真・恋姫†無双 ~護国の蒼龍~(凍結)   作:むこうぶち

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第七話『満寵・其ノ二』

―黄巾の乱終結―

 

そう朝廷は世間に対し大々的に発表しました。張角、張宝、張梁の三首魁を討ち取ったのは曹操軍、それを下で支えた波才、張曼成、馬元義の三人の大将を討ち取ったのはそれぞれ劉備、袁術(孫策)、袁紹の三軍。以下この討伐軍に参陣した各諸侯に対し論功行賞が行われました。領地を賜る者、爵位を賜る者、金や宝物等を賜る者。

 

その中で華琳様は領地を断り、昇格を断り、金品を断り。

 

『私がこの戦いに身を投じたのは富のためでも名声のためでも無い』

 

と断言したそうで。ですがこれに焦ったのは恩賞を盾にして裏で色々と画策していた十常侍をはじめとした宦官たちと、恩賞と言う形で領土拡大を狙っていた諸侯たちです。そのために血を流し、私財を投じたのにも関わらず第一功である曹操軍が恩賞を辞退すればそれより下の功績のものたちが恩賞を受け取りづらくなります。結果として、周囲の諸侯たちから「自らのためではなく御身のために戦った配下への報奨だと思えば良いだろう」と説得され、『やむを得ず』受け取る事により『此度の討伐に私は私利私欲で応じたのではない』と喧伝することにも成功したようです。

 

「まぁ・・・・あまりやんちゃをなさらぬ様、お願いしますね」

「善処するわ」

 

帰還した華琳様と互いの状況の報告をしつつ、今回の事について諫言してみました。今回の事は民衆を味方にはつけれますが、場合によっては周辺諸侯を敵に回す行為。無用な敵を作る必要は無く、今後のためにも必要以上に目立つ真似は避けていただきたい。であるにも関わらず、華琳様の返答は『善処する』との事。つまりはまぁ、『必要があれば悪目立ちも無茶もやんちゃもする』と言う事だ。であるならば、私たちの役目はそれを前提とした策を用意するだけだ。

 

「紫安もご苦労でした、強行軍に重ねての強行軍。加えて討伐軍としての戦、貴方と連れて行った黒騎兵五百には三日の休暇を与えます」

「はっ!・・・・ところで龍牙様、一つだけお聞きしたいのですが」

「ん?なんだい?」

 

紫安だけではない、舞歌に灯里、桂花、文聘、牛金らの視線が私の傍らに侍る少女へと向けられています。

 

「そうね、私も気になっていたわ」

 

華琳様の一言で、春蘭、秋蘭、華侖、他新人組の視線も向けられました。

 

「そうですね、伽耶。自己紹介をなさい」

「はいっ!!」

 

元気よく右手を上げ、一歩前へと進み出ます。

 

「姓を司馬、名を懿、字を仲達、真名を伽耶!!先日より栄華様の推挙にて龍牙様の教えを受けつつ下働きをさせて頂いてます!!真名に関しては皆様が預けて良い、と思ったら呼んで頂ければ幸いですっ!!」

「と言うわけでして」

「成る程ね、司馬家と言えば河内の司馬家かしら?」

「はいっ!その司馬家です!」

 

ええ、私も調べましたよ。河内で屈指の豪商、念のため書状で確認も取りました。「娘さんを預かる事になりそうですが、構いませんでしょうか?」と。そしたらですね、一昨日に伽耶の姉である司馬朗さんが直接訪ねてきたんです。

 

『妹は商人如きで収まる器ではありません、妹が自らの耳で聞き、目で見て選んだのならば私が口出しする事では無いでしょう。ですから何卒、妹の事を宜しくお願い致します』

 

そう言って支度金と伽耶さんの使っていた家具など全てをこちらに運んできたのですから、ガラにも無くビックリしてしまいました。

 

『私の方でも満寵様の事を、主君である曹操様の事を調べさせて頂きました。少なくとも、師事し仕えるにこれ以上は無いと思えます。ですがもし、妹や私の期待に答えられなくば・・・・お覚悟を』

 

