぃ!!』」

 

「ッ!?……分かったよ……お前にだってやらせなきゃ、不公平だもんな……どっちみち、俺の方はまだ時間が掛かる……その間、頼む」

 

「『おう……任せとけ……あの馬鹿たれに、やっちゃいけねえ事をやったらどうなるか……しっかりと教育してやっからよぉ』」

 

本当なら、最初から最後までやりてぇ所だろうに、兄弟は俺に譲ってくれた。

それに対して俺は背中越しに振り返りながら、ニヤリと口元を歪めて笑う。

今日の俺はトコトン暴れてぇ気分なんだ……あののっぺらぼうが泣きたくなるぐらいに、ヒートアクション連発してやるぜ。

……その際に後ろに居た4人にブルブルと震えられたのは、ちょっと傷ついた。

 

「お、おおう……あ、後な兄弟?……出来ればもう少し、その……優しい笑顔を見せた方が……か、観客席の人達も泣いちまうと思……思いますよ?」

 

一夏のおっかなびっくりといった具合の言葉に、残りの3人も高速で首を縦に振る。

……そんなに怖いか、今の俺?

度合いで言うなら、セシリアに家族を侮辱された時の方がヤバイ筈だがな。

確かに一夏の言う通り、ハイパーセンサーで拡大した観客席の人達は、結構怖がってる奴等が多い。

女性権利団体とか企業、政府の連中なんかは泣きそうになってるし……まぁ、好都合か。

見せてやるよ、女性権利団体共……俺の最強状態の喧嘩モード……冴島さん命名、『怒熊連撃』を。

そして、テメエ等が軽い気持ちで喧嘩吹っ掛けてる男が――どれだけ凶暴なのかもなぁ!!

 

『……ッ!!』

 

と、又もや俺に向かって突貫してくる暮桜モドキ。

まぁ雪片しか無えんだから、それしかする手は無えよな。

――でも、だからこそ真似事でしか無え。

 

「『何度も俺の前で……千冬さんの足元にも及ばねぇ真似事しくさってんじゃねぇよ!!この劣化人形がぁ!!!』」

 

今度は縦向きに振られた剣筋に対して、俺はスウェイを駆使して直ぐ横に避ける。

そのままサイドに回った体勢から両手を組み、ハンマーの要領で奴の後頭部目掛けて振り下ろす。

更にその攻撃と同時に膝の一撃を、奴のどてっ腹目掛けて叩き込む。

 

『(ドグシャァア!!!)ッ!?』

 

背中から後頭部への振り下ろし、前から腹に膝の重複打撃。

両方の強烈な打撃で身体を挟み込んで、相手の動きを遅くさせる。

これぞ『古牧流、受け流し』……修行中は上手く出来なかったが、この土壇場で成功して良かったぜ。

古牧の爺さんの話じゃ、本来は自分に出来る最高の技を無防備な敵に当てられる様に開発された技らしい。

ここから派生する技を持ってるのは、古牧さんが素質を見出したある男1人だけらしいが……今はどうでも良いか。

 

「『おらぁああ!!!』(ドゴォオオオ!!!)」

 

動きの止まった暮桜モドキの顔面に、重厚なヤクザキックを浴びせて前に吹き飛ばす。

更にヤツを吹っ飛ばして間合いが空いたこの内に、地面に落ちている『武器』を掴む。

 

 

 

そう――。

 

 

 

「『ぬぅん!!――っとぉ!!』(ガチャン!!)」

 

「「ちょ!?それは……ッ!?」」

 

俺が新たに手に持った『武器』を見て、シャルルと一夏は慌てた声を挙げる。

目の前に『転がっていた』超重量『武器』……先生の乗ってきた『ラファール・リヴァイヴ2機』を纏めて担いだ俺に。

ちなみに先生達はあんぐりと口を開けて呆けてた。

俺はそれを担いだままに突進し、地面に倒れた状態の暮桜モドキに渾身の力を籠めて、叩き落とす。

 

「『喰ぅらぁえええええええええええええええええ!!!!!!』」

 

『(ズドォオオオオオオオオオオオオン!!!)ッ!!!?』

 

