真・恋姫†無双 ~護国の蒼龍~(凍結)   作:むこうぶち

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第三話『黄巾』

華琳様の配下となり、陳留へと赴任し既に半年が経過しました。

 

「では本日は攻城戦の講義を行いましょう」

 

現状、私の立場は武官、文官を兼任する形となっています。洛陽での任官経験があり、またここに赴任してからの成果を見た華琳様がどちらか片一方だけで使うには余りにも惜しいとの判断をなされたためです。また、近頃では華琳様配下の武官と軍師候補の文官を相手に講義を行うようにもなりました。

 

『貴方の知識と発想は素晴らしい、それ故に灯里、舞歌らのように貴方の教えを受けた者が増えれば将も軍師も質が向上すると思うの』

 

との打診を受けまして、まぁ私としても人にモノを教えると言うことは嫌いではありません。むしろ好きだから私塾を開いていたわけですし。ともかく、定期的にこうやって講義を行っているわけです。

 

主に参加する生徒は決まっています。灯里、舞歌は当然ながら・・・・

 

「確かに攻城兵器は有用ね、でもそれを作るための資材、人足、何より技術者がいないのが現状ね」

 

荀彧、真名を桂花。陳留赴任当時に私に付けられた部下。当初は若干の警戒心がありましたが、二ヶ月を過ぎた頃からそれは無くなり、いつしか灯里や舞歌と同じ、師弟のような感覚で接するようになりました。男嫌いも幾分か緩和され、少なくとも初対面の初っ端から男性と言うだけの理由で相手を罵倒する事はなくなりました。

 

「だが他勢力に先んじて攻城兵器を作れればそれは優位性を生む事になる、技術者を見つけたならば積極的に登用を考えるべきだろう」

 

王基、真名を蒼史。筆頭武官、夏侯惇の副官。猪突の傾向がある夏侯惇に代わり部隊指揮を行い、その堅実な手腕が評価されている。勤勉で実直、教えられた事に対し呑み込むだけではなくその先を自ら考える頭脳もある。また夏侯惇の副官なだけあり、腕っ節もあるため何れは一方面を指揮する将としても期待できるだろう。

 

「どっちにしろ高く付きそうね」

 

曹洪、真名を栄華。陳留の金庫番であり、陳留の経費の一切を取り仕切る才女。私の講義内容には戦における出費を抑えるなどのものもあり、それを知ってからは時折暇を見て参加し始めている。戦に関わる費用の捻出方法、出費を抑える方法などに関しては私も教えられる事があり、互いに有益な時間を過ごしていると言える。

 

「ふむ、ならば先ずは簡易の。梯子などを使った攻城の方法を論ずるべきではないかな?」

 

夏侯淵、真名を秋蘭。夏侯惇の妹であり、次席武官として軍全体を指揮する存在。少々、華琳様と夏侯惇の事となれば前後不覚に陥る事もありますが、それを差し引いても優秀。また大陸屈指であろう弓の腕前もあり、後方を支える将としてもではあるが、独立遊軍などを率いさせると戦果を挙げるかも知れない。

 

「戦わずして勝つ、攻城戦とは心理戦であり如何に敵の心を削り、へし折るかが重要だと思うが」

 

鄧艾、真名を紫安。私の副官。元は近頃出没件数を増やしつつある賊『黄巾』の大隊で軍師役をしていた青年だ。だが彼自身が優秀であろうとも彼を用いる指揮官は愚鈍であり、結果として私が率いた隊に打ち破られる結果となった。壊滅寸前にまで追い散らされた残存兵を集め、率いて降伏を申し出てきたのが紫安でした。

 

『我が首一つで収まる事とは思っておりません、ですが・・・・何卒、彼らだけはお助けいただけますよう』

 

この残存兵、元々黄巾に所属した頃からの手勢だったらしい。情が沸いた部下たちを助けようとしたその真心に、当然のように部下たちも動かされ互いが互いを助けようと命を張ろうとする。そんな彼らの絆を羨ましく想い、同時に彼らが共に戦ってくれれば心強いと考え無条件での投降を受諾。それ以降、紫安とその配下五百が私の副官と直属兵として組み込まれる事になったと言う経緯がそこにある。

 

「ふむ」

 

そうやって次々に新進気鋭、将来有望な若者たちが交わす言葉に耳を傾ける。私の講義はいつもこう、大まかな主題を私が提案し、皆がそれに関して自由に論を交わす。私はそれを聞きながら、時にその論の誤りを正し、持論を語り、様々な意見を引き出す。

