ゼロの使い魔ー紅の契約者ー 作:紅の蓋
何度、失敗を重ねただろうか。
ルイズ・フランスワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの召喚魔法は一向に成功の兆しを見せない。
「おい! いい加減にしろよ! ゼロのルイズ!」
「何時までかかってんだ!」
すでに召喚の儀を終えた周りの生徒からヤジが飛ぶ。
「るっさい!」
(次よ……。次こそ召喚してみせる)
もう、常識に囚われるのはやめる。自分らしく。
今まで通りのやり方では失敗を重ねてきたのだ。
だから、自分流のやり方で。
デタラメでもいい。
自分らしく自分に相応しい最高の使い魔を自分が呼んでみせる。
頭に浮かんだ言葉をそのまま紡ぐ。
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しくそして最強の使い魔よ!私は心より求め訴えるわ! 我が導きに答えよ!」
ルイズが唱えたとき、周りからは失笑が起こった。
なんだあの呪文は、と。
あんな出鱈目なもので呪文が成功するわけがない。
誰しもがそう思った。
だが、繋がった。
彼女のゲートは異世界へと、確かに最強の使い魔の前に開いたのだ。
ーーーーーーーー。
ここはシロガネヤマ。
立ち入ることすら強者でなければ許されない場。
そしてそんなシロガネヤマを根城にする彼は目の前に突然現れたものをジッと見つめた。
それはルイズの開いたゲート。
彼からは鏡のように見えた。
ゲートに触れようとしたとき、横にいる相棒が声を出して止めた。
「ピカッ!」
危険だ。そう言っているように彼には聞こえる。
「……大丈夫。……君たちがいる」
そう言ってベルトにつけてある七つのモンスターボールに手を触れる。
彼は期待していた。
伝説のポケモンを。
彼は渇望していた。
自分を打ち倒してくれる存在を。
シロガネヤマに住む最強の名を聞きつけて今まで幾たびと挑戦者がやってきた。
だが、誰も彼を倒すことはできなかった。
彼は飽いていたのだ。
自分が自分達が最強である現状に。
彼は恐れていたのだ。
最強が故に自分はこれ以上成長できないかもしれないということを。
だから、彼がゲートに触れることを誰にも止めることはできない。
ピカチュウをモンスタボールに戻しゲートに触れる。
彼の名はレッド。
ルイズの要望通り異世界の最強のトレーナー。
最強を、強さを求めて彼は今ハルケギニアへと飛び立つ。
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今までと同じ爆発が起こった。
そして今までと違うのは土煙の向こうに誰かがいること。
「やった! 成功だわ!」
ルイズが嬉しそうに声を上げる。
だが、それはすぐに落胆へと変わった。
風により土煙が晴れた向こうにいたのは、ただの人だったからだ。
笑い声が巻き起こる。
「ルイズの奴平民を召喚しやがった!」
「流石ゼロのルイズね!」
ルイズは震える。
こんなのあんまりではないか。
(私が願ったのは美しく最強の使い魔よ……! ……こんなのあんまりだわ)
すぐに召喚の儀の責任者であるコルベールに向かって抗議した。
「ミスタ・コルベール! やり直しを!」
「ミス・ヴァリエール。私は君を優秀な生徒だと知っているよ」
「……嫌味ですか?」
「君は座学に置いて成績優秀者だということだよ。サモン・サーヴァントのルールは知っているね?」
「……はい」
コルベールの答えはルイズにとって悲しいものだった。
サモン・サーヴァントをやり直すことはできない。
そして、それはルイズも知っていたことだった。
だが、すぐに受け入れることなどルイズにはできなかったのだ。
「……はぁ」
諦めたように軽く溜息を吐いて、とぼとぼとレッドに近づいていく。
ルイズは改めてレッドの顔を見る。
悪くない顔だとは思った。
だが、使い魔という存在においては別だ。
(……どうせ平民ならもっと強そうだった、よかったのに)
「……これは」
「感謝しなさいよね。平民のあんたが貴族の私にこんなことされるなんて、普通ありえないんだからね」
レッドの声を無視……あるいは小さすぎて聞こえなかっただろうか。
声を遮るようにルイズは言った。
そして、ルイズは素早くコントラクト・サーヴァント。契約の呪文を唱えてレッドにキスをした。
その瞬間レッドの右手に軽い痛みが走る。
契約成功の証だった。
「コントラクト・サーヴァントはどうやら一度で成功したみたいですね」
コルベールはレッドの右手を確認してから言った。
そして、それから少し顎に手を当てて数秒黙ったあと言葉を続けた。
「さて、これで召喚の儀を終了します。皆さん良きパートナーに出会えたようで何よりです」
「平民を召喚した奴もいたけどな!」
「最弱の使い魔だぜ!」
そう言って皆箒に乗って飛び立っていく。
ルイズは下唇を噛んで悔しそうに顔を歪めた。
(ブリミル様の嘘つき。どこが最強なのよ)
もちろん、魔法の始祖であるブリミルは嘘などついていない。
ルイズの注文通りの使い魔だ。
そして、それが証明されるのはすぐだった。
……読んでくれてありがとうございました。