12年後の僕から君へ   作:ねぎさだ

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相手のエッジはよく当たる法則


二話:vsクロガネジム

 

 目が覚めたら見慣れない部屋に居た。一瞬面食らった後に、昨日の事を思い出す。

 

「夢じゃなかったんだ」

 

 溜め息と共に思わず漏れた声の情けなさに、余計に気分が沈む。なんで僕は朝からこんなに凹んでるんだろう。これ以上自滅しないうちにと、僕はさっさと着替える事にした。

 

「あら、随分早いのね。おはよう、コウキ」

「えっと、おはようママ」

 

 階段を下りた所で、キッチンにいたママが振り返る。作っている朝食のいい香りが、空腹を刺激する。

 

「いいにおい」

「もうちょっとで朝ご飯できるから、座って待ってなさいね」

「はーい」

 

 言われた通りに僕は椅子を引いて、そこに腰を下した。それからモンスターボールから仲間たちを呼び出す。

 

「おはよ、みんな」

 

 声をかければみんなそれぞれ、思い思いに返事を返してくる。それなりに広いリビングが、一気に狭くなってしまったように感じて、少しおかしい。

 

「ママ、ポケモンフードって何処にしまってある?」

「んー? そこの棚の所よ。観音開きのとこにあるわ。ついでにガルーラとニャルマーとブラッキーの分も出してくれるかしら」

「分かった」

 

 言われた通り棚の扉を開けた。そこには揃えられたポケモン用の皿と、ポケモンフードがしまわれている。それを出そうとした所で、横に来ていたらしいヒコが小さく鳴いた。どうやら手伝ってくれるらしい。

 

「ありがと、ヒコ。お皿に盛るから、運んでくれる?」

 

 そう頼めばヒコは肯定するように一鳴きして。うちの子マジ天使と思いながら僕は皿にフードを盛りつけて行く。盛りつけ終わった皿からヒコにお願いして、運んで貰う。全員分を盛りつけてヒコと一緒にリビングと、そこへと繋がる庭へと運んだ。

運び終わる頃にはママ特製の朝ご飯が完成していて、カフェオレがほこほこと湯気を立ち上らせていた。

 

「おいしそう、いただきます」

「どうぞ召し上がれ」

 

 軽く手を合わせてそう言えば、前の席に座りながらママがそう返してくる。熱々のトーストにバターを塗り広げながら、リビングの方に目を向けた。比較的小さなポケモンたちはリビングで、大きな体のポケモンたちは庭先で、各々朝ご飯を堪能しているようである。

 

「ママのポケモン増えてるね」

「そうねえ、沢山居る方が賑やかだから」

 

 僕が知ってる子はガルーラだけだったけれど、ニャルマーとブラッキーが増えている。僕が旅に出てから、ママも少し寂しかったのかもしれない。そんな事を思いながら、僕はトーストを頬張った。

 

「あのブラッキーはね、コウキから貰ったイーブイが進化したのよ」

 

 少し懐かしそうにリビングのブラッキーを眺めてから、ママがそう言うのを聞く。多分、僕は戻ってからママにイーブイをあげるのだろう。そうやって、この未来に近付いて行くのかもしれない。

 

「僕の代わりにママと一緒に居てあげてね、なんて言ってね。まさかコウキ以上にやんちゃだなんて思わないじゃないの」

 

 随分と手がかかるイーブイだったらしい。おかげで全然寂しくなくなったなんて言うママに、僕は思わず笑ってしまう。

 

「それなら良かった……ねえ、ママは僕が旅に出てしまって寂しかった?」

 

 ここからだと10年以上も前の話になるからこそ、僕はママに聞いてみた。ママはサラダを食べる手を止めて、少し驚いたように僕を見てから穏やかに笑う。

 

「寂しくなかったって言ったら嘘になるわね、色々心配もしたし。でもね、遅かれ早かれ、子供は親元から巣立つものなの。だからコウキが心配することじゃないのよ。でも、そうね……たまに顔を見せてくれたら嬉しいわ」