あそこまで、背筋が凍る思いをしたのは人生で二度目です。ちなみに一度目は亡くなった母が私を叱った時です、笑顔であるにも関わらず背後に鬼の姿を幻視してしまう程でした。あの時と同じでした、間違いなく司馬朗殿の背に三面六臂の鬼をみたような気がしたのです、ええ。

 

「龍牙、貴方から見て司馬懿はどうなのかしら?」

「天真爛漫、頭脳明晰、武芸は出来ませんが動けないわけではありません。華侖と組ませてみるのもアリかと思いますがそこは華琳様にお任せしましょう」

 

似ているのだ、伽耶と華侖は。同族嫌悪とは程遠い性格の二人です、上手くやってくれると信じましょう。

 

「そうね・・・・その事も含めて龍牙、貴方に引き受けてもらいたい事があるのだけれども」

「?」

 

はて、何でしょうか。考えられるのは調略でしょうかね。既に漢王朝の権威は形骸化し、各地の力ある諸侯はおおっぴらにでは無くとも勢力の拡大に向けて動き出しています。ここからならば東の濮陽か、南の許昌、北の袁紹とぶつかるのはまだ早いので鄴方面は除外、西は洛陽に程近く、下手な真似をされても困るのでこちらも除外。東か南か、どちらでしょうね?

 

「貴方の『黒騎兵』、その兵力と人員、権限を拡大し独立遊軍の権を与える。また、これと同時に満寵を我が軍の筆頭武官とし、軍事行動においてはこの曹孟徳と同等の権限を持つものとする」

「・・・・大きな賭けに出るものですね、華琳様」

「そうかしら?三万に二千で挑む貴方程では無いと思うのだけれど?」

 

軍事行動に限定されるとは言え君主と同等の権限を持つ、しかも若干の自画自賛は含まれるが私の持つ影響力は本来ならば無視出来るものではありません。紫安、劉延殿をはじめとした黒騎兵のメンツは華琳様への特別な忠誠心は持ち合わせていません、むしろ私個人に対する忠誠心しかありません。文聘や牛金の私の教えを受けている武官も、どちらかといえば私に対しての忠誠が大きいように思えます。そんな私にそこまでの権限を与える、と言うのは反乱の危険性をも孕む判断なのです。

 

「来るべき未来を見据えての判断よ、私一人では何れ軍を動かす事に限界が訪れるもの」

 

確かに、春蘭、秋蘭、華侖、栄華さんの華琳様の親族から抜き出てきた四人の将は何れは軍の中核を本当の意味で担える程の将となれるだけの器と潜在能力を兼ね備えています。ですが華琳様が求めるのは独自に状況を判断し、打てるべき手を打ち、『戦場』では無く『戦線』を操り、『戦術』では無く『戦略』を練れる者。

 

「承りましょう」

 

秋蘭と栄華さんなら、成長の幅次第ではそうなる事も可能かも知れません。ですが『今』それが出来るのは、客観的に見ても私だけです。そして今からその来るべき未来を見据えて、私の手足となる軍勢を育てるならばこの案件は受け取るしか無いでしょう。

 

「ならば近日中に編成に入って欲しいのだけれど・・・・どうしても欲しい人材はいるかしら?」

「「「「「!!!」」」」」

 

華琳様の言葉に不特定多数が反応を示します、が今は本当に必要最低限だけを指名する事にしましょう。

 

「鄧艾、劉延、文聘・・・・それと」

 

ここで初めて、私の視線に釣られるように全員の視線がその四人へと向けられました。

 

「そこにいる郭淮を推挙、私の部隊に組み入れたいと思います」

「そう、貴方がそう言うからには優秀なのでしょうね。それで?後ろの三人は?」

「郭淮と共に『旅をしていた』踊り子です、中々に人を惹き付ける才能を持っているようでして。ですが彼女らは『色々な事情があって』人に追われる身です。ですので郭淮の仕官を条件に保護、また領内で警備をつけた上で興行をさせられないだろうか、と思いましてね」

 

