真・恋姫†無双 ~護国の蒼龍~(凍結)   作:むこうぶち

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第八話『黒騎兵』

黒騎兵の規模拡張の話が出て半月後、華琳様と秋蘭の連名で私の下に人員二人が送られてきました。

 

「牛金、真名を歌音(かのん)!趣味はサボって昼寝をすること・・・・嘘です、真面目に仕事しますからその黒い笑みを止めて下さいお師匠さまぁ!!」

「王双、真名を詩季(しき)。宜しく」

 

牛金、歌音は紫安と同期の一人で満寵塾の住人です。凪と比べれば武力は見劣りしますが、指揮は堅実で選択は常に中庸。周囲からは騒がしく、適当だと思われがちですがそれは性格だけの話で戦いでは賭けに出ずに確率の高い手を冷静に選択する知将の才を持っています。ええ、普段は途轍もなく自堕落です、優秀なだけに残念な程に。

 

王双、詩季も紫安と同期の一人です。同期の中では最も武力が高く、力だけならば春蘭にも拮抗出来るでしょう。とは言え春蘭には天賦の才から来る野性的な直感があるので二、三歩及ばずと言ったところでしょう。部隊指揮はそこそこ、可もなく不可もなくと言ったところ。寡黙で多くを語りませんが同期の皆さんは不思議と意思疎通が普通にできています、あの五人には絆があるのでしょうね。

 

「やっと来たかよ、まぁ分からない事があったら俺に聞きな。『黒騎兵』じゃ俺が先輩だからな」

 

文聘、真名を(はやて)は同期組の中では最年長。どんな時でも余裕を持ち冷静に戦況を読む軍師的な頭脳と、僅かでも確率があるならば乾坤一擲な賭けに出る猛将的な大胆さを持ち合わせています。普段は街で女性を口説いたりして周囲からは軽薄な印象を持たれていますが、同期組の中では最も心に熱いモノを秘めていると私は思っています。

 

「俺には聞かんでくれよ?面倒だ」

 

呂虔、真名を(あきら)も同期組です。正直言って他の四人に比べて武勇、指揮共に一、二歩劣ります。ですが砦の建設、野営地の設営に関しては既に曹操軍随一と言っても過言ではありません。実際、陳留領内に築かれている拠点城砦が既に五箇所、全てを赫の指揮で作っており華琳様や秋蘭、栄華さんたちからも一定以上の評価を得ています。ただ当人が極度の面倒を嫌いますので、後進の育成に不安が出る事が悩みでしょうか。

 

「俺もそう言うのぁ苦手だ、悪いが颯に任せた」

 

郭淮、真名を(きょう)。半月前に捕虜として捕縛後、配下に加わった将です。武勇はまずまず、三万を指揮していた経験もあって部隊運用に関しては私も教えられ、見習う事があります。口は悪く、態度も素っ気ないように見えますが面倒見は颯と同じぐらい良く、既に古参の兵たちからも慕われています。

 

「結局、同期が勢揃い、と言う訳か」

「ふむ、儂も若者に負けぬように精進せねばなりませんな」

 

紫安の呟きを聞き、より一層の奮起を覚悟する久朗(劉延)殿。

 

これで私を含めて八名、私の初期の構想を上回る人材が揃いました。後は軍師、兵站を専門で担当する者、各所との事前交渉を務める者、それに将官、補佐官等など色々と足りませんが・・・・まぁ今は将の頭数が揃った事を喜びましょう。現状、兵力は三千。半月で千の増員、練度はまだまだではありますが気骨ある若者を揃える事が出来ました。また一時的に真桜(李典)を本隊より借り受け、陳留郊外に『黒騎兵』駐屯用の砦を作る予定もあります。

 

これは領内での賊の出没、万が一の他領からの侵攻に対し迅速に動くための処置であると同時に民に不安を与えない目的もあります。城内に駐屯しているとどうあっても軍を動かす場合は民に気取られます、何かあったのかと、もしかしたら戦火がここに及ぶのではないかと、そういった不安を抱かせる確率を少しでも減らすために城外への駐屯地の設営。本来ならばどの規模であれ軍を動かす場合には太守や刺史と言った官僚に裁可を仰ぎ、印綬を受けた命令書を持ち兵営担当の下へと向かうと言った手順を踏む必要があります。ですが『黒騎兵』は非公式ながらも華琳様から独自の判断で軍を動かす許可を得ています、故に初動の速さを重視する必要性があり、その方法の一つがこれでもあるのです。

 

しかしまだまだ考えなければならない事もあります。気が早いとも思えますが領土拡大後の駐屯地の設営箇所、設営数。各地に誰の隊を駐屯させ、どのような指揮、命令系統で動くか。兵站は本隊と完全に独立した形にするのか、それとも一部を共有し有事には供出する事も考えるべきか・・・・

 

―――――――――

 

「天の御使いが?」

「ええ、そうよ」

 

そうやって日々の政務をこなしつつ、『黒騎兵』の運営に関して様々な案を巡らせている私にもたらされたのは劉備軍の使者として数日後に『天の御使い』が陳留を訪れると言う話でした。