「そっか……うん、そっか」

 

 ママの話を聞いて、僕はどう答えていいのか分からなくなった。けれど、聞いてみて良かったとそう思う。頷く事しか出来ない僕に、微笑ましいものを見るようにママは笑っている。

 

「さあさ、冷めちゃう前に食べちゃいなさいな」

 

 そう急かされて、返事の代わりに僕はベーコンエッグを頬張った。変わらない味がする。僕のママはやっぱりママなんだなと、自分でもよく分からないけれどそう思った。でもきっと間違っていない。

 

「今日はどうするの? うちまで戻ってくる?」

 

 食事の済んだ食器をママの所まで持って行くと、洗い物をしながらママがそう尋ねてくる。その問いに、僕は少しだけ考えた後に口を開いた。

 

「今日はクロガネシティまで行ってみようかなって思ってる。空を飛んで行くから、戻って来れると思うんだけど……」

「それなら夕飯を用意して待っていようかしら?」

「うん、じゃあそれくらいまでには帰ってくるね」

 

 戻っておいでと言ってくれるママにそう返せば、張り切っちゃおうかしらなんてママは笑う。それが嬉しくて、でも照れくさくて何とも言えない気持ちになって。僕は楽しみにしてるねと言いおいて、食器を洗い場においてさっさと退散する事にした。

 二階の部屋に戻って荷物を持って、食事を終えて寛いでいる僕のポケモンたちに声をかける。そうすれば彼らはいつもみたいにやる気を見せて、自分からモンスターボールへと飛び込んで来た。

 

「やる気いっぱいだね。それじゃ、いってきまーす!」

「気をつけるのよー」

 

 振り向いて声をかければ、ママが洗い物をしながらも振り向いて声をかけてくれているのが見えた。それからブラッキーとニャルマーがお見送りとばかりに玄関の方に寄って来るのに手を振りながら、ドアを閉める。庭先に居るガルーラに手を振って、僕はモンスターボールからムクホークを呼び出した。

 

「クロガネシティまで、お願い」

 

 そう頼みながら背中に張り付けば、ムクホークは一つ大きく鳴いて僕を背中に乗せたまま空へと羽ばたいた。何回やっても思うけど、これ、怖いです。

安全だのは全て僕自身にかかっていると言っても過言ではない。たとえ落ちたとしても、それはポケモンの所為ではない。僕の腕力の問題なのである。強いトレーナーっていうのがトレーナー自身も鍛えられてるのは、秘伝技≒腕力だからだと勝手に思っている。

そんな現実逃避をしつつも、無事にクロガネシティへと到着した。地面に立ってるって素晴らしい。

 

 流石に朝の早くからジムが開いてるとは思わなかったので、時間を潰す為にクロガネシティをぶらぶらと歩いてみる。炭坑で栄えている街といった趣は変わらないようで、それでも大分街並は変わっていた。近代的になってより暮らしやすくなったと言うか、多分お店なんかも増えているような気がする。

そんな中で見つけたチェーン店のコーヒーショップで時間を潰す。誰かの置き忘れたポケモンマガジンをぺらぺらめくって見て、一つ気付いた事がある。四天王とか、チャンピオンに関する記事がない。僕が知っているポケモンマガジンは大体この辺りは鉄板で、攻略だのが書かれていたりするものだった。けれどその辺りが全く載っていない。今回たまたまなのか、それとも載らないのが普通になったのか分からない。けれど他に僕がチェックするような記事も無く、流し見が終わった頃に少し冷めたカフェモカを一気に喉に流し込んだ。それから元あったようにテーブルの上にマガジンを置いて、僕はショップを後にする。

 そうして改めて回って来たクロガネジムで待ち構えていたのは、ジムリーダーであると予想していたヒョウタさんではなく、ナタネさんだった。予想外である。

 

「あっ、本当に来た!」

 

 何かを聞く前に誰情報であるか一発で分かってしまった。絶対にコウが噛んでいる。

 

