焔光の夜伯と剣巫の英雄譚   作:カラムイラス

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十話目です。どうぞ!


十話

 那月に連れて行かられた先は那月の持っている部屋の中だった。

「助かりました、南宮先生」

 雪菜が礼を言い、苦笑いを浮かべた。

「何、お前に用があっただけだ」

 それに対して彼女はソファに座って扇子を仰いでいる。

「あの、用事というのはなんでしょうか?」

 しかし、先程から警戒はしていた。そのため言葉が少しきつくなっていた。

「なあに。ただ今度の事を聞こうと思っただけだ。そう身構えるな」

 その言葉を聞いて警戒を少し解き、雪菜は那月の正面にあるソファに促されるまま腰を下ろした。

「獅子王機関から何か連絡はあったか?」

 座ると同時に那月がそれを口にした。

「いえ、特になにも」

「そうか。それほど問題とは思ってないようだな。あのじゃじゃ馬姫に伝わった事が」

 彼女はソファの背もたれに体を預け、雪菜を見据えた。

「そうだと思います。ですから私には何も伝えてこないのでしょう」

 雪菜も自分の考えを伝え、那月を視線から離さなかった。

「しかし」

「ああ、そうだな。あのじゃじゃ馬姫に目を付けられた」

 当分の問題は彼女。ステラ・ヴァーミリオン。

「どうにかしないといけませんね」

「その件はお前がなんとかしろ」

 那月はその件は関わらないというばかりに突き放した。

「まあ、この話はこれ位にしてやろう。本題だが」

 彼女はここで一度区切り再び口を動かした。

 

 

「お前は七星剣武祭には出ないのか?」

 

 

 那月から発せられた言葉に雪菜は驚愕したようで目を見開いている。

「何を驚いている」

「いえ! その・・・・・」

「お前の担任の折木にせがまれたんだ。私自身お前が出ようが出まいが興味は無い」

 閉じた扇子を振り、雪菜はそれを感じ取った。

「どうやらまだ出場願も辞退願も出してないようだが?」

「そこで南宮先生がその答えを聞こうということですか?」

 那月は頷き肯定した。

「分かりました。そういう事でしたら先生に伝えるのが良いかもしれませんね」

 彼女は少し思い悩むように俯き、おもむろに顔を上げ那月の顔を見据えた。

「私の任務は暁先輩の監視であって、七星剣武祭の出場では無いとここに来る前に師家さまに言われています。それに従って私は出場はしません」

「それがお前の答えか」

「はい」

 目を細めて雪菜を見つめ、「そうか」と口にした。

「わかった。では、そういうことにしてやる。戻っていいぞ」

 那月が扇子を振ると雪菜は扉の方向に歩いて行った。

「そういえばこれを伝えていなかったな」

 扉を開けようとしていた雪菜にそういうと、彼女は振り向き那月に目を向けた。

「昨日のテロリストが口を割った。どうやら他のテロ集団共と共に日本で何やら計画をしていたようだ」

 彼女が口にすると雪菜は真剣な表情を見せた。

「それは本当ですか?」

 声からもそれが伺えた。

「ああ、本当だ。その組織もわかっている」

「その組織とは?」

 

 

 

 

「黒死皇派」

 

 

 その言葉を聞いて雪菜は思わず口に手を当てた。

「そうですか。・・・・・ですが!」

「お前の言いたい事は分かる」

 黒死皇派にはある特徴がある。それは目的が

「東欧の国、戦王領域の支配権を奪うことだからな。日本なんて基本的に標的には成り得ない。しかしそれが今回あいつらが絡んでくる。姫柊雪菜」

「はい!」

「もしもの時が来るかもしれない。注意しておけ!」

 その後は続かなかったが言わなくても分かった。

「・・・・・それでは失礼しました」

 そういうと、雪菜は扉を開け部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後になり、古城は雪菜と共に凪沙が入院しているMARの病院に向かっていた。

「へえ、姫柊も出ないのか? それはなんか意外だな」

「それはどういう意味ですか?」

 古城を横目で見て雪菜は不思議そうな声を出す。

「いや、なんとなく姫柊は出るもんだと思っていたからな。お前、一応学年主席だからさ」

 古城の言うことは最もである。去年までであったなら学年主席は今年のように予選などしなくてもその時点で出場が決まっていた。そのくらい期待があるのだ。予選のある今年にしたって期待しているものは結構いるのだ。

「私は先輩の監視を獅子王機関より受けていますから、先輩からあまり離れる時間は少ない方がいいと思いまして。それに先輩を放っておいたら誰彼構わず血を吸うかもしれませんから」

 最後の方は拗ねたような物言いをした。

「するか! 第一あれはそうしないといけない状況であった為であって・・・」

 古城は訴えるように叫んだ。

「そうですよね」

 すると雪菜は納得したいうに頷いた。

「分かってくれたのか!」

 期待を込めて古城が雪菜に問いかけると彼女は答えた。

「はい、わかっていますよ! 先輩はいやらしい人だということは」

 しかしその願いは叶わず、雪菜はそういう結論を出した。それを聞いて古城は項垂れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 MARの病院に着くと二人は凪沙の病室には向かわず主治医の部屋を訪れた。

「母さん! 俺だ」

 扉をノックしながら古城がその部屋の主を呼んだ。すると扉が開かれ、中から眼鏡をした白衣の女性が現れた。

「やあやあ、よく来たね! さあ中に入って!」

 彼女が凪沙の主治医にして暁兄妹の母親。暁深森である。彼女は古城たちを中に入るように促し、二人はそれに従った。中に入るとそこには彼女の着替えが散乱していた。

「相変わらずこっちは汚ねえのな」

 溜息交じりの声で深森に言うと彼女は指を立て、それを振った。

「そんなはずはないよ。これでも掃除したほうだからさ!」

 彼女は口にすると胸を張った。古城はそれを聞いてまた溜息を吐き、雪菜は困惑していた。

「まあ、それはいいとして。凪沙の荷物持って来たぞ」

 手に持った紙袋を深森に渡した古城は近くの椅子に座った。

「ありがとね! 雪菜ちゃんも。凪沙もきっと喜ぶと思う!」

「いえ、私も凪沙ちゃんが心配で付いてきただけなので」

 雪菜も畏まっていた。

「で、凪沙の容体はどうなんだ?」

 古城がそれを聞くと深森は真剣な表情をした。

「それがね・・・・・・」

 その場にいた誰もが息を止めて彼女の言うことに身を乗り出して聞いた。

「ただの疲労だったのよ!」

 深森の言葉でズッコケた古城は頭を摩って素っ頓狂な声を出した。

「ひ、疲労だあ!」

 対する雪菜は安心したように息を漏らしたい。

「そ、疲労。慣れない生活に疲れて倒れちゃったのね! あと二日はここで入院させるようだけどそれほど酷い状況でもないから。一応目も覚ましたし」

「 会ってく?」と深森に言われてたが古城は疲れたんか弱々しく首を横に振った。

「なら、今日は帰ることにする。じゃあ、また後来るから」

「失礼しました」

 古城と雪菜は部屋を後にした。扉の向こうから「またねえ」という声が聞こえ、古城は疲れが増した。

 

 

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