では本編をお楽しみ下さい。
何が起こったのかわからなかった、覚えているのはスナイパーライフルで敵の大将であるあの怪物を殺そうとしたところまで、スコープで大将の頭を覗いていたはずの俺の目は刹那に黒い混沌の空を眺めておりそのことに気が付いた俺は体を動かそうとしてみるも手足がなくなり腹が裂け内臓のほとんどを失っていた。
「...?」
その状況から何をされたのか理解するのに少し時間がかかりそしてこの体すらも何をされたのか理解できないのかこんな姿のままでも不思議と生きていた、が理解したとたん今まで味わったことのない痛みが脳を激しく貫き叫び声のほうがまだかわいらしいといえるほどの絶叫が世界に響き渡った。
しかしその声は数秒もたたないうちに悲しく消えていく炎のように小さくなりやがて何も聞こえなくなった。
俺は死んだ、そう、死んだのだ。
浅はかな考えで敵に挑みあっけなく死んだ、対等に渡り合うこともなく何かを守ることもなく誰かに見届けてもらうこともなく誰かに誇れる死に方をするでもなく、ただ圧倒的な力の前になす術なく死んだ。
この死を人はどうとらえるのだろうか?
名誉か?栄光か?勇者か?英雄か?希望か?
それとも屑か?負け犬か?弱虫か?どうしようもないくそったれか?
どれが当てはまるのだろう?どう語り継がれていくのだろう?それとも...
まったく語り継がれることのない小さな人として、忘れられるのだろうか?
『うん、後者だろうね』
「え?」
気が付くと俺は真っ白な世界にいた、ここは前にも来たことがある。
そして目の前にはあの時の少女が立っていた。
『誰にも語られることなく、小さくてちっぽけで本当に小さくてアブラムシのほうがまだ語り継がれるだろう、そんなものに』
「...。」
『なんで名誉なのかな?なんで栄光なのかな?なんで勇者なのかな?なんで英雄なのかな?なんで希望なのかな?何もしてないのに』
「....。」
『なんで屑なのかな?なんで負け犬なのかな?なんで弱虫なのかな?なんでどうしようもないくそったれなのかな?自分のことを顧みず仲間を助けようとしたのに』
「.....。」
『そんなの簡単!誰も何も知らないから』
「......。」
『誰も何も知らないから、自分に起こったことじゃないから、誰もわからないから。だから人は誤ったことを世に伝える』
「...。」
『しかしデント、君には『あの人』から真実を伝える力を受け取っている』
「...え?」
『おいおい「え?」しか言えないの?』
「え、あ、いや、その、えっと」
『...もういいよ、とにかく君にはまだ未来は残されているよ』
「...アニメみたく強くなって復活するとかか?」
『ははは、ここはアニメの世界じゃない。ここはファンタジーじゃない、ここは君の現実だ』
「ならどうやって...何の未来が残されているっていうんだよ」
『ここは君の物語の世界、ここは君が生きている世界、だれがどう言おうとここは君の現実だ』
「だからどんな未来が残されてるって言ってんだよ」
『ギフトさ、さぁサイコロを振ってごらん?』
少女がそういうと手に何か握られているのが分かった、手を開いてみるとそこにはサイコロが一つあった。
「...はは、ここはアニメの世界じゃないって言ったけど、結局お決まりの展開じゃないのか?」
『強くなって生き返って「うおー!」って?』
「だってそうだろ?これ振ったらお決まり展開だろ?」
『なんでそう思うの?』
「こんなの所詮は『主人公補正』とかいうものなのさ。結局は作者の人形、駒なのさ」
ん?”作者”?
