真・恋姫†無双 ~護国の蒼龍~(凍結)   作:むこうぶち

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第十話『満寵VS鄧艾・序章』

「・・・・提案したのは私ですが、ここまでやってくるとは思いもよりませんでした」

 

一刀君たち劉備軍の使者が陳留を訪れて一週間になりました。同盟は成立、その一歩目である人材交流の一環として使者として訪れた一刀君たち五人は一か月ほど陳留に逗留することになりました。一刀君、諸葛亮、孫乾が私の講義に参加したり、趙雲、廖化が春蘭、凪、詩季らと手合わせをしてみたりと。皆にもそれは刺激となり、数人程は目に見える程の伸び代を見せています。

 

しかし既に一週間です、残る三週間も同じ調子では飽きが来てしまうでしょう。という事で一刀君たち劉備軍の方々も交えた模擬戦を提案したのが昨日の夜、そして今朝方には全軍に通達が出され実現。ええ、華琳様を含め皆が優秀で嬉しい限りです。ですが・・・・そこから提示された条件に、私は軽く戦慄を覚えました。

 

『私が指揮する二万と貴方が指揮する五千の戦いとするわ』

 

四倍の兵力差です、篭城では無く野戦、しかも以前黄巾三万を相手にした時とは違い季衣、流琉の率いる華琳様の近衛兵隊『虎豹騎』や新たに新設された蒼史率いる春蘭直属精兵部隊『紫葉』など現在の陳留軍で『黒騎兵』に次いで武力の高い部隊が参戦しています。将は華琳様に春蘭、秋蘭、華侖、季衣、流琉、紫安、蒼史、久朗殿、凪、沙和、真桜、恭、赫。軍師に桂花、灯里、舞歌、伽耶。

 

対してこちらは『黒騎兵』の三千こそ丸々組み込まれましたが残る二千との練度の格差があり連携が難しく、確実に苦戦を強いられます。将は私と栄華さん、颯、歌音、詩季に加えて一刀君、趙雲、廖化。軍師は諸葛亮と先日仕官して来た郭嘉と程昱。まぁ、苦戦する要素は兵数の差と『黒騎兵』部隊長の半数を持って行かれている事ぐらいでしょうが。

 

因みに便宜上、華琳様が率いるのが『赤軍』、私が率いるのが『白軍』。一刀君が「二つに分かれて戦うならこれだ!」と何故か力説していたのですが、妙にしっくりくる、との理由から採用されました。

 

「あの・・・・このような事はよく行われるのでしょうか?」

 

継戦に特化した『黒騎兵』が参戦すると言う事で設けられた期間は三日、その間に決着が着かなければ引き分けと言う規定が定められています。勝利条件も幾つか存在し、主要な将の中から三名が討たれれば、こちらの場合は私と颯、一刀君の三名が討ち取られれば負け。また両軍に拠点が設定されており、その拠点内に設置してある牙門旗を奪われても負け、もちろん兵が壊滅しても負け。

 

で、互いに準備期間は一日。その間に拠点の防備などを済ませるべく動いています。

 

「まぁここまで大規模なものは珍しいですが模擬戦自体は頻繁に行います、単純な同数同士の野戦から臨時に建設した城砦を用いての攻城、篭城の演習まで。珍しいでしょう?郭嘉、程昱」

「ええ、ここまで本格的な演習を開く軍勢を見るのは初めてです」

「ですねぇー、普通は予算とかの関係でここまでやりませんよー」

 

郭嘉と程昱の二人が陳留を訪れたのは五日程前の話でした。華琳様に仕官するために来た、との事で。本来ならば、身分などを精査しその上で能力を見て登用するかどうかを決めるのですが・・・・

 

『おや、凛と風では無いか』

 

意外な事に、趙雲と知人だったようで。どうやら趙雲が流浪していた頃に行動を共にしていた、友人と言って差し支えの無い仲のようで。まぁ同盟相手の、しかも軍の一翼を担う将からの紹介と言う形になるならば問題は無いだろうと言う事で迎え入れる事が決定。以降は二人が軍師志望と言う事もあり一時的に『黒騎兵』の軍師として働いてもらっています。

 

「何事にも必死にならなければ成長は望めません、多少の浪費を覚悟でこう言った実戦形式の模擬戦を行うのもそれが理由です」

 

緊張感が無いのでは意味が無い、上から下まで、始まりから終わりまで徹頭徹尾、真剣になって事に当たる必要があるのだ。

 

「さて、そろそろ軍議を初めましょう。颯」

「声はかけときました、そろそろ全員集まると思いますぜ?」

 

さて、兵数、将の数に不利は抱えましたがやるからには勝ちに行くとしましょう。

 

―――――――――

 

「気をつけなければならないのは両夏侯に鄧艾、王基、劉延殿、郭淮、呂虔の七将、それに曹操様と四軍師にも注意を払わねばなりません」

 

というわけで早速軍議を開いていますが・・・・歌音に詩季、廖化は不参加です。私も出席は促したのですが・・・・

 

『面倒な事はお任せしますっ!』

『私は、指示に従うだけ』

『難しい事はわかりませんので』

 

取り敢えず眩い笑顔で元気にそう言って逃げた歌音は後で折檻しましょう。

 

「対してこちらは前線で戦える将は私と文聘、牛金、王双、趙雲、廖化と既に頭数で負けています。『黒騎兵』が曹操軍の最高戦力であるとは言えども精々倍数を相手にして限界です」

 

今いる『黒騎兵』三千は何れ曹操軍が領土を拡大していけば国防の要になる存在、とは言え比較的他領に比べ練度の高い曹操軍の兵を相手取れば倍が限度だ。何れは五倍の精兵相手でも問題なく戦える程度には鍛え上げたいとは思いますけどね。

