ヘタレ系悪役一家の令嬢に転生したようです。 作:eiho.k
可愛い子だなっていうのが、俺がキャシーに抱いた初めの印象。
初めて見た時のキャシーは、白いカーディガンを着て、水色のワンピースを着てた。ジニーが憧れるって言ってた、ふわふわした服。それを着た小さな女の子が廊下をウロウロしてるんだよ? それも泣きそうな顔して。だから気になった。ちょっと面白そうだなって。そんで観察してたら、同じところを俯きながら歩き回ってた。なにかを探すみたいに小さく呟きながらね。
ああ、もしかして。なんて兄貴に聞いたことのある話を思い出して、その背中に声をかけてみた。
兄貴が言ってたんだ。ホグワーツ特急で、たまにペットとはぐれる子がいるって。たいてい新入生だけど、そんな子たちは決まって廊下をウロウロしてるらしい。きっとキャシーもそうなんだろうなって思って声をかけたわけだけど……まさか後ろに下がってくるとは思わなかった。
ぽすんって感じで俺の胸にぶつかったんだよな。
そんなキャシーは俺の顎より下に頭があって、遠くから見て立てた予想よりも小さかった。多分ジニーくらいだな、なんて思った。
同時にさ、後ろから声かけてるのに後ろに下がってくるっていうちょっと抜けてるその感じが可愛くて、笑いながらキャシーの頭のてっぺんを見てた。それからゆっくり振り返ってくるキャシーを、俺は真正面から見たわけなんだけど、キャシーは近くで見ても可愛かった。小さくて、どこか人形みたいで。でもちゃんと俺と同じ生きてる子だとはわかってたけど。まあ、とにかくちょっとマジマジと見たくなるくらいには可愛かった。
で、きっとこの小ささだと先輩ってことはないだろうから、同じ歳なはず。なら仲良くしておく方がいいだろうな、なんてことを思って、探し物を手伝うことにしたんだよ。まあ、可愛かったからお近づきになりたいと思ったのも嘘じゃないけど。でも善意が半分ちょっとはあった。
とにかくちょっと話して、そのまま探すのを手伝う流れに持って行こうとしてたんだ。自然に、かつ和やかに──って。だけどさ、そしたらさ、キャシーは泣きそうな顔になった。
まさか俺の言葉で泣きそうになるとは思わなかった。や、ちょっと待ってよ。俺の言葉で、それも俺の前で泣きそうになるなんてさ、俺が泣かせたって思われるだろう? や、俺の所為かもしれないっちゃしれないけど。でもこの時は焦った。こんなのパーシーに見つかったら、なにを言われるかってさ。真面目が過ぎるのも考えものなんだよな、パーシーは。
だから早いとこ泣き顔からせめて普通になってもらうために「俺も探すから」って言ったわけだけど、結構大変だった気がする。なんか上手いこと言葉が出てこなかったんだよな。
それでもなんとか宥めて、キャシーの言った猫を探し始めようとした。ら、変な声が聞こえて、それが俺がいたコンパートメントでさ。それを言ったら遠慮したんだよな。
それがなんかすごく新鮮な気がした。
自分が困ってる時ってさ、普通助けてくれようとした相手になにかあっても気にできなかったりするもんだろ? 結局自分のことでいっぱいいっぱいになってるわけだから。それなのに気にした。自分は泣きそうになってるのに。ジニーなんか、俺たちに遠慮なんかしないし……。そんなところもまあ、気に入ったっていうかなんというか。
だから俺は、キャシーのちっちゃい手を握って、コンパートメントまで行ったわけだけど……それが正解だったわけだ。
俺たちのいたコンパートメントにキャシーの猫はいて、まあ、色々あったけど、落ち着いてようやく自己紹介ってなったその時、キャシーは困った顔をしてた。
それは今ならわかる。名前を言いたくなかったんだろうなって。名前を言って、嫌な顔をされるくらいなら言いたくなくなるだろうし。
俺だって『ウィーズリー』であることに不満はないけど、でも
まあ、そんなことはいいとして、名前を言うことに戸惑いながら名乗ったのは『カサンドラ・マルフォイ』って名前。
それを聞いてちょっと驚いたのは確か。
ルシウス・マルフォイは父さんの天敵みたいな人だって、俺でも知ってたし。でもさ、俺が見たことのあるその人とキャシーは似ているようで全く似てなかった。
あー…人の父親を悪く言うのはイヤなんだけどさ、俺が見たことのあるマルフォイさんはちょっと底意地が悪そうだった。いつだって会えば喧嘩する父さんとマルフォイさん。純血なのにマグルに傾倒してる異端だなんて父さんは言われてたし、正直好きにはなれなかった。
でもさ、俺思うんだよ。マグルの道具を集めてなにが悪いんだろうなって。
だってマグルのものって面白いのもすげえたくさんあるじゃんか。まあ、どうやって使うのかわかんねえのとかもたくさんあるけど。でもそういうのを、どう使うのか想像するのって楽しいことだろ?