「ちょっと! なんで帰ろうとするの、コウキくん!」

「そんな待ち構えられてたら帰りたくもなると思うんですけど……ナタネさん、ですよね」

 

 思わず回れ右してしまった僕の背中に、ナタネさんの引き止める声が投げつけられる。それに観念して、僕は大人しくナタネさんの所まで向かった。

 

「そうよ、よく分かったわね」

「なんというか……年齢不詳でいらっしゃいますね」

「あら、褒め言葉として受け取っておくわ」

 

 僕の知るナタネさんからプラス十二歳だという事は、三十代になっている訳で。全くそうには見えなかった。そんな僕の呟きを笑いながら聞いていたナタネさんだが、改めて僕の全身を見ているようである。

 

「しっかし、本当に小さい頃のコウキくんなのねぇ……可愛かった頃じゃないの」

 

 一応僕も男な訳で。面と向かってかわいいと言われるのは、どうにも複雑なものがある。

 

「こっちの僕と比べたら小さいのは認めます。これから大きくなるんです」

 

 成長期、早く来い。

 

「いいじゃない、これくらいの方が可愛げがあっていいわよ」

「あっ、帽子とらないでください!」

 

 言いながら上から帽子を取られて髪の毛をぐしゃぐしゃにかき回された。前言撤回、中味は既におばさんでだ。

 

「全く……ジム先で何やってんですか、ナタネさん」

 

 呆れたような声を響かせて、ジムから出て来たのはヒョウタさんだった。

 

「あらやだ、ごめんなさいね旦那様。お待たせしちゃったかしら?」

「待っては居ないけど、コウキ君が困ってるでしょ。それくらいにしておいてあげなよ」

 

 止めてくれたのは嬉しいのだけど、待ってナタネさん。あなた今なんて言いました?

 

「だんなさま? 今ダンナさまって」

「あらやだ。目ぇ丸くしちゃって、かーわいーい」

「ん? ああ、僕たち結婚したんだよ。8年位前に」

 

 ナタネさんから取り戻した帽子を胸の前で抱えて問い掛ければ、ナタネさんの僕を見る目は、完全に子供を見るそれである。そんな僕の動揺に、思い出したようにヒョウタさんが付け足した。

なるほど、確かに本人らからすれば8年も前の話である。

 

「ヒョウタさんとナタネさんがくっ付くとは思ってなかったのでびっくりしました」

 

 ジムの中に通されて、とりあえずとお茶を出された。それに手を付けずに正面に座る二人を見る。

 

「そうかい? 僕らは言う程意外じゃないと思うけどね」

「そうよね。もっと意外な所とかいるし」

 

 ヒョウタはちょっと肩をすくめるように言い、ナタネは言いながら紅茶のカップを傾ける。その仕草から心底そう思っていると言うのが伝わってきた。

 

「まあそれはいいんだけどね。先ずは僕とバトルでーー」

「その次はあたしとバトルね」

「連戦ですか?」

「ちゃんとポケモンの回復は挟むわよ?」

 

 回復がないとかそれなんて鬼畜ですか。というか僕の都合と言うか、意志は無視の方向ですか。いや明日とかにハクタイシティにも行くつもりだったけれど。飄々と言って退けるナタネさんに、二の句が継げない僕を見て、ヒョウタさんが苦笑する。

 

「ナタネさんてば強引なんだからー」

 

 そんな所も好きとか言い出しそうな雰囲気である。勘弁して下さい。

 

「それで、僕たちは万全に用意してあるんだけど、コウキ君はどうだい?」

「やってやれない事はないと思います。想定してたのはヒョウタさんだけだったのでアレですが」

「はは、まあそうだよね」

 

 僕がアレという言葉に込めたアレそれを感じ取ったらしいヒョウタさんが、何とも言い難い笑い声を漏らす。とりあえずは

 

「ヒョウタさんから、宜しくお願いします」

「はい、宜しくされました」

 

 そう言って頭を下げれば、ヒョウタさんも笑って僕に習ってくれる。こういうのを見ると、やっぱり同じ人なのだなあと思ってしまう訳である。

 