『ふふふ、君は面白いことを言うんだね。ここが作者の世界だって?』
「いやまて、作者ってなんだよ」
『おやおや今君が言ったじゃないか。作者の人形だってさ』
「だから、その作者って...」
『君の運命は君にもの、だれがどう作るものでもない。今は作者の人形だとしてもこの先君は人形ではなくなる』
「な、何の話をして...」
頭が痛くなってきた、吐き気がする。
『君はとうに気づいている、自分が何者なのかを』
「や、やめろ」
少女が話すたびに吐き気がこみ上げてくる。
『さぁサイコロを振りな、それが君の『運命』だ』
『人間という名の哀れな世界に生まれた子羊よ、運命の波に逆らいながら醜く美しく儚く散れ』
『運命とは真実』
『真実とは真理』
『真理とは無』
『無とは神理』
『舞え、歩け、羽搏く』
『それが君の...いや”君たちの”運命さ』
「くっ!」
頭に激痛が走る、そして目の前にまた何か見えるような気がした。
「お、お前は一体...なんなんだよ」
『さぁね?自分で調べれば?』
「な、調べるってどうやればいいんだよ」
『ん~とりあえず目の前の敵に勝てばいいんじゃないかな?』
「目の前って...あの化け物に?」
『期待してるよ、語り部の依代さん』
「は?」
『ほら、早くサイコロを振りな』
「....。」
俺は手に持っているサイコロを落とすように振った、すると一の目が出た。
『また一の目?とことん運がないね』
「返す言葉もございません」
『まぁ頑張りな、君のこの
少女がそういうと一瞬だけ目の前が暗くなり瞼を閉じていることに気が付いた俺は目を開く、そこは死んだはずの俺が居るはずのない月戦場だった。
「ここは?」
自分に何が起こったか理解するのはそう難しくなかったが「なぜ?」と「どうして?」という疑問の渦に振り回され脳が周りで起きている状況を理解するのは少し遅れた、きっかけは小さな爆発音だ。
ズドンと言う小さくも空間に響き渡るその音に体が刺激され反射的にその音がした方向に振り向く、そこではさっき俺を殺した大将とその目の前で跪き降参しているスレイサー達の姿があった。
「な、そんな...」
俺が死んだあと彼らは勝てない敵に抵抗する気力もなく希望もない未来に賭けて降参の道を選んだのだろう、多分俺の事は死んだと思っている。
「...。」
「どうすればいいのだろうか?」そんなことを考える前に何故か体が勝手に動き両手に白いもやもやとした籠手?のようなものが現れる、そして都合よく足元に落ちていたルイデスからもらった武器を手に取り双剣に切り替える。
瞬間俺の体は光に近いと言えるほどの速度で敵の大将を双剣で切り付け吹き飛ばす、しかし手ごたえ的に切れてはいない、恐らく直前でガードされた。
何が起きたのか?敵も味方もそれを理解するのがかなり遅れていた、その間に俺は敵の化け物たちの何体かの首を切り取り殺す。
【
殺されたと気づく暇も与えず敵を光の炎で消し炭にする、そしてその音に反応してやっと何が起こったのかを仲間も敵を気が付く。
「デ...ント?」
「...。」
何も答える必要はない、今は目の前の敵を殲滅する、それだけが俺の使命だ。
と、なぜか頭の中にそんな声が流れ体が勝手に動く、そしてやっと気づいた『
おかしなことを言っているのはわかっている、が実際に体の言う事が利かないのだ。
さっきから敵を倒していた、それはわかっているがそれは俺がやったわけではない、理解しているのに、分かっているのに、なのにそれは俺がやったわけじゃない。
(体が...勝手に動いている!?)
しかし今俺がやっていることは理解している、自分でやっていると脳に信号が来るのにそれを理解していない、理解してないのに理解している...?