人の口に戸は立てられません。黒騎兵の者ならば口の固さは保証出来ますが、一般兵はその限りではありません。万が一、本当の事をおおっぴらに話して、ここにいる兵たちの口から全てが漏れれば華琳様も私も破滅してしまいます。特にこの三人の扱いに関しては。なのでそれらしい話を創る事にしました、無論、郭淮と三姉妹にも理由を説明しこの事を応諾させました。

 

「良いでしょう、そうするに値するだけの才能を貴方は見出したのでしょう?」

「ええ」

 

実は一度、三姉妹を陳留に連れて来てからその歌と踊りを見せてもらった事がありました。正直言えば荒削りです、かつて見た宮廷仕えの踊り子達に比べれば歌も踊りも悪く言えば雑である。しかし不思議と人を惹き付ける魅力がある、ええ、気がついたら城中の民が集まった挙句に警備や城門守備の兵まで集まってきてその歌に聞き入り、踊りに見入ってたのですから。

 

「ならばその三人の事は貴方に一任しましょう」

「分かりました」

 

さて、『黒騎兵』の軍備拡大となればやらねばならない事が多いですね。将官候補の確保、兵の補充と増員、独立遊軍として動くならば専属で兵站を確保する人材も必要ですね。在野の軍師を登用するのが妥当でしょうか、桂花、舞歌、灯里は何れも曹操軍の根幹を担うべき存在です。独立遊軍に張り付けてしまってはその持ち味を活かせなくなってしまいます、むしろ必要なのは思考の速さ、そこら辺を考えて勧誘しなければなりませんね。

 

「龍牙、貴方はやはり内政よりも戦場かも知れないわね」

「?」

「今の貴方、笑っているわ。いつもの貴方は歳上として歳下の者を、師として弟子を見守る者の、笑みを浮かべているわ。でも今の貴方の笑みはどれでも無い、まるで子供のような笑みを浮かべているわ」

 

そう言われて、顔に手を当ててみる。普段よりも吊り上がった口角、ええ確かに私は笑っている。きっと、いつもは、いえ最後にこういう笑い方をしたのは十年以上も前。華琳様に託そうとしたあの書簡の山を喜々として書き記していた頃以来でしょうか?

 

「ええ、楽しいですよ」

 

私の言葉にみんなが驚いた顔をしています、ええそうですよね。だって今まで私が戦に関わる事でこうやって個人の感情を出す事はありませんでした。戦とは命の奪い合いの最たるもの、将であれ軍師であれ、これに関わる者が個人の感情を顕にしてはいけない。他人の、しかも何千何百もの命を預かるのですから当然の心構えですし事実私もそう考えています。

 

ですが楽しいのです、初めての感情に戸惑いすら覚えることなく受け入れている私。認めましょう、私は『戦』が楽しい。未だ見ぬ強敵と戦う事を、頼もしき仲間に背を預ける事を。『戦』の全てを楽しいと思えます。独立した指揮権を持つ遊軍を率いると言う事も、楽しみです。

 

「楽しいから手抜きはしません、妥協もしません、華琳様の言い出したことです。徹底的にやりますので、覚悟はよろしいですか?」

「・・・・以前、桂花の事を私は『我が子房』と評したけれども。貴方は『我が韓信』とでも言うべきかしらね?」

「おや、では煮られる走狗にならぬよう。精進しなければなりませんね」

「ええ、だから貴方の思うままにやりなさい。領土が拡大したら拠点の事も考えましょう」

 

さて、忙しくなりますね。ですがそれは望むところです、これから先は乱世、忙しくない時などないのでしょう。であれば、私は敢然と立ち向かうだけです。




第七話でした。

『黒騎兵』の強化フラグが立ちました。主人公の直属部隊『黒騎兵』のコンセプトは『防衛戦のスペシャリスト集団』です。単純明快な篭城戦から平地での守備、要害への砦の建築、敵補給線への奇襲etc
まぁぶっちゃけ『ゲリラ戦の達人集団』でもあるわけで、護るためなら手段を選ばないってわけですね。
そして文聘君がメインキャラ昇格決定しました!わー!パチパチパチ!!・・・・・・・・男キャラだけが増えていく不思議。
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