 クロガネジムのバトルフィールドを挟んで、僕とヒョウタさんが立つ。6対6でアイテムの使用はなし。

 

「お願いします」

「こちらこそ宜しく」

 

お互いに礼をして、一体目をフィールドに投げ入れる。

 

「行けっ、バンギラス!」「行ってくれ、ギャラドス!」

 

 ヒョウタさんのバンギラスのすなおこしで、フィールドが砂嵐へと変化する。図鑑でレベルを確認すれば、こちらの方が上だ。そういやヒョウタさんバンギラス持ってたっけやばいと思いつつ、やる事は決まっている訳で。

 

「舞ってから滝登り!」「ストーンエッジだ!」

 

 正直僕の手持ちに居るギャラドスは移動要員なわけで。ついでに竜の舞の確保と対シロナさんのガブリアス用氷技(他に覚える子がいなかった)で固まっているのでやれる事なんて限られている。急所と外れるのと、ヨロギの実で一発耐えられる事を祈りながら竜の舞だ。

ヒョウタさんの傾向が僕の知ってるものと変わっていなければ、十中八九地震か諸刃の頭突きが入ってるはずなので、どの相手にもヒコは結構分が悪い。なのでここでギャラドスが落とされると、割と、詰む。

バンギラスの放つストーンエッジをガツンと頂きながらも、ギャラドスは舞い切った。そして砂嵐に体力を削られつつも、バンギラスに向けて滝登りを放つ。早さに勝って繰り出したその一撃で、バンギラスをどうにか沈める事に成功した(レベル差で押し切った感じだったけど)。ヨロギの実がなかったら危なかった。

元々テンガン山登頂用を兼ねた子たちなので、正直ジムリーダーとやり合うメンバーじゃないんですよね!

 

「流石だね、コウキ君!」

「全然さすがじゃありませんから!」

 

 これでギャラドスが止まったら詰む未来しか見えない。

 戦闘不能になったバンギラスをボールに戻して、ヒョウタさんは次のポケモンを繰り出した。

 

「ジーランス、頼む!」

 

 やっべ、止まった! 全体の相性的にギャラドスをここで捨てる訳にも行かないし、一旦引っ込めるとして、誰を出せばいいんだろう。うちの電気技持ちってサーナイトしか居ないんだけど。うちの子、諸刃の頭突き耐えられるのか? うええええ無理じゃね!? とりあえずゴローニャごめんマジごめん。

 

「ギャラドス、戻れっ! ゴローニャ頼んだ!」「諸刃の頭突きだ!」

 

 ギャラドスが突っ張るにしろ替えるにしろ、ヒョウタさんは一撃を入れる事を選んだ。モンスターボールに戻ったギャラドスの代わりに、ゴローニャがジーランスの頭突きをもろに喰らう。

ほんとゴメンゴローニャ。でもサーナイトを無傷で出すには死に出しかない。純粋に早さ勝負ならサーナイトならジーランスを抜ける。

頭突きは今ひとつでまだ割と体力があるにしろ、水の一致は耐えられないだろう、ホントごめん。

 

「ジーランス、アクアテール!」「大爆発!」

 

 僕が指示した技を繰り出すよりも先に、ジーランスの放ったアクアテールがゴローニャを打ち据える。弱点を二重に突かれたゴローニャにはひとたまりも無く、そのまま戦闘不能に陥った。

 

「ゴローニャごめんねお疲れさま! 戻って」

 

 謝りながらゴローニャをボールに戻して、改めて僕はサーナイトを繰り出す。

 

「サーナイト、お願い。十万ボルト!」「もう一度諸刃の頭突きだ!」

 

 早さ勝負での軍配は、サーナイトに上がった。ジーランスが技を繰り出す前に、サーナイトの放った十万ボルトがジーランスに命中する。だがタイプ不一致技だったのも手伝ってか、ジーランスは十万ボルトを耐えきった。

 

「サーナイト!」

 

