懐かしい夢を見た。
私は雪の中を巫女装束の若い女の人に手を引かれていた。私はただ彼女についていった。雪の中を歩いているため息が白くなり、手も悴んでいく。体温を奪われないようにコートも着ているが明らかにサイズが合わない物を着ていた。何時間歩いただろうかと私は思っていると、手を引いていた女の人が急に止まり顔を険しくしこちらを向き膝を曲げた。私の目線と同じになると彼女は抱きしめてきた。
「この道を真っ直ぐ行けばお社があります。早く行きなさい。私は彼らの足止めをします」
彼女は優しく告げ私を離した。離れる一瞬、私は不安になり彼女の手を掴み力をこめた。それを見た彼女は一瞬驚いたような表情をしたがすぐに優しい笑みを浮かべた。
「あなたなら一人でも大丈夫。これを持って行って。お守りよ」
彼女は近くにあった低木の枝を折って目を閉じた。すると枝に何かが注がれた。それを私の着ていたコートの胸元に飾った。
「高神の森はあなたのことを守ってくれます。お行きなさい」
そう告げると彼女は私の後方の方へ走っていった。私が彼女を最後に見た姿は走りながら手に顕現された固有霊装を出す後ろ姿だった。
そのあと私はなぜか何事も無くお社に着くことができた。お社の人は私に近づき屈んで私を見た。お社の人は悲しそうな表情を浮かべて女の人がやってくれたように抱きしめた。
「もう大丈夫だ。これからは私たちが君を守る存在となろう」
その言葉を聞いて私は意識を失った。
-----らぎ。--ろ。
遠くで誰かが何かを訴えかけてくる。その声はどこかで聞いたことがあるような気がした。
———めらぎ。ーきろ。
その声はだんだんと近づいてきて。
「姫柊。起きろー」
ついに耳元でその声が響いた。私は目を覚まし、急に上半身を上げた。
「ゴフっ」
と同時に額にものすごい衝撃が走り頭を押さえた。
「いたっ。・・・・・・何があったんでしょうか」
姫柊雪菜は涙目になりつつ状況を整理した。
「えっと。私は誰かが耳元で叫んだからびっくりして起きたら額に痛みが走って」
それから。・・・・・・・たしか「ゴフっ」って声がした様な。えっ‼
雪菜はゆっくりと寝台から身を乗り出しそれを発見した。それは鼻血を出して気絶していた暁古城の姿であった。雪菜は急いで寝台から降りて古城に近づいた。
「せ、先輩?先輩!暁先輩‼」
雪菜が叫びが部屋の中で空しく響いた。
数分後。古城が目を覚ました。
「ったく。なんでこんな事になるかな」
文句を言いつつソファに腰かけた。その隣には肩を窄めている雪菜の姿があった。
「すいません。・・・でも、先輩も悪いんですよ」
「なんで」
「幾ら起こすためとはいえ耳元で叫ぶのは非常識だと思います」
古城は不意を突かれたような「うっ」と声を上げた。
「それになんで私が起きるときにぶつかるような場所にいたんですか?・・・・・先輩。まさかまたいやらしい事をしようとしたとか」
最後の方はとても冷徹な声で発せられた。それは殺気も混じった物だった。
「ち、違う」
古城は目を反らして告げた。
「先輩」
雪菜は追及するかのように顔を向けた。
「どうして目を背けたんですか」
雪菜から発せられた声で古城は背中から冷や汗が流れるのを感じた。その間も雪菜はこっちを見ているため確認することはできなかったが。
「はあ~、もういいですよ。それにこの時間まで起きなかった私の責任でもありますしね」
彼女がそういうと古城もため息を吐いた。
「そ、そうだな。まあいいさ。ほれ、さっき淹れたばっかのコーヒーだ。少し冷めちまったがこれでも飲め」
古城は雪菜にコーヒーの入った容器を渡した。雪菜はそれを受け取って一口、口に含ませた。
「大丈夫ですよ。全然冷めてません。それにこれおいしいですね」
雪菜は目を輝かせながら笑みを浮かべた。それを見た古城は微笑んだ。
「そいつは良かった。まあ、インスタントでもやり方次第じゃ美味くもなるさ」
「ありがとうございます。これで眠気も覚めました」
二人は顔を見合って笑った。しかしそれは次の瞬間には崩壊した。
「いやーーーーーーーーーーーーー。ケダモノーーーーーーー」
隣の部屋から響いてきた女子の叫び声がこの部屋にも響いた。
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