 

「不可侵条約、もしくは同盟でしょうかね」

「ええ、そのどちらかであることは間違いないわ」

 

黄巾討伐の功績で劉備軍が得た領地は平原、私たちの陳留と同じく隣領に南皮に加え鄴を得た袁紹がいます。名家としての威光を無駄なく発揮し既に抱えている兵に物資は大陸でも三指に入るでしょう。正直、現状の私たちも劉備軍も袁紹に真っ向勝負を挑まれれば抗する手段を持ち合わせていません。では同じ強敵を抱えた弱者たちが考える手段は?そう、手を組む事です。一人一人では無理でも二人、三人と手を携えたならばと。

 

「受けるつもりですね?」

「そのつもりよ、実際に麗羽(袁紹)と戦うならば味方は多い方が良い。劉備軍は兵は少なくとも将は一騎当千、軍師は神算鬼謀、組んで戦う事そのものに益があり、またあちらの将師に触発されてこちらの人材の成長を促せるかも知れないもの」

「ふむ、私は実際に劉備軍を見てはいませんがそれ程ですか」

「ええ、関羽、張飛の武勇、諸葛亮、鳳統の知略、劉備の人気、何よりもそれらを従える天の御使い北郷。兵は寡勢で惰弱なれどもそれを底上げしてなお余りある底力が劉備軍にはある」

 

華琳様は天才です、努力をする天才。才能に胡座をかき腐らせるような愚者とは比べるべくもありません。その華琳様をしてそう言わせるだけの人材、そしてそれらを束ねると言う『天の御使い』の存在。

 

「それで、わざわざ私のところに来たと言う事は・・・・歓待を私が努めよ、と言う事ですかね?」

「正確には貴方と紫安、久朗、栄華、伽耶の五人。劉備軍と面識が無い者でやってもらうわ」

 

本来ならば、面識ある者がやるべきなのでしょうがそこはそれ。同盟にせよ不可侵条約にせよ、互いの陣営での人材の交流、それによる意欲の向上がまぁ現状では大まかな狙いなのでしょう。それに色々と名と噂を聞いている人物が劉備軍にはいます。諸葛亮、鳳統は灯里と同門だと聞いています、戦術では良い勝負は出来るが戦略となれば勝目が極端に減る、とは灯里の言葉です。灯里とて桂花、舞歌、伽耶と共に曹操軍を支える四軍師の一人です。その灯里がそうまで言う、となれば相当な智者なのでしょう。

 

何より、私は以前から『天の御使い』北郷一刀君とは一度会って話をしたいと考えていました。異邦から来たと聞いています。そんな彼が何を思い劉備らと共に戦場に立つのか、彼の眼は一体どこを見据えているのか、非常に興味があります。

 

「それで、彼らはどれほど滞在する予定で?」

「半月の逗留を予定しているそうよ、趙雲、諸葛亮、廖化、孫乾の四名が随伴。兵は百程」

「では兵の皆さんには第三城砦に逗留して頂きましょう、将、軍師、文官の皆さんには・・・・そうですね、私の屋敷に逗留して頂きましょう」

 

私の屋敷であれば部屋数も余っていますし、何より私の屋敷に住まうは皆主力の将、武官、軍師、文官ばかり。人材の交流、と言う点を考えたならばこれ以上無い条件であると言えましょう。それにそれでも部屋は余りますから他の者も望めば彼らの逗留期間中に夜通し語らう等の事も可能です。

 

「そうとなれば直ぐに手配しましょう、誰か鄧艾、劉延、曹洪、司馬懿の四名を此処へ。それと李典、楽進、于禁の三名に第三城砦へと向かい整備点検を執り行うように伝えて下さい」

『ハッ!!』

 

私が声をかければ、外で控えていた兵が返事と共に走っていく音が聞こえてきます。

 

「さて、後は流琉さんと食事の相談でしょうかね。ああ、事前に嫌いなモノなどをお聞き出来れば良かったのですが・・・・」

「随分と至れり尽くせりね?」

「当然でしょう、彼らは使者であると同時に客人です。客人のもてなしも満足にできないのではこちらの沽券に関わります」

 

外交にあって大事なのは使者などに対する扱いです。どれほど美辞麗句を並べ立て本音や思惑を巧妙に隠したとしても、その使者に対する対応一つで、使者が知恵者であるならばなおさらに露見する確率が上がります。まぁ、そうでなくとも使者を粗末に扱えば悪い噂の一つや二つながれてしまうのが普通です。であれば、敵対勢力でも無ければ使者を適当に扱う事に利点は無い、と言うわけです。

 

「さぁ!最大限のもてなしをしますよ!!」

 

 




第八話でした。

黒騎兵の将が出揃いました。しかし満寵、鄧艾、劉延、文聘、呂虔、郭淮、牛金、王双・・・・結構、過剰戦力ですよね。特に鄧艾、郭淮と史実でも軍の中枢を担っていた将が在籍してますし。

というわけで次話、種馬太守(w)が陳留に来訪します。
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