思わず叫ぶのと同時に、ジーランスの頭突きでサーナイトが弾き飛ばされる。ふらつきながらも立ち上がったサーナイトに内心冷や汗が出る。一撃で落とされると思っていたのでこれは大きい。

 

「戻れ、ジーランス! 行ってくれ、カバルドン!」「サイコキネシスだ!」

 

 サーナイトのサイコキネシスがジーランスの代わりに出てきたカバルドンに命中する。十万ボルト読みだったようだ。十万打っていたら無償降臨を許すところだった。というか

 

「岩タイプじゃない!」

「砂起こし要員なんだよ、多目に見てよ」

 

 この人岩タイプのジムの人の筈なのにと思わず声を上げれば、ヒョウタさんが笑いながら言う。地面タイプはてっきりゴローニャ辺りが来るものとばかり思っていたので裏切られた気分である。

そんな事を言っている間にサーナイトの体力が砂嵐のおかげでじりじり減っていく。更にカバルドンが持っていたらしいオボンの実を食べて体力を回復している。

 

「戻って、サーナイト。頼んだ、ギャラドス!」「カバルドン、地震!」

 

 ヒョウタさんの指示が飛ぶのと同時に、僕はサーナイトをボールに戻した。ギャラドスを繰り出すのと同時に、カバルドンが体を揺らしながら吠える。フィールド外も一緒に揺れる位の大きく揺れたけれど、宙に浮いている(飛んでいる?)ギャラドスには効果がなかった。

 

「体力の少ないサーナイトを戻すとはね」

「エッジじゃなくてよかった……!」

 

 カバルドンなんて地震かエッジか地割れのイメージ敷かない。地面か岩かの二択と、サーナイトの体力状況。それから僕のゴローニャからの死に出しを見て、ヒョウタさんは殆ど死に呈のサーナイトを犠牲に次を出すのではと踏んだらしい。確実に倒すなら命中率に不安のあるストーンエッジよりも

、地震を選ぶだろう。

無傷でフィールドに出たギャラドスだが、砂嵐がやはり体力を削って行く。地味に痛いけれど、天候書き換え技なんて覚えていないので致し方ない。でもここで無傷で出せたのは大きいだろう。

 

「カバルドン、戻ってくれ。ジーランス、すまない」「ギャラドス、波乗り!」

 

 地面のみのカバルドンが現状一番厄介なのは間違いないので、ギャラドスに波乗りを指示する。大きく身体を震わせて、ギャラドスが呼び出した水がカバルドンを直撃する前にヒョウタさんはカバルドンを一旦引き、代わりにジーランスを呼び出した。サーナイトの十万ボルトを受けていたジーランスは、ギャラドスの波乗りを耐えきれずに戦闘不能に陥った。

 やはり僕にゴウカザルが控えている事を考えて、ヒョウタさんはカバルドンを引いたようだった。カバルドンの代わりに戦闘不能になったジーランスに謝りながら、ヒョウタさんはボールへ戻す。

相変わらず体力が削られているギャラドスを見ながら思う。ヒョウタさんの手持ちはカバルドンと、多分持っているラムパルド。他に持っていそうなのはプテラ辺りだろうか。あとウソッキーかダイノーズ辺りも来るかもしれない。

 

「アーケオス、頼んだ」

 

 見たことのない鮮やかな鳥ポケモンに、僕ほ思わずアーケオスと呼ばれたポケモンを凝視した。

 

「あ、見たことない?」

「はい」

「イッシュって地方の化石ポケモンなんだよ」

 

 今は割と交流も盛んになってきた海の向こうの地方なのだと、ヒョウタさんは教えてくれる。

全部まとめて要約すると岩・飛行のポケモンらしい。

 

「ナタネさんとの新婚旅行で行ってきてさ」

「勘弁してください」

 

 その情報はいらなかった。

 でも岩と飛行の複合タイプだと分かったのは結構大きい。それから控えめに見ても物理っぽいので、役割的にはプテラと同じに見てもいいように思う。多分ストーンエッジを持ってないって事もないだろう。

 