俺の持つどの武装とも比べられない重みがある、IS本体×2を豪勢に使ったヒートアクション、『超・重量武器の極み』。

冴島さんに教わった中で、力自慢の俺ですら習得に一番時間が掛かった大技だ。

これには暮桜モドキも耐え切れなかったのか、起き上がろうと地面に付いていた手も一緒に地面へ埋まる。

俺は倒れ伏す暮桜モドキの前で仁王立ちしながら、歯を剥き出した表情でそれを睨む。

くそったれ……ッ!!戦えば戦う程に、俺を苛つかせやがる……これで千冬さんの力を真似たつもりかよ。

千冬さんの姿を真似ておきながら、俺程度にこんな無様を晒す暮桜モドキを見てると、俺の中の怒りがドンドン増幅される。

俺の最強喧嘩モード、『怒熊連撃』は敵をブチのめす事のみに主眼を置いており、攻撃が決まれば決まる程にヒートが増加していく。

欠点としては怒りに身を任せるスタイルだから、あんまりテンションが上がると俺自身何をしでかすか分からねえ。

まぁ、だからこそ――。

 

『……(ギ、ギギッ……)』

 

「『――があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!イライラすんなぁ!!チンタラしてんじゃねえよこの粘土カス!!とっとと起きろゴラァ!!』」

 

『(ゴス!!)ッ!?』

 

こういう心底ムカつく手合には、遠慮も手加減も無くやれるんだよなぁ!!

膝立ちの体勢からゆっくりと起き上がろうとする暮桜モドキの顔にサッカーボールキックをブチ込み、無理矢理身体を起こさせる。

 

「『千冬さんはこんな攻撃でフラついたりしねぇし、その前にこんな状態にすらならねぇ(ガシッ)――よぉ!!』」

 

『(ガァアアアン!!!)ッ!!!?』

 

更に無理矢理立ち上がった暮桜モドキの肩を掴んで、背中を思いっ切り逸らして勢いをつけた頭突きを叩き込む。

立ち上がろうとする相手の先を潰し、此方の攻撃へスムーズに移行する技、『破顔の極み』だ。

頭を攻撃されてたたらを踏みながら後退する暮桜モドキだが、まだだ……こんなモンじゃねぇぞ、俺の怒りはぁああ!!

さっきまでの喧嘩でシャルルが使っていた俺の『ストライカーシールド』を地面から回収。

そのままシールドの淵を両手で握り、真上に振りかぶってから叩き落とす、『重撃の極み』を繰り出す。

 

「『なぁにが千冬さんの動きをトレースだぁ!?ボケた事やりやがって!!滅茶苦茶ぁ……弱えぞぉ!!』」

 

『(ボゴォオオオ!!!)ッ!?――ッ!!(ブゥン!!)』

 

シールドで殴られて後ろへ転がる暮桜モドキ。

だが、そこから体勢をクルリと翻したかと思えば、そのまま片手で雪片を握って突きを繰り出す。

苦し紛れに振ったそんな弱っちい剣が、俺に届くか!!

 

「『ガラクタの!!スクラップめ!!この!!』」

 

『(ゴスゥ!!)ッ!?(バキィ!!)ッ!?』

 

飛んでくる突きに対して身体を沈め、剣に添う形で見えた背中へ左フックを一発。

その攻撃で背中のアーマーを模した部分が少し破壊されるが、暮桜モドキは少しよろめいただけで、それを気にせずに伸ばした剣を反対に薙ぐ。

勿論そう来る事は予想出来てたので、もう一度身体を沈めてそれを回避。

全身のバネが縮められた状態から、一気に力を解放し――。

 

「『らっしゃぁああああああああ!!!(ドゴォオオオ!!!)』」

 

渾身の右ラリアットを、文字通り奴の首をブッ千切るつもりで放った。

その威力に負けて吹っ飛ぶ暮桜モドキへ、俺は右手からエナジーソードを展開して迫る。

後方へ転がりながらも体勢を立て直していた暮桜モドキだが、攻撃に移るのは俺の方が断然速い。

 

「『だらあぁ!!』(ズブシュ!!)」

 

『ッ!?』

 

「『オラァもう一発ぅ!!』(バゴォ!!)」

 

パンチの要領で突き出したエナジーソードは暮桜モドキの肩を貫き、そのまま肩を切り開いて抜ける。

そのまま肩を抉られて背を向ける奴の前に出た体勢から腕を振るい、肘鉄の一撃を加えてやった。

更に肘鉄の勢いを殺さずに俺自身が回転。

エナジーソードを展開していない左手で暮桜モドキの首根っこを引っ掴み、アリーナの端目掛けて思いっ切り投げ飛ばす。

連撃に次ぐ連撃を喰らって為す術も無く、無様に地面を転がる暮桜モドキ。

それをフンと鼻息を鳴らしながら、俺はエナジーソードを収納しつつ吊り上がった目つきで睨む。

ダメージは蓄積してるのか、遂には立ち上がっても、フラフラとした体勢で突っ立ってやがる。

……何回俺の前で、千冬さんの姿で……無様な姿晒すつもりだアイツァ……ッ!!