 

因みに栄華さんと一刀君も戦えはしますが二人はあくまで後方で指揮を取る将、前に出れるような武力は持ち合わせていません。

 

「故に我らが頼みとするのは策、兵法、戦術となります。幸いにも兵数の不利と引き換えに好条件の陣地を得る事が出来ました」

 

現在、私たち白軍が駐屯しているのは陳留第一城砦。普段は私と颯の隊が駐屯している城砦で、北に黄河、東に森がある陳留最北端の防衛の要所です。東の森には数多の罠が仕掛けてあり、その配置と種類の全てを知るのは私と颯、後はその二隊所属の一部の部隊長ぐらいなものです。

 

「今回は指揮官候補生の実力を見る事も兼ねて一部の候補生たちを臨時に昇格させます、功績があれば実際に昇格、目立つところが無ければ保留、明らかな失策があれば後々その上官たちを通して至らぬ点の修正などを行わせます」

 

せっかくの大規模な模擬戦、一刀君たち劉備軍側との交流も必要ですがやれるだけの事をやっていくとしましょう。黒騎兵創設時に候補には上がりましたが様々な理由から部隊長昇格を保留した面々もいますし、彼らが以前に私が与えた課題を克服できているかも気になりますしね。

 

「と言うわけで部隊を三つに割りましょう、防衛が一つ、攻撃が一つ、遊撃が一つです」

「妥当に考えたら満寵様が護り、文聘殿が攻め、北郷殿が遊撃、ですか?」

 

私の提案に直ぐに解を出したのは郭嘉です、まぁ・・・・通常ならそれで概ね正解です、が。

 

「不正解」

「えぇ!!?」

「せめて兵数が同数ならばそれで問題ありません、が。今回は倍以上のを相手にしなければなりません、となれば相手方の予想を外す配置をしなければなりません。なので今回は・・・・」

「ふふふふふ・・・・風は予想がついてるのですよー?」

 

ふむ、部隊運用では優秀な郭嘉は少々手本通りに動いてしまう癖がありますがそこを程昱が補う、と。良き友人ですね。

 

「では程昱さん、答え合わせと行きましょうか」

―――――――――

 

side 紫安

 

「と言うのが概ね予測出来る龍牙様の手だ、各将以上の事を留意した上で手筈通りの行動を頼む」

 

正直言って戦々恐々、模擬戦を執り行うとの布告が出され赤軍への所属が決定すると共に華琳様から俺へと伝えられたのはとんでもない一言だった。

 

『今回の模擬戦、総指揮は貴方が執りなさい。私は将あるいは軍師の一人として参戦するわ』

 

当然のように一度目を辞退し、二度目の要請も辞退した。三度目に至っては春蘭様、秋蘭様が背後に並んで立っており、『断れば斬る』と特に片側が眼で語っていたので引き受けざるを得なくなってしまった。

 

相手側の戦力は概ね理解している、恐らくは『黒騎兵』を中心として一部を防衛に残し残る全兵で攻め、それが少ない勝ち筋でありその場合まず間違いなく龍牙様は防衛に回る。現状の曹操軍、いや大陸を見て回しても龍牙様程の防衛戦の名主はいない。颯が主攻になるだろうか、遊撃に兵を割くほどの余裕は無いはずだ。組んだ策も定石、ある程度の奇策ならば跳ね除けるだけの下地は出来上がった・・・・であるのに。

 

「何だ、この拭いきれぬ不安は」

 

兵数も、将の数も優っている。地の利と全体的な質の高さはあちらが上ではあるが、それでも本来ならば負ける要素など無い。だが、俺はこの感覚に覚えがある。黄巾にいた頃に、龍牙様に負けて捕縛され、俺が曹操軍に加わる事になったあの戦、あの時に感じた感覚だ。

 

「何時になく不安そうな面構えだな、紫安」

「久朗さん・・・・」

 

解散してから一人でいたはずだが、気が付けば久朗さん・・・・だけじゃない、華琳様と恭がそこにいた。

 

「龍牙様に命を助けられ、『黒騎兵』に組み込まれて、俺は龍牙様と矛を、軍略を交える機会は二度と巡ってこないと思っていた。それが突如降って湧いた機だと言うのに、俺の脳裏を過るのはかつての負け戦の事だ」

 

あの時とは状況が違うなんてのはわかってる、指揮下の上司や同僚や後輩、兵の一人一人に至るまで俺の指示を笑う者も違える者もいない。それでもなお過るのだ、忘れ得ないのだあの時の事は。少なくとも、恭は俺と同じのはずだ。それを理解しているから、俺の中の不安を見抜いてここにいるのだろう。

 

「龍牙は貴方を後に一方面を任せるに足る、と評価していたわ」

 

不意に、口を開いたのは華琳様だ。

 

「その一方で龍牙に対して植え付けられた敗北の印象を懸念もしていた、それが成長の妨げになる、と。だからこそ今回、龍牙と私で相談した上で赤軍は貴方を総大将にすることを決定したの」

 

龍牙様・・・・華琳様・・・・

 

「鄧士截、この一戦を以てその不安を取り払って見せなさい」

 

「御意」

 

ならば俺は期待に応えるだけだ。

 

俺を信頼し期待してくれる上官のために。

 

その上官が信頼する俺を信頼してくれる主君のために。

 

俺はこの戦いを勝ちに行く。




第十話でした。

次回から始まる満寵軍五千対鄧艾軍二万。勝つのは合肥で呉を相手取り互角に渡り合った名将か、蜀を陥落させた猛将か。

そして主人公たちとの交流で呉√寄りに強化された一刀君にもご期待下さい。
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