『おいおいあまり考え込まない方がいいよ』
「え?」
『人間の脳では理解できないだろうし考えるだけ無駄だよ』
「どういうことだよ?」
『ほらくるぞ』
そう少女が言った瞬間大将を吹き飛ばした方向からレーザー砲のようなものが高速で飛んできた、それを反射的に跳ね返す。
同時に背後に大将が現れ手に持っている漆黒の刀で切り上げようとしたのでそれを左の手で持っている剣で押さえつけ顔面に後ろ足蹴りを入れる、かなり力を入れたのでまた遠くに飛んでいくかと思ったが蹴りをバク転の要領で軽減し後ろに退避した後足に力を入れて高速で切りかかってきた。
俺はその瞬間の間に足元に白い陣を開き唱えた。
【
周りに光の
大将は叫び地面を転がり喚くがすぐに鳴き止み距離を置いて体勢を立て直す...がそんなことをさせない俺は足元の陣にさらに白い陣を二重で使用し再び呪文を唱える。
【
足元の陣から無数の小刀が天へと放たれ大将に向かって高速で飛んでいく、大将は立て直す猶予を与えられないままなんとかその小刀の雨をくぐりぬけていく、しかしやはりさっきのオーブが効いているのか全てをかわしきることはできず二発に一発食らっている。
『そろそろ頃合いなんじゃない?』
「なにがだよ?」
『敵さんかなり弱ってきてるよ、とどめの一発行っちゃえば?』
「行っちゃえばって...今はこの体自分で動かせないんだから無理じゃん」
『頑張れよ』
「はぁ!?ふざけんなよ、頑張れってなんだよおい」
『君次第ってことさ、人間やりゃあできるもんなんだよ?』
「だからって今この状況下の中でどうしろと...」
『答えを聞こうとするなよ、何でもいいからやってみなよ』
「うーん...」
俺と少女の会話が相手に聞こえているわけでもなくそんな会話している間でも足元に黒い陣を開き攻撃態勢を取り攻撃のタイミングを狙っている、そのことに反応した俺の体は掌を相手に向け掌の前に陣を開く。
すると中から長い槍のようなものが数本出てきて相手に向かってジェット機のように飛んで行った、相手の体力的にもこれでチャックメイトだと思った次の瞬間体を飲み込むような黒い光が天地を駆け辺りを夜のような暗く静かな空間へと変化した、俺が放った攻撃は全て消えており大将はさっきまで弱っていたように見えたことが嘘のようにピンピンしており傷なども一切見当たらない。
そして両手には漆黒の盾とランスが握られている。
「...よくあるアニメの《覚醒状態!!》とか言う奴かよ?」
『さぁね?まぁ見る限りでは十中八九そうだろうね、さてどれだけ強くなっているんだろうね?』
声しか聞こえないので表情はわからないが声を聴く限りではかなり楽しんでいるように感じられる。
「...で?どうする?」
『僕に聞くなよ、これは君の
「そうはいってもなぁ、体動かねぇし」
『とりあえずなんかやっみろよ?』
「....。」
俺は普段手足を動かす感覚でやっては見た物のピクリとも動く気配がしない、その他にも動かす命令を声に出したり妄想したりしたがどれも的外れに終わった。
「....どうしたものか」
『あ、くる』
「え、?」
少女が呟いたとたん俺の体に向かって一本の白い線が黒い世界を裂くようにして現れ、現れたとたん左腕が消し飛びさらに体が地面に向かって物凄い速さで吹っ飛び大きなクレータを作り上げた。
「....っ!!!」
『制御はしてなくても痛みは感じるからね、気をつけなよ』
激しい激痛と共に嘔吐感や意識障害になりそうになりながらもなんとか踏ん張り体を起こす、敵は「お前はもう死んでいる」と今にも言いそうな感じにこちらを見ている。
「ざっけんなよっ!」
『これからが本番かな?』
少女は楽しそうに笑いながら言う。
「ちっ!」
制御が効かないこの状況下の中でどうやって切る抜けようか?
そんなことを考えていると大将が再び黒い陣を開き中から黒い槍を取り出し俺目掛けて飛ばしてきた。
END
どうでしたか?
立て続けに投稿して自分自身も混乱ナウです。
ではまた次話ではお会いしましょう。