 

「『フーッ!!フーッ!!……まだだ……ッ!!……こんなモンじゃあ……まだ『怒り足りねえ』んだよクソがぁああああああ!!!』」

 

『ッ!?』

 

「『ソラソラソラソラァ!!!』」

 

『ッ!!?ッ!!?ッ!!?ッ!!?(ドゴドゴドゴドゴドゴ!!バキィ!!)』

 

叫び声を挙げながら暮桜モドキに突撃し、無防備な奴の腹へジャブ、アッパー。

更に顔面への左右フック、ストレートと連続で叩き込み、右のハイキックから流れる様に軽く飛んで右回し蹴りを腹に叩き込む。

最後のブロウで暮桜モドキが後ろへ下がったトコを狙い、トドメに――。

 

「『ぜいぃいいいやぁあああああ!!!』」

 

『(ズドォオオオオ!!)ッッッ!!!?』

 

右回し蹴りから跳び上がっての、胴回し回転右蹴りを顔面にお見舞いしてやった。

最早無様というか情けない格好で雪片モドキを手から離しながら後ろ向きに飛んで行く暮桜モドキ。

何時の間にか左のアンロックユニットも吹き飛んでるし、満身創痍ってのが良く似合うぜ。

既に会場の喧騒は止み、辺りを満たすのは静寂だけだ。

その殆どの人間が、俺の喧嘩……というか、暴れん坊っぷりに度肝抜かれてるっぽい。

 

「……俺達、良く死ななかったよな」

 

「……僕、もう絶対に元次とは戦わない……あんなにされるぐらいなら、逃げて負け犬って言われた方がマシだよ」

 

「……シャルル……後どれぐらいでエネルギー送れる?」

 

「も、もう後……5分くらい?」

 

「は、はははっ。そっかぁ……下手すると、兄弟が全部潰しちまうかも、な……は、はは……」

 

「え、えっと……元次に、ちょっと待ってって言うのは……」

 

「シャルル、言ってくれるか?」

 

「ッ!?(ブンブンブン!!)←(高速で首を横に振る音)」

 

「だよなぁ……」

 

まだ理性が残っていた俺は、コイツにトドメを刺す役割の一夏をハイパーセンサーで確認するが、一夏はシャルルとまだエネルギーの受け渡しを行なってる最中だった。

あんまりゆったりしてんじゃねぇぞ、兄弟……俺が本格的に訳分かん無くなって暴れても、知らねぇぞ?

ハァアァア……と大口を開けて荒い息を吐き出しながら、俺は自分でも分かるほどに口元を吊り上げて笑う。

 

「『HAアAァ……はYAく立てヨ、粘土カス……じゃねぇともう……キレ過ぎTE、バラバラにしちMAうゼ?』」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

獰猛と言い表すのが適切な笑みを浮かべながら体中の血管が浮き上がる元次の姿は……正しく、『ケダモノ』としか言えないだろう。

そのケダモノの前で地面に膝を付くのは、戦乙女の不出来な成り損ない。

 

 

 

怒りに狂う野獣が全てを喰らうのか?

 

 

 

堕ちた戦乙女の剣が野獣を制するのか?

 

 

 

はたまたこの騒動の幕を引くのは、戦乙女の剣を正当に継いだ騎士(ナイト)なのか?

 

 

 

『……(ギュゥウン……)』

 

 

 

Error……Error……Error,Error,Error,Error,Error.

 

 

 

 

 

System Update……Complete.

 

 

 

 

 

《Valkyrie Trance Form System》――.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――boot.

 

 

 

 

 

「――ふふっ。始まったわね……さぁ、見せて頂戴、ぼうや達……ISの新たな可能性を……」

 

 

 

 

 

――全ては、脚本家のみが知る。

 

 




白式とリヴァイヴのシールドエネルギーはオリジナルです。
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