すげえ夢のあることだと思うんだけどな。まあ、母さんが怒るからあんまり興味あるフリはしないけどな。叱られるのはちょっと面倒だし。
ま、そんなことはよくって。
そんな俺の中にあったマルフォイさんのイメージとキャシーは全く違った。それが重要。
しかももっと重要なのは、キャシーの作ったっていうメシが美味かったこと。そう、俺たちは自己紹介して、キャシーがマルフォイだろうと構わないって言って、キャシーを泣かせそうになったりもしたけどまあ、友だちになったわけ。そんでちょうど車内販売がきて、メシの時間だって気づいたから、キャシーを誘ったわけだ。
そしてら出てきたキャシーが作ったていうランチボックス。正直俺の母さんが作ったやつより美味そうだった。や、母さんのメシも美味いよ。食べ慣れてるし、どこかで食べるのよりはずっと好きだ。でもさ、キャシーが出したのはそんな母さんのメシと同等より少し上な感じだったんだ。
断じて言うが、母さんのメシを貶してるわけじゃない。ただちょっと、ウチじゃ昼飯に出てこないようなのが入ってたってだけ。そう、キャシーの手作りは豪華だったんだ。
だってツヤツヤなローストチキンの挟まったサンドウィッチは、食べたら肉汁が感じられた。普通もっとパサつくはずなのに。しかもちょっとさっぱりした感じのソースがまたチキンに合ってて、とにかくすげえ美味かったんだ。
他の料理も、食べたことのあるやつより数段手間をかけてる感じがしたんだよ。まあ、母さんも手間暇かけて作ってくれてるだろうけどさ。でもそれと同じ以上に美味いメシを作れるキャシーに驚いたんだ。
だってキャシーはマルフォイ家の娘なわけで、いわゆる
で、俺は気づいた。友だちになったキャシーは初対面の前から思ってたけど実は意外性がいっぱいですげえ面白いやつなんだってことに。
だからそれからはキャシーをよく見て、たまに悪戯を仕掛けたりもした。ま、たいがい困った顔されるからあんましなくなったけど。でもそうしてくうちにキャシーのことを色々知ってくことになった。
1番の衝撃は、俺よりも誕生日が早かったこと。嘘だろって思ったのは、多分絶対顔に出てたんだろう。だって正確に生年月日を言ったキャシーはちょっと悔しそうだったし。
そんなキャシーは似たようなギャップがよくある。
勉強が得意で、人に教えるのも上手い。でもその分運動が苦手でいっつも地面に近いところから、飛んでる俺たちを見てる。あの目がいい。憧れてるって感じにも、捨てられた猫って感じもするあの目が。
なんだろ。俺、変な性癖でもできたのかって思うくらいあの目を見るとキャシーを苛めたくなった。
でもキャシーをそうやってからかおうとすると、たいていアリシアとかアンジェリーナが出てくる。保護者かってくらいに。まあ、守ってやりたくなるような感じではあるよな、キャシーって。でも俺的にはちょっと苛めたいって思いが強かった。
で、小耳に挟んだキャシーの弱点を弄るために俺は補習に出てるキャシーを迎えに行って、まあ色々あって怒らせた。
びっくりした。キャシーが怒るなんて思わなかったんだ。キャシーに悪戯した時だって怒りはしなかったし、俺たちがどこかで別の誰かに悪戯しててもそれは変わらなかった。なのにたった一言、からかった言葉1つで怒ったんだ。他の女の子は喜ぶのにって、正直なにが理由で怒ったのかはわからなかった。でも怒らせて、凹んで、だから謝りたいって行動しようにも、キャシーはその夜から俺を避けた。翌朝もずっと。
でもなんとか機会を狙って、授業終わりに捕まえた。で、2人っきりでメシを食って、謝って、そんで泣かれた。そう、キャシーは泣いたんだ。
びっくりするくらいに涙が出てて、でもなんで泣いたのかわかんなくて、どうすればいいかもわからなくなりかけた。だけど泣いたやつにしてやれることなんて1つしかないだろ。だから慰めた。俺の腕の中で泣きすぎてキャシーが寝ちゃうくらいまで。
それからもちょっと大変だった。キャシーは小さいから軽い。だから別に抱いて寮まで戻るくらいは簡単だった。けどさ、そのなんだ。あー…や、キャシーはとにかく柔らかかったんだ。それはもう、信じられないくらいに。
俺だってジニーを抱き上げたことはある。でもそんなジニーと変わりない背の高さしかないのに、キャシーはすげえ柔らかくていい匂いがした。それは抱きしめてる時からわかってたけど……抱き上げたらそれが余計に感じられたんだよ。
ちょっとだけ俺の腕の中で眠ってるキャシーに悪戯を仕掛けたくはなったけどそれができないくらい、なんかなんにも考えられなくなった。すげえ胸がドキドキして、なんか俺はおかしいんじゃないかって思うくらい挙動不審になってた。なにせジョージにどうしたんだって心配されたしな。
どうして俺は眠ってるキャシーになんにもできなかったのか。悪戯するには絶好のチャンスだったのに、それをフイにしたのか。ちょっと寝る前のベッドの上で考えてみた。んで気づいた。気づかなかった方がよかったようなことに気づいちまった。あーもう! 色々絶対面倒だろってわかってるけど、何度考えてもその答えは変わんなくて、しょうがないから諦めた。流された方が楽、だからじゃない。変わんないなら、それが変わるまで付き合ってみるのもいいって思えたからだ。
俺がキャシーを泣かせた日は、俺の中のキャシーへの感情がちょっと変わった日になった。