「さてと、そろそろ再開してもいいかい?」

「はい、ありがとうございました」

 

 暗に観察させてくれていた事を示して、ヒョウタさんは仕切り直した。知らないポケモンに対する考える時間をくれたらしい。

カバルドンが控えている以上、ここでギャラドスを失う訳には行かない。氷の牙があるとはいえ、どう見てもギャラドスよりは早そうなので、そうなるとやっぱり交代敷かない訳で。結局サーナイトには申し訳ないけどクッションになって貰って、次を死に出しする事にした。残りの手持ちの相性が飛行・岩と相性が悪過ぎて本気で詰んでる未来しか見えない。

 

「戻ってギャラドス! ごめん、サーナイト」「アーケオス、ストーンエッジ!」

「お疲れさま」

 

 エッジを指示して来たヒョウタさんに、代わりに出したサーナイトが、吹き上げるように放たれた鋭い岩肌の前に戦闘不能になった。それに少しの罪悪感を抱きながらも労いの言葉をかけて、僕はサーナイトをモンスターボールに戻す。

 

「あのポケモン、結構素早いな。うちの手持ちじゃ早さで勝てる子が居ない気がするぞ……ムクホーク、頼んだ!」

 

 ヒョウタさんに挑むに当たって、手持ちの相性が悪いのなんて正直分かりきっている。だから後は割り切るしかない訳で。

 

「ストーンエッジを見てムクホークを出すのかい?」

「他に出せるポケモンが居ないともいいますけどね」

「ふうん、まあいいけどね」

 

 少し目を見張った様子でヒョウタさんが口を挟んでくる。それに僕も軽口で返すが、虚勢でもなんでもないわけで。実際格闘タイプであるゴウカザルとギャラドスは切り札であるが、ギャラドスに至っては一撃貰っている訳で。どう見てもヒコよりあの化石ポケモンの方が早そうなので、タイプ相性的にも宜しくない。それにヒコと相性の悪いカバルドンを抜けるのがもうギャラドスしかいないという。最後の一匹は、耐久的にも技構成からも壁にしかならない訳で。

 

「もう一度、ストーンエッジだ!」「ムクホーク、インファイト!」

 

 アーケオスの一致エッジを耐えきって、ムクホークはインファイトを繰り出した。威力をつけた一撃をアーケオスへと入れて、ふらふらとしながら戻って来たムクホークは砂嵐の前に戦闘不能になる。

 

「! 気合いのタスキか!」

「よくやったね、ムクホーク。お疲れさま」

 

 普通にムクホークを出して耐えられるとは思っていない。それならタスキで耐えて、一撃入れる方を選んだのだ。砂嵐がなければそのまま電光石火で刈れたかもしれないのが痛い。アーケオスに大分大きくダメージを与えて退場してくれたムクホークに感謝しつつ僕はボールに戻す。

しかし自分で使うとすごく外れる気がするストーンエッジが、人に使われると外れないっていう理不尽さは顕在か。

 

「お願い、ヒコ。マッハパンチ!」「アクロバット!」

 

 ボールから出したヒコにそのまま指示を飛ばすと、ヒコはアーケオスが技を繰り出すよりも早く、渾身のパンチを振り抜いた。ムクホークが与えたダメージが大きく残っていたアーケオスは、パンチの直撃を受けて地面に落ちる。戦闘不能になったアーケオスをヒョウタさんはボールに戻して、もう一度ボールを放った。

 

「ありがとう、アーケオス。頼むよ、カバルドン」

 

 登場したのはカバルドンで、ヒコが一番やり合いたくない相手だ。ヒョウタさんの声に答えるように一つ鳴いて、やる気を見せている姿に苦い気持ちで一杯だ。

 

「ヒコ、インファイト!」「カバルドン、ストーンエッジだ!」

 

 ヒコが勢いをつけてカバルドンに突っ込んで行ったが、その一撃でもカバルドンは倒れない。返しで放ったエッジを、ヒコが見切ったと言わんばかりに華麗に躱す。

 

「ヒコ!」「地震だ!」

 