 

「今日も白熱しているわね」

「おや、華琳様」

 

華琳様はこうやって、時折この講義に使われる一室を訪ねてくる。新進気鋭の者たちの語り合う声に言葉は詩にも通じるものがあるらしい、私は芸術などは全く分かりませんがね。

 

「先ほど朝廷からの使者が到着したわ」

「黄巾討伐の詔勅ですか、想定していたよりも動きが早かったですね」

 

華琳様から差し出された書簡を開き、内容を見聞する。

 

黄巾は今現在確認されているだけでも既に数十万規模にまでその数を膨れさせている。今までは各地の諸侯が独自に軍勢を出し領内の警戒にあたり、討伐を繰り返してきた。だが、この敵は民の数だけ増える可能性を秘めている。潜在数は民の数、どこかで大きな手を打たなければ際限なく増えるだけである。この討伐の詔勅が誰の指示で、どんな思惑で出されたものかは分からない。だが文面には、本来の領地に関係なく軍を出して良い、との一文がある。まぁ他領に入る前に先触れぐらいは出さねばならないだろう、だがそれでも他領で軍を動かせると言うのは『今後』の事を考えれば是である。

 

「どのような軍容で?」

「私と春蘭、秋蘭、桂花、灯里、舞歌、華侖、蒼史で。兵数は五千」

「では一万連れて行かれるが宜しいでしょう、陳留の守備、周辺警戒は合わせて五千あれば十分です」

 

主だった将の殆どを連れての遠征、にはなりますが私と栄華、紫安の三人での留守居となれば役割は自ずと決まります。そして私も栄華も紫安も、兵を率いる場合、少数での行動を得意とします。守備に三千を残し、残る二千を私か紫安が率いて領内の治安維持に動く。栄華にそれを後方で支えてもらう、それが一番良いのだ。

 

「それに領内での戦闘と、他領に趣いての戦闘では様々なものが異なってきます。これが乾坤一擲の大勝負であればともかく、寡勢にて挑むは愚、可能な限り多勢を引き連れ『数の利』を補助とし戦われた方が賢明です」

「寡勢の不利益よりも多勢の不利益の方がまだマシ、という訳ね」

「然り」

 

多勢の利を活用すべきは遠征に出る華琳様たちである、将も軍師も複数連れて行くのだ。それを最大限活かすようにするべきなのだ。

 

「それに此度のそれは『機』です、『曹孟徳ここに在り』と広く天下に名を知らしめる(きざはし)です。万に一つの失敗すら許さぬ、その覚悟と用意をもってして事に当たるべきです」

「貴方を掌中に収めれば天下に一歩近づける、そう思っていたのだけれど・・・・想像以上だったようね。貴方はまさしく私にとって太公望とでも言うべき存在よ」

「光栄ですね、そこまで言っていただけるとは」

 

太公望、とは大きく出たものです。かの名宰相にして名軍師に届く、とも思えませんが。

 

「全身全霊は尽くしましょう、貴女にとっての太公望であれるように」

 

そうあろうと、努力する事はできます。

 

「さて、そうなればすぐに動かなければなりませんね。編成、兵站の確保、留守の防備、やらねばならない事は沢山あります。城民にも事情を話しつつ一時の城主不在を詫びつつ協力を仰がねばなりません」

 

今のところその心配は露ほどもないが、黄巾の大部隊が諸侯の包囲を突破、あるいはくぐり抜ける可能性も考慮せねばならない。諸侯、と一口に言うがその実情は様々である。軍を操る事に長けた者、内政手腕に長けた者、財を成す事に長けた者、家柄だけの者。華琳様のようにありとあらゆる事に長じている者もいれば、武勇であれば江東の虎の娘である孫策、西涼の勇馬騰、白馬長史公孫賛がいる。後は朝廷側が今回の戦いにおいて、誰を総大将として立てるかが鍵となる。せめて、堅実な手腕を持つ者が上にたってくれれば良いのでしょうが・・・・

 

まぁ、華琳様ならば上がどうあれ上手くやり遂せるでしょう。ならば私の使命は華琳様が、兵たちが戻ってくるこの地を護ることである。

 

「皆さん!緊急の案件です、今日の講義はここまでですよ!!」

 

それが私の戦い。




第三話でした。

改訂前にも登場した王基:蒼史と鄧艾:紫安の登場ですね。二人は前作とは違い最初から春蘭副官、龍牙副官、と言う立場になっています。
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