ゴリラの天才科学者、ウィンストンは相変わらず苦労していた。仲間のトレーサーに施した時間加速装置のメンテナンスに加え、メイから凍結ブラスターの改良まで依頼されたのだ。実際、トレーサーの拠点を軸に活動してから、彼は護り役よりもメカニックとして動くことが多かった。
「お二方は実に頑張っておられるから、私も頑張らなくては・・・と、言いたいところですが・・・それを40秒でやれなんて、いくらなんでも無茶であります」
短銃サイズではあるが、パーツが多く、仕組みが複雑な凍結ブラスターを解体し、射程をアップさせるパーツに交換する。
「よし、次は時間加速装置だ」
ベッドに横たわるショートカットの似合うイギリス人女性、トレーサーの胸部に施された円形の装置こそが時間加速装置だ。
「全く、装置を酷使したら故障する可能性が上がると、何度言ったらわかるのですか?」
「でも、困ってる人がいたから助けるために使ったんだよ、何が悪いの?」
手を動かしながら説明するウィンストン。
「それはそうですが・・・時間解離症は肉体に負荷が掛かってしまい、最悪、肉体が消える可能性も孕んでいます。無理だけはしてはいけません、ヒーローは一人じゃないのですよ」
ぐぅの一言も言えないトレーサー。そう言ってる間にメンテナンスが終わる。
「仲間達はバラバラになりましたが、今は私もメイさんもいます、困ったら支えあうのがいいのです」
小柄な中国人女性、メイが二人の前に姿を現す。
「おやメイさん、出来ましたよ」
「出来たの?試し撃ちしてもいい?」
試射場に赴き、凍結ブラスターを撃ってみる。以前使っていたより軽くなっており、射程も伸びていた。
「すごい、温度上げないで射程伸ばすなんて!ありがとうウィンストン!」
「いえ、当然のことですから」
「そうそう、今度調査しに中国のレイコウタワーに行くんだけど、一緒に来てくれる?」
「生態系回復のカギがそこにあるの?」
「風のうわさだけど、行ってみる価値はあると思って」
「ですが、しっかり旅支度しないといけませんよ。ここはロンドン、中国まで遠いですよ?どうやって行くか考えましたか?」
「もちろん、ウィンストンの即席ロケットで」
予想通り、自分任せなことに苦笑いする。
「・・・まあいいでしょう。3人乗れて帰りの燃料分も詰めるロケットを作りますから、待っていてください」
後日、3人でレイコウタワーに行くのだが、そこで当時の仲間と出会うことになろうとは、この時誰も予想できなかった。