 心得たとばかりにマッハパンチを繰り出すヒコに、サーナイトからも一撃貰っていたカバルドンは戦闘不能へと陥る。流石僕の相棒、僕の行動パターンをよく分かっていらっしゃる。

ヒョウタさんは僕が地震読みでギャラドスを出してくると読んだんだろう。そのカバがエッジを持ってないなんてそんな馬鹿な。

 

「ここでストーンエッジが外れるとはね……お疲れさま、カバルドン」

「ヒョウタさん、エッジを過信し過ぎですよ。エッジなんてそんなここぞと言う時に躱される技じゃないですか……」

 

 苦笑しつつも労いながらヒョウタさんはカバルドンをボールに戻す。それに僕も苦笑しながら言ったのだが、正直怖い技というのは間違いない訳で。持っている技マシンの説明には八割で当たると書いてあったが、僕の経験則から言わせて貰えばここぞと言う時には四割くらいで外れると思う。

でも何が一番怖いかと言えば、そんな躱される恐れのある技でも恐れず指示を出してくるヒョウタさんの肝の座りっぷりが一番怖い。でもある意味そんなヒョウタさんに助けられて、一撃貰わずに済んだのは大きいだろう。

 

「でもヒコよくやった! 偉い!」

「まるで鬼の首でも取ったような喜びっぷりだけど、まだあと二体居る事は忘れないでくれよ?」

「分かってますよ!」

 

 巧くエッジを躱し、かつ僕の意を組んで技を出してくれたヒコを労ってやる。するとちょっと呆れたようにヒョウタさんが僕に釘を刺した。言われなくても分かってるけれど、こういう意思疎通って大事だ。育てたというより、一緒に学んだ仲だからこその芸当だと思うので、十二分に価値があるものだと思うのだ。

 

「よしヒコ、この調子で行こう!」

「頼んだよ、ラムパルド」

 

 僕がヒコを鼓舞するのを見届けてから、ヒョウタさんがラムパルドをフィールドに出す。漸くの登場に、ラムパルドがやってやるぜと言わんばかりに吼えた。

 

「頼もしいね」

「やる気満々ですね。それじゃ、再開と行きましょうか」

 

 ラムパルドの様子にヒョウタさんはいい笑顔を見せる。相手にする側からすると恐ろしさしかないけれども。

僕が仕切り直しを切り出すと、ヒョウタさんの表情もぱっと切り替わった。

 

「地震だ!」「インファイト!」

 

 殆ど同時に指示を出せば、僅かの差でラムパルドが地震を繰り出すのが早かった。スカーフ巻いてたのか!

ラムパルドがフィールドを、物理的に盛り上げながら、大きく揺らす。それをヒコがどうにか耐えて、インファイトを繰り出す。攻撃力に比例するように耐久の低いラムパルドは、ヒコのタイプの弱点を突く攻撃に耐えきれずに一撃で沈んだ。

 

「シュカの実か……よくやった、ラムパルド」

「タスキじゃなくて助かりました」

 

 諸刃の頭突きじゃなくて助かった。正直賭けだった訳だけど、頭突きを警戒したら余計ギャラドスなんて出せる筈ない訳で。どの道ここでラムパルドを落とせなかったら詰み確定だった。

悔しそうにラムパルドをボールに戻しながら言うヒョウタさんに、僕は思った事を素直に言う。タスキで後出しで攻撃を受けていたら、やられていたのはこっちだった。

 

「やっぱりコウキ君は強いな、自信を無くしそうだよ」

「分の悪い賭けに出てる時点でもう運の問題だと思いますけど」

「まあ、最後まで諦めないけどね! 行ってくれ、ウソッキー!」

 

 真っ正面から褒められて、嬉しい反面心苦しい所もある。ヒョウタさん自身弱い訳でもないのに、自信を無くされても困る。そんな弱気な事を言っていたヒョウタさんだが、気を取り直すように言ってから、最後のポケモンを繰り出した。

 

「ヒコ、戻れ! ギャラドス、行って!」「不意打ちだ!」

 

 ヒコを引っ込めてギャラドスを出すのと、ヒョウタさんの指示が飛んでウソッキーがタイミングを見計らうのとが殆ど同時だった。このウソッキーさん、不意打ち持っていらっしゃった……!

攻撃をしなかったため、ウソッキーの不意打ちは空振りに終わった。だが僕を警戒させるには十分過ぎる技だった訳で。

ギャラドスの体力的に、不一致の不意打ちなら一発耐えられる事に賭けるしかないだろう。

 

「ギャラドス、波乗り!」「岩雪崩!」

 

 ギャラドスの攻撃で落としたと思ったのだが、ウソッキーは歯を食いしばるようにしてそれを耐える。タスキか……! そう思った時にはウソッキーの岩雪崩がギャラドスに決まって、音を立てながらギャラドスがフィールドに崩れ落ちた。

 

「なんで諸刃の頭突きじゃなくて地震だったんですか?」

「マッハパンチを持ってるゴウカザルを確実に落としておきたかったんだけどね……地面タイプとの張り合いを避けてたみたいだから、命の玉だと思たんだけどな」

 

 ギャラドスをボールに戻しながら尋ねれば、苦笑しながらヒョウタさんが答えた。直前のストーンエッジが外れた為に命中率を優先したらしい。ヒョウタさん的に諸刃の頭突きは、割と外れる技のようだ。ゴウカザルと対面して、先制攻撃争いをするのを避けたかったのか。

 

「それじゃ、ヒコ、頼んだよ」

 

 フィールドに再度現れたヒコは、もう満身創痍と言った感じだった。けれどそれはヒョウタさんのウソッキーも同じ事だ。

 

「マッハパンチ」「不意打ち」

 

 二匹のポケモンが先手を争って競い、技を繰り出す。ヒコのパンチの方が、僅かに先にウソッキーを捉えた。先手の競い合いは、寸での差でヒコが制したのだった。

 




そらをとぶって足にぶら下がるんですかね……?
ムクホークサイズのの背中に乗ったら羽ばたけないような気がしなくもない訳ですがガ
ポケモンの命中率ですが、外すというよりは避けられるという解釈で書いています
外すより避けるの方がカッコいいじゃないですか
外した?!とかかっこつかないじゃないですかーやだー><


コウキの手持ち:
コンセプトは旅パです。彼はこれで各ジム回りや殿堂入りを目指しました
もう一匹はプラチナの割と序盤で手に入るポケモンです

ギャラドス 威嚇 てれや ヨロギの実(Lv82)
滝登り 波乗り 竜の舞 氷の牙

ゴローニャ 頑丈 ようき(Lv67)
ロッククライム 怪力 岩砕き 大爆発

サーナイト シンクロ ひかえめ 達人の帯(Lv78)
催眠術 サイコキネシス 十万ボルト シャドーボール

ムクホーク 威嚇 いじっぱり 気合いのタスキ(Lv80)
インファイト ブレイブバード 空を飛ぶ 電光石火

ゴウカザル(ヒコ)猛火 さみしがり シュカの実(Lv84)
マッハパンチ フレアドライブ 地震 インファイト


ヒョウタ手持ち:
所謂砂パ。でも岩メイン。岩のジムリなので

バンギラス 砂起こし 命の玉(Lv76)
噛み砕く ストーンエッジ 大文字 ステルスロック

ジーランス いしあたま ラムの実(Lv78)
諸刃の頭突き 思念の頭突き アクアテール あくび

ガバルドン 砂起こし オボンの実(Lv75)
地震 氷の牙 ストーンエッジ 地割れ

アーケオス 弱気 飛行のジュエル(Lv74)
エッジ アクロバット 地震 トンボ返り

ラムパルド 型破り こだわりスカーフ(Lv80)
諸刃の頭突き 地震 馬鹿力 雷パンチ

ウソッキー 石頭 気合いのタスキ(Lv77)
アームハンマー 不意打ち 岩雪崩 地震

努力値は大人の都